講学 政策法務

政策法務、地方自治、司法、事件、そして四方山話。硬い話、時たま、柔らかい話。
Author:Z-Berg

石川県、携帯所持規制を条例化

小中学生の携帯所持規制 保護者に努力義務 石川県条例
 小中学生に携帯電話を持たせないよう保護者に努力義務を課した石川県の「いしかわ子ども総合条例」の改正案が、29日開かれた6月定例県議会で自民会派などの賛成多数で可決された。県によると、携帯電話の所持を規制する条例は全国で初めて。来年1月から施行される。
 県議会で過半数の自民が中心に準備を進め、他会派とともに今月17日に議員提案した。条例改正案は「保護者は小中学生に、防災、防犯、その他特別な目的の場合を除き、携帯電話を持たせないよう努める」と明記した。罰則規定は設けていない。
 文部科学省の昨年12月時点の調査では、全国の小中学校の9割以上が学校への持ち込みを「原則禁止」としている。校内への携帯電話の持ち込み禁止は広く定着しているが、今回は校内外を問わず条例で所持を規制しており、さらに踏み込んだ。
 一方、県側も18歳未満が使う携帯電話のフィルタリング機能(有害サイトの閲覧規制)を強化する条例改正案を提案し、全会一致で可決された。携帯電話の事業者に対し販売の際にフィルタリングの目的について文書での説明を義務づけ、保護者は特定の理由を除いて機能を解除できないとした。フィルタリング強化の条例は兵庫県でも7月に施行される。
 改正条例には、議員提案と県提案の両案の内容が盛り込まれる。県は保護者や学校関係者への説明会を開き、周知を図る。


 朝日新聞29日付記事からです。
 私が携帯電話を使い始めたのは21世紀になってからです。必要性を感じなかったため、多くの人と比べるとかなり遅れたほうだと思います。あまり使っていませんので、毎月の携帯代金は、家族3人で1万円くらいです。

 携帯電話のマナーは大人でも顔をしかめてしまうことが多いです。例えば、毎日乗っている通勤電車の中で、次のようなシーンは少なからず目にします。

 乗客A:(携帯が鳴ったので取り出し)はい、もしもし・・・あ、今、電車の中ですので・・・
 [それでも電話の相手は、何かを伝えようとしているようです]
 乗客A:ええ・・・はい・・・あの・・・今、電車の中ですので、後ほどこちらから連絡しますので・・・

 こういう乗客は常識があります。根本的には、電車内で携帯が鳴ろうが、叫ぼうが、一切通話しないようにしておくのがベストです。最悪なのは、電車の中だと伝えているにもかかわらず、しつこく通話を続けようとする相手です。どんな重大な用件があるのか知りませんが、仮に10分後にかけ直したとしても、結論に大差はありません。要するに、自分さえよければいいという輩が、こういう醜いマナー違反をしているのです。

 小中学生の携帯所持規制には反対しませんが、上記のような大人をしばしば見ているため、子どもたちの将来のために、マナーを徹底的に教育するほうが、政策としては望ましいと思います。こういうのって、なかなか身につかないんですよねえ。
2009年06月29日

  月別アーカイブ

    2010年09月 (1)
    2010年07月 (1)
    2010年03月 (9)
    2010年02月 (10)
    2010年01月 (12)
    2009年12月 (13)
    2009年11月 (11)
    2009年10月 (9)
    2009年07月 (2)
    2009年06月 (19)
    2009年05月 (18)
    2009年04月 (19)
    2009年03月 (6)
    2009年02月 (21)
    2009年01月 (24)
    2008年12月 (10)
    2008年11月 (20)
    2008年10月 (16)
    2008年09月 (21)
    2008年08月 (12)
    2008年07月 (10)
    2008年06月 (10)
    2008年05月 (20)
    2008年04月 (13)

   

地方公務員の報告発表能力

 政策法務研究会の祭典である、自治体法務合同研究会おおさか大会が来月開催される予定です。講演会やシンポジウムのほか、各地の政策法務研究会メンバーが研究報告を行い、その中で質疑応答が交わされます。

 報告発表といえば、事前にレジュメを作成し、これを配布し、発表者が報告をする。報告内容レベルの高低、話術の巧拙など、いろいろ差があります。それでも、毎年、全国の政策法務に関する諸問題を知ることができるのが、大きな楽しみです。

 しかし、気になることがあります。どうも最近は、パワーポイントなど「映像」を活用して、聴取者の「視覚」に訴える手法を採用する報告者が増えているようです。限られた時間で、できるだけ多くの情報を提示したいこと、分かりやすさを追求したいことなどの理由から、こうしたものを活用するのでしょうが、どこか抵抗感を持ちます。普通に、レジュメと話術で、理解してもらうように努力できないのでしょうか。そういうのは古臭いと考えている人が増えているのでしょうか。

 昔の文豪や著名学者が凄いのは、パソコンなどない時代に、万年筆と原稿用紙で作品を完成させていたことです。何度も推敲を繰り返し、原稿用紙がインクで真っ黒になっているのを見ると、それだけで迫力を感じます。コンピュータを活用することを否定しようとは思いませんが、過剰に依存しているような印象を持ちます。人の前で、要点を分かりやすく伝える能力が劣化しているのは、地方公務員だけではないのかもしれませんが、気になります。

 ちなみに、私が政策法務研究会で発表する場合は、レジュメ配布だけで、コンピューターは使用したことがありません。聴き手側にとっては、辛いかもしれませんが。
2009年06月28日

障害を持つ女子の中学校進学

女子生徒の中学入学命じる=「障害で拒否」の町に仮決定−奈良地裁
 奈良県下市町立中学校への入学を希望していた身体に障害を持つ谷口明花さん(12)=同町=と両親が、町教育委員会を相手に、入学を認めるよう求めた訴訟で、奈良地裁(一谷好文裁判長)は26日、同校への入学を義務付ける仮決定を出した。代理人弁護士によると、中学校入学での仮決定は珍しいという。
 決定によると、校舎には手すり付きトイレが設置されているなど、設備などに不都合はないと指摘。「中学校教育の期間はわずか3年間しかないのに、提訴してから既に3カ月近くが経過しており、緊急の必要性がある」と、同日からの女子生徒の入学を認めた。
 訴状などによると、明花さんは両足と右腕が不自由で、3月に町立小学校を卒業。下市中への進学を希望したが、同校は施設未整備などを理由に、入学通知を出さず、特別支援学校への進学を要請していた。

