『日本の新たな「第三の道」』(ダイヤモンド社) とても刺激的というか、強い共感を覚える内容です。
サブタイトルにあるように、日本の新たな「第三の道」とは、市場主義改革と福祉改革を同時に推進しなければならないということです。右派が主張する徹底した市場主義を小泉内閣が強力に進めてきた結果、当初期待されていた経済の活性化という結果とはまったく逆のものがもたらされました。だからといって、古典的な左派の主張する福祉国家を目指すことは、これまた社会主義国家に向かいかねないことになり、到底肯定できないことになります。 問題なのは、福祉制度改革です。本書では、福祉制度改革は既得権益を生むから容易ではないと明確に述べられています。社会給付がいったん制度化されると、当初の目的に合致してようがいまいが、給付制度が独り歩きし、期待が固定され、利益集団は自己の権益を保守しようとする。福祉給付は、往々にして受身の姿勢や依頼心を助長し、受給者の自立を妨げる。給付が本来の目的に反する効果をもたらすとされています。 上記の記述は、日本の福祉現場、特に生活保護行政の実態を熟知されているのではないかと思われ、感銘を受けます。自治体で福祉に限らず、給付行政に従事している方の多くは、強い共感を覚えるのではないでしょうか。
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東京都がネットカフェ条例制定へ
朝日新聞17日付記事からです。 条例案の名称は、「インターネット端末利用営業の規制に関する条例」です。条例の概要は次のアドレスで参照してください。 http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2010/02/20k2h101.htm 警視庁が所管する条例ですから、当然ながら犯罪検挙が第一目的です。本人確認を義務づけるということは、免許証や健康保険証などの提示を要することになります。利用者にすれば、鬱陶しいでしょうねえ。自分がどこの何者かを把握されるわけですから、ネットカフェへの客足は減少するでしょう。廃業するネットカフェ事業者が続出する可能性もあります。条例の狙いはきわめて明確です。 東京都の条例施行後、その実効性を見て、他の府県も追随するかもしれません。どんどん追随すべきです。ネットカフェの中なら、ネット犯罪は発覚しないと思っている馬鹿どもがまだまだ多いでしょうから。
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携帯電話とバレンタイン 14日の日曜日は、妻にせがまれて、新しい携帯電話を買ってあげました。たまには優しい旦那にならないといけないので。私はまだそれほど年数が経っていないので、買い替えしませんでした。
携帯電話は持っていれば便利なことは理解しています。しかし、私は、あまり使っていません。特に通話は少ないです。月平均3回くらいです。無料通話の範囲で十分に収まっています。携帯メールの使用もわずか。所有している意味があまりないのですが、緊急時に役立ったことがあるので、持ち続けています。 で、14日はバレンタイン。出先職場にいる者の悲哀です。今年は少ないです。3個。妻と勤務先の美しい女性2人からと。日頃の交友が、こういう心配りになるのでしょうか。来月、奮発してホワイトしないと。
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未支給年金規定と併給調整規定 国民年金法には、19条に未支給年金の規定があり、20条には併給の調整規定があります。年金は偶数月に前月までの分を支払うという「後払い」ということも、多くの方は常識でご存じでしょう(18条2項)。
年金受給権者が死亡した場合、支給すべき年金で支給しなかったものがあるときに、その死者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹であって、その者の死亡の当時、生計を同じくしていたものは、自己の名でその未支給の年金の支給を請求できることをいいます。これを未支給年金としており、同様の規定は厚生年金保険法37条にもあります。具体的には、国民年金の受給権者が1月に死亡した場合、12月分と1月分の年金が2月に支給されるところ、これを法19条規定の遺族が請求できるわけです。どの遺族が優先順位を持つのかについては、上記の順位、つまり第1順位は配偶者、次いで子、父母、孫・・・といった順序です(19条4項)。また、併給調整規定とは、遺族基礎年金や老齢基礎年金の受給権者が他の年金給付を受けることができる場合には、その間、遺族基礎年金や老齢基礎年金の支給が停止される仕組みです。 これらの規定を踏まえて、最高裁平成7年11月7日は次のような判決をだしています。 まず事案を簡潔にまとめますと、次のとおりです。
