講学 政策法務

政策法務、地方自治、司法、事件、そして四方山話。硬い話、時たま、柔らかい話。
Author:Z-Berg

子ども手当に反対

橋下知事が政府批判「自公よりひどい」
 大阪府の橋下徹知事は29日、フジテレビの報道番組「新報道2001」で、民主党のマニフェスト(政権公約)について「政策実現のため地方負担を強制的に求めており、許せない」と述べ、政府の姿勢を批判した。
 橋下氏は、「子ども手当」や新型インフルエンザの予防接種などの地方負担に関し「地方側と何の協議もなく、一方的に負担を押しつけている」と指摘。同時に「子ども手当は月額2万6千円にこだわりすぎだ。お金を自由に使わせるのが『地域主権』の要だが、これでは自民、公明両党の政権よりひどい」と強調した。


 産経新聞30日付記事からです。子ども手当の地方負担を政府が押し付けようとしていることに関して、10月20日に橋下知事は、民主党を「これでは独裁政治だ」と批判していたと記憶しています。もっとも、今の大阪府政は、橋下知事の独裁政治なんでしょうけど。

 子ども手当については、私は反対です。給付行政に従事した経験から、公金の給付は、自立には結びつかないと強く認識しています。やっぱり働いて得たお金以外は、「あぶく銭」にしかならないのです。子ども手当が実施されれば、生活保護などと同様、浅ましく、醜い言動が家庭内や自治体の給付窓口などで繰り広げられるのではないかと思います。いい加減な親は子どものために使わない。

 少し前ですが、朝日新聞の読者投書「声」で、現役中学校教師が生徒たちに民主党政権の政策についての意見を作文に書かせたところ、多くの生徒が子ども手当をとりあげ、過半数が反対していたとのことです。子どものほうがよく見ているのです。子ども手当を満額実施すれば、年間5兆円の予算が必要です。そんな巨費があるなら、保育所の整備や雇用対策に使うべきで、マニフェストといったたかが選挙対策冊子ごときに必要以上に拘泥するべきではない。政治家は嘘つきのプロでしょう。どうせなら、良いウソをついてほしい。

 元総務相の竹中平蔵氏がテレビ番組で言っていました。現在、日本の借金は860兆円。20年間で全て消費税で返済しようとするならば、1%=2.5兆円として1年に42兆円余り返済しないといけないので、17%上乗せし、22%にする必要があると。また、年間31万2000円の子ども手当について、3人の子供に15年間支給すれば、約1400万円になり、都市部はともかく、地方であれば子ども3人15年間育てれば家を1件政府が提供するのと同じようなものだとも言っていました。こちらの意見のほうが、説得力を感じます。
2009年11月30日

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ゼロの焦点

 松本清張『ゼロの焦点』(新潮文庫)は、入院していたときに、売店で購入し、暇つぶしを兼ねて読了していました。北九州市にある松本清張記念館には、すでに昨年の夏に訪問したことを記事にしています。

http://seisakuhomu.blog19.fc2.com/blog-entry-52.html

 清張作品については、「点と線」、「黒革の手帳」などがテレビドラマで放映されていました。前者は観ましたが、後者は連続ドラマだったこともあり、観ていません。というか、主演の米倉涼子という女優が好きではないというのも大きな理由です。

 映画の冒頭では、戦時中の動員学徒への壮行、銃による射殺の状況などが映し出されていました。主演は広末涼子。同じ「涼子」ということで、実は、私はこの女優もあまり好きではありません。演技がなんとなく、わざとらしい。それでも、『ゼロの焦点』を読了していたため、原作がどのように映像化されているのか興味があったため、久しぶりに映画館に足を運んだということです。基本的ストーリーは原作に即したもので、殺害シーンはかなり迫力がありました。

 それにしても、昨今の世相を反映しているのか、重たい、暗い内容の映画が多いです。次は「宇宙戦艦ヤマト復活編」でも観にいこうと思っています。

 あ、それと、私が好きな女優さんは・・・
2009年11月23日

自治体職員のための政策法務入門5 環境課の巻

 第一法規さんから出版されている好評のシリーズ第5巻です。副題が「あのごみ屋敷をどうにかしてと言われたら」となっています。

あのごみ屋敷をどうにかしてと言われたら (自治体職員のための政策法務入門 5 環境課の巻) あのごみ屋敷をどうにかしてと言われたら (自治体職員のための政策法務入門 5 環境課の巻)
(2009/11/10)
肥沼 位昌

