−管理人のたわごとブログ− 地方公務員法
「すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当っては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。」(地方公務員法第30条)
「職員が全体の奉仕者であるということは、職員の服務の根本基準であるにとどまらず、公務員の基本的性格を意味する。いうまでもなく、このことは憲法第一五条第二項で「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」と規定されていることに基づくものであり、一般職の地方公務員だけでなく、特別職の地方公務員、さらには国家公務員をも含む全公務員についての基本原則である。」(「逐条地方公務員法」橋本勇著/学陽書房)
選挙で選ばれた首長がどれほど無知で無能な人間であろうと、最低で最悪の人間であろうと、忠実に仕えなければなりません。そして、その職務命令がどれほど無理で無意味なものであろうと、有効であると推定されるならば、忠実に従わなければなりません。それが全体の奉仕者である職員の使命です。
それをよーせんっちゅーんやったら、辞めらなしゃーないと思います。
今年度、本市に「○○監」という職が設置されました。
「監」という漢字を調べると、「@見はる。とりしまる。「監禁・監護・監査・監察・監視・監修・監督・軍艦・舎監・統監」Aろうや。「監獄・監房・収監」」(「大辞林」三省堂)とあります。ちなみに、職ではありませんが、警察官には「警視監」及び「警視総監」という階級が、消防吏員には「消防監」、「消防正監」、「消防司監」及び「消防総監」という階級があります。
国土交通省には、「命を受けて、国土交通省の所掌事務に係る技術を統理する」(国土交通省設置法第5条第2項)「技監」という特別の職があり、おそらくこれに倣ったものと思われますが、大規模な地方公共団体では、いわゆる技術吏員のトップとして「技監」という職を設置しているところがあります。東日本大震災以後に「危機管理監」という職が各地方公共団体で設置されたのを始め、最近では、「○○政策監」や「○○統括監」といった職を設置している市町村も増えてきました。
こうした市町村の例規を見てみると、一般的に「○○監」は、特定の事務について、組織を超えて統括管理する職として位置付けているようです。しかし、既に「理事」や「参事」といったスタッフ職があるにもかかわらず、安易に「○○監」という職を設置することは、職務権限及び職務命令が不明確になり、組織に悪影響を及ぼすおそれがあるように思います。
民間企業における従業員の退職の申入れは、当該従業員からの意思表示のみによって効果が生ずる労働契約の解約と使用者の同意によってはじめて効果が生ずる労働契約の解約の申入れとがあります。一般的には、前者の場合に提出する文書を「退職届」といい、後者の場合に提出する文書を「退職願」といって使い分けているようです。「退職届」が提出された場合は、提出と同時に退職の期日が確定し、退職の意思表示を撤回することはできません。また、「退職願」を提出した場合も、使用者が退職を承認した後は、その申入れを撤回することはできないと解されています。
一方、地方公務員の場合は、「職員の任用は行政行為であると考えられるので、その辞職、すなわち職を離れるについても任命権者の行政行為によらなければならない。したがって、職員は、退職願いを提出することによって当然かつ直ちに離職するのではなく、退職願いは本人の同意を確かめるための手続であり、その同意を要件とする退職発令(行政行為)が行われてはじめて離職することとなるものである(高松高裁昭三五・三・三一判決行政裁判例集一一巻三号七九六頁)」と解されており、退職願を撤回することができるかどうかについては、「辞令交付前は信義則に反しない限り自由であるという判決がある(最高裁昭三四・六・二六判決(民事裁判集一三巻六号八四六頁)、同昭三七・七・一三判決(判例時報三一〇号二五頁))。この場合、どのような撤回が信義則に反するかということが問題となるが、最高裁判所の判決では、「(無制限に撤回を許すと)信義に反する退職願いの撤回によって、退職願いの提出を前提として進められた爾後の手続が徒労に帰し、個人の恣意により行政秩序が犠牲に供される結果となるので、免職辞令の交付前においても、退職願いを撤回することが信義に反すると認められるような特段の事情がある場合には、その撤回は許されないものと解するのが相当である。」と述べているにとどまり、これ以上具体的な基準は明らかではない。当局側が本人の退職の申出を信頼し、その後の人員配置などを進めてきた事情と、本人の撤回の時期、動機などとを相対的に勘案して個々のケースごとに判断するほかない」(「逐条地方公務員法」橋本勇著/学陽書房)と考えられています。
どこの地方公共団体においても、定年前早期退職者に係る勧奨制度が実施されていることと思いますが、みなさんのところでは、この制度の募集時期が早過ぎるということはないでしょうか?仄聞するところ、地方公共団体によっては、退職の日の半年以上前に募集を締め切るところさえあるようです。このような制度を実施している地方公共団体では、事情の変更等により退職願を撤回しようとする職員が発生することが予想されます。退職願の撤回については、「個々のケースごとに判断するほかない」ことは理解しますが、一定の基準が欲しいところです。
今日は、衆議院議員総選挙及び最高裁判所裁判官国民審査の投票日です。公職選挙法の規定に基づく選挙や同法の規定を準用して行われる選挙の投票事務、開票事務等に従事した場合、選挙事務手当を時間外勤務手当として支給している市町村があります。では、当該市町村で管理職手当を支給されている職員が選挙事務に従事した場合、選挙事務手当を支給することは可能なのでしょうか。
「地方財務実務提要」(地方自治制度研究会編集/ぎょうせい)第2巻5162〜5163ページには、「当該地方公共団体の条例等で、法律により行う選挙事務に従事する場合、災害時の作業に従事する場合その他任命権者が特別に必要と認める場合等において、管理職手当を支給される職員に対し、例外としてであっても時間外勤務手当を支給できることとするのは、管理職手当制度の趣旨にもとりますし、当該条例の規定は、地方公務員法第二四条の規定に反するのではないかと解されます」とあります。
一方、「逐条地方公務員法」(橋本勇著/学陽書房)451〜452ページには、「管理職手当の支給を受ける職員に対しては、原則として時間外勤務手当、夜間勤務手当および休日勤務手当は支給されない(なお、国家公務員の場合は、本省庁の課長補佐に対し、その勤務の実態にかんがみ、管理職手当と時間外勤務手当が併給されるが、職員の場合は、一般に同様の管理職手当の支給を受けるものはいないと考えられる。)。管理職手当は、管理、監督の地位にある職員が正規の勤務時間外においても職務のために知力と体力を用いるのが常態であることを前提として支給されるものだからである。労働基準法第四一条第二号で管理、監督の地位にある者に同法の労働時間等に関する規制を適用しないこととしているのも同じ趣旨からであると考えられる。すでに管理職手当の支給を受けている職員がその支給の対象となっていない職を兼ねる場合(例、府県の市町村課長が選挙管理委員会の書記長を兼ねる場合)に、その支給対象でない職の職務に関して時間外勤務を行った場合であっても、時間外勤務手当を支給することはできないとされているが(行実昭三六・八・二一自治丁公発第七二号)、勤務の内容がいちじるしく異なるときは、併給を認める余地があると考える」とあります。
管理職手当支給職員に対する選挙事務手当については、特殊勤務手当、管理職員特別勤務手当又は報酬として支給している市町村もあるようですが、ここは、「逐条地方公務員法」を支持し、時間外勤務手当として支給することが適当であると考えます。
地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律(平成26年法律第76号)が平成26年6月20日に公布され、一部の規定を除き、平成27年4月1日から施行されます。この法律の施行により、教育委員長と教育長とを一本化した新教育長が常勤の特別職として設置されることになりますが、現行の「教育長は、一般職に属する地方公務員である」(昭和26年3月13日行政実例)と解されています。では、教育長に定年はあるのでしょうか?
地方公務員法は、一般職に属するすべての地方公務員に適用されます(第4条第1項)が、定年による退職を規定した第28条の2第1項から第3項までの規定は、「臨時的に任用される職員その他の法律により任期を定めて任用される職員及び非常勤職員には適用しない」(同条第4項)とされています。
地方教育行政の組織及び運営に関する法律によると、「教育長は、委員としての任期中在任するものとする」(第16条第3項)とされており、「委員の任期は、4年」(第5条第1項)とされています。したがって、教育長は、任期を定めて任用される職員ということになり、地方公務員法に規定する定年制度は適用されません。
いわゆる生理休暇は、「生理日の就業が著しく困難な女子労働者が請求した場合に与えるべきものであるが、その手続を複雑にすると、この制度の趣旨が抹殺されることになるから、原則として特別の証明がなくても女子労働者の請求があった場合には、これを与えることにし、特に証明を求める必要が認められる場合であっても、右の趣旨に鑑み、医師の診断書のような厳格な証明を求めることなく、一応事実を推断せしめるに足れば十分であるから、例えば同僚の証言程度の簡単な証明によらしめるよう指導されたい」(昭和23年5月5日基発第682号)とされています。そのため、ほとんどの地方公共団体では、本人の届出のみによっていると思われます。そのため、病気休暇として取り扱うこととされているにもかかわらず、特別休暇として取り扱っているところもあります。
この制度を悪用し、「生リフレ」や「生サマー」といった大型休暇を取得したり、シルバーウィークやゴールデンウィークを「プラチナウィーク」や「ダイアモンドウィーク」にグレードアップしたりする場合が、一部に見受けられます。
生理休暇は、公務員の世界では、どうしてもマイナス面が強調されるせいか、民間企業にはないと誤解している人がいます。民間企業にも生理休暇はあります。
労働基準法第68条は、「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない」と規定しています。就業規則の有無にかかわらず、法律上、生理休暇は認められています。ただし、休暇を有給とするか無給とするかは、使用者の定めるところによります。
昭和23年5月5日基発第682号の行政実例には、生理休暇の日数を制限することについて、次のような回答があります。
「生理日の長短及びその難易は各人によって異るものであり、女子労働者すべてに妥当する客観的な一般基準は定められない。なお、就業規則その他により生理休暇の日数を限定することは許されない。但し、有給の生理休暇の日数を定めておくことは、それ以上休暇を与えることが明らかにされていれば差支えない。」
地方公務員法第39条第1項は、「職員には、その勤務能率の発揮及び増進のために、研修を受ける機会が与えられなければならない」と規定し、同条第2項では、「前項の研修は、任命権者が行うものとする」と規定しています。しかし、同項の規定は、「任命権者が研修を行う責務を負うことを明らかにし、また、もっとも代表的な研修の実施主体を例示したもの」(「逐条地方公務員法」橋本勇著/学陽書房)であり、同条の規定による研修は、「任命権者が自ら主催して行う場合に限らず、他の機関に依託して行う場合、特定の教育機関へ入所を命じた場合等をも、含むものと解」(昭和30年10月6日行政実例)されています。
「本条の研修は、勤務能率の維持増進を目的とするものであるから、これに寄与しない教育や訓練はここでいう研修には該当しない。しかし、研修は必ずしも直接に勤務能率の維持増進に役立つものに限られることはなく、一般教養の研修のように、長期的に能率や見識の向上に役立つものも含まれる。