 
 時事通信26日付記事からです。
 障害を持つ生徒を特別支援学校(かつての養護学校)で教育することについては、現場の教師たちからも賛否両論あると認識しています。一般的には円滑に学校生活ができるようにするために、特別支援学校が適切という考え方があり、一方で、卒業して社会に出れば荒波にのまれることになり、それに耐えられる自立心、自立力をつけるために、普通学級で学ぶのがいいという意見も聞いたことがあります。私は、その生徒の状況や希望などを勘案して決めればいいと思っています。しかし、ほとんどの中学校は、何か事故が発生した場合、すべての責任を押し付けられるという恐怖感から、障害を持つ生徒の受入れは消極的です。これはこれで理解できます。保護者は普通学級進学を強く希望する以上、そういうリスクはある程度覚悟してもらう必要があります。

 マスコミ報道は、障害のある子どもの教育について、しばしば美談にしたがりますが、決してそんなものではありません。この奈良の生徒もいろいろ苦労するでしょうし、それを乗り越えていくことで、自己責任というものを学び、自立力を培っていくことになると思います。将来、何でも国のセイ、社会のセイにする無責任な大人にだけはならないように願っています。
2009年06月27日

宮崎県・東国原知事、衆院総選挙に出馬か?

 自民の総選挙出馬要請に、東国原知事「総裁候補なら」
 自民党の古賀誠選挙対策委員長は23日、宮崎県庁で東国原英夫県知事と約20分間会談し、次の総選挙に自民党から出馬するよう正式要請した。知事側は自民党総裁候補とすることなどを出馬の条件に挙げたが、結論は出なかった。
 東国原氏は総選挙で「次期総裁候補」として当選した後、総裁に選ぶように求めたと見られる。
 古賀氏は会談で「自民党も自浄能力を発揮して変わっていかないといけない」と出馬を要請。これに対し、東国原氏は(1)全国知事会でまとめた地方分権に関する方針を自民党の政権公約(マニフェスト)に盛り込む(2)自分を次期総裁候補とするとの2条件を提示した。
 会談後、東国原氏は記者団に「(条件を)実行すると約束していただけるのであれば、何らかの政治行動をとらなければならない」と国政転出の可能性をにじませた。
 麻生首相は23日、東国原氏について「おちょくったような気持ちで言っておられるとは思いませんけれども、詳細を把握していないのでコメントのしようがありません」と述べるにとどめた。


 朝日新聞23日付記事からです。
 自民党は次の衆院総選挙で勝つために、票を集めることができる人材の獲得に躍起になっているようです。知事から国会議員への転身については、本来、悪いことではないとは思います。特に、東国原知事は、以前から国政への転身を考えておられたことは、かなり知れ渡っているようです。最も高いハードルは、知事1期目の任期途中での国政への転身を、有権者が認めてくれるかどうかでしょう。このことを意識してか、テレビのニュース番組の中で、「宮崎のために国政にでる」といった趣旨の発言をされていたと思いますが、それは誤りではないでしょうか。宮崎県のために国会議員になるなら、その他大勢の単なる利権議員の一人にすぎなくなります。

 多くのメディアが、次の衆院選挙では、自民党大敗、民主党大勝という予測を打ち出しています。個人的には、衆院は与党過半数、参院は野党過半数がいいと思っています。民主党政権への「期待」が世論のようですが、民主党に霞ヶ関をコントロールできるだけの力量があるとは思えません。それでも、今の政権にお灸をすえるために、そして国政に緊張感を与えるためにも、一度、政権交代があってもいいと思います。まあ、どうせ民主党政権は、短命で終わるでしょうし。
2009年06月24日

百条調査委員会

百条委員会を設置/琴平前副町長不正問題
 琴平町の前副町長が、在職中に香川県農協から町名義で不正な借り入れを繰り返していた問題で、琴平町議会(服部武議長)は15日、地方自治法に基づく調査特別委員会(百条委員会)を設置した。23日に初会合を開き、調査の進め方や証人の人選などを話し合う。
 15日開会した6月定例議会に百条委の設置案が議員提出され、全会一致で可決した。県内での設置は2006年の高松市議会以来で、琴平町議会では初めて。
 委員は議員12人のうち、議長と元町職員、町監査委員を除く9人。委員長に山神猛氏、副委員長に小野正人氏を選んだ。
 山神委員長は「議会が一丸となり、町民に一日も早く全容や責任問題、再発防止策を報告したい」と決意表明。23日の初会合では、これまでの調査状況について執行部にあらためて説明を求める方針を示した。
 また、「誰を証人として呼び、どんな質問をするかは委員と協議して決めたい」とした上で、現職や退職した町職員、県農協関係者らが証人喚問の対象になるとの考えを述べた。
 百条委設置を受け、山下町長は「執行部の調査状況を逐次、議会や町民に報告し、議会の協力を得て一日も早い真相究明と問題解決に取り組む」と話した。
 町の調査によると、前副町長は総務課長だった1994年から15年間にわたり、町長の公印を無断で使用し、県農協象郷支店(琴平町)から一時借入金名目で借り入れを繰り返していたとみられる。借入残高は8千万円に上っている。


 四国新聞16日付記事からです。
 私の印象にすぎませんが、地方議会で百条調査委員会が設置される例が増えてきているようです。一昔前は、それほどでもなかったように思います。地方分権が推進される中、議会の存在意義に強い疑問が投げかけられていることから、法的強制力のある百条委員会に積極的にならざるを得ないというのが正直なところなのでしょう。

 しかし、強制力があるだけに委員会の運営にはかなり厳しい法的制約があります。証言を請求する場合には民事訴訟に関する法令の規定中証人の訊問に関する規定が準用されます(自治法100条2項)。しかし、地方議会議員が民事訴訟法について知っているわけがなく、百条委員会で適法な訊問がなされているのかは甚だ疑問です。「俺たちは訴訟法なんて知らない。常識でやっているだけだ」と言う議員もいるそうですが、それ自体が非常識で違法であることを理解できていないのです。