最高裁は次のような判決を出し、原告の訴えを棄却しました。 国民年金法19条1項、同条5項(注:現在は4項)は相続とは別の立場から一定の遺族に対して未支給の年金給付の支給を認めたものであり、死亡した受給権者が有していた右年金給付に係る請求権が同条の規定を離れて別途相続の対象となるものでないことは明らかである。 同法16条は、給付を受ける権利は、受給権者の請求に基づき社会保険庁長官が裁定するものとしているが、これは、画一公平な処理により無用の紛争を防止し、給付の法的確実性を担保するため、その権利の発生要件の存否や金額等につき同長官が公権的に確認するのが相当であるとの見地から、基本権たる受給権について、同長官による裁定を受けて初めて年金の支給が可能となる旨を明らかにしたものである。同法19条1項により遺族が取得するのは支分権たる請求権ではあるが、同法16条の趣旨に照らして考えると、右19条1項にいう請求は裁定の請求に準じて社会保険庁長官に対してすべきものであり(現に国民年金法施行規則は、同法19条の規定による未支給年金の支給の請求は所定の請求書を同長官に提出することによって行うべき旨を定めている)、これに対して同長官が応答することが予定されているものと解される。そして、社会保険庁長官の応答は、請求をした者が請求権を有する所定の遺族に当たるか否かを統一的見地から公権的に確認するものであり、不服申立ての対象を定めた同法101条1項にいう「給付に関する処分」に当たるものと解するのが相当である。したがって、同法19条1項所定の遺族は、社会保険庁長官による未支給年金の支給決定を受けるまでは、死亡した受給権者が有していた未支給年金に係る請求権を確定的に取得したということはできず、同長官に対する支給請求とこれに対する処分を経ないで訴訟上未支給年金を請求することはできないものといわなければならない。そうすると、上告人は、本件訴訟とは別に社会保険庁長官に対する支給請求をした上で、必要があればこれに対する処分を争うべきものであって、上告人において亡Aの本件訴訟上の地位を承継することを認めることはできない。 原告Aは、20条の併給調整規定は違憲無効であるから、支給停止とされて「未支給」となっている老齢年金の請求について、その根拠を19条の「未支給」という文言に求めた模様です。そしてAが死亡した後は、Aの子(養女)が19条所定の遺族であるとして、訴訟承継を主張して、「未支給」の年金を得ようと考えていたわけです。 国民年金法19条は、年金受給権者が死亡して未支給の年金がある場合の扱いをいっているのであって、併給調整規定によって支給停止となっている年金を「未支給年金」とは認めていないのではないでしょうか。原告は「未支給年金」という文言をマジックワードのようにして年金を受給しようと思っていたのかもしれませんが、それは無茶な話だと思います。原告側の代理人弁護士は、負け戦覚悟で受けていたのでしょうか。
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生活保護の餌食にされている大阪市
朝日新聞9日付記事からです。 生活保護の相談にやってきた人に対して、「大阪市ならば、生活保護はうけやすい」「悪いこと言わないから大阪市に行って申請すればいい」などと片道の電車賃を渡して大阪市で生活保護を申請させるという、裏技が横行していることが、ようやく明るみにでたわけです。 実は、こういうことは、以前から福祉事務所関係者の間では知れ渡っていましたが、公式の調査をしたデータもなく、曖昧なままでした。旧来型の水際作戦だと違法だと批判されるため、先日紹介した岸和田市のような対応もありますが、もう一つが他の自治体で生活保護を受けるように勧める手法。そのターゲットとされたのが、大阪市だったのです。大阪市の納税者市民はさぞかし迷惑です。人数の多少差はあるでしょうけども、少なからぬ他の自治体も同様の被害を受けています。 大阪市は「働ける人には働いてもらう」ことを原則にするとしていますが、それが甘いのです。