このような見地から、地方公共団体は職員に対して研修の機会を与えなければならないのであるが、研修にはきわめて多くの種類のものがあり、地方公共団体は研修を必要とする事情、研修の目的、財政事情などに応じて適切な種類の研修を選択しなければならない」(前掲書)と考えられます。
研修の内容及び方法については、国家公務員の研修が、「職員に現在就いている官職又は将来就くことが予想される官職の職務と責任の遂行に必要な知識、技能等を修得させ、その他その遂行に必要な職員の能力、資質等を向上させることを目的」(人事院規則10−3(職員の研修)第2条)に実施するものであるとされていますので、地方公務員の研修についても同様に考えることができます。
こうした研修に職員を参加させる場合は、職務専念義務の免除、職務命令、休職等の方法によることになりますが、一般的には、研修の種類に応じ、参加を職員の任意による場合には職務専念義務を免除し、参加を強制する場合には職務命令によっていると考えられます。
なお、職務命令による研修の場合は、その研修が職務の一環として、職務命令の要件を満たしていることが必要です。
国と地方公共団体とで「わたり」の解釈に相違があるということでしょうか。
そもそも「わたりとは、職務の内容と責任に実質的に変更がないにもかかわらず、上位の級に格付けすることであり、給料の格付けの発令のみで行われることもあれば、職制を濫設することによって行われることもあり、さらには級別職務分類表を不当に拡大解釈して行われる場合などがある。わたりが行われる原因は、給与制度を年功序列により生活給的な通し号俸として運用しようとすることにあり、これによって職務の級の区別が崩れ、職務給の原則が無視されることになりかねないのである。わたりについては昭和四三年の通達(昭四三・一二・二一自治給第一〇五号)で標準職務(注、現行の級別職務分類)に適合しない等級(注、現行の級、以下の通知でも同じ。)への格付けを行うべきでないとされたのをはじめ、再三の注意が促されているところであり、昭和四七年には、「標準的な職務区分によらない等級に格付けを行うことおよび実質的にわたりと同一の結果となる構造の給料表を用いることは、職務給の原則に反する……」と明確な判断が示されている(通知昭四七・九・二五自治給第三七号第五1)」(「逐条地方公務員法」橋本勇著/学陽書房)ものです。ところが、国の「わたり」の解釈には、理解できないものがあります。
例えば、3級に格付けしていた係員に形だけの書類選考を行い、主任として引き続いて3級を適用することとした市町村の事例を、わたりを廃止したとしています。しかし、これは、正に職務の内容と責任に実質的に変更がないにもかかわらず、職制を濫設し、上位の級に格付けするものであって、わたりに該当するものです。また、「地方公務員の給与改定に関する取扱い等について」(平成25年1月28日付け総行給第1号)により、各地方公共団体に対し、国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律(平成24年法律第2号)に基づく国家公務員の給与減額支給措置に準じて必要な措置を講ずるよう要請がありましたが、この地方公務員法第59条及び地方自治法第245条の4の規定による技術的助言に従わなかったことよって、一部の職務の級の給料月額の最高額が国家公務員の俸給月額の最高額を100円上回った市町村がありました。この100円が、わたりの該当基準A−⑷の「国家公務員の官職と職務・職責が同等な職の給料月額の最高水準が、国家公務員の俸給月額の最高水準を相当程度超えている場合」に当たるとされましたが、100円上回った場合を「相当程度超えている」というのには無理があると考えます。
高い俸給表が適用される職員を除外しておいてラスパイレス指数が高いというのもどうかと思いますが、地方公務員法第24条第3項(均衡の原則)を根拠に、何でもかんでも国公準拠というならば、いっそ、地方公務員給与法を制定してくれへんかなと思います。
地方公務員法第24条第1項は、「職員の給与は、その職務と責任に応じるものでなければならない」と規定しています。これは、職務給の原則といわれ、その趣旨は、「できるだけすみやかに達成されなければならない」(同条第2項)とされています。具体的には、職務の種類によって適用される給料表を定め、かつ、職務の複雑、困難及び責任の程度に応じ、それぞれの給料表に定める職務の級に格付けすることによって実現されていると解されています。
こうして格付けされた職務の級を、職務の内容と責任に実質的に変更がないにもかかわらず、上位の級に格付けすることをわたりといい、職務給の原則に違反するものとして、是正が求められています。
総務省が示しているわたりの該当基準は、次のとおりです。
@ 給与決定に際し、級別職務分類表及び級別標準職務表に適合しない級へ格付を行うこと。
A @の他、実質的にこれと同一の結果となる級別職務分類表、級別標準職務表又は給料表を定める
こと。
Aの具体の該当基準については、少なくとも、次の⑴から⑷のいずれかに該当する場合には、原則として「わたり」に該当
⑴ 級別職務分類表及び級別標準職務表が、職務を明確に分類したものとなっていない場合
例)主査(3〜5級)が一定の経験年数を経れば、4級から5級に昇格する場合
⑵ 一つの職が4つ以上の級にわたって格付けられている場合
⑶ 国家公務員の官職と職務・職責が同等な職の級の格付けが、国家公務員の本省の格付けを超え
ている場合
例)国の係員に相当する職を3級以上に格付け
国の主任に相当する職を4級以上に格付け
国の係長に相当する職を5級以上に格付け
国の課長補佐に相当する職を7級以上に格付け
⑷ 国家公務員の官職と職務・職責が同等な職の給料月額の最高水準が、国家公務員の俸給月額の
最高水準を相当程度超えている場合
総務省のHPに掲載されている資料によると、平成25年4月1日現在、わたり制度のある地方公共団体は、69団体(市52・町村17)となっていますが、※2には、「上記のほか、都道府県・指定都市においては、「わたり」に係る課題のある団体(団体側は「わたり」ではないとしているが、説明が不十分と考えられるもの。)が、平成21年度で5団体、平成24年度で1団体、平成25年度は0団体となっている」という記載があります。どういう意味でしょうか?
地方公務員法第52条第3項に規定する管理職員等と労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者と管理職手当が支給される職員とは、その範囲を異にします。「逐条地方公務員法」(橋本勇著/学陽書房)には、次のようにあります。
「監督もしくは管理の地位にある職員または機密の事務に従事する職員は、その勤務内容にかんがみ、その勤務を一定の時間に限定することが困難であるので、アの勤務時間の原則は適用されず(労基法四一A)、使用者は時間外勤務手当を支給する法律上の義務も負わない。この管理監督職員の範囲は、その職務内容が勤務時間を一定にすることに適しない者であるかどうかによって定まり、職責上、常時勤務の拘束から離脱し得ない部課長や秘書業務の者などが該当する。また、その範囲は、労使関係において一般の職員と同じ職員団体を結成することができないいわゆる管理職員等(法五二3但し書)とも必ずしも一致せず、一般的には後者の範囲の方が広く、また、前者に対してはおおむね管理職手当が支給されることになる。」
労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者は、同法第4章、第6章及び第6章の2に定める労働時間、休憩及び休日に関する規定の適用がありません。そのため、労働者を名目上の「管理職」とすることによって労働基準法上の「管理監督者」とみなし、残業代の支払いを免れたり、長時間労働を強いたりすることが社会問題になりました。いわゆる「名ばかり管理職」といわれる問題ですが、今も不適切な取扱いを続けている企業があるようです。
昭和22年9月13日付け発基第17号及び昭和63年3月14日付け基発第150号によると、「管理監督者」とは、経営者と一体的な立場にある者であって、次のような判断基準が示されています。
@ 労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容であるこ
と。
A 労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な責任と権限を有し
ていること。
B 現実の勤務態様も労働時間等の規制になじまないようなものであること。
C 賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること。
本市では、課長代理級以上の職員を管理職手当の支給対象とし、時間外勤務手当等を支給しないこととしていますが、部下のいない理事(課長級)や参事(課長級)は、「管理監督者」とは考えられません。また、タイムカードによる出退勤管理を行うことは、上記の判断基準からは乖離しているように思われます。さらに、その地位にふさわしい賃金等の待遇というと、指定職給料表を採用する必要があるのではないでしょうか。
本市の管理職の割合は、年々、増加していますが、「管理監督者」の範囲は、長の直近下位の内部組織の長とすることが適当であるように思います。
かなり少なくなってきましたが、年末には、業者から販促用のカレンダーや手帳が届けられます。自分も仕事用に使っている今年の手帳は、その中からいただいたものです。
Y君「それ、何かマズないすか?」
自分「国家公務員倫理規程で禁止されてる利害関係者から金銭、物品又は不動産の贈与を受けること
に当たれへんかて言いたいんか」
Y君「市も国の施策に準じて、必要な施策を講ずるよう努めなければならないてなってますよね」
自分「ウチは、まだ倫理規程定めてへんけどな。国家公務員倫理審査会が広く一般に配布するための
宣伝用物品や記念品やったら、利害関係人からもろてもかめへんて言うてるよってかめへんやろ」
Y君「カレンダーとか手帳とかもえーんすか」
自分「えーやろ。例に会社の名前入りのカレンダーてあるしな。ほれ、これ見てみ」
Y君「常識の範囲内っちゅーことっすか」
自分「その常識っちゅーのがややこしーんやけどな。ま、公務員倫理の問題は、国と地方とやったら根
本が違うように思うんやけどの」
F君「勤務時間中、××に○○せーて言われたんですけど、そんなんやって、いけるんすか」
自分「うーん……多分、アカンやろな」
F君「××に○○は、職務命令やて言われましたよ」
自分「わははは〜。ちょっと説明しとくと、職務命令には職務上の命令と身分上の命令があってな、有効
に成立するためには、@権限ある上司から発せられた職務命令であること、A職務上の命令は職務
に関するものであること、B実行可能な職務命令であることが必要やねん」
F君「××に○○て、職務上の命令ですよねえ。ほな、自分の職務に関するものと違うよって無効と違い
ますん」
自分「職務命令に重大かつ明白な瑕疵があったら、当然無効やねん。そんときは、従ったらアカンねん
けどな。最初、多分アカンやろうて言うたけど、××に○○みたいに疑義があるっちゅー程度やった
ら、有効て推定される可能性の方が大っきいやろうな」
F君「ほな、どないしたらえーんすか」
自分「上司に意見具申するか」
F君「意見具申したら変わるんすか」
自分「いや、それでも取り消されへんかったら忠実に従わなアカン」
F君「従えへんかったら」
自分「懲戒の対象や」
F君「ひえ〜」
「大阪府河内長野市の40代の男性職員が多額の生活保護費を不正に支出して着服した疑いがあるとして、大阪府警は20日、この職員から事情聴取し、市役所など関係先を家宅捜索した。市関係者によると、被害額は約2億6000万円に上る可能性があり、市は今月、このうち約400万円を不正支出した業務上横領の疑いでこの職員を告訴していた。」(10月21日付け毎日新聞夕刊)
こうした不祥事が発生した場合、地方公共団体では再発防止のため、附属機関を設置し、コンプライアンス条例を制定したり、職員の行動指針を定めたりします。にもかかわらず、不祥事が繰り返される場合があります。そのような地方公共団体では、不祥事の原因となった問題を放置し、教科書を丸写ししたようなマニュアルを作成して、職員に法令や倫理規範を押し付けるだけなのではないでしょうか。それでは、逆効果にしかなりません。
