講学 政策法務

政策法務、地方自治、司法、事件、そして四方山話。硬い話、時たま、柔らかい話。
Author:Z-Berg

WBC WTC ETC

 WBC 苦しみながらも世界一 侍ジャパン

 WTC 橋下知事、初の挫折?

 ETC 高速道路関係者はホクホク 船舶・バス・鉄道は真っ青

 何となく似てる名称だけど、全然違います。
2009年03月28日

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最後の砦 夜間高校

大阪の公立高夜間課程で167人不合格 不況で志願者増
 大阪府教育委員会は27日、平成21年度公立高校入試の2次試験の合格者を発表した。2次試験が始まった15年度入試以降、受験者と合格者が同数だった夜間課程で167人が初めて不合格となり、府教委は同日、4月以降に補欠募集などを実施するよう各高校に求めた。
 ここ数年、夜間課程はほとんど定員割れだったが、今回は入学志願者が募集人員を大幅に上回ったためで、府教委は「深刻な不況の影響で夜間課程を志願する受験生が急増した」と分析。綛山(かせやま)哲男教育長は「補欠募集により、できる限り多くの子供の進路実現につなげたい。志願状況を詳細に検証し、次年度以降の生徒収容のあり方について検討する」とのコメントを発表した。
 2次試験は全日制5校のほか、夜間課程の定時制16校と多部制単位制III部3校を対象に25日に実施。定時制には650人、多部制III部には106人が受験し、それぞれ136人、31人が不合格になった。


 産経新聞27日付記事からです。
 私も地元の公立高校卒で、いわば「安上がりに済んだ」者の1人です。私学は何と言っても学費が高いですからね。やっぱり公立は安い。こんな時代ですから、門戸はできるだけ広げるべきです。できる限り入学を認めて、その後に努力を促すようにしてやればいいと思います。

 知人で夜間高校に勤めているのがいますが、中には有名私立大学に現役合格するような生徒もいるので、夜間高校も十分教育の役割を果たせると主張していました。お金がないから学校へ行けないというのは悲劇です。公立はそういう子どもたちの受け皿に積極的にならないと。
2009年03月27日

伊藤周平『後期高齢者医療制度』

後期高齢者医療制度―高齢者からはじまる社会保障の崩壊 (平凡社新書) 後期高齢者医療制度―高齢者からはじまる社会保障の崩壊 (平凡社新書)
(2008/10)
伊藤 周平

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 後期高齢者医療制度については、過去、何度か記事にしています。個人的には、自分は後期高齢者にはならないと思っていますが、社会保障法制にそれなりに関心を持っている者としては、この制度は最も気になるものです。

 本書は、後期高齢者医療制度を中心に、現在の社会保障制度の問題点、あるいはその崩壊ぶりを論じています。著者は鹿児島大学法科大学院教授として、全国でも珍しい、法科大学院で社会保障法の講座やゼミを担当されているとか。

 最近のマスコミ報道では、後期高齢者医療制度について、開始当初の不信感は沈静化し、制度が定着してきたというものを目にします。厚労省も結局は後期高齢者という名称を見直すなどにとどめ、抜本的な改革は見送ったようです。保険料の特別軽減策が実施されたことの影響も大きいでしょうね。

 本書は、後期高齢者医療制度への批判論を展開され、廃止を主張されています。しかし、肝心の廃止後の代案は、以前の老人保健制度に戻せというものです。少なくとも最近の論調はこの議論は「論外」というのが大勢ではないかと思っています。また、財源問題についても、税方式の導入や消費税増税ではなく法人税増税による財源確保など、共産党が主張しているようなもので、残念ながら説得力をまったく感じません。

 なぁんか、拍子抜けでした。
2009年03月23日

地方自治法167条の現在

 地方自治法167条は、副知事・副市町村長の職務についての規定です。平成18年自治法改正で、市町村については「助役」から「副市町村長」に改められ、副知事とともにその職務についての規定も改正されています。

 興味を持ったのは、同条2項と3項。首長の権限に属する事務の一部を委任し、副知事・副市町村長がその事務を執行することができるというものです。3項では、委任した場合にその旨の告示を義務づけています。

 現在、この規定に基づいて、副知事や副市町村長に首長の事務権限を委任し、執行している具体例がどれほどあるのでしょうか。詳しく調べたわけではないのですが、同条3項の告示をしている自治体はほとんど見当たらないように思うのです。「職務代理」が改正前の副知事・助役時代からなされていたのは、自治体関係者なら常識でしょう。代理行為の効果は、あくまで本人に帰属しますから、何か問題があれば、首長の責任が問われます。しかし、「委任」は首長から離れ、委任された副知事や副市町村長に権限が帰属するので、委任された事務執行において違法な行政処分によって訴訟となれば、副知事や副市町村長が行政庁となります。

 自治体No2の副知事や副市町村長というのは、部外者から見れば地味な存在ですが、権限委任されることで、その法的責任が問われることになり、にわかに表舞台に登場するような印象を持たれるかもしれません。全ての事務を首長が執行するというタテマエは、ある意味、フィクションであり、それを緩和する意味も含めて副知事・副市町村長制度になったものと理解しています。制度の実効性を発揮するためにも、事務権限の委任をもっと推進すべきように思っています。
2009年03月18日