 本来、こうした議会の活動は議会事務局がサポートすべきなのですが、議会事務局の職員で民事訴訟法に詳しい人は極めて少ないでしょう。むしろ、議会の違法行為を黙認し、表面化させないようにすることが、事務局としての役割だと思っているかもしれません。
2009年06月22日

「赤ひげ先生」の化けの皮

生活保護患者の手術偽装、不正請求容疑 奈良・大和郡山
 奈良県大和郡山市内の民間病院が、入院中の生活保護世帯の患者数人に手術をしたかのように装って計百数十万円の診療報酬を不正に受給していた疑いが強まり、県警は21日にも、詐欺容疑で同病院などを家宅捜索する方針を固めた。県によると、同病院は生活保護費の受給者を多く入院させており、県警は、ほかの患者にも架空や不必要な検査、手術をした疑いがないか調べる方針。病院側は不正受給を否定している。
 生活保護世帯は、医療費の全額が公費でまかなわれるため、保護費の受給者を入院させたり、高額な治療を受けさせたりしやすく、全国の医療機関で不適切な診療報酬の受給が相次いで発覚している。
 捜査関係者によると、大和郡山市内の病院は、生活保護を受けている数人の患者に狭心症などの手術をしたと偽り、04年秋以降、架空の診療報酬明細書(レセプト)を奈良県社会保険診療報酬支払基金などに提出。少なくとも計百数十万円を不正に受け取った疑いが持たれている。
 病院側は、心臓の血管の拡張を維持するためステントと呼ばれる金網状の筒を挿入する手術などを施したとしているが、患者のレントゲン写真でステントが確認できない例があったという。県警は診療実態などについて、病院を経営する医療法人の理事長の医師らから任意で事情を聴く方針。
 奈良県の調査によると、県内の病院では、入院患者のうち生活保護費の受給者が占める割合は平均1割未満だが、この病院は最近まで5〜6割超に達していたという。関係者の内部告発を受けた県は07年夏以降、同病院を数回、立ち入り検査。過剰な検査傾向や、手術後のカルテに医師の所見の記載がない例などが判明したため改善を求めた。
 理事長らは朝日新聞の取材に対し、「診療報酬の不正請求は全くない。大阪の病院などから紹介を受け、生活保護費を受給する入院患者が多いのは確かだが、必要な検査や手術をしている」と話した。同病院は99年7月に開院。外科、内科、循環器科などがあり、80床。


 朝日新聞21日付記事からです。
 生活保護に関しては、これまで当ブログで、何度も記事にしています。医療機関による不正が摘発されたとのことですが、氷山の一角にすぎません。医療機関による生活保護医療費不正受給は、医療機関・生活保護受給者双方にとってメリットがあるため、なかなか表面化しないのです。メリットというのは、医療機関にとっては全て公費で診療報酬が支払われるため、収入源として最も確実です。社会的弱者の救済は「儲かる」のです。一方、生活保護受給者にとっては「病気であり続けること」そのものが生活保護を継続できる大きな理由になるため、積極的に健康回復しようとは努めませんし、「手術をしたことにしよう」と医師から言われれば多くの者が嬉々としてこれに応じるからです。

 この医療機関に限らず、社会的弱者の救済を看板にしている病院は少なくありません。当市で、かつて「赤ひげ先生」などともてはやされ、自分も古い自転車をこぎながら病院に通勤し、質素な生活をしているように演出している医師がいました。しかし、事情通によると、その医師は隣の駅前の駐車場まで最新の高級外車で通い、そこで古着に着替えて、自転車に乗って通勤していたのです。自宅は隣接市の高級住宅街に豪邸を構えておられたとか。「赤ひげ先生」の化けの皮をはがすと、「正義の味方」を演じることで、病院の評判をあげるという涙ぐましい努力をされていただけなのです。

 もちろん、立派な医師もたくさんいらっしゃいます。先日、昔お世話になったことがある内科医とお話する機会がありました。ちょっと毒気のある話され方をする先生ですが、とても正直なお方です。曰く、「俺は生活保護とか障害者とかが、大嫌いだ。何でも国が悪い、社会が悪いと他人のセイにするからな。それでいて最低限の義務すら果たそうとしない」。激しく同感。
2009年06月21日

地方議会の審議レベル

全国最年少町長、自ら給与半減を提案したら、議会が否決
 現職首長で全国最年少の武広勇平・佐賀県上峰町長(30)が6月議会に提案していた町長給与50%カットの議案が、19日の本会議で否決された。カット分を在宅障害者が通院に利用できる「福祉タクシー」の財源に充てる前提で同時提案した一般会計補正予算案もあわせて否決された。武広町長は「自信をもって提案していただけに残念。修正して再度提案するかどうかは検討する」と述べた。
 武広町長は、前町長が公職選挙法違反(寄付行為)の有罪確定で失職したのに伴う3月の町長選で初当選。町議会(定数10)のうち前町長派ら7人が支援した対立候補を破った。給与の半減は町長選の公約だったが、この日の採決では賛成3人、反対6人で否決された。
 上峰町は実質公債費比率が23.3%(07年度決算)で佐賀県内の自治体では最悪。17日の一般質問では、町長選で対立候補を支援した議員の一人は「町財政にとってはありがたいが、町長給与を50%カットする議案が通れば、それなら町議も、と町民から要請される恐れがある」「他の自治体の住民が、わがまちの首長も、と言い出しかねない」と反対の理由を表明した。


 朝日新聞20日付記事からです。
 地方議会における審議レベルの低さを象徴するような報道です。限られた財源を捻出し、福祉施策の財源にしようとすることの是非について議論するならともかく、本筋とはかけ離れた主張が多数派となる。まさに痴呆議会ということです。ホンネは町長が自身の給与を削減して、福祉の充実に取り組むことを阻止したいだけということでしょうけど。

 とは言っても、よそ様の議会を批判できるほど当市の議会もたいしたことはありません。少し前の市議会常任委員会で、指定管理者制度についての質疑応答が記録になっているのを見つけました。抜粋してみます。