河内長野市では、不祥事の原因を徹底的に究明した上で、効果的な不祥事防止対策を講じられ、市民の信頼を回復していただきたいと思います。
定員管理とは、「組織体を構成するすべての人員の適正な配分を維持するために必要とされる条件を整備し、運用するための管理過程」であり、その目的は、「国民負担の増加抑制に留意しつつ、貴重な人材を活かすために、「最小の職員数で最大の効果を挙げるようにすること」にある」(「分権時代の地方公務員定員管理マニュアル」地方公務員定員問題研究会編/ぎょうせい)とされています。
地方自治法第172条第3項は、「職員の定数は、条例でこれを定める」と規定していますが、適正な職員数を定めることは、地方公共団体ごとに行政需要、財政状況、重点施策等が異なることから非常に困難であるとされています。それでも、適正な職員数を求める方法として、@類似団体別職員数(全国の市町村を人口と産業構造を基準として分類し、人口1万人当たりの職員数を算出するもの)、A定員モデル(地方公共団体の職員数に関係がある行政需要指標を基に、その市町村の基準となる職員数を算定するもの)、B定員回帰指標(全国の市町村を人口規模で区分し、同程度の人口、面積の団体がどの程度の職員数を有するか試算するもの)などが活用されています。
なかでも、定員モデルについては、「人口や面積という客観的な指標で簡素に説明すべき」という地方分権推進委員会からの意見や、「計算式が複雑で、住民への説明が困難」という地方公共団体からの意見もあり、平成17年度以降、地方公共団体定員管理研究会からの情報提供が休止され、平成22年度からその一部が再開されたところですが、もっと活用されるべきではないかと思います。
地方公務員法第58条の2第3項の規定により、地方公共団体の長は、人事行政の運営等の状況を公表しなければならないとされていますが、定員モデルの試算値を公表している市町村は、まだまだ少数派ではないでしょうか。その理由の一つが、試算値=適正な職員数と理解されることではないかと考えています。
なお、単純に人口1千人当たりの職員数を算定して比較することは、一つの資料にはなるでしょうが、当該市町村における定員管理においては、あまり意味のあることとは思えません。
前回の記事(2013年7月25日)の続編として、地方公務員と労働関係調整法の適用関係について補足しておきます。
まず、地方公務員には一般職と特別職とがあり(地方公務員法第3条第1項)ます。同法は、「一般職に属するすべての地方公務員(以下「職員」という。)に適用」され(第4条第1項)、「法律に特別の定がある場合を除く外、特別職に属する地方公務員には適用しない」(同条第2項)とされています。そして、第58条第1項の規定により、労働関係調整法及びこれに基づく命令は、職員には適用されないと規定されていますので、逆に、特別職に属する地方公務員には、労働関係調整法が適用されます。
また、第57条の規定により、公立学校の教職員、「単純な労務に雇用される者その他その職務と責任の特殊性に基いてこの法律に対する特例を必要とするものについては、別に法律で定める」とされています。このうち、「その職務と責任の特殊性に基いてこの法律に対する特例を必要とするもの」として、企業職員(地方公営企業等の労働関係に関する法律第3条第4号に規定する職員をいう。以下同じ。)については、労働関係調整法の特別法として、地方公営企業等の労働関係に関する法律が適用されます。また、同法附則第5項の規定により、単純な労務に雇用される者についても、同法が準用されます。
なお、地方公営企業等の労働関係に関する法律第14条の規定による調停については、企業職員の場合、地方公営企業法第40条第2項の規定により、地方自治法第96条第1項第12号の規定の適用が除外されていることから、条例で特別の定めをしていない限り、議会の議決の必要はありません。
梅雨入り発表がありましたが、晴天続きで暑くなってきました。皆さんのところでは、夏季休暇の計画表が課内で回覧されている頃ではないでしょうか。
一般的に夏季休暇といわれているこの休暇は、全ての地方公共団体で一律に付与されているものではありません。地方公共団体によっては、夏季休暇そのものがないところもあり、その日数も、確認できた範囲では、3日から8日まであります。また、一般的には、夏季休暇は特別休暇として規定されていますが、「職務に専念する義務の特例に関する条例(案)〔準則〕」(昭和26年1月10日地自乙発第3号)第2条第2号の「厚生に関する計画の実施に参加する場合」を根拠に付与しているところもあり、あるいは、それ以外のよく分からない場合もあるかもしれません。
なお、国家公務員については、平成2年度の人事院の報告に基づいて人事院規則が改正され、特別休暇として「職員が夏季における盆等の諸行事、心身の健康の維持及び増進又は家庭生活の充実のため勤務しないことが相当であると認められる場合」には、毎年7月から9月までの期間内において、原則として連続する3日の範囲内(人事院規則15−14(職員の勤務時間、休日及び休暇)第22条第1項第15号)で付与されています。
行政実例(昭26年3月14日付け地自公発第88号、昭26年4月26日付け地自公発第174号等)によると、民生委員は、地方公務員法第3条第3項第2号に規定する非常勤特別職の都道府県の職員であると解されています。
民生委員は、都道府県知事の推薦によって、厚生労働大臣が委嘱するものとされていること(民生委員法第5条)。民生委員には給与を支給しないものとし、その任期は3年とされていること(同法第10条)。その職務に関して、都道府県知事の指揮監督を受けること(同法第17条)。そして、民生委員に関する費用は、都道府県が負担すること(同法第26条)がその理由です。
しかし、「逐条地方公務員法」(橋本勇著/学陽書房)には、次のようにあります。
「都道府県知事の推薦によって厚生大臣(現厚生労働大臣、以下この説明について同じ)が委嘱し、無報酬である民生委員(民生委員法五1、一〇)が都道府県の地方公務員であるとする行政実例「民生委員及び統計調査員等の身分取扱について」(昭二六・八・二七地自公発第三六〇号、岩手県総務部長あて公務員課長回答)があるが、これは、厚生省(現厚生労働省、以下この説明について同じ)の民生委員は国家公務員ではないという解釈について人事院が異存ないと回答したことを受けて、地方自治庁(現総務省)が従来の解釈を変更したものである。厚生省が民生委員は国家公務員でないとする理由は、@厚生大臣の委嘱は公法上の任命行為ではなく私法上の無名契約の一種とみなすべきものであること、A民生委員の職は名誉職であり、無報酬で共同社会に挺身奉仕すべきものであり、民生委員に関する費用は少額の実費弁償であっていわゆる人件費ではなく、国または都道府県の負担において一定の報酬の支給を受けつつ、その事務を執行するという意味ではないこと、B民生委員の本来の趣旨は、民生委員が率先民間篤志家として共同社会の世話役を引き受け、自発的かつ自主的に個々の任意保護に当たるものであり、国の機関として国と特別権力関係にたって上司の命令指揮の下に執務するものではないことである(昭二三・一二・二九社発第二〇六五号、人事院事務局法制部長あて厚生省社会局長)。人事院は、これに対して、結論に異存がないとするのみで、その理由は明らかにしていない。厚生省のこの理由が正しいとするならば、民生委員は公務員ではないということであり、国家公務員ではないからといって地方公務員であるということにはならないと思われるが、実務上は、この行政実例に従って取り扱われている。」
また、次のようにもあります。
「附属機関は、執行機関が直接に住民に対して行政を執行するのに対し、その行政の執行の前提となる調停、審査、調査などを行うものであり、民生委員や児童委員は直接に行政の執行の一部を行うものであるから附属機関ではない。」地方公務員法第3条第3項第2号の「「委員」は、本号の構成が組織上の特殊性による分類であると考えられることからみて、執行機関または附属機関の委員のみを指すものというべきであるので、執行機関または附属機関の委員に該当しない者は、たとえ法令などにより設けられた委員または委員会の構成員であっても、本号には該当せず、第三号に該当するものといえよう(行実昭二六・三・一四地自公発第八八号および昭二六・四・二六地自公発第一七四号は民生委員を本条第三項第二号に該当するとしているが賛成できない。)。」
前(2009年5月22日付け記事)にも書きましたが、この本、オモロイです。
今年度、おおさか政策法務研究会の会員で、市職員から大学教授に転身された方が現れました。おめでとうございます。また、この3月31日をもって定年退職された方も現れました。お疲れ様でした。お祝いしないといけませんね。
ちなみに、自分は相変わらずです。今もまだ、平成24年度の仕事に追われています。
なお、人事異動は、組織の活性化、不祥事の防止、人材の活用とその育成などを主な目的として行われるものであって、報復や情実によることは、あり得ません。万が一、報復人事と思われるような人事異動があったとしても、確かな証拠がない場合、それは、人事行政上の必要に応じて行われた適正な転任処分であるとみなされます。
T君「弁護士、採用してる自治体あるやんけ。あれ、どう思う」
自分「どう思うて聞かれてものう……。ウチでもするんか?」
T君「いや、そういう訳ではないんやけどな。東京都は別格としても、町田市とか流山市とかでやってる
やんけ。どうなんかなて思うてな」
自分「大阪やったら松原市でやってるわな。やってるとこからは肯定的な意見の方が多いみたいやけ
ど、事例が増えてきたら問題点も見えてくるん違うか」
T君「そら、メリットもあったらデメリットもあるやろうのう。今、寝屋川で募集かけてるやろ。堺は、応募者
が辞退したらしーしな」
自分「役所の求めてるもんと応募者っちゅーか弁護士の求めてるもんにギャップがあるんと違うんか
な。それを特定任期付職員っちゅーことでバランスとってるように思うな。それよりもな……」
T君「何や?」
自分「一番えーのは、職員が弁護士になるこっちゃ」
T君「なれるかえ。もし、なったら辞めてまうわ」
自分「それが一番の問題やろう」
民間企業で実施されていた成果主義による人事評価制度は、失敗したのではなかったでしょうか。人事評価を給与に反映させる手法は、逆に社員のモチベーションを低下させてしまうことから、否定されているものとばかり思っていました。
こうした失敗を踏まえて、現在、先進的な地方公共団体では、公平で公正な評価はできないということを前提にした上で、職員の能力開発と組織を活性化するための人事評価制度を模索しているところではなかったでしょうか。
なぜ、大阪では、時代に逆行するような人事評価制度が流行っているのでしょうか。理解に苦しみます。
Y君「アホなこと聞きますけど、「○○部長」って、正確には何ていうんですか?」
自分「うん?何が聞きたいんや?」
Y君「庁内の文書見てたら、「○○部長」と「○○部部長」て両方使うてますやんか。どっちが正しいんか
な〜て思うて」
自分「結論言うたら、「○○部長」やな」
自分「仕事の集まりを職ていうんやけどな、例えば、それが総務部長とか総務課長やねんな。任命行為
ていうのは、職に任命すること。つまり、総務部長という職に任命することやねん」
Y君「いっこも分かりませんが……」
自分「簡単に言うたら、どんな辞令がきられてるかや。「総務部長を命ずる」やろ」
Y君「あ〜、そない言われたら分かります」
自分「もっこ言うとくと、附属機関なんかやと、審査会の委員に委嘱した上で会長を互選してるっちゅー
ケースが多いやろ。そんな場合は「○○審査会会長」となるんやな。」
Y君「あ〜、なるほど」
自分「ま、職名と違うて、「総務部」っちゅー組織の「部長」という意味で「総務部部長」っていうてんねん
やったら、間違いっちゅーことでもないんやけどな」
児童福祉法第6条の3第2項に規定する放課後児童健全育成事業を行う施設等への送迎に係る早出遅出勤務の導入について、ある地方公共団体が作成したQ&Aに次のようなものがありました。
Q 配偶者については、内縁関係であっても認められるのか?