資源ごみ持ち去り禁止条例

 自治体法務NAVI Vol27で関連する次の論稿が収録されています。

 田中孝男・都築岳司「資源ごみ回収における実効的な秩序維持確保のために~資源ごみ持ち去り禁止条例のベンチマーキング~
 藤原嗣雄「リサイクル古紙の持ち去り防止への取組み~世田谷区清掃・リサイクル条例~」
 吉富孝一「リサイクルシステムを守る資源ごみ持ち去り防止対策~春日井市廃棄物の減量及び適正処理に関する条例~」

 田中・都築論文は世田谷区条例などを参考に、条例制定をする場合の重要論点を整理されたものです。藤原論文と吉富論文は、当該自治体の担当者による条例の制定過程や現状などについてのもので、いずれも興味深く読ませていただきました。これらに関連して、次の論稿も併読したところです。
 
 山本耕平「CLOSE UP先進・ユニーク条例解説 古紙持ち去り禁止条例」自治体法務研究第3号、ぎょうせい、2005年、44頁以下

 また、この問題については、すでにkei-zuさんのブログで詳細に取り上げられています。したがって、今さらながらということになりますが、やはり興味を持ったため記事にします。
http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/searchdiary

 この問題への対策として、罰則による規制を最初に実施したのは、奈良県桜井市で、古紙の所有権を市にあると条例に明記し、窃盗罪の構成要件を充足させようとしたそうです。所有権規定は杉並区、守谷市などでも採用されているとのことです。悪質業者を厳罰によって規制するためには、窃盗罪(10年以下の懲役又は50万円以下の罰金)とするのが最も効果的です。しかし、山本論文では古紙を窃取したとしても価額は数百円となれば、他の窃盗・万引きなどへの刑罰との均衡の関係上、実刑判決がなされる可能性は極めて低い。

 世田谷区条例は、区以外の者が集積所から資源収集・運搬を禁止し、違反者には区が行政処分(禁止命令)を行い、この禁止命令に違反した場合に20万円以下の罰金に処することを定めています。窃盗罪とくらべて刑罰はかなり軽くなります。藤原論文によると、昨年8月の時点ではかなり古紙が高騰し、日に2トン回収する業者なら20万円は1週間程度の収入になるとか。1週間分の稼ぎを罰金に取られる可能性くらいなら、業者は違反を続けるでしょう。実際、有罪判決を受けた者の半数が、区内で違反行為を繰り返していると述べられています。

 吉冨論文は、春日井市条例においても罰則は20万円以下の罰金にしたが、罰則適用ではなく、むしろ、行政指導で改善することを目指しているとのことです。しかし、こうした行為をする業者たちが行政指導を受け入れるとは思えず、条例の実効性確保はなかなか実現できないのではないかと思うのですが、どうでしょうか。

 財産犯罪を考えるとき、個々の被害は微少でも、全体で大きな被害になるとき、現在の刑法はあまり威力がないと思われているかもしれません。しかし、最近は厳罰傾向でもあり、数千円の万引きでも3回目くらいには懲役3,4年という判決が出されます。資源持ち去り行為が一律に「軽い犯罪」と考えて、20万円程度の罰金刑だけにとどめるような条例が本当に正しいのかどうかは、再考する余地があると思います。

 資源ごみの所有権が自治体に帰属することを条例で規定するとして、解釈上、いつの時点で所有権が移転するのかは、持ち去り行為がいつの時点で窃盗罪が成立するかと関係してきます。下級審判例は、
①ごみ集積所に置かれた時
②自治体ないし指定業者が資源ごみを収集し、占有下に収めた時
の2つに分かれているようです。

 ①は、違反業者が収集運搬すれば、その時点で窃盗罪が成立します。しかし、そこに放火などされ、被害が発生した場合、自治体の損害賠償責任が問われることが懸念されます。②は、違反業者の収集はまだ窃盗罪の実行の着手に至っていないことになります。なお、②は、動産の所有権移転は引渡しによって対抗要件を具備するという民法178条を意識した考えなのでしょうか。取締りを重視するなら①でしょうけど、現場の担当者としては、やっぱり躊躇しますね。
2009年03月15日

自治体職員、自己研鑽すらも受難の時代

 以前、記事にしたことがある、地元の有名国立大学大学院で経済学修士課程の社会人コースで学んでいるT君。見事に修士論文も書き上げ、修了する見込みのようです。
http://seisakuhomu.blog19.fc2.com/blog-entry-59.html

 2年間、仕事と両立させながら辛抱強く大学院で経済学の研究をしていたということに、敬意を表したいと思っています。できそうでこれがなかなかできないんですよね。しかし、よくぞ職場に秘したまま2年間学び続けることができたと思います。役所というのは、職員のプライバシーを詮索するのが好きな人種が多数存在していますから、案外と難しいのです。

 もちろん、タテマエとしては、職員が自己研鑽で社会人大学院修士課程に通学する場合は、職務専念義務の免除を認める制度はあります。しかし、これを利用できる職員というのは、いわば人事当局から認められた職員に限られているというのが現実なんです。現場にいる職員がそんなことをしたいと言い出せば、上司たちから有形無形の嫌がらせを受けるのは明白。そういう組織体質を熟知しているからこそ、T君も有給休暇などを巧く使いながら通っていたようです。

 T君に2年間でどれくらいの研究費用を要したかと尋ねたところ、大学院へ支払う授業料などを含めて、「新車1台分くらい」とのことです。推定150万円から200万円くらいでしょうか。おかげで財布の中は空っぽ同然だとのことです。

 もちろん、経済学修士を得たとしても、組織内では何の「ご利益」もありません。そもそも修士になったことを言い出すことさえできないのです。自己研鑽すらビクビクしながらしなければならないというのは、やはり異常です。
2009年03月01日

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