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 このシリーズは、すべて架空の自治体を舞台に、物語形式で政策法務が学べるように工夫されています。第4巻の「まちづくり課の巻」とともに、「環境課の巻」も入門とはいうものの、かなりハイレベルな議論も盛り込まれていますので、専門書として位置づけておこうとする第一法規さんや監修の出石教授、そして著者の方々の意図が明確に伝わってきます。

 環境行政の分野は都市行政分野と同様、政策法務の議論が最も活発です。先日紹介した、北村喜宣先生の『自治体環境行政法第5版』と併読することで、専門知識が増すでしょうけど、読了が大変ですね。
2009年11月18日

再任用職員もイロイロ

 団塊世代の大量退職は、国も自治体も民間も、ほぼ同じような状況だと思います。私の勤務するA市も同じでして、私の係に再任用職員が2人も配置されています。定年退職後も長年にわたって培われた知識や経験を活用してもらい、公務の円滑な遂行に貢献してもらうというのが、基本的な趣旨だと思います。

 しかし、現実はそうではないのです。再任用職員は、やはり「慣れた職場」「慣れた仕事」をしてもらうのが本人にとっても、周囲の者にとっても有難いのです。しかし、私の職場にいる2人の再任用職員は、ちょっと違う。事務職員ばかりの職場に保育士の職員が配置されました。保育士でも事務経験があり、パソコンでワード、エクセルなどの基本操作ができればいいのですが、これが全くダメ。タイピングからしてなっていない。できる限りパソコンを使わない仕事を選んで分担してもらっているのですが、それでもまったくパソコンを触らない事務の仕事というのは、今の自治体ではちょっと考えられません。

 もう一人の再任用職員は、課長職で退職した人ですが、やはり長年実務をしていないので、仕事時間中に過去の「武勇伝」を話すのに夢中になって、しばしば業務が中断してしまいます。自治体の再任用職員制度は、どの程度、機能しているのでしょうか。たった2つの事例からは判断できませんが、いろいろ悩まされています。
2009年11月16日

京都市保育園連盟の補助金不正流用問題

京都市幹部の懲戒処分せず  市保育園連盟問題、返還要求は3分の1
 京都市保育園連盟が市の補助金の剰余金を不正流用した問題で、市は13日、時効となった流用分約6億6100万円のうち、元常務理事による使途不明金など約6800万円の追加返還を連盟に求め、一連の調査を終えた。しかし、明らかになった剰余金のうち、返還を求めたのは3分の1にとどまり、流用を主導した市幹部の懲戒処分も見送った。
 時効(5年)を超えた不正流用のうち市が返納対象としたのは、元常務理事が支出した使途不明金と国税への追徴課税支払い分。市保育課の主導で支出した育児中の保育士がいる保育園への人件費など5億6400万円は「手続きに問題はあるが、支出に公益性がある」と不問にした。
 剰余金は1998〜2008年度に約8億9千万円あったことが確認されている。連盟はすでに2億3千万円を返還したが、今回返納に応じても計約3億円で、不正流用の3分の1しか市に返還されないことになる。
 市は13日、連盟への指導監督が不十分だったとして、幹部10人を文書訓戒や口頭注意にしたが、「流用は故意ではなく、悪質ではない」と減給などの懲戒処分はしなかった。厳重文書訓戒を受けた今井豊嗣子育て支援政策監は会見で「以前からおかしいと思ったが、慣習でやめられなかった」と謝罪した。
 市保育園連盟の片岡滋夫理事長は「深くおわびしたい。連盟では元常務理事に損害賠償請求している。(市の請求には)速やかに誠実に対応する」と返納に応じる方針を示した。


 京都新聞15日付記事からです。
 古都・京都市も行政上はいろいろ問題をかかえているようです。補助金を受領し、目的に即して執行した後、剰余金が発生すれば返還する。普通のことです。私も今の職場では、国庫補助金の仕事をしており、毎年、返戻の事務が発生します。不正流用などすれば、国と自治体の信頼関係は壊れ、後々まで禍根を残します。自治体の補助金交付について条例化するなど、政策法務からのアプローチの重要性を認識させられる事例です。

 それにしても京都市の事例は金額が億単位なので、凄い。以前、福祉事業者の不正受給を話題にしたことがありますが、1000万円ほどのものでした。能無し役立たずの経営者が苦し紛れに不正に走ったのですが、なんともみみっちかったのと比べてしまいます。

 京都市の職員の中には、政策法務研究会で親しく交流させていただいる方もいます。この問題への対応は大変だっただろうとお察しします。
2009年11月15日

相続で忙しい?