A 配偶者とは、法律上の婚姻関係にある者をいう。よって、内縁関係にある者の子は、配偶者の子に
は当たらない。
人事給与関係においては、「配偶者」には「届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む」ものだと思っていました。例えば、一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律第20条第1項や一般職の職員の給与に関する法律第11条第2項第1号の「配偶者」は、「届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む」と規定されているからです。
確かに、人事院規則15−14(職員の勤務時間、休日及び休暇)第22条第1項第3号のドナー休暇や第11号の子の看護休暇については、「配偶者」に「届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む」とは規定されていませんので、全て含まれるということでもないのでしょう。
なお、同項第13号の忌引休暇及び第23条の介護休暇については、「配偶者(届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)」と規定されています。この違いは何なのか?実は、よく分かりません。
職員には、「法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない」(地方公務員法第35条)義務が課されています。この職務専念義務は、法令等及び上司の職務上の命令に従う義務(同法第32条)と合わせて、職務遂行上における最も基本的な義務であって、「この二つの義務が忠実に履行されることによって、地方公共団体の能率的で秩序ある事務の執行が確保され、住民の負託に応えることができるものである」(「逐条地方公務員法」橋本勇著/学陽書房)とされています。そして、職務専念義務を免除することが公務の正常な運営を妨げることなく、かつ、合理的な理由がある場合には、例外的にその免除が認められます。ただし、この場合には、法律又は条例に特別の定めのあることが必要となり、条例で定める場合として、「職務に専念する義務の特例に関する条例(案)」(昭和26年1月10日地自乙発第3号)第2条第2号には「厚生に関する計画の実施に参加する場合」が規定されています。
例えば、共済組合主催の球技大会に参加する場合は、当然に職務専念義務免除の対象となるとはいえませんが、当該球技大会が地公法第42条に規定する地方公共団体の職員の厚生に関する計画の一環とされているならば、職務専念義務を免除することができる(昭和42年9月4日行政実例)と解されています。しかし、一般的には、そのような球技大会を厚生計画の一環として位置付け、職務専念義務を免除することは困難であると考えられますので、年次有給休暇を取得して参加することになるのではないでしょうか。
自治大阪94年11月号の相談室に「国際マラソン大会出場職員に対する職務専念義務の免除について」という記事があります。回答としては、前述のとおりになっているのですが、当時、行政係内でも地域とスポーツのあり方や市としての関わり方が議論となり、場合によっては、職専免を認めてやってもよいのではないかという意見もありました。
そういう意味で、先日、洋々亭さんのフォーラムで話題になっていた「官公庁野球大会の取扱い」については、興味深く拝見させていただきました。
では、無報酬の「○○市特別顧問」というのは、当該市の地方公務員に該当するのでしょうか。
どのような意図をもって任命したのか、前述の3つの要件を基に任命権者が判断することなのでしょうが、例えば、「大阪市特別顧問及び特別参与の設置等に関する要綱」を見てみると、「特別顧問」は、「……で、職員の身分を有しない者をいう」と規定されています。おそらく、ここでいう「職員」とは、一般職に限らず、特別職も含めた概念であると考えるべきではないでしょうか。そうであるがゆえに、特別顧問及び特別参与を要綱設置し、謝礼を支給する(報償費を支払う)と規定していると考えられるのです。
しかし、大阪市における特別顧問及び特別参与の役割や謝礼金額等から考えると、ボランティアに対して謝礼を支給しているとは言い難いのではないでしょうか。この場合は、地方自治法第174条に規定する専門委員として規則設置し、報酬を支給することが、その実態にかなった措置ではないかと考えられます。
報償費として注意すべき点は、「予算上は報償費として計上されていても実質上職員手当等の給与その他の給付であれば、違法支出となる」(「地方財務実務提要」地方自治制度研究会編集/ぎょうせい)と解されることです。「名目上記念品料として支給されたものであっても、当該支出が実質的に退職手当に類するものであると認められる限り違法たるを免れない」(昭和32年1月30日行政実例)とあるのが参考になるのではないでしょうか。
一方、地方自治法第203条の2第1項には、「普通地方公共団体は、その委員会の委員、非常勤の監査委員その他の委員、自治紛争処理委員、審査会、審議会及び調査会等の委員その他の構成員、専門委員、投票管理者、開票管理者、選挙長、投票立会人、開票立会人及び選挙立会人その他普通地方公共団体の非常勤の職員(短時間勤務職員を除く。)に対し、報酬を支給しなければならない」と規定されています。
民生委員法第10条で給与を支給しないと規定されている民生委員のような例外を除き、地方公共団体に勤務する全ての地方公務員には、議員報酬、報酬又は給与が支給されます。これらの報酬等は「普通地方公共団体が支給しなければならない義務を負うものであって、これを受ける権利は公法上の権利であるから、条例をもってこれを支給しないことと定めたり、あらかじめこれを受ける権利を放棄することはできない(大判大七、一二、一九参照)し、譲渡、相続、質入れすることができない」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)と解されています。
しかし、地方公共団体によっては、無報酬とされている職も見受けられます。一般的に地方公務員に該当するかどうかの判断基準として、報酬の支払いは、重要な要件であったはずです。「一般的に地方公務員であるか否かを決める必要性も妥当性もない」のかもしれませんが、ややこしい時代になってきました。
ある者が地方公務員であるかどうかということは、実は難しい問題であったりします。
地方公務員法によると、地方公務員とは、地方公共団体及び特定地方独立行政法人の全ての公務員をいう(第3条第1項)と定義されていますが、一般的に地方公務員に該当するかどうかの判断基準としては、@職務の性質、A任命行為の有無、B報酬の支払いの3つの要件が挙げられており、これらの要件を基に、その者の事務処理の根拠となる法律関係ごとに、その目的と実態に即して具体的に判断することが必要であると解されています。
なお、国家公務員の場合は、人事院が、「ある職が、国家公務員の職に属するかどうか及び本条に規定する一般職に属するか特別職に属するかを決定する権限を有する」(国家公務員法第2条第4項)とされていますが、地方公務員の場合は、これに相当する規定がないことから、各任命権者が判断することになると解されます。
具体的な解釈としては、「逐条地方公務員法」(橋本勇著/学陽書房)に次のように記されています。
「これまで行政実例によって特別職の地方公務員とされたものに、学校医(昭二六・二・六地自乙発第三七号)、蚕業技術普及員の委嘱を受けた養蚕農業協同組合の職員(昭二六・三・一三自治公発第七二号)、国の指定統計調査事務に従事する統計調査指導員で地方公共団体の長の任命にかかるもの(昭三五・九・一九自治丁公発第五〇号)、町村の地区駐在員(昭二六・三・一二地自公発第六三号)、市の通知などの連絡に当たり、若干の手当を支給される町世話人(昭二六・五・一地自公発第一七九号)、市町村末端事務連絡員(昭四一・一二・二六自治行第一三五号)があるが、これらの者が直ちに地方公務員に該当するかは疑問である。これらの者について、地方公務員とする明確な意思をもって任命したのであればともかく、ボランティアとして、行政に対する協力を依頼し、それに対する謝礼を支給しているにすぎないような場合にまで、これを地方公務員とする必要はない。地方公共団体が委嘱状を交付しているが、当該地方公共団体の具体的な支配監督下にない害虫駆除のための衛生協力員、青少年の指導のための青少年委員、防犯協力員、交通指導員などについても同様である。これらについては、問題になっている具体的な法律関係ごとに、地方公共団体の権利義務を考慮すれば足りるのであり、一般的に地方公務員であるか否かを決める必要性も妥当性もない。」
このことから、流行の当該市町村出身の有名人によるふるさと大使、観光大使等については、単なるボランティアと考えてよさそうです。
また、職員の分限に関する条例では、人事評価が「継続して任命権者が定める基準を下回る場合であって、研修その他必要な措置を実施しても勤務実績の改善がない場合」を「勤務実績が良くない場合」(地方公務員法第28条第1項第1号)に該当するものとして、「降任し、又は免職することができる」と規定しています。
この「勤務実績が良くない場合」とは、「その職に必要な適格性を欠く場合にも同時に該当することが多いと思われるが、理論的には職務を遂行するために必要な肉体的条件と精神的資質を備えていても、外的条件、たとえば、飲酒とか賭事などのために出勤状況が不良である場合も勤務実績が良くない場合に該当する。すなわち、職に必要な適格性は、素質、能力、性格などに根ざしているものに着目して判断するのに対し、勤務実績の良否は、勤務の結果について判断するものということができよう。いかなる場合が「勤務実績不良」に該当するかということは、個々の場合について判断するほかないが、現実には「その職に必要な適格性を欠く場合」との区別が困難なことが多いであろう」と解されており、「職員の勤務実績が不良であることについては、任命権者の客観的な判断によるべきであるが、勤務成績の評定結果(法第四〇1)など、客観的な資料に基づいて行われることが望ましい」(「逐条地方公務員法」橋本勇著/学陽書房)とされています。
しかし、必ず5パーセントの職員が最低ランクに区分される相対評価によって評価された第5区分の職員は、同法第28条第1項第1号の「勤務実績が良くない場合」に該当するのでしょうか?
同法第27条第1項は、「すべて職員の分限及び懲戒については、公正でなければならない」と規定しています。そのため、法律上の義務はありませんが、分限処分を行う場合には、事実確認を十分に行い、対象職員の弁明を聴取したり、また、懲戒分限審査委員会等を設置することが望ましい(昭和31年6月26日行政実例)とされるなど、慎重かつ適切な配慮が求められています。
「職員が分限事由に該当する可能性のある場合の対応措置について」(平成18年10月13日人企−1626)では、次のような例示がされています。
「V 分限処分の検討が必要となる事例と対応措置
1 勤務実績不良(法第78条第1号関係)及び適格性欠如(同条第3号関係)
⑴ 対応措置が必要となる例
○ 毎日のように初歩的な業務ミスを繰り返して作業能率が著しく低い状況であるとともに、定め
られた業務処理も怠ることが多く、勤務実績が著しく悪い。
○ 無断欠勤や職場での無断離席を繰り返し、上司の注意・指導にもかかわらず来訪者や同僚
等としばしばトラブルを引き起こして来訪者等からの苦情が絶えない。その結果、職員本人の
業務が停滞しているだけでなく同僚職員の業務遂行にまで悪影響を及ぼしている。
⑵ 対応措置
勤務実績不良の職員又は官職への適格性に疑いを抱かせるような問題行動を起こしている職
員に対しては、一定期間にわたり、注意・指導を繰り返し行うほか、必要に応じて、担当職務の
見直し、研修等を行い、それによっても勤務実績不良の状態又は適格性に疑いを抱かせる状
態が継続する場合には、分限処分が行われる可能性がある旨警告する文書(警告書)を交付
する。その上で、一定期間経過後もこれらの状態が改善されていないことにより当該職員が法
第78条第1号又は第3号に該当するときには、分限処分を行う。」
最終的には、大阪府が職員基本条例をどのように運用するかにかかっているのでしょうが、勤務実績の不良や適格性の欠如については、個々の職員の具体的なケースを総合的に検討するものとされていることから、同条例の規定を根拠に分限処分を行った場合は、比例原則違反等により、当該処分が違法であるとされる可能性があるのではないでしょうか。
大阪府は、職員基本条例の施行に伴う関係条例の整備に関する条例例第1条で職員の分限に関する条例第3条を次のように改正しています。
(後任又は免職の事由)
第3条 職員が、次に掲げる場合に該当するときは、法第28条第1項第1号に該当するものとして、こ
れを降任し、又は免職することができる。
⑴ 人事評価(職員基本条例(平成24年大阪府条例第86号)第14条第1項に規定する人事評価を
いう。以下同じ。)が継続して任命権者が定める基準を下回る場合であって、研修その他必要な措置
を実施しても勤務実績の改善がない場合
⑵ 担当すべきものとして割り当てられた職務を遂行してその職責を果たすべきであるにもかかわら
ず、その実績が良くないと認められる場合
2 職員が、将来回復の可能性のない、又は法第28条第2項第1号による休職の期間中には回復の見
込みが少ない長期の療養を要する疾病のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えないこと
が明らかなときは、同条第1項第2号に該当するものとして、これを降任し、又は免職することができ
る。
3 職員が、次に掲げる場合に該当するときは、法第28条第1項第3号に該当するものとして、これを降
任し、又は免職することができる。
⑴ 第6条第6項の命令に従わなかった場合
⑵ 1月以上行方が不明である場合(正当な理由なく欠勤をした場合又は災害によることが明らかな
場合を除く。)
⑶ 簡単に矯正することのできない持続性の高い素質、能力若しくは性格に起因してその職務の円滑
な遂行に支障があり、又は支障を生ずる蓋然性が高いと認められ、職員として必要な適格性を欠くと
認められる場合
しかし、「逐条地方公務員法」(橋本勇著/学陽書房)には、地方公務員法第27条第2項が「分限処分の根拠規定であり」、「もっとも重い処分である免職と次に重い処分である降任については、」「その事由をもっぱら地方公務員法で定める場合に限定している。次に重い処分である休職は、地方公務員法で定める場合のほか、条例で定める場合も行いうることとし、もっとも軽い処分である降給は、もっぱら自主立法である条例で定めるところに委ねている」とあります。つまり、免職及び降任に関する事由については、同法第28条第1項でのみ規定されるものであって、条例制定権は及ばないと解されているのではないでしょうか。ならば、このことについて定めた職員の分限に関する条例第3条の規定は、無効であると解されるのではないでしょうか。
条例で規定すればどんなことでもできると、また、どんなことでも条例で規定することができると思っている人がいますが、それは、大きな間違いです。「普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第2条第2項の事務に関し、条例を制定することができる」(地方自治法第14条第1項)のです。
なお、「降任または免職の処分を行う事由として、本条第1項は四つの事由を定めているが、それぞれの場合に該当するかどうかは客観的標準に照らして決定すべきであり、いかなる分限処分を行うかは、その内容と程度に応じて任命権者が裁量によって決定すべきものであるが、裁量の範囲を逸脱してはならないことはいうまでもない」(前掲書)ことです。
大阪府の職員基本条例で問題になったものの一つが人事評価の手法です。同条例では、「相対評価(分布の割合を定めて区分し、職員がどの区分に属するかを相対的に評価する方法をいう。)」(同条例第15条第1項)を採用していますので、必ず全職員の5パーセントが最低ランクの職員として評価されることになります。
障害者の人事評価は、どうするのでしょうね?
そもそも公務員職場における人事評価は、その職務の性格から絶対的に正しい評価というものはできないということを原則として、様々な修正や工夫を加えた制度を模索しているところではなかったのではないでしょうか。同条例第14条第1項では、人事評価は、「職員の資質、能力及び執務意欲の向上を図ることを目的として行う」と規定していますが、このような人事評価が、同項の目的を達成できるかどうかは、甚だ疑問です。
また、同条第2項は「人事評価の結果は、任用又は給与に適正に反映しなければならない」と、第3項は「勤勉手当については、人事評価の結果を明確に反映しなければならない」と規定しています。人事評価の結果で給与に差をつけ、ヤル気を引き出そうとするもので、既に類似の制度を実施している市町村もありますが、人件費の総額が増えないのであれば、誰かの給与が増えた分は、必ず誰かの給与が減ることになります。これまでの経験から感じたことは、地方公務員という職業を選んだ人間の大半は、金のためだけに仕事しているのではないということです。そういう大部分の人間が、仲間の給与を奪い合うことになる人事評価にヤル気を出すとは考えられないのです。
さらに、この条例では、人事評価の結果で分限処分をしようとしています。
地方公務員法第27条第2項は、「職員は、この法律で定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、若しくは免職され」ないと規定し、同法第28条第1項で「その意に反して、これを降任し、又は免職することができる」場合として、「@勤務実績が良くない場合、A心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合、B前2号に規定する場合の外、その職に必要な適格性を欠く場合、C職制若しくは定数の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合」を挙げています。そして、同条第3項は、「職員の意に反する降任、免職、休職及び降給の手続及び効果は、法律に特別の定がある場合を除く外、条例で定めなければならない」と規定しています。
地方公務員法第27条第2項の規定により、同法で定める事由による場合でない限り、その意に反して降任又は免職の処分を受けることはないと法律で規定されているにもかかわらず、条例で降任又は免職の基準を定めることが可能なのでしょうか?