A議員:ちょっと教えていただきたいんですけど、指定管理者の説明の中に、行政処分ということを書いてあるんですね。ここは指定管理者であっても、公募、非公募という形がありますね。そしたら、例えば入札と随契と、その扱い、行政処分ということは、一体どういう基準のことになるんですかね。そこのところがちょっと私わからないので、教えてください。
B課長:公募と非公募の取り扱いの違いということでよろしいでしょうか。
A議員:いえいえ、指定管理者の中に行政処分て書いてあるんですよ。これは行政処分という言葉を入れてあるので、行政処分ていうことはどういう意味に理解したらいいのか、わからないので……
C議員:行政処分の方法?要するに契約の場合だったら、入札……
A議員:だから、行政処分と書いてあるんだけど、私は、契約といっても、随意契約もありますよね。正直、随意契約といえば、過去の中からずっと随意でやってきた。それで、この非公募は、逆に言えば、随意契約に該当するんじゃないかとと思うんですけど、そこらあたりの取り扱いの違いがわからないので、教えてくださいということを申し上げてるんです。
B課長:質問の意味が理解しかねますが、公募、非公募の関係は、平成17年7月の方針に基づきまして、公募、非公募の決定をしているものでございます。行政処分という形、非公募、ちょっとまた調べます。
C議員:A議員が聞かれてるのは、こういうことだと思うのです。行政処分をする場合に、例えば指定管理を決めるわけですけども、例えば公募で募集して、選考委員会で選考して決める、もしくは非公募、いわゆるどこかにぽんと任せるというやり方もありますよね。それで、行政処分をする場合に、入札の場合は、競争入札になりますよね、自治法で。行政処分の場合は、どういうふうにその行政処分をするのかという決定に対して、どういう根拠があって、どういうふうに例えばやるということが決まってるのかと。これはなぜ公募にしてきた、これはなぜ非公募にする、要するに公募する場合は、ある意味では競争入札みたいなものでしょう。総合評価ですね。非公募の場合は随契ですよね。そういうことをおっしゃってるんだけど、それを決める根拠が、市が勝手に決めたていいのか、何か別に根拠があるのか、それを明確にしてほしいという意味の質問だと思うのですけど。
B課長:公募と非公募の関係につきましては、法では決まっておりませんけれども、過去に条例で、公募と非公募をするということで、この施設は公募をすると、この施設は非公募でと、条例で決めております。
A議員:私は理解できてないので、後でいいですから、理解ができるように書類をお願いします、文書で。それだけです。


 A議員は、指定管理者となる団体の公募・非公募、指定行為と契約を混同している様子です。B課長が答弁しているように、公の施設設置管理条例によって公募、非公募を規定していますから、施設ごとに公募か非公募かは条例で決まってくる。自分達が審議し、議決した条例なのに、理解できていないということのようです。つまり、この議員は、制度の基本的な意味も分からず審議に臨んでいたということです。指定管理者制度が施行されたのが2003年9月。導入されて、もう6年近くになります。まったく勉強されていないようです。呑気なものです。

 自治体アウトソーシングについて、コンパクトにまとめられた文献として、次のものを紹介しておきます。2,000円ほどですので、政務調査費で購入できるでしょう。課長に資料請求ばかりせず、こういう本も読まれればどうですかね。マンガやファッション雑誌ばかり読んでいてはいけません。

Q&A 自治体アウトソーシングの新段階 Q&A 自治体アウトソーシングの新段階
(2007/02)
自治体アウトソーシング研究会

商品詳細を見る
2009年06月20日

大学倒産時代の到来

LEC大、学部生募集を停止=株式会社立、入学者が減少
 株式会社が設立したLEC東京リーガルマインド大学(東京都千代田区)は18日、2010年度以降の学部生の募集を停止すると発表した。入学者が減少し、学部の累積赤字は3月末で約30億円に達していた。大学院は募集を継続する。
 LEC大は04年に構造改革特区制度で開校した初の株式会社大学の1つ。資格試験対策の予備校を展開する東京リーガルマインド(東京本部・中野区)が運営している。
 全国に14キャンパスがあったが、志願者の減少で今年度は千代田キャンパスでのみ学部生を募集。入学者は定員160人、募集目標60人に対して18人だった。08年度は26人。学生がいる間は授業を続けるとしている。
 LEC大に対しては、文部科学省が07年1月、専任教員の大半に実態がなく、ビデオを流すだけの授業を行っていたなどとして、学校教育法に基づく改善勧告を行った。
 4年制大学では、既に愛知新城大谷、神戸ファッション造形大など4校が10年度からの募集停止を決めている。6校ある株式会社大学では、大学院のみのLCA大学院大(大阪市)が今年度から募集を停止した。
 反町勝夫学長の話 在校生の修学環境の維持向上に経営資源を集中させることが適切だと判断した。このような事態に至り、深くおわび申し上げる。


 時事通信18日付記事からです。
 少子化によって大学全入時代といわれいますが、実際の大学進学率は55%程度でしょう。大学倒産は不思議なことでもなんでもなく、必然のもの。LECといえば司法試験などの予備校、つまり受験ビジネスの企業として知られていたため、学問を究めることを主目的とする大学の経営に株式会社として参入したこと自体、かなり抵抗感を持っていました。

 08年度入試で入学者が定員を下回った私大は過去最多の266大学(47.1%)で、定員の半数に満たない私大も過去最多の29大学(5.1%)だった。有力な大手私大に人気が集まる一方、それ以外の私大は苦戦。河合塾の調査によると、09年度の私大一般入試志願者の49.5%が「早慶」や「関関同立」などの有力21私大に集中していた。
 文科省によると、戦後の混乱期や他大学と統合したケースなどを除けば、4年制で廃止されたのは04年1月の立志舘大学(広島県坂町)のみ。募集停止の例は東和大(福岡市、07年度から)、三重中京大(三重県松阪市、10年度から)があるという。


 朝日新聞7日付記事からです。
 08年度の時点で、私立大の5割近くが定員割れというのは深刻です。そして、今後、当然ながらさらにそれは拡大していくわけです。つまり、大学の倒産、あるいは、統廃合は加速していくでしょう。活路としては、社会人学生の受入れなどが考えられますが、大学院で学べる社会人というのは、とても恵まれている人たちであり、相当優秀でもあるわけですから、ランクの低い大学は苦戦を強いられるとしか言いようがありません。
2009年06月18日