 私の上司の話。地元では指折りの大地主が親の馬鹿息子。先日、親御さんが逝去され、いよいよ相続が遺族たちで話し合いになっている様子。そのためもあって、ただでさえヤル気のない仕事ぶりに拍車がかかっています。

 昨日もそうでした。国からの補助金に関する資料を作成していたのですが、次のような会話
私:国との協議会の出張旅費はいくらでしたっけ?決裁文書お持ちですか?
上司:忘れた
私:え?でも出張に行ったじゃないですか
上司:だから、忘れたって言っているだろ!そんなことイチイチ覚えてられるか!俺は忙しいんだ!

 もちろん、この上司が忙しそうに仕事をしている様子を見たことは、私が着任してから一度もありません。毎日、一番遅く出勤し、一番早く帰宅していますし。

 この上司、今の職場に配置されて既に8年にもなるのに、私が何を尋ねても「わらかない」「知らない」「覚えてない」の連発でした。というのも、部下職員たちに毎年、同じ事務分担しかさせず、任せきりにし、自分は手抜き三昧。そして、最近はいよいよ「やる気がない」というのも加わってきました。相続財産が手に入れば、自主退職でもしてくれればいいんですけど、本人曰く

 「定年まで残り3年だ。それまで辞める気はない」とのこと。ヤル気もないけど、辞める気もない。

 うーーーーん 残念
2009年11月14日

自治体法務検定テキスト 政策法務編(第一法規)

 紹介するのがかなり遅れましたが、第一法規さんから出版されています。この本は、2010年6月に実施予定の「自治体法務検定」のための公式テキストとなっており、かなり多くの自治体職員が注目されているようです。自治体法務検定とは、自治体職員に必要な法務能力を問うものだそうです。

自治体法務検定公式テキスト 自治検 政策法務編 自治体法務検定公式テキスト 自治検 政策法務編
(2009/07/13)
自治体法務検定委員会 編

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 テキスト本論は320頁ほどで、丁寧で分かりやすい説明がなされていて、初めて勉強する人に対する配慮もなされていると思います。この数年間に、私がいろいろな政策法務研究会で学んだことなどが凝縮されているテキストでもあると思います。読み進める中で、疑問点などがあれば、自分で余白に書き込みをすることなどで、「自分だけのテキスト」に仕上げることもできそうです。

 政策法務の勉強のための文献の読み方についは、時々、後輩職員などに言うことがあるのですが、興味のある部分から読み始めてもいいと思います。1頁目から詠み始めると、途中で嫌になることもあるでしょうし。
2009年11月13日

内閣官房機密費

官房機密費、毎月1億円 経験者は使い勝手のよさ証言
. 官房機密費(内閣官房報償費)の使途の公開をめぐり、鳩山内閣が揺れている。複数の内閣官房経験者を取材すると、「毎月1億円を領収書なしで自由に使える」「いくら使っても翌日には補充された」など、使い勝手の良さを証言した。チェック機能として平野博文官房長官が挙げた会計検査院についても検査には限界があるようだ。
 90年代に官房長官を務めた複数の政治家に取材したところ、長官就任当日、実際の現金の出し入れを担当する内閣総務官(首席内閣参事官)がこう説明したという。
 「2億円ほどは内閣情報調査室に振り分けられ、残りの毎月1億円あまりは自由に使えます。一切書類に残す必要は無く、領収書も出納記録も一切必要ありません」
 長官経験者の一人は振り返る。「官邸内の長官室に腰くらいの高さの金庫があり、いつも数千万円入っていた。何に、いくら使っても、翌日には同じくらいになるよう、事務方が補充してくれた」
 では、その使途は。「多かったのは国会対策と餞別(せんべつ)」と長官経験者全員が口をそろえる。ある元長官は「与野党問わず、直接国会の委員長クラスらを呼び、1人200万〜300万円を手渡した。難しい法案をうまくまとめてくれ、という趣旨だ」と言う。
 同僚議員の「勤続25周年」「閣僚就任」などの政治資金パーティー券の購入に使ったと証言する長官経験者も複数いた。官邸職員が、主催する議員の事務所に行き、「慣例ですから」と100万円単位で券を買っていったという。
 かつては選挙にも充てられたようだ。国政選挙で与野党が伯仲している選挙区や、重要な知事選などで、数千万円単位の機密費が「軍資金」として持ち出されたという。
 機密費の使途公表に踏み切らない平野官房長官は5日の記者会見で「可能な限り今でも会計検査院でチェックを受けている」と述べた。とは言っても、実は、機密費は特例で関係書類を検査院に提出する必要がない。
 では、実際にどう検査しているかというと、毎年2回程度、担当課の課長が原則1人で官邸に出向き、検査する。「国家機密」ゆえ、それなりのポジションの人物が帳簿類を見るという建前だ。長い時は1回5日程度検査するというが、他省庁では5人前後で数カ月間検査するケースも多いことを考えると、深い検査ができる状況ではないようだ。
 検査院幹部は「他の省庁と比べて決して検査が甘いわけではない」と強調する。一方で、ある検査院OBは「そもそも使途を証明する資料が残ってないのに、どうやって適正な使途でした、という心証を得られるのか」と疑問を呈した。