「市立児童福祉施設の職員が入所児童に入れ墨を見せていた問題を受け、大阪市は近く、全職員約3万7千人を対象に、入れ墨の有無などについて記名式アンケートを実施する方針を決めた。市役所職員は市民に接する機会が多いことから「人事配置上、把握する必要がある」(人事室幹部)として全ての職員に回答を求める。また、職員採用試験の受験資格に入れ墨がないことを条件に盛り込むことも検討しているという。」(4月30日付け産経新聞朝刊)
所変われば品変わると言いますが、関東や東北などの市町村の職員は、こういう記事を見て、どう思っているのでしょうね。
意外と「どこも似たようなもんやな」と思ってたりして……
本市ですか?10年ぐらい前ですと、当然のようにいましたよ。TATTOOというより刺青を入れた職員が。ただ、今はどうなんでしょうか。よく分かりません。
「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。」(労働基準法第91条)
「減給は、1日以上6月以下給料及びこれに対する勤務地手当の合計額の10分の1以下を減ずるものとする。」(職員の懲戒の手続及び効果に関する条例(案)(昭和26年7月7日地自乙発第263号)第4条)
なお、労働基準法第91条の規定は、職員には適用されません(地方公務員法第58条第3項)が、企業職員等には適用されます(地方公営企業法第39条第1項等)。
本市では、懲戒処分である減給を上回る給与の減額措置がこの7月から行われています。ですから、12月の給与で6月間、給料月額の11パーセント(自分の場合)が減じられた給与が支給されたことになります。
これまで、既に総額で高級車1台分に相当する給与の減額が行われてきましたが、今回の措置はさすがにきついです。減給処分の効果として、同条例(案)が「6月以下給料及びこれに対する勤務地手当(現在の地域手当)の合計額の10分の1以下を減ずる」と規定している意味が実感できました。
これがまだ3年3月続きます。しかも、減額率が更に拡大される可能性も大いにあります。
地方公務員は、地方公務員法第36条の規定により、政治的行為が制限されています。それは、「近代的公務員制度の理念の一つである公務員の政治的中立性を確保することを目的としている。この公務員の政治的中立は、三つの見地から要請されるものであり、その一は全体の奉仕者としての性格に基づくものであり、第二は行政の中立性と安定性を確保することであり、第三は職員を政治的影響から保護することである」(「逐条地方公務員法」橋本勇著/学陽書房)と考えられています。
本来、このことは、懲戒処分によって担保されるはずなのですが、大阪市職員に対する橋下新市長の数々の発言及びそのやり方は、同条の規定に抵触するように思われてなりません。
大阪市の実情は自分の知るところではありませんが、昭和49年11月6日の最高裁判決にも次のようにあります。
「もし公務員の政治的行為のすべてが自由に放任されるときは、おのずから公務員の政治的中立性が損われ、ためにその職務の遂行ひいてはその属する行政機関の公務の運営に党派的偏向を招くおそれがあり、行政の中立的運営に対する国民の信頼が損われることを免れない。また、公務員の右のような党派的偏向は、逆に政治的党派の行政への不当な介入を容易にし、行政の中立的運営が歪められる可能性が一層増大するばかりでなく、そのような傾向が拡大すれば、本来政治的中立を保ちつつ一体となって国民全体に奉仕すべき責務を負う行政組織の内部に深刻な政治的対立を醸成し、そのため行政の能率的で安定した運営は阻害され、ひいては議会制民主主義の政治過程を経て決定された国の政策の忠実な遂行にも重大な支障をきたすおそれがあり、このようなおそれは行政組織の規模の大きさに比例して拡大すべく、かくては、もはや組織の内部規律のみによってはその弊害を防止することができない事態に立ち至るのである。したがって、このような弊害の発生を防止し、行政の中立的運営とこれに対する国民の信頼を確保するため、公務員の政治的中立性を損うおそれのある政治的行為を禁止することは、まさしく憲法の要請に応え、公務員を含む国民全体の共同利益を擁護するための措置にほかならないのであって、その目的は正当なものというべきである。」
「地方公務員の給与改定に関する取扱い等について」(平成23年10月28日付け総行給第40号)の記書きの第1には、「我が国の厳しい財政状況と東日本大震災という未曾有の国難に対処するための国家公務員の給与の臨時特例に関する法律案(以下「給与臨時特例法案」という。)が、今般の人事院勧告による給与水準の引下げ幅と比べ、厳しい給与減額支給措置を講じようとするものであり、また、総体的にみれば、その他の人事院勧告の趣旨も内包しているものと評価できることなどを総合的に勘案し、……」とあります。
どう考えたら「その他の人事院勧告の趣旨も内包しているものと評価」できるのでしょうか。単に俸給月額等の一定割合を減額するだけの給与臨時特例法案が、平成17年改正法附則第11条の規定による俸給の廃止等や平成24年4月1日及び平成25年4月1日における号俸の調整などを定めた人事院勧告を内包できるわけがないと思うのですが……
人勧見送りが憲法違反になるかどうかはともかくとして、ここまでウソ言うたらアカンやろうというのが正直な感想です。
この場合は、市町村の公平委員会であると考えられます。派遣職員等の異なる地方公共団体の職を有する職員については、措置を要求する勤務条件を管理している地方公共団体の人事委員会又は公平委員会が審査機関であると解されるからです。
県費負担教職員の措置要求に関する行政実例を参考にして考えてみましょう。県費負担教職員の措置要求については、地方教育行政の組織及び運営に関する法律施行令第7条の規定により、地方公務員法第46条の規定中「人事委員会」が「任命権者の属する地方公共団体の人事委員会」と読み替えられています。よって、県費負担教職員は、任命権者の属する地方公共団体の人事委員会、つまり、指定都市や教職員の任命権が委任されている市町村教育委員会が属する市町村を除き、都道府県の人事委員会に対して措置要求することになっています。
しかし、県費負担教職員の身分は市町村に属し、その職務遂行に当たっては、法令及び当該都道府県の例規のほか、当該市町村の条例及び規則並びに当該市町村教育委員会の定める教育委員会規則等に従い、かつ、市町村教育委員会その他職務上の上司の職務上の命令に従う義務を負っています。また、市町村教育委員会は、県費負担教職員の服務を監督する権限を有しています(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第43条第1項及び第2項)。
このことから、地方公務員法第47条に規定する人事委員会又は公平委員会が必要な勧告をしなければならない「権限を有する地方公共団体の機関」とは、任命権者に限らず、教職員の勤務条件について権限を有している市町村教育委員会、市町村長等もこれに該当すると解されているところです(昭和32年2月1日付け行政実例)。しかし、このような場合には、その実効性を確保するためにも、当該勤務条件を管理する権限を有する機関が属する地方公共団体の人事委員会又は公平委員会に措置要求することができると解することが立法趣旨にもかなうものであると考えられます。
勤務条件に関する措置要求について、面白い質疑応答を見つけました。
「問 学校(一部事務)組合における教職員は、その組合(地方公共団体)に公平委員会が設けられてい
ない場合、どこへ勤務条件に関する措置要求をすればよいか。なお、この学校組合を構成する関係
町村は、公平委員会を既に設けている。
答 学校組合も、公平委員会を設置すべきものであり、公平委員会が設置されていない限り、当該学
校組合の学校の教職員は、「勤務条件に関する措置の要求」をする法的手段はない。
なお、この場合、公平委員会の設置については、単独設置によることなく、例えば当該学校組合を
構成する地方公共団体又は当該学校所在地の属する地方公共団体と共同して設置することが適当
であろう。
行政実例 昭二六・一一・一二地自公発四九六」(「質疑応答地方公務員法」地方公務員問題研究会編集/ぎょうせい)
昭和26年11月12日付けの行政実例というと、地方公務員法の一部がまだ施行されていない頃ですので、このような回答になったのではないかと考えられます。また、一部事務組合の執行機関の組織については、地方自治法第287条第1項第6号の規定により規約事項とされていますが、公平委員会に関しては、地方公務員法第7条第3項の規定により設置が義務付けられており、条例で置くこととされています。したがって、規約で自由に設置することができず、組合の条例で設置することになります。こうした法体系も公平委員会を設置し忘れた原因の一つになったのではないでしょうか。さすがに現在では、機関等の共同設置や事務委託を含めると、公平委員会の設置されていない一部事務組合はないと思うのですが……
ところで、公平委員会が設置されている一部事務組合に派遣された職員で、その給与を派遣元の市町村が支給している場合において、当該職員が勤務条件に関する措置要求をすべき公平委員会は、一部事務組合の公平委員会でしょうか?それとも市町村の公平委員会でしょうか?