十分に働けるのに、ヤブ医者が書く「稼働不可能」というデタラメな「診断書」1枚で仕事をしようとしないのが、多い。病気でもないのに毎日病院に通って「体調が悪いので働けない」というのも同様に多い。ハローワークでの求職活動や職業訓練を義務化し、拒否した場合の生活保護申請の却下を認めるよう国に求めるとしていますが、形だけの求職活動で真剣にやっていないのがどれほど多いことか。 大阪市の生活保護が「甘い」のは、長年にわたる公費乱脈体質も大きく影響しているはずです。貧困者を公費で救済するのは当然だと、正義のヒーロー気取りで気前よく生活保護予算を消化してきたツケではないでしょうか。予算の執行管理という点からも、厳正に点検しなければならないと思います。
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自治体附属機関の意味、役割への無理解
ごく基本的、初歩的なことについて、記事にしておきます。附属機関については、一般に「審議会」とか「審査会」あるいは「協議会」といった名称が付されているものが多いと思います。その役割は、執行機関の行政執行のため、又は行政執行に伴い必要な調停、審査、審議又は調査等を行うことを職務とする機関で、執行権は有しません(松本英昭『逐条地方自治法(第5次改訂版)』464頁)。あくまで執行機関(多くは首長)が諮問した事項について、学識経験者などの委員が審議、審査し、答申を出すのが役割であって、執行について「適法性の保証」を得られているわけではありません。 しかし、自治体職員の中には、どうも附属機関の意義や役割、機能を理解していない者が少なくないようです。しばしば聞くセリフとして、「審議会で審議してもらって、答申を得たのだからこの通りにすれば大丈夫だ」というものです。何年も附属機関の事務局を兼ねた仕事をしてきているのに、こういうことを平気で言うのがいるのです。こういう職員は、附属機関依存症ないしは附属機関万能主義が意識として定着しているのではないかと疑って間違いないと思います。先日も、職場で、私が「訴訟になった場合、市としては審議会の答申どおりやったと主張しても、裁判所がこれを認めてくれるとは限りませんよ」と強い調子で言いました。それで、ようやく附属機関の意味を理解できるようになったようですが、附属機関依存症は治らないでしょうね。
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毎年この時期に思っていること
朝日新聞5日付け記事からです。国や自治体だけでなく、大学でも随意契約が多い実態は共通しているのでしょう。和歌山県立医大の英断には敬意を表しますが、事務方は大変です。 この時期になるといつも思うことに、新年度開始の業務委託契約に関する事務の進め方があります。所管課において締結できる随意契約であれば3月になってからでも十分に時間は確保できますから、それほど急かされずに済みます。問題なのは、契約担当課に依頼しなければならない、入札や随意契約です。 どの自治体もこの時期は予算編成が一段落し、議会対応などで忙殺されます。そんな中で、契約担当課に新年度契約の入札や随意契約を依頼する期限が2月15日前後であったりするから大変なのです。当然、その1週間くらい前 には局総務課に決裁を合議しなければなりませんから、ものすごく窮屈な日程になります。何よりもネックなのは、そもそも2月上旬では新年度契約のための支出負担行為がコンピュータ入力できない状態になっていることです。局総務課の担当者に言っても、ただちにこれが解除されるわけではなく、所管課としては、支出負担行為の入力を後回しにして、さしあたって課長まで決裁を得ておき、コンピュータ入力が可能になった後に部長、局長へと合議することになります。しかし、一方で、契約担当課も自分たちの仕事のスケジュールがありますから、指定期日までに契約依頼書を提出しなければ4月1日からの契約締結はできないと脅してきます。もちろん、財政課や会計課に対して支出負担行為の入力解除を要請するようなことはしません。組織内部のそれぞれの自己都合な対応ぶりに、毎年、憤っているわけです。
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生活保護の新型水際作戦 岸和田市