少額債権の強制徴収

 少額債権、具体的には約10万円の強制徴収をどうするかについて、担当者である私と、実質的に職務放棄をしている「名ばかり管理職」である上司との間で深い溝が生じています。

 債権発生原因は不当利得です。つまり、こちらとしては不当利得返還請求を行ったところ、相手方は「支払います」という返事をしたのはいいのですが、どうせ役所は何もしないだろうと思っているのかして、納付書を送付しても一向に支払おうとはしません。地方自治法240条、地方自治法施行令171条、171条の2に基づいた手続に移行すべきだと提案したところ、上司からは「仕事を増やすようなことをしないでくれ」と。

 督促をして相当の期間を経過しても履行されない場合には、訴訟手続により履行請求をしなければなりませんが、そんな法令は「ないことにしておけ」ということです。ヤル気のない上司の部下というのは、逆の意味で大変です。それに対して注意一つしようとしない、上層部も上層部です。組織が縮小し、弱体化していく中での士気の低下というものが、これほどひどいものになるとは、数年前には想像すらできませんでした。

 もちろん、法規定を根拠に、強制徴収について起案文書を作成しようと思っています。上司のサボタージュにお付き合いするほど私もお人好しではありません。
2009年06月17日

ようやく終了 平成の市町村合併

「平成の大合併」打ち切りを、地方制度調査会が答申へ
 政府の第29次地方制度調査会(首相の諮問機関、会長・中村邦夫パナソニック会長)は16日午前の総会に、基礎自治体(市町村)と監査・議会制度のあり方に関し、「平成の大合併」を2010年4月以降は打ち切ることなどを盛り込んだ答申をまとめた。
 同日夕に麻生首相に答申する。
 政府は答申を踏まえ、合併誘導策をやめるための合併特例法改正案などを来年の通常国会に提出する方針だ。平成の大合併は、1999年から政府が取り組んでいる市町村合併推進運動だ。99年3月末に3232だった市町村数は、10年3月には1760まで減少する見込みとなっている。
 答申では、大合併を「地方分権の受け皿としての行政体制が整備されつつある」と評価した。一方で、「周辺部が取り残される」などの問題点を挙げて、このまま進めることには「限界がある」とし、現行の合併特例法の期限である来年3月末で一区切りとするのが適当と明記した。
 ただ、自主的に合併を模索する市町村には、一体的な振興を行えるよう国や都道府県が10年4月以降も支援をすべきだとしている。


 読売新聞16日付記事からです。
 市町村合併については、私が勤務する自治体では全く話題にならなかったこと、近隣自治体でも合併がなされた例がなかったことなどの影響で、実のところそれほど関心が強いわけではありませんでした。それでも市町村数はほぼ半減したというのですから、「国のかたち」としては大変動ですね。

 合併によって市民の意見が行政に届きにくくなったという話は多いようです。自治体内分権の推進によって、市民意見が反映されやすい行政体制にしないと、何のための合併だったのかと不満ばかりとなりかねません。近隣自治の仕組み、コミュニティ自治というものを早く整備、確立しなければならないと思います。

 コミュニティに関する最新文献として、次のものがあります。今日、購入したところです。編著者の名和田是彦氏は法政大学教授。この分野では第一人者といっていいでしょうね。
 
コミュニティの自治―自治体内分権と協働の国際比較 コミュニティの自治―自治体内分権と協働の国際比較
(2009/06)
名和田 是彦

商品詳細を見る


 市町村合併の次は道州制ですが、こちらはなかなか進まないのでしょう。知事さんたちは、市町村合併は「他人事」として「推進」できても、自分たちが身を削ることになる道州制には及び腰なのは、分かりやすいといえば、分かりやすいですが。それでも、もうそろそろ腹をくくってもらわないと。と言っても、道州制になった場合、それが本当に憲法が予定している地方公共団体と言えるのか、あるいは、住民自治が実現できるのかは、ずっと疑問を持ち続けています。
2009年06月16日

ROOKIES−卒業−、真夏のオリオン

 先週は「ROOKIES-卒業-」、昨日は「真夏のオリオン」と2週続けて映画鑑賞をしました。2週連続の映画鑑賞は、私としてはとても珍しいことです。

 ROOKIESは、テレビドラマで好評だったため映画化されたものです。それゆえ、映画版だけでは理解できません。つまり、最近よくある、テレビドラマと映画の連結企画ですね。内容的にはある程度想像できるものでした。甲子園出場をかけての予選決勝戦の熱闘が中心でしたが、甲子園出場して、どういう戦いぶりだったのかは映画ではわかりませんでした。甲子園球場は改装工事中だったこともあり、撮影が不可能だったという事情もあるのでしょう。ただし、野球ファンとして言わせてもらうと、あの程度のレベルで甲子園出場はあり得ないでしょう。

 真夏のオリオンは、第2次世界大戦末期、米駆逐艦を相手にシーマン・シップの精神を忘れず戦った日本の潜水艦乗組員らを描いた作品で、玉木宏さん演じる潜水艦イ-77の艦長・倉本のリーダーシップは素晴らしかったです。ああいった人と仕事ができれば、本当に幸せだろうと思いました。経済危機状態の日本において、ピンチを切り抜けていくにはどうすべきか示唆されているようです。
2009年06月15日

第15回自治体法務合同研究会開催要領

 先日、大会実行委員会から、メーリングリストによって、正式に発表されました。

第15回 自治体法務合同研究会開催要領

1 開催テーマ
  「地方分権改革と自治体法務 −いままでの10年、これからの10年−」

2 趣 旨
 第15回自治体法務合同研究会おおさか大会は、地方分権一括法が制定された1999年7月から10年の節目となる年に開催される。そこで、本大会では、この10年間における自治体法務・政策法務の取組みを評価し、その課題をとらえ、今後の自治体法務、とりわけ政策法務の実践的な課題と展望を探る。

3 日 時 平成21年7月18日(土)13時 〜 7月19日(日)20時

4 場 所 尼崎市中小企業センター(阪神尼崎駅前)
       会場へのアクセス  http://www.ama-in.or.jp/guide/access.html#01