「職員は、給与、勤務時間その他の勤務条件に関し、人事委員会又は公平委員会に対して、地方公共団体の当局により適当な措置が執られるべきことを要求することができる。」(地方公務員法第46条)
泉佐野市の職員588人が給与を削減されたことについて、公平委員会に対して措置要求をしました。このことについて何か記事を書こうかと思ったのですが……
あまりにも面白い記事を見つけてしまいましたので、それを紹介します。
地方公務員拾遺物語「【泉佐野市の給与削減】公平委員会に訴えてみました。」
正に「その後のリアル『再生の町』」です。
職員の給与の決定は、職務給の原則「職員の給与は、その職務と責任に応ずるものでなければならない」(地方公務員法第24条第1項)、均衡の原則「職員の給与は、生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない」(同条第3項)及び条例主義「職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める」(同条第6項)によっています。
このうち、均衡の原則は、「逐条地方公務員法」(橋本勇著/学陽書房)によると、「一般の企業における賃金の決定には、かなり明確な尺度がある。それは労働と利益の相関関係であり、賃金全体の枠については営業費用に占める賃金コストの割合が適正であるかどうかということが一つの物指となるし、個別の賃金については労働によって得られた附加価値あるいは利益が上限となることである。実際の賃金決定のメカニズムはこれほど単純ではないが、原理としては企業目的が利益という客観的な数字で表示され、賃金は長期的にはこの利益を基準として決定されることになる。これに対し、公務の場合には、このように明確な内在的尺度は存在しない。公務の目的である公共の福祉の増進は、金銭によって表示しえないものであり、利益以外の基準によって決定せざるを得ない。そこで現行公務員法の下でとられている方式が均衡の原則であり、民間企業の賃金や他の公務員との比較によって給与を定める方法である」とされており、「「国家公務員の給与に準ずる」ことによって実現されるものと解されて」いました。その理由は、「国家公務員の給与は人事院勧告によって決定されているが、人事院勧告では生計費および民間事業の賃金が考慮されているので、地方公共団体がその給与をこれに準ずることとすれば、国および他の地方公共団体とも均衡がとれるわけで、均衡の原則における」生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与が考慮されることになるからです。
また、均衡の原則を構成する要素の一つである「その他の事情」については、「「その他の事情の内容も全く不分明であるが、「その他の」とされていることから、原則的には前記の諸点に類似する事情でなければならないであろう。これを当該地方公共団体において給与を決定するに際して当然考慮すべき事情と考えるならば、地域の経済事情、たとえば、地場産業の景況であるとか、中小企業等の状況、あるいはその地域における職員採用の難易などが考慮の対象になるといえよう」とあります。
地方公務員の給与は、均衡の原則に基づき、国公準拠を基本として、「その他の事情」によって必要な補正を加えて決定されるということですが、5月27日の日経新聞朝刊に次のような記事がありました。
「政府は国家公務員に続いて地方公務員についても、第三者機関の勧告ではなく、労使交渉で給与を決める制度を導入する検討に入った。「協約締結権」を職員に与え、2013年度から自治体と職員の協議で給与を決められるようにする。今秋の臨時国会での関連法案提出を目指す。財政健全化を促す狙いだが、実際に給与を下げるかは各自治体が判断するため、実効性は不透明だ。」
ここでも「財政健全化」がキーワードになっているようですが、感心しません。そもそも協議が調わなかったら、どうするのでしょうね。
「地域政党「大阪維新の会」公認で4月の吹田市長選を制した井上哲也市長は16日夕、市長ら特別職に次ぐ役職の「総括監級」を廃止し、幹部職員7人を部長級に降格させる人事異動を発表した。井上市長が公約に掲げた公務員制度改革の第一弾で、年間約680万円の給与・共済費が削減できると説明している。
市によると、「総括監」は市長や副市長を補佐して市の重要な事業を企画・立案し、複数の部局にまたがる施策を調整するポストとして2006年4月に置かれたが、これまでも議会で「職責がわかりにくい」などの批判があったという」(5月17日付け朝日新聞朝刊)。
地方公務員法第28条第1項の規定によると、「職制若しくは定数の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合」(同項第4号)には、「その意に反して、これを降任し、又は免職することができ」ます。この記事から判断すると、これは、正に同項の規定による分限処分ではないでしょうか?そうであるならば、手続上、不利益処分に関する説明書を交付しなければなりませんし、7人の元「総括監」は、公平委員会に不服申立てをすることができます。
「逐条地方公務員法」(橋本勇著/学陽書房)によると、「「職制」とは、法令の根拠に基づいて設けられる地方公共団体の内部組織を意味するものであり、地方自治法第一五八条第一項の規定に基づいて条例で定められたものおよび長が設けたもののいずれも職制に該当する(法制意見昭二七・四・一九(法意一発第四四号)参照)。すなわち、規則などで設置される室、出先機関などもこれに該当し、さらに、職の設置規則等(都道府県の場合、自治法施行規程五)で明記されている職もここでいう職制に該当するものと解され」ており、事務分掌規則において「○○に関する事務のうち、極めて重要な特定の事務を担当させるため、必要があるときは、市に××総括監を置くことができる」と規定されていますので、「総括監」は、職制と解されます。
また、前掲書には、「廃職、過員が予算の説明資料や提案説明などで具体的に明確にされている場合でなければ、それを降任または分限免職の事由とすることは実際問題として困難であろう」とあり、さらに、「法律上は、職制の改廃、定数の改廃または予算の減少のいずれか一の事由のみに基づいて降任または分限免職を行うことが可能であるが、職員にとって重大な問題であり、前述のように必ずしも明確でない場合もあるので、実際に降任または分限免職を行う場合には、職制および定数を改廃するとともに、予算上の減員措置もあわせて明確にした上で行うことが適切であるといえよう」とあります。
そのような措置がなされたのでしょうか?なされていないのであれば、政治的パフォーマンスだけが先行しているような感じがします。
なお、「総括監」ではなく、局制が採用されていたとしたら、新市長はどうしたのでしょうね。
「市役所窓口で市民から暴言を浴びせられ心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したと訴えていた兵庫県内の市役所職員の女性について、地方公務員災害補償基金兵庫県支部が公務上災害と認定していたことが分かった。女性を支援していた非営利組織(NPO)ひょうご労働安全衛生センター(神戸市)によると、窓口業務のトラブルが精神疾患の原因と認定されるのは異例。
センターによると、08年8月、生活保護の相談で阪神間の市役所を訪れた男性が女性の対応に腹を立て、「インターネットに名前を載せる」「死ね」と暴言を吐くなどした。
女性はこれらのやりとりを思い出す「フラッシュバック」に悩み、市役所に近付くと鼓動が速くなるなどの状態になり、休職。うつ病やPTSDと診断され、同年9月、民間の労災に当たる公務上災害の認定を申請した。」(5月6日付け毎日新聞夕刊)
確かに画期的な判断だとは思いますが、市役所等では、トラブルやクレームというよりも、恫喝や暴力が日常茶飯事として起こっているところさえあります。そのような理不尽な暴力等に対抗するためにも、市として、積極的に公務執行妨害罪や暴行傷害罪等で刑事告発していくことも検討すべきではないでしょうか。
地方公務員法第36条第2項は、政治的行為として「職員は、特定の政党その他の政治的団体又は特定の内閣若しくは地方公共団体の執行機関を支持し、又はこれに反対する目的をもって、あるいは公の選挙又は投票において特定の人又は事件を支持し、又はこれに反対する目的をもって」、「文書又は図画を地方公共団体又は特定地方独立行政法人の庁舎(特定地方独立行政法人にあっては、事務所。以下この号において同じ。)、施設等に掲示し、又は掲示させ、その他地方公共団体又は特定地方独立行政法人の庁舎、施設、資材又は資金を利用し、又は利用させること」(同項第4号)を禁止しています。
一方、公職選挙法第145条第1項は、ポスターの掲示箇所として「何人も、衆議院議員、参議院(比例代表選出)議員、都道府県の議会の議員又は市町村の議会の議員若しくは長の選挙(第144条の2第8項の規定によりポスターの掲示場を設けることとした選挙を除く。)については、国若しくは地方公共団体が所有し若しくは管理するもの又は不在者投票管理者の管理する投票を記載する場所には、第143条第1項第5号のポスターを掲示することができない。ただし、橋りょう、電柱、公営住宅その他総務省令で定めるもの並びに第144条の2及び第144条の4の掲示場に掲示する場合については、この限りでない」と規定しています。
職員が公営住宅に選挙運動用のポスターを掲示することは、可能なのでしょうか?
地方公務員法第36条第2項については、「第2項第4号の規定中「地方公共団体の庁舎、施設」の「施設」には「公営住宅」は含まれ、公職選挙法第145条第1項ただし書の規定の特別規定である」(昭和33年8月2日行政実例)と解されています。したがって、職員は、公営住宅にポスターを掲示することはできません。
なお、地方公務員法第36条第2項第4号の規定には、同項ただし書に規定する区域の制限がありません。本市にも自治会等の役員を引き受けている職員が多数存在します。自治会等が特定の候補者を応援している場合もありますので、注意が必要です。
「沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突を巡るビデオ映像流出事件で、海上保安庁は22日、第5管区海上保安本部の神戸海上保安部に所属する一色正春・元主任航海士(43)を停職12カ月の懲戒処分にした。一色元航海士は同日、依願退職した。」(12月23日付け毎日新聞朝刊)
「1年間の停職処分て、いけたっけ?」と気になって、人事院規則12−0(職員の懲戒)を見てみると、確かに、「停職の期間は、一日以上一年以下とする」(第2条)と規定しています。それでも違和感を感じたので、本市の条例を見ると、「停職の期間は、1日以上6月以下とする」と規定しています。条例案(職員の懲戒の手続及び効果に関する条例(案)(昭和26年7月7日地自乙発第263号))第5条第1項も「停職の期間は、1日以上6月以下とする」と規定しています。
ちなみに、減給についても、人規12−3第3条が「一年以下の期間、俸給の月額の五分の一以下に相当する額を、給与から減ずるものとする」と規定しているのに対し、条例(例)第4条は「1日以上6月以下給料及びこれに対する勤務地手当の合計額の10分の1以下を減ずるものとする」と規定しています(勤務地手当は、現在の地域手当)。
ネットで検索してみると、条例(案)ではなく、人事院規則に準拠した懲戒の手続及び効果に関する条例を制定している地方公共団体もあるようですが、懲戒処分の効果にこんな違いがあったとは、知りませんでした。
「(欠格条項)
第16条 次の各号の一に該当する者は、条例で定める場合を除くほか、職員となり、又は競争試験
若しくは選考を受けることができない。
⑴〜⑸ 略」
「逐条地方公務員法」(橋本勇著/学陽書房)には、次のような記述があります。
「本条では、職員としての採用および受験資格の二つを否定することを明示しているのであるが、後者を法文上明記している趣旨は明らかではない。というのは、欠格条項に該当して職員として採用することができない者が、採用のための競争試験または選考を受けても意味のないことは当然であり、受験の手続として措置すれば足りることであるから、本条に規定するまでもなく、解釈上の問題として処理することができるものである。また、本条では、単に競争試験または選考として規定しているが、競争試験または選考は採用のみならず、昇任の場合にも行われるものであり(法一七34)、欠格条項該当の職員は、後述のように当然失職するので昇任について規定する余地はなく、ここで採用の場合に限定せずに受験資格一般を否定する書き方をしているのは、きわめて不正確であるといわざるを得ない。」
なるほど、「職員となることができない」と規定すれば足りるということですか。しかし、例えば、受験資格がないことを明記しておかないと、地方公務員法第16条第3号(当該地方公共団体において懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から2年を経過しない者)に該当する場合で、採用試験の日においては2年を経過しないが、採用の日においては2年を経過するようなときは、当該者の受験資格に疑義が生じませんか?同書の前段の記述には、首肯できません。
そう考えていくと、同書の後段の記述のとおり、「競争試験若しくは選考」は、採用の場合に限定した規定にする必要があるということになりますね。
なお、欠格条項該当の有無については、本人からの申告のみで、ほとんどの市町村がその確認をしていないのではないでしょうか。
本市職員N君からの質問です。
N君「議会事務局長、定年退職しましたやん。そのときの辞令なんですけど、何で議長から出向辞令出して、また市長から退職辞令出さなあかんのですか?」
自分「議長から直接退職辞令出したらえーやないかっちゅーことか?何でや言うたら、市長から出向を命じられた職員やからやな。」
「逐条地方公務員法」(橋本勇著/学陽書房)では、次のように記されています。
「通常、出向を行う場合には、当該職員の任命権者が他の任命権者の機関への出向を命じ、出向先の任命権者があらたな任命の発令を行う。すなわち、先の任命権者が当該職員に他の任命権者の任命を受けることの承認を与える意思表示が出向発令であると解される。出向発令だけであらたな任命が自動的に行われるものでなく、必ず新しい任命権者の任命行為が必要である。同一地方公共団体内の出向は、同じ勤務関係の中にあるので、本人の同意は不要である(行実昭四二・一一・九自治公一第五七号)。また、元の任命権者が出向を命じ、他の任命権者が任命することにより、当該職員は元の任命権者の任命権の範囲外のものとなるので、「出向を解く。」という発令をすることにより自動的に職員を復帰させることはできず、その場合には、現在の任命権者が出向を命じ、元の任命権者があらためて任命を行うことが適当であるとされている(行実昭三〇・三・一八自丁公発第五五号)。」