少し前のものですが、朝日新聞09年11月12日付記事からです。 生活保護に関しては、以前から窓口で申請をさせない「水際作戦」が違法だと批判する左翼勢力が一部に存在し、それが昨今の社会情勢の影響でさも正義の主張のように扱われているため、生活保護の激増に拍車をかけています。当然、自治体財政難の主要因となっているわけです。そのような中で、岸和田市の対応には注目すべきであり、極めて大きな関心を持ちます。 生活保護法は補足性の原則、すなわち利用し得る資産、能力などを活用することが求められます(4条)。申請保護の原則が規定されており(7条)、申請があれば保護開始の要否等の決定を14日以内に通知しなければならず、調査に時間を要する場合には30日まで延期できます(24条1項〜3項)。申請から30日以内に通知がなければ、申請者は却下されたとみなすことができます(同条4項)。つまり30日経過すれば申請者は不服申立てをするか、改めて申請をするか、あるいは転居して別の市町村で申請をするなどの対応しなければならないのです。 岸和田市は、これらの規定を手掛かりに、窓口で申請を拒否するという旧来型の水際作戦という手段ではなく、申請は受理しても、申請者が求職活動を真剣に行っていないことを理由に、4条の補足性原則の要件が具備されていないことで申請却下としたのでしょう。これによって、申請者としては、不服申立てをし、それでも認められなければ訴訟を行わねばなりません。訴訟となれば一審だけでも数か月から数年を要します。岸和田市にすれば、仮に敗訴したとしても、生活保護を遡及して認めればいいだけなので、割り切っているのかもしれません。 岸和田市の事例をベースにすれば、生活保護受給者であっても真剣に求職活動をしていない者などに対しても同様の対応をすればいいことになりそうです。生活保護抑止に一定の効果を期待できそうです。 国は相変わらず生活保護法の抜本的改正をする気はないようです。これでは自治体はたまったものではない。生活保護の激増で自治体財政は火の車です。「目には目、歯には歯」で、ゲリラ的な生活保護の濫用を阻止しなければなりません。岸和田市の対応が今後のモデルとなればと願っています。
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今さら日本史・・・という人も 仕事を終えて、いつもならば真っ直ぐ帰宅するのですが、今日はちょっと寄り道でした。路線バスで10分ほどで行けるショッピングセンターにある家電製品店でUSBメモリーステックを購入しました。これは新しいパソコンにデータを移行するために大容量のものが必要だからです。その後は毎度のことながら書店で立ち読み。
出版市場がついに2兆円割れをするなど、出版不況と言われてもうかなり久しいですが、今、売れているのがこれだそうでして。
昨年秋ごろから書店に並んでいるのは知っていましたが、今さら日本史教科書なんてという気持ちが強かったので、購入を控えていました。しかし、新聞の書評欄などでも取り上げられていたし、手にとって見ると帯には「もういちど読む山川日本史 大反響」「社会人のための高校教科書 ブームだけではわからない、本物の歴史が読める本」とあります。山川出版社、なかなかやるな 結局、1,500円という、日頃は数千円の専門書を購入している私にとっては「お手軽さ」も手伝って、購入しました。
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住民投票法による住民投票条例の義務づけ
毎日新聞31日付記事からです。 住民投票条例については、このブログでも次のようなやや詳しい記事を書いたことがあります。 住民投票条例論(1) 住民投票条例論(2) 県民投票条例の実施可能性 住民投票法によって自治体に住民投票条例の制定を義務づけ、直接請求による実施を義務づけるというのは、かなり進歩的という見方ができそうです。しかしながら、投票結果の拘束力については、尊重義務にとどめるというのであれば、運動団体たちにすれば、なんのための法律なのかという不満をいだくことになりそうですね。一方で、私のように、法律で住民投票条例の制定を義務づけることに反対する人もいるでしょう。 住民投票を法的に措置する場合、公職選挙法のような厳しい規制を行うのか、それともそこまで求めないのかという論点が思い浮かびます。また、住民投票実施に伴う経費は特に都道府県や政令市、中核市レベルになれば莫大になるため、そう簡単なものではないという論点もあると思います。
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