5 日 程
  7月18日(土)
  12:00〜13:00 受付
  13:00〜13:15 開会

  13:15〜14:15 全体会T・基調講演(公開)
「地方分権改革と自治体法務 −いままでの10年、これからの10年−」
京都大学教授  高木 光 氏

  14:15〜14:30 休憩

  14:30〜16:30 全体会T・シンポジウム(公開)
「地方分権改革で自治体はどう変わったか?〜政策法務が果たした役割」
 コーディネーター 上智大学教授            北村 喜宣 氏
パネリスト      元寝屋川市企画財政部長     荒川 俊雄 氏
            自治基本条例みたか市民の会  中嶌いづみ 氏
            京都大学教授            高木  光 氏
【趣旨】地方分権一括法が制定されてこの10年で、自治体はどう変わったか、そして、今後どう変わらなければならないか、市民の立場、自治体職員の立場、研究者の立場等々、それぞれの立場から、思うところを述べていただき、政策法務のあり方を考えていく。



 自治体法務合同研究会というのは、原則として登録メンバーだけのクローズな研究会ですが、上記の全体会Tは、例外的にオープンな企画で、誰でも、無料で参加できます。

 ちなみに、自治体法務合同研究会メンバーが参加する場合には、参加申込書を大会事務局に提出するとともに、参加費を支払わなければなりません。全体会T以外の企画には、飛び入り参加は認められていません。こういうことを強調するということは、ギリギリになってワガママなのが出てくるということなのでしょうか。

 参加申込期限   平成21年6月26日(金)
 参加費支払期限  平成21年7月3日(金)

 大会実行委員会からのMLでは、毎年、申込期限をまもれない人が出てくるようです。お気をつけください。
2009年06月12日

東京都議会議員の当選確率

衆院選控え与野党対決=200人超が出馬へ−都議選まで1カ月
 7月12日投開票の東京都議選が1カ月後に迫った。11日時点で42選挙区の127議席に、200人余が立候補を予定している。与野党の支援候補がぶつかる千葉市長選(14日投開票)や静岡県知事選(7月5日投開票)に続く「首都決戦」は、次期衆院選に向けた前哨戦のピークとなる可能性が高いだけに、与野党とも支援態勢を強化、対決は激しさを増している。
 都議会の現有議席は自民48、民主34、公明22、共産13、地域政党の生活者ネットワーク4など。
 都議会与党の自民は、公明と合わせて過半数となる64議席以上を死守する構えだ。今月7日から麻生太郎首相が自民公認候補の事務所を訪れ、候補者やスタッフを激励している。58人の全候補者を回る予定で、自民都連によると過去にこうした例はないという。都連関係者は「すごい反応がある」と手応えを感じているが、都議の一人は「雰囲気は良かったが選挙は別」と冷静だ。民主党の鳩山由紀夫代表が就任後、同党の支持率が回復傾向にあるだけに、守りを固める戦いになっている。
 これに対し、民主は現在59人の公認・推薦候補を上積みし、全議席の過半数以上にまで候補者を増やす考えだ。鳩山代表は「自民党に勝ち比較第1党になる」ことを勝敗ラインに設定する。ただ、同一の選挙区で候補が共倒れになる懸念から、上積みには懐疑的な見方が残る。
 公明は全候補23人の当選が目標。共産は38人の擁立を決め、新たな候補擁立を検討している。生活者ネットは5人を公認。社民は失っている都議会での議席回復を目指す。 


 時事通信11日付け記事からです。
 衆院解散、総選挙の日程と関連しているのが、この都議選ですね。都議会といったものに、日頃ほとんど興味のない私でも、今回の都議選だけは無関心ではいられません。

 それにしても127議席に200人以上が立候補するというのは、やっぱり都議というのはオイシイ仕事なんでしょう。ちょっと調べたところ、議員報酬は月額1,037,000円、政務調査費は月額60万円。期末手当も含めれば年収は2500万円くらいになるでしょう。中小規模の自治体議会なら、議員報酬といっても激安のところもありますから、これは魅力的な「就職先」です。だからこそ、多くの候補者によって、激戦となるのでしょう。

 しかし、少し冷静に考えれば、違う見方もできます。今度の都議選に200人の立候補が出たとしても、当選確率は63.5%。倍率で1.57倍といったところです。超一流企業や公務員の採用試験に合格するよりも、遥かに高い確率で東京都議会議員になることができるのです。しかも4年間で1億円の収入が保障されるというビッグなオマケがついています。4年間の任期中、本会議中に居眠りしようが、常任委員会などで一度も発言しなくても、議員の身分を失うことは、まずないでしょう。一流企業の正社員になったとしても、年収1000万円に到達するまでには、何年もかかるでしょうし、それより前にリストラされる可能性もあります。特に、長年低賃金労働にあえいで、鬱積した不満を爆発させたい人たちにとっても、絶好のチャンスです。人生大逆転をかけて都議選に出馬されればいかがでしょうか。
2009年06月11日

木佐茂男ほか『テキストブック現代司法』(日本評論社)

 司法制度、司法の実態といったことについて、かなり踏み込んだことが記述されている貴重な文献です。記憶があやふやですが、たぶん、1992年に出版された初版は購入していたと思いますが、その後、ご無沙汰していました。先月に第5版が出版されたため、久しぶりに購入し、昨夜から読み始めています。

テキストブック 現代司法 テキストブック 現代司法
(2009/05)
木佐 茂男佐藤 鉄男

商品詳細を見る


 92年に初版、09年に第5版ですから、法律書としては異例のロングセラーだと思います。たぶん、法科大学院を中心に、テキストとして使用されているのではないでしょうか。政策法務研究の領域の一つとして、司法制度・司法の実態といったことにも強い関心を持ち続けている者としては、ありがたい1冊です。もっとも、一昔前と違い、政策法務研究をするようになってから、法曹界の人たちとも交流できるようになっているため、細かい制度論や裁判実務はともかく、司法の実態については、平均的な自治体職員よりはかなり知っているつもりです。