「職員の職に欠員を生じた場合においては、任命権者は、採用、昇任、降任又は転任のいずれか一の方法により、職員を任命することができる。」(地方公務員法第17条第1項)
「職員は、この法律で定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、若しくは免職されず、この法律又は条例で定める事由による場合でなければ、その意に反して、休職されず、又、条例で定める事由による場合でなければ、その意に反して降給されることがない。」(同法第27条第2項)
今では、ほとんどの地方公共団体で希望降任制度が導入されていますが、元々、依願降任については、否定的に解されていました。以前は、降任とは、不利益処分であって、職員の依願によって行うものではない。どうしてもその職責を果たすことができないというのであるならば、「辞めてもらわなしゃあない」か、又は、一定の職にありながら自ら降任したいというのは、その職に必要な適格性を欠く場合に該当し、分限処分を行うべきであるというのが一般的な解釈であったように思います。
「逐条地方公務員法」(橋本勇著/学陽書房)には、「分限処分は、職員の意に反する処分であるから、職員の意に反しない処分は分限処分ではない。……(略)……職員の同意を得て行われる降任や降給も分限処分ではない」と、また、依願休職について、「国家公務員法の解釈としては、同法所定の休職事由に該当する場合は、職員の意思の有無に関係なく休職にすることができるものとして、依願休職がありうることを肯定している(人事院行実昭二六・一・一二)。これに対し、地方公務員法の解釈としては、依願休職は認められないとされている(行実昭三八・一〇・二九自治丁公発第二九八号)。分限の規定により職員の身分を保障しなければならないのは、その意に反する身分取扱いであり、かりに依願休職を認めるにしても、それは分限処分ではあり得ない。そして、分限処分ではない依願休職を認めるかどうかは、勤務条件としてそのような措置を認める必要があるかどうかという観点から決定されるべきものである」とあることから、確かに、依願による降任や休職は、完全に否定されているものではないと解されます。
しかし、「職員の任用は、この法律の定めるところにより、受験成績、勤務成績その他の能力の実証に基いて行わなければならない」(地方公務員法第15条)ことを考えると、依願降任を制度として認める必要があるとは思えません。また、本来ならば、分限降任とすべき事例を希望降任制度によっているように思われてなりません。分限処分をしたくない人事課と分限処分を受けたくない職員との利害が一致した結果なのでしょうが、あまり感心しません。
「大阪府の橋下徹知事が全職員あてに、税金に対する意識の低さを嘆くメールを出したところ、ある職員が反論する返信を出した。知事は「物言いが非常識だ」と激怒。一連のやりとりを府幹部らに転送し、この職員の処分を検討するよう指示した。府庁内では知事の態度を「度量が狭い」と疑問視する声もある。
発端は、1日夜に知事が送信したメール。利水からの撤退によって府の損失が386億円に上った紀の川大堰(和歌山県)をめぐり、議会で原因を淡々と説明するだけだった府幹部について「何事もなかったかのよう。給料が保障される組織は恐ろしい」などと書き、全職員に送った。
2日昼、ある職員が「責任は(投資を)決断した人にある。こんな感覚の人が知事である方が恐ろしい」と職員を責める知事を批判する返信をした。「愚痴はブログ等で行ってください。メールを読む時間×全職員の時間を無駄にしていることを自覚してください」ともたしなめた。
これに怒った知事は同夜、この職員に「上司に対する物言いを考えること。トップとして厳重に注意します。言い分があるなら知事室に来るように」と送信。職員も返信で「公務をどけてでもお邪魔します」と応酬した。
知事は7日、取材に「一般常識としてこの物言いはどうか。組織の体をなしてない」と述べた。職員の間からは「知事自身が『メールを送って』と言っていたのに、気に入らなければ処分なんて」とおびえる声も出ている」(10月8日付け朝日新聞朝刊)。
処分?何で?信用失墜行為(地方公務員法第33条)か?職務命令違反(同法第32条)か?それとも職務不適格者として分限(同法第28条第1項第3号)か?と思っていたところ、次の記事がありました。
「大阪府の橋下徹知事は8日、自らが全職員あてに送ったメールに反論を返信してきた職員と、直属の上司を府の内規に基づく「厳重注意」にすることを決めたと報道陣に明らかにした。「非常識」メールは過去もあったというが、組織としての対応は初めてという。知事は「人事担当が精査した。トップへの物言いは一般常識を逸脱している」と理由を説明。今回の厳重注意は地方公務員法に基づく懲戒処分ではないため、人事記録に残らない。知事は今後は記録に残すよう検討を指示した」(10月8日付け朝日新聞夕刊)。
やっぱり、不服申立てのできない事実上の処分ですか。処分事由説明書の交付もないでしょう。「人事担当が精査した」らしいですが、ムチャクチャですね。
ところで、橋下知事はよく「民間企業ならば……」という言葉を使いますが、民間企業であるならば、予算総額が4兆円を超え、かつ、総職員数が8万5千人を超えるような組織のトップに、経験ゼロのタレント弁護士が選ばれるということ自体があり得ないと思うんですけどね。
「鹿児島県阿久根市の竹原信一市長は31日、市役所各課に掲示した職員給与総額張り紙をはがした市係長の男性(45)を同日付で懲戒免職処分にすると発表した。市の賞罰委員会は「文書戒告が相当」としていたが、竹原市長は「自ら判断した。懲戒免職は重すぎるとは思わない」としている。市職労は「あまりに厳しすぎる処分。取り消しを求める」と強く反発している」(8月1日付け毎日新聞朝刊)。
一体全体、市長になって何をしたいのでしょうか。そもそも、長の補助機関である職員を目の敵にして、市民の反発をあおるような一連の行為は、市行政にとって大きなマイナスです。これらのことが、住民福祉の向上に資するとはとても思えません。
ところで、地方公務員法第27条第1項は、「すべて職員の分限及び懲戒については、公正でなければならない」と規定しています。「懲戒免職は重すぎるとは思わない」そうですが、「懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべきである」(最高裁昭和52年12月20日判決)とされています。今回のケースは、正に「社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合」ではないでしょうか。
「新自治用語辞典」(新自治用語辞典編集会編/ぎょうせい)によると、休息時間とは、「勤務時間の途中において元気の回復と能率向上を目的として作業の中止を認められる時間をいう。休憩時間が勤務時間に算入されず、職員は休憩時間を自由に利用できるのに対し、休息時間は勤務時間の一部を構成し、勤務の都合で休息しなかった場合でも繰り越されることはない。
国の場合、できる限り、おおむね4時間の連続する正規の勤務時間ごとに、15分の休息時間を置かなければならないとされ、また当該休息時間は性質上、勤務時間の始め又は終わりにおいてはならないと規定されている(人事院規則(15−14)8)。地方公共団体も、ほぼこれに準じている」とあります。
国家公務員については、平成18年7月1日から休息時間が廃止されています。地方公務員についても、各地方公共団体が権衡を失しないように(地方公務員法第24条第5項)所要の措置が講じられてきましたが、本市でも、ようやく平成21年7月1日から休息時間が廃止されました。
休息時間は、その取扱いに問題のある制度でした。かつては、国でさえ、国家公務員には労働基準法が適用されないのをいいことに、30分の休憩時間の前後に15分の休息時間を設けて9時から17時30分までの間で8時間の勤務時間と1時間の昼休みを確保するということをしていました(ただし、休憩時間の前後に休息時間を設けることは差し支えないとの行政実例(昭和33年2月7日)があります。)。
本市の場合、8時45分からの始業時間の直後に休息時間を置き、実質的に勤務時間を9時からにするという取扱いを続けてきました。職員のタイムカードや出勤簿が公務遂行情報として情報公開される時代に、よくものうのうとこんなことを続けてきたものだと思います。
「休息時間を休憩時間に引き続いて置いたり、始業時間の直後や終業時間の直前に置いたりして、実質的な勤務時間を短縮するようなことが許されないのは当然のこと」(「逐条地方公務員法」橋本勇著/学陽書房)です。
休息時間の廃止を勤務時間の延長と思っている職員も一部にはいるようですが、それは違います。一つの無法状態が解消されただけのことで、勤務時間に変更はありません。
「地方公務員法上、職員が特別職を兼ね、その職務に従事することは、「職務に専念する義務」(第35条)と「営利企業等の従事制限」(第38条)の問題であって、その特別職が、法令等により職員の職と兼ねえないものでない限り、これらの規定に従えば許される」(昭和26年3月12日行政実例)とされています。
よって、一般職の職員と農業委員会の委員との兼職は、農業委員会等に関する法律に禁止規定がないことから、「地方公務員法第38条の規定による任命権者の許可を受けることが必要であるが、同時に当該兼職により一般職に属する地方公務員としての勤務時間及び職務上の注意力の一部をさくことが認められるためには、同法第35条の規定により、その旨「法律又は条例に特別の定がある」ことが必要である」(昭和26年6月29日行政実例)とされています。
ところが、「逐条地方公務員法」(橋本勇著/学陽書房)には、次のような記述があります。
「職員が他の地方公共団体の特別職(たとえば審議会の委員)を兼ねて報酬を受ける場合は本条第1項の許可を要するが、同一地方公共団体の特別職の職を兼ねる場合は、本条の適用はないというべきであろう。同一地方公共団体内の兼職である限り、一般職相互間、一般職と特別職との間のいずれの兼職であっても、また、同一の任命権者の下の職の兼職であっても、異なる任命権者の下の兼職であっても、本条の許可および職務専念義務の免除(法三五)は不要というべきである。なぜならば、職員の勤務関係はその属する地方公共団体との間に存するのであり本条の趣旨が当該地方公共団体の公務の品位と信頼を維持することにあるからである。勤務時間および職務の対価をどのように配分するかは、内部調整の問題に過ぎないのである。本条第1項が、報酬を得て「いかなる」事業もしくは事務にも従事してはならないと規定しているため、文理上の解釈として同一地方公共団体内で報酬を得ることも禁止されていると解することも理由がないわけではないが、それは本条の趣旨を正しく理解しているものとはいえないであろう。」
どちらにせよ、最近の公務員に対する批判は、非常に厳しいものがあります。特に、服務に関しては、法律上、問題がないからOKというものではなく、道義的にも問題がないかよく考えてみる必要があるのではないでしょうか。
なお、農業委員会は、選挙による委員と選任による委員で組織されています。農業委員会の委員の選挙には、農業委員会等に関する法律第11条の規定により、公職選挙法の規定が準用されていますが、公務員の立候補制限を定めた同法第89条の規定は、準用されていません。
平成21年5月1日付けの人事院勧告に伴う給与条例等の一部を改正する条例を明日開会の第2回臨時会に提案します。
今回は、臨時会を設定したり、ステキな読替規定があったり、一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律附則第2条の規定があったりと、色々と楽しませていただきました。
なかでも一番楽しませていただいたのが、大阪府の対応です。
「府は20日、6月末に支給する府職員のボーナス(期末・勤勉手当)について、0.15カ月分引き下げるとする回答を府労働組合連合会と府関連労働組合連合会に示した。22日開会の5月定例府議会に条例改正案を提出する」(5月21日付け産経新聞朝刊)。
大阪府では、既に期末・勤勉手当を4パーセント又は6パーセント減額しているため、0.15月分を凍結すると、実質0.23月の減額に相当することになるそうです。これが、「地域の実情を踏まえつつ、国の取扱いを基本として対応」(平成21年5月8日付け総行給第61号総務省自治行政局公務員部長通知)したということなのでしょう。
おいおい、そんなこと言うたら、本市は、24月の延伸やら3パーセントカットやら手当の削減やらで、何もかもひっくるめると、この10年で職員一人当たり約500万円もの給与を減額しているのですが……
凍結分?当然、0.2月分です。
注文していた「逐条地方公務員法第2次改訂版」(橋本勇著/学陽書房)と「逐条地方自治法第5次改訂版」(松本英昭著/学陽書房)が届きました。
一般的に、「逐条」は、辞書的な使い方をされている方が多いかと思いますが、両書とも、一度は通読することをおすすめします。
特に「逐条地方公務員法」は、「逐条地方自治法」がアカデミックなのに比べ、「本当は、こうしたかったんやけど、なかなかそうもいかんで、こういうオチになった」的な話が随所に出てきますので、読み物としても結構面白いです。
本市における様々な問題が、地方公務員法を無視した状態で起きていることを考えると、地方公務員法こそが本市の職員に最も大事な法律ではないかと思います。
2009年3月5日付け記事のコメントにいただいた御質問に対する回答(?)です。遅くなってしまい、申し訳ありません。
地方公務員の給与については、「給料、手当及び旅費の額並びにその支給方法は、条例でこれを定めなければならない」(地方自治法第204条第3項)とされ、「普通地方公共団体は、いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基づく条例に基づかずには、これをその議会の議員、第203条の2第1項の職員及び前条第1項の職員に支給することができない」(同法第204条の2)と規定しています。