 
 朝日新聞12日付記事(一部省略)からです。
 予算上はあくまで報償費というのが正式なもの。官房機密費という呼び名は、使途を隠蔽するということからつけられたものでしょう。碓井光明『政府経費法精義』(信山社)51頁では、この内閣官房報償費について、毎年度端数まで同額が予算計上されているとしていますが、積算の根拠は不明です。会計検査院の検査も、本来のやり方である計算証明(会計検査院法24条)の特例としての「簡易証明」が認められているとのことですから、検査院も手出しできない領域ということです。

 民主党は野党時代、この機密費の公開を要求してきたのに、自分たちが政権奪取した途端、非公開としました。余程ヤバイことに使っているのでしょう。例えば、野党時代に民主党の議員も受け取っていて、それが政治資金規正法違反などになってしまうので、公表できないといったところでしょう。それは理解できますが、それならそれで、正直に言うべきです。「あのー、皆さん、ごめんなさい。報償費はヤバイことに使っているので、とても公表なんてできません。日本の政治家が、ほとんどお縄にかかってしまいますから」と。
2009年11月12日

増田美智子『F君を殺して何になる』(インシデンツ)

「光母子殺害実名本」元少年の出版差し止め申請却下…広島地裁
 山口県光市の母子殺害事件で死刑判決を受け、上告中の元少年(28)が、実名を記載されたルポルタージュ本の出版差し止めを求めた仮処分申請で、広島地裁は9日、申請を却下する決定を出した。元少年側の弁護士が同日、明らかにした。弁護士は、決定理由については説明できないとしている。
 本の著者は一橋大職員の増田美智子さん(28)。タイトルや文中に元少年の実名を記し、元少年との接見や文通の内容などを掲載している。出版元は「インシデンツ」(東京都)で、10月7日から販売され、初版の4000部を完売、さらに2万部が増刷されている。
 申立書などで元少年側は、増田さんとの間に、出版前に内容を確認した上で実名記載などを検討する「契約」があったのに、守られなかったと主張。また、少年法に違反しており、人格権も侵害されたとしていた。
 これに対し、出版側は、本人と面会した際に実名の承諾は得ており、事前に内容を見せる約束もしていないと反論していた。
 決定を受け、増田さんは「本の内容は元少年に有利なもの。出版差し止めは元少年の真意でないと思う」とのコメントを出した。
 元少年は、仮処分申請とは別に、著者と出版元を相手に、出版差し止めや1100万円の損害賠償を求める訴訟も起こしている。


 読売新聞10日付記事からです。
 この本、先週金曜日の昼休みに、駅前の書店で1冊だけ店頭に残っていたので購入し、読了しました。少年法では実名を公表することを禁じていますが、事件から既に10年経過し、この人の氏名はほとんど公知のものとなっているのですから、こんな状況になっていても少年法の禁止規定が及ぶのかという疑問もあります。出版差止め訴訟は、F(ここではイニシャル標記にしておきます)の意図ではなく、弁護団の意図によるものというのは、かたくなに取材を拒んだ弁護団について詳細に記述されていることからも想像できます。増刷分も含めて、ほとんど完売するでしょうね。

 著者の増田さんが被告人のFに取材し、そのやり取りがかなり詳細に記述されていますが、Fの口調は28歳の大人とは思えないような幼いもので、一般に広まっている「狡猾な知能犯」というイメージとは程遠いものに感じられました。本書の趣旨は、匿名で姿も知らされない犯罪者に、日本国中から「反省しろ」「謝罪しろ」とバッシングして、本当に良くなるのかというもののようです。本書は、確かに、Fの情状には有利だとは思います。