 ところで、先週あった政策法務研究会の席上、ある主要メンバーから、「書籍代が凄いなあ」と言われました。社会人大学院で行政法などを学んでいる方もいるのですが、書籍代は相当な負担になっているようです。私の場合、法制担当課などと違い、職場に専門書らしいものは皆無のため、自費購入になってしまいます。趣味らしい趣味もなく、付き合い酒も必要最小限しかしないため、書籍代に費やすことが可能なわけです。単行本、月刊誌、加除書籍などで年間20万円以上は使っていると思います。おかげさまで、我が家の狭い自室は満員御礼状態です。給料も下がってきましたし、書籍代もそろそろ真剣に見直すべきだと思っています。
2009年06月10日

諸外国の付加価値税

 少子化・高齢化社会における社会保障・社会福祉については、税制論を抜きにして語ることは許されません。しばしば論点になるのが、増大する社会保障費のために、消費税をどの程度にすべきかということです。そして、その際、いわゆる知識人たちは、消費税との比較として、諸外国の付加価値税に必ずと言っていいほど言及します。しかし、これら知識人たちが外国の付加価値税について、メディアで発することは、極めて中途半端で、正確な情報を国民に提供してくれるものではないと認識しています。

 そこで、できる限り正確な情報を得たいと思い、またもや国立国会図書館のホームページをめくっていると、『諸外国の付加価値税』と題した調査資料(レポート)を見つけました。「はじめに」では、付加価値税(Value Added Tax)という名の税目は、1954年にフランスで導入されたもので、いまや政府の税収を支える基幹的な税目として、130 を超える国で導入され、OECDに加盟する30 か国のなかで付加価値税を導入していないのはアメリカのみだと記述されています。

 EU主要20カ国の付加価値税について、標準税率は15%(ルクセンブルク)から25%(デンマーク、スウェーデン)まであり、うち14カ国は食料品に対して軽減税率を設けています。アイルランドとイギリスが食料品非課税のほか、食料品の税率が5%以下なのは、ルクセンブルクが3%であるだけで、ポルトガル(標準税率21%)とチェコ(同19%)は5%となっています。それ以外の国を見ますと、福祉学者がしばしば福祉大国として引き合いに出すスウェーデンの食料品税率は12%という高税率です。EUではありませんが、標準税率が同じく25%のノルウェーも食料品は14%という高さです。デンマークは食料品も標準税率となっています。

 社会保障財源を考える場合に、諸外国の税制と比較することは重要ですが、一般市民は外国の税制について詳しく知っているわけではなく、都合の良い情報をつまみ食いして出されると誤解をしてしまうのです。消費税をアップすべきという議論の際、あたかも外国では食料品の軽減税率が当たり前のようなことを言う者もいますが、すべての国がそうなっているわけではありませんし、食料品の付加価値税も軽減しているとはいえ、高税率である国が多いのです。こうしたことを隠そうとするのは、卑劣なやり口であり、断じて許すことはできないのです。

 税制について、外国と比較する場合に注意しなければならないこととして、物流や市場の問題もあります。社会主義国家は商品の選択幅が狭いですし、果物などは贅沢品として日本では考えられないような高額な売値になっている国もあるようです。こうしたことも踏まえないと、うわべだけの税率だけでは正確な判断ができないということになります。

 社会保障・社会福祉の論議は、どうしてもバイアスがかかったものになりがちです。うっかり信じると、すっかり騙されてしまいます。
2009年06月08日

マンションの政策法務(4)

 マンション管理組合としての活動は、規約で定めた理事会が主要な役割を果たします。民間企業でいえば取締役会に相当する組織だと考えればいいと思います。理事会の人数は、マンションの規模によりますが、私が住むマンションでは5名の理事、1名の監事で構成され、かつ、大規模改修工事の専門委員2名が理事会に出席し、意見を述べることにしています。

 マンション管理組合も一つの組織ですから、予算管理、事務の執行管理などの業務を遂行しなければなりません。予算や契約は管理組合の集会、規約上は総会で議決によって決まります。総会は企業でいえば株主総会です。しかし、総会は定例のものは年に1回、臨時会があるのはよほど大きな問題があるときに限られます。その代表的なものが、概ね10年ごとに実施される大規模改修工事の実施に関して、契約相手、契約額を決定するための臨時総会です。

 ここまで書くと、マンション管理組合の活動は、理事会という組織による、会議、つまり話し合いで進めていかなければならないということがお分かりいただけると思います。マンション住民の方がどういう職業の人たちかにもよりますが、会議運営、予算案の審査、契約内容の審査などは、ビジネスの世界で活躍されているならば、基本的スキルとして誰でもできるものと思っていたのですが、意外とそうではないという経験をしました。理事会召集、会議の進行、議決、議事録の作成とチエック、予算の内容と執行状況、決算審査など、多くの事柄が自治体職員としてごく普通にこなさなければならない仕事と重複します。

 マンション管理組合の重要事項として、財務状況の管理があります。改修工事に要する経費を支出できるだけの財務状況かどうかは、管理組合の生命線でもあるわけです。通例、区分所有権者たる住民から修繕積立金と称して、毎月、一定額が徴収されます。こうした徴収業務は管理会社に委託していることがほとんどでしょう。問題なのは、修繕積立金の額が適正かどうかです。多過ぎれば負担になりますが、少なすぎると改修工事費用が不足し、工事実施に際して多額の一時金を負担することになります。修繕積立金が適正かどうかの目安としては、極めて大雑把ですが、1uあたり100円から120円くらいでしょう。区分所有面積100uなら、月額10,000円から12,000円ということになります。マンション購入時ないし入居時に、修繕積立一時金として数十万円徴収することもあります。毎年の決算時に、修繕積立金会計において合計いくら積み立てられているか確認し、改修工事費用の大まかな見積もりと比較して過不足を確認しておかねばなりません。私が住むマンションでは、この修繕積立金については、何度も検討を重ね、適正化を実施してきたため、大規模改修工事の費用は十分にまかなうことができました。

 マンション管理組合にとって、最大の事業は大規模改修工事です。私が住むマンションでは、改修工事期間は約4ヶ月でしたが、理事会・大規模改修工事委員会としての準備活動に2ヵ年かけました。それくらい慎重に行うことで、マンション住民全体の理解を共有化し、おかしな利害対立の発生などの混乱を防止できたと思っています。計画的な財務・法務といったものは、自治体行政、あるいは、政策法務の実践と共通する点が少なくないと思っています。
2009年06月07日

THE BIG ISSUE

 今月に入ってからだと思いますが、勤務先の最寄の駅前でも、ビッグ・イシューの販売員を見かけるようになりました。ホームレスの仕事をつくり、自立を応援する主旨で、路上でホームレスの人が販売することで知られる1冊300円の雑誌です。

 昨日、仕事を終えて帰る途中、初めて購入しました。とても丁寧な接客態度で、好感度抜群でした。
http://www.bigissue.jp/

 ビッグイシューの発行は、有限会社ビッグイシュー日本。そう、有限会社なのです。つまり、「利潤を獲得すること」を目的とした私企業です。ボランティアだの、公益目的だのといった美辞麗句を表に出しつつ、実際は金儲けにまい進するNPO法人や財団法人ではないのです。利潤を獲得しつつ、社会貢献をするという、とても真正直な企業だということです。ケンリ、ケンリと叫んで口をあけていれば天から金が降りてくると煽っているNPO法人などは、この際、心を入れ替えて、会社に衣替えをすればいいんじゃないですかね。

 肝心の雑誌の内容ですが、有名女優へのインタビュー、イギリス市民による貧困克服の取組み、科学、料理などなど、30頁というボリュームの中にバラエティに富んだ情報が満載です。

 たった300円で、ホームレスの自立支援に貢献できるならば、継続的な読者になろうかと思っています。
2009年06月05日

ある車椅子利用者の真実

 今日、私の職場に車椅子でやって来られた市民がいました。窓口で所定の手続をされている間、「足の筋肉が衰えていく」「外出することを、どうしてもためらってしまう」と辛そうに話をされていました。

 ひと通りの手続を終え、車椅子に乗りながら帰られたのを確認した後、私が「やっぱり、車椅子生活って、不便ですよねえ」と同僚に話しかけたところ、驚くべき返答がきました。

 「あぁ、あの人ね。ここへ来るときはいつも車椅子に乗っているけど、市役所から外に出れば、自転車で元気に走っているよ。だから、足の衰えなんか、まったくない。元気そのもの」

 では、一体、何のために車椅子に乗ってやって来るのかということになります。同僚曰く、
「そんなことを言えば、市役所に車椅子に乗って来てはいけないという規則でもあるのかと言われるだけじゃないか」

 ナルホド・・・車椅子に乗っている人を見れば、何も言われなくても、体が不自由であると思い込んでしまうものです。公務員として、そういう市民には親切、丁寧に応対しなければならないという自覚くらい、私も持っているつもりです。その車椅子利用者の人は、そういう心理状態を巧みに利用しているということでしょう。常々、福祉というものに猜疑心を持っている私としては、不覚でした。

 狙いとしては、福祉給付などで、有利に取り計らってもらおうという戦術なのかなと思います。もっとも、私の職場に車椅子で来たからといって、何か優遇されるようなことはありません。残念
2009年06月04日

サッカーの試合中の落雷事故訴訟、賠償金で破産

落雷事故の賠償金支払えず、大阪・高槻市体育協会が解散
 大阪府高槻市で平成8年、サッカー大会の試合中に落雷の直撃を受けて重い障害を負った高知市の北村光寿さん=当時(16)=に対する賠償金が支払えないとして、大会を主催していた財団法人高槻市体育協会は2日、破産申し立てを行う方針を明らかにした。今月上旬にも手続きを開始する。竹本寿雄会長は「資金調達できず破産しかない」と説明、資産を整理して、約5000万円を賠償金に充てるという。
 体育協会によると、私立土佐高校に在学していた北村さんは平成8年8月13日、同協会主催のサッカー大会に参加。試合中に落雷を受け、両目失明や下半身不随などの重い障害を負った。北村さん側は、損害賠償を求めて同校と同協会を提訴。1、2審は敗訴したが、18年3月に最高裁が「教諭は落雷を予見できた」として審理を高松高裁に差し戻し、高松高裁は20年9月、同協会などに約3億円の支払いを命じた。
 竹本会長によると、同協会では同12月に保険金や基本財産などを使って約8000万円を賠償。残金には、土佐高が5月29日までに協会分約8000万円や事故から判決確定までの間の金利を含む約4億2000万円を支払った。同日、土佐高から約8000万円の支払いを求める方針を示されたという。
 同協会では市に補助を申し込んだが断られ、北村さんにも債務免除を拒否された。また、公益法人法により利益行為はできないことなどから、賠償金の調達が不可能と判断。22日に開かれた理事会で全会一致で破産手続きにはいることを決めた。竹本会長は「できうる限りの償いをするため、やむを得ない判断」としている。


 産経新聞2日付記事からです。この事故の差戻し審判決については、以前、記事にしています。
http://seisakuhomu.blog19.fc2.com/blog-entry-89.html

 裁判所が損害賠償を認めても、民事レベルなら、被告が行方をくらまして支払わないまま、原告が泣き寝入りするといったケースも珍しくありません。高槻市の事故は、被告が私立高校と財団法人であったため、破産してでも支払いがなされるということです。

 財政力が脆弱な自治体が、同様の事故の責任を問われた場合、損害賠償金を支払うことで財政破綻を招くということも、十分あり得ることだと思います。今回はたまたま私立高校だったり、財団法人だったりしたわけですが、公立学校での事故も当然、責任を問われることになります。教育関係者というのは、法的問題が発生しても、「教育的配慮」という意味不明な言葉を駆使することで、何とか責任を回避しようとします。しかし、法廷の場で「教育的配慮」という非論理的な言葉は通じないことは、多くの学校事故判例で学ぶことができると思います。

 ところで、新型インフルエンザの影響で、兵庫・大阪では多数の学校行事などが中止・延期され、生徒や教師が残念な思いをしたことが多数報道されていました。しかし、行事を強行して、インフルエンザが蔓延していたら、学校や教師は厳しい批判の嵐にさらされていたと思います。インフルエンザの感染は人災だと言われていたでしょう。そういう意味では、苦渋の決断だったでしょうが、評価されるべきです。

 また、感染が判明した生徒がいた学校には、誹謗中傷する匿名電話が多数あったそうです。自分の身の安全は確保しつつ、相手は特定して誹謗中傷するというのは、インターネット上でしばしばなされることですが、同様のことがなされていたわけです。
2009年06月02日

| HOME |