 しかし、本書からの問題提起に対しては、どんな性根の悪い人間でも犯罪をしなければ、犯罪者ではなく、刑罰を科されません。一方、どんなにいい人間でも、残虐な犯罪をしたからには、厳しい刑罰を受けなければなりません。こういう普通の国民の声にどう応えるのでしょうか。

 著者に対しては、Fの刑罰が死刑ではなく、例えば無期懲役なら日本の刑事司法は発展し、犯罪は減っていき、日本は良くなっていくのかという声も出ると思います。
2009年11月10日

カツラ判事にGパン検事???

 今年5月11日から裁判員制度がスタートしたことは、皆様ご存知だと思います。陪審制度あるいは参審制度は、諸外国で見られるものですが、その実情や背景について簡潔、明快にまとめられた書籍が次のものです。

世界の裁判員―14か国イラスト法廷ガイド 世界の裁判員―14か国イラスト法廷ガイド
(2009/06)
神谷 説子澤 康臣

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 日本の裁判員制度のほか、アメリカ、イギリス、オーストラリア、フランス、ドイツなど14か国の裁判員制度(陪審・参審)について紹介されています。外国の司法制度もいろいろあって興味深いものです。

 イギリスの法廷では裁判官も弁護士もカツラをつけているそうです。検察官については、長年イギリスにはこうした職業はなく、元々は警察が訴追権限を持っていたところ、1986年に王立検察庁が(CPS)が設立されたのですが、実際に訴追側に立って主張・立証するのはCPS が雇用している弁護士だそうです。イギリスの刑事裁判は、検察側弁護士と弁護側弁護士がいるというわけです。ちなみに、最高裁判所も存在していなかったそうですが、司法改革として今年10月に誕生しています。それまでは貴族院(上院)が最終審の役割を果たしてきたそうです。

 デンマークの裁判所は、裁判官も検察官も特別な法服はなく、普通の服装で裁判をするようです。検察官の中にはジーンズ姿で法廷に出る人もいるようで、まさに「Gパン検事」です。

2009年11月03日

たばこ自販機1台で税収15億円 大阪府泉佐野市

大阪・泉佐野市 1台のたばこ自販機で15億円の税収 市は業者に1.5億円奨励金 
 大阪府泉佐野市の市たばこ税が、書類上は新設された1台の自動販売機だけで、2年前と比べ約15億円増収となることが1日、分かった。たばこ小売業者が市外で大量販売した分を書類上はこの自販機で売ることにし、巨額の納税を受ける市が条例に基づいて小売業者に「奨励金」を支払う−という図式になっているという。
 地方税法では、市たばこ税は業者から発注を受けた日本たばこ産業(JT)などが、業者の事業所(店舗や自販機)が所在する自治体に納税する。
 泉佐野市によると、自販機を新設したたばこ小売業者は、パチンコ店に大量販売したたばこを、市内に1台しかないこの自販機から発注したように書類操作していたとされる。地方税法上、こうした操作に罰則規定はないという。
 これにより、市たばこ税の税収は平成19年度は約7億6千万円だったのが、1台の自販機が新設された20年度は約14億6千万円となり、今年度は約23億円にのぼる見込みとなった。
 一方で泉佐野市は20年4月施行の企業誘致条例で、市税を1税目で3千万円以上納める企業には、3千万円を超えた分の10%を奨励金として支払っている。このたばこ小売業者も21年度は約1億5千万円を受け取る計算になる。
 新田谷修司市長は「好ましい事例ではないかもしれないが、違法ではない」としている。


 産経新聞2日付記事からです。
 ウーーン、こういう方法があるとは、まったく知りませんでした。直接の根拠は、泉佐野市企業誘致条例第3条、第6条の「まちづくり奨励金」のようです。法的にはたばこの自販機1台でも「事業所」となるというのですから、税法を熟知していない者としては驚きです。

 こういう徴税方法を政策法務の観点からみれば、地方税法の隙間を巧みに解釈し、条例によって税収を増やすという成果を獲得していると評価できるかもしれません。しかし、そこらのヤクザ企業ならともかく、地方公共団体のやることとして、果たして公正なものなのかは疑問もあります。とは言っても困難を極める財政状態を少しでも緩和したいともがいている泉佐野市としては、なりふりかまっていられないといったところなのでしょうか。
2009年11月02日

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