「「法律又はこれに基く条例に基」づき支給するとは、法律上直接に給与の種類、額、支給方法等について規定があり、これによって直ちに給与が支給できるような場合に、これに基づいて支給すること、及び法律においてある種の支給について根拠があり、この法律の規定に基づいて条例で具体的に種類、額、支給方法等を定め、それに基づいて支給することをいう」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)と解されています。これを素直に読めば、規則に委任することに疑義が生ずるものと思われます。
しかし、その一方で、地方公務員法第25条第1項が「職員の給与は、前条第6項の規定による給与に関する条例に基いて支給されなければならず、又、これに基かずには、いかなる金銭又は有価物も職員に支給してはならない」と規定していることについて、「給与条例に規定すべき内容として、本条第3項は七つの事項を列記している。しかし、これらの列記事項は、現実に制定されている給与条例と必ずしも対応していない。たとえば、昇給の基準(第2号)は給与条例によって規則に全面的に委任されており、各種手当(第3号および第4号)もそこに掲げられているもの以外に数多くの手当が支給されている。その他の点についても、現実にはほとんど機能していないといっても過言ではない状態であり、実際に施行されている各地方公共団体の給与に関する条例は、国家公務員の給与に関する各法律やこれに基づく人事院規則等を基準として定められているところである」(「逐条地方公務員法」橋本勇著/学陽書房)としています。
最近では「各種手当(第3号および第4号)もそこに掲げられているもの以外に数多くの手当が支給されている」ことはないと思いますが、確かに、級別資格基準表、初任給基準表及び級別標準職務表については、規則で定められています。このことは、国家公務員の一般職の給与に関する法律及び人事院規則が、地方公共団体の給与に関する例規のモデルとなっていることにその原因があると思われます。現に、給与条例において規則委任されている事項は、国家公務員の一般職の給与に関する法律において人事院規則に委任されている事項です。そうであるならば、規則に委任する事項を条例上明確に規定している限り、違法性の問題は生じないと思います。
また、規則に委任した以上は、委任事項を定めるのは長の権限です。規則の提示を義務付けることはできません。それが許されないとお考えであるならば、条例案の審議において、条例事項とするよう求めるべきではないでしょうか。
なお、「ワークブック法制執務」(法制執務研究会編/ぎょうせい)の問16の「政令に委任された事項を、当該政令で更に省令に委任することができるか」という問に対し、「まず、ある事項が法律の専属的所管事項とされる場合には、法律によるのであれば、そのような事項について規定することができることを意味するのであるから、少なくとも当該事項の基本的事項は法律において定められることを要し、そのような法律事項を包括的、全面的に政令に委任してしまうことは、当該事項が法律の専属的所管事項とされること自体を無意味にしてしまうので、違憲の疑いを免れないとされる。そうだとすれば、政令に委任された事項を当該政令で更に省令に委任することができるかという点についても、法律が委任事項を規定すべき法形式を政令と規定している以上、いわれもなくそのようなことが許されるとは考えられず、いわゆる再委任は、原則として許されないものと考える。ただ、必要やむを得ない場合において厳格に第一次の委任事項の範囲を超えず、その具体的な細目の規定だけを授権するようなものであれば、そのような再委任が許されないとまではいえないであろう」とあります。
2月5日付け産経新聞朝刊によると、I市は4日、口論から男性職員の顔を殴ったとして、課長代理級の職員(60)を減給3か月(10分の1)の懲戒処分にしたと発表したそうです。
I市の職員の定年等に関する条例によると、年齢60年を定年とし、「定年に達した日以後における最初の3月31日に退職する」と規定しています。そうすると、2月4日付けで減給3か月(10分の1)の懲戒処分は、退職日以降の期間に及ぶことになります。このような懲戒処分は、可能なのでしょうか。
「人事院規則12−0(職員の懲戒)の運用について」(昭和32年6月1日付け職職第393号)の第3条関係第5項によると、「減給期間中に離職する場合には、最終の俸給の支給定日の減給の額をもつて打ち切るものとする」とあります。
さらに、「服務関係質疑応答集」(人事院職員局服務法令研究会監修)には、定年退職日以降の期間に及ぶ停職、減給処分について、「懲戒処分は、現実的な制裁を加えることのみを内容とするものでなく、職員の非違行為に対する責任を確認することをも内容とするものであることから、処分の効果の一部が実現しないことを理由として、当該処分ができないとするときは、懲戒処分の種類、量定について制約を受けることとなり、懲戒の根本基準である処分の公正確保の面から問題があることなどから、定年退職日以降の期間を含む停職、減給処分は可能であると解する」とあります。また、「減給期間中に離職する場合には、最終の俸給の支給定日の減給の額をもつて打ち切る」ことから、「退職金等から残余の減給額を差し引くことはできない」とされています。
ちなみに、I市では、平成18年にも課長級の職員が暴行事件を起こしています。そのときの処分は、減給1か月(10分の1)でした。個人的には、今回の処分と権衡を失しているように思うのですが、何か特別な理由があったのでしょうか。
本市は、人権問題に非常に熱心です。それは、他の地方公共団体に先駆けて人権条例を制定したことや、部長会議で「あらゆることに人権が優先する」という確認をしたことでも理解していただけるかと思います。
人権研修は、充実しています。その一つに、人権問題職場研修員制度があります。人権問題職場研修員である課長代理級の職員は、課ごとに年2回以上、人権問題職場研修会を実施し、その内容を人権対策本部事務局に報告しなければなりません。
というわけで、先日、研修会を実施しました。「分かりやすい公用文の書き方」(礒崎陽輔著/ぎょうせい)をテキストに「差別用語・不快用語」をテーマにしました。
ちなみに、前回のテーマは、「ミーガン法」でした。
「北海道中頓別町議会は2日、行政改革の一環として教育長の非常勤化も可能とする全国初の条例案を4対3で可決した。教育長は「常勤の一般職」とされており、道教委は「法解釈上、問題がある」と見直しを求める通知を町教委に出していた。
条例では、一般職となっている教育長を特別職に格上げし、教育委員会が「常勤」か「非常勤」かを選択できるように規定している。町教育長の給与は月約50万円で、4年の任期の退職金を含めた給与総額は計3500万円になる。町の厳しい財政事情から、給与を削減するには非常勤化が必要として一部町議が議員提案した。
教育長の身分は、文部次官通達(1956年6月)などで「常勤の一般職」であることが明記されている。このため、道教委は条例制定の再考を促す通知を出したほか、校長会やPTA、教職員組合も反対していた」(9月2日13時49分配信毎日新聞)。
教育長は、常勤の一般職の地方公務員です。その職務の特殊性から、一部の例外(教育公務員特例法第16条)を除き、地方公務員法の適用を受けます(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第22条)。
この件について、自分が気になったのは、「教育長の身分取扱について」(昭和28年4月24日付け委初第73号文部省初等中等教育局長通達)もさることながら、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第16条第2項の規定です。同項は、「教育長は、第6条の規定にかかわらず、当該教育委員会の委員(委員長を除く。)である者のうちから、教育委員会が任命する」と規定しています。そして第6条は、「委員は、地方公共団体の議会の議員若しくは長、地方公共団体に執行機関として置かれる委員会の委員若しくは委員又は地方公共団体の常勤の職員若しくは地方公務員法(昭和25年法律第261号)第28条の5第1項に規定する短時間勤務の職を占める職員と兼ねることができない」と規定しています。このことからも、教育長は、常勤の一般職であることを想定しているのではないでしょうか。
それにしても、ごっついニュースや……
懲戒処分には、戒告、減給、停職及び免職の4種類があります。「職員の懲戒の手続及び効果は、法律に特別の定がある場合を除く外、条例で定めなければならない」(地方公務員法第29条第4項)とされており、大部分の地方公共団体は、「職員の懲戒の手続及び効果に関する条例(案)」(昭和26年7月7日付け地自乙発大263号)に準じて条例を制定しています。そして、同条例(案)第4条は、「減給は、1日以上6月以下給料及びこれに対する勤務地手当の合計額の10分の1以下を減ずるものとする」と規定しています。
新聞報道等によると、大阪府は、指定職と部長級を除く一般職の基本給を4パーセントから12パーセント(修正案では3.5パーセントから11.5パーセント)削減するようですが、そうすると、減給処分を上回る削減をされる職員が一部に発生することになります。
減給処分を上回るような給与改定というのは、問題ないのでしょうか。人件費の削減については、何でもありになってきたように思います。
大分県の教員不正採用事件が大きな問題になっています。採用試験を巡って金銭の授受が行われていたことから、汚職事件にまで発展した事件ですが、肝心の不正採用された人はどうなるのでしょうか。
「不正採用された人の取扱いについて」というような質疑応答はありません(多分)が、欠格条項(地方公務員法第16条)違反の任用については、行政実例があります。
「このような採用は、明らかに法規に違反し、しかもその違反がきわめて重大なものであるので、当然に無効であるといわなければならない(行実昭26.8.15地自公発第332号)。しかし、発見までの日時が長期に及んだようなときには、さまざまな困難な問題が生じる。これらの問題について、行政実例は次のように解している(行実昭41.3.31公務員課長決定)。
(1) 欠格者の採用は当然無効である。
(2) この間その者の行った行為は、事実上の公務員の理論により有効である。(瑕疵ある行政行為の解釈)
(3) この間の給料は、その間労務の提供があるので返還の必要はない。
(4) 退職手当は支給しない。
(5) 退職一時金も支給しない。ただし、組合に対する本人の掛金中、長期の分については、組合から本人に返還する(相当の利子をつける。)。短期の分については、医療給付があったものとして相殺し、返還しない。
(6) 異動通知の方法としては、「無効宣言」に類する「採用自体が無効であるので登庁の用なし」とするような通知書で足りる。」(「逐条地方公務員」橋本勇著/学陽書房)。
不正採用された職員を「採用自体が無効であるので登庁の用なし」とすると、組織そのものが解体してしまうような地方公共団体があるかもしれません。
地方公務員法及び地方独立行政法人法の一部を改正する法律案が国会で審議中ですが、地方公務員法第15条は、「職員の任用は、この法律の定めるところにより、受験成績、勤務成績その他の能力の実証に基いて行わなければならない」と規定しています。これが成績主義(メリット・システム)といわれる任用の根本基準です。そこには、情実人事が存在する余地はありません。
成績主義の原則に違反した場合、つまり、いわゆるコネや縁故等によって任用した場合は、同法第61条の規定により、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処せられます。任命権者は、このことをよく理解する必要があります。ところが、この成績主義の原則が、本市では中々機能しません。市長と議員と職員と業者とが、同じ市の市民として、狭い地域で複雑な人間関係にあることが、その一因であると思います。
本市には、エリートと言われる職員はいません。特殊な関係によって、特別扱いされる職員がいるだけです。本市では、数年前、超ド級の不良職員がいました。その行動は筆舌に尽くし難く、懲戒免職間違いなしと思われていましたが、いざ4月1日がくると昇格していました。こうした人事は、今も現実に行われています。本市においては、「昇格と処分は紙一重」(某部長の言)なのです。
地方公務員法第25条第2項は、「職員の給与は、法律又は条例により特に認められた場合を除き、通貨で、直接職員に、その全額を支払わなければならない」と給与支給の三原則について規定しています。
職員団体又は労働組合の組合費の天引き(チェック・オフ)は、直接払いの原則の例外をなすものとして、条例で規定されています。「一般職の職員の給与に関する条例〔市の事例〕」によると、給与から控除できるものとして、@職員互助会の掛金、A職員が職員互助会に対して支払うべき掛金以外の金額、B市有公舎の使用料、C団体信託の積立金、D団体取扱いに係る簡易生命保険の保険料、E法第53条の規定により登録された職員団体の組合費、F○○労働金庫の定期積金及び貸付金の返済金が規定されています。ほとんどの地方公共団体は、〔市の事例〕に準じた規定になっていると思われますが、職員の福利厚生事業の一環として、「長の承認した業者と契約して購入した物品の購入代金」を追加して規定しているところもあります。
大阪市が給与条例を改正して、チェック・オフ制度を廃止したことが報道されていましたが、3月28日付け産経新聞朝刊によると、「政令市では当初から制度がない北九州市を除き、天引きの廃止は初めて」だそうです。「逐条地方公務員法」(橋本勇著/学陽書房)にも「組合費の天引き(チェック・オフ)は、労使の自主性を尊重する趣旨からすると、当局の組合に対する便宜供与の一つであり、不当な干渉のために利用されるおそれもあるので、とりわけ慎重に対処する必要があるように思われる」とありますが、大阪市のケースは、多分に政治的な理由が考えられますので、あまり感心しません。
なお、本市では、○○新聞の購読料が給与から控除されています。○○新聞といっても新聞ではなく、特定の団体の機関誌ですが、チェック・オフ制度よりも、このことの方が問題だと思っています。
新年度が始まりました。自分は、もう一年文書法規を担当することになりましたが、他市で長く法規を担当されていた方から人事異動の連絡があると、何か寂しい気持ちになります。気楽に電話できる人が随分減ってきました。
人事異動と言えば、新規採用職員とは別に、定年退職者等が再任用されています。本来、定年退職者等の再任用は、「従前の勤務実績等に基づく選考により」(地方公務員法第28条の4第1項)行われるはずなのですが、本市では、希望者を全員採用しています。ですから、3月31日にこの人やっと定年かと思っていると、4月1日からよろしくお願いしますとやってくる事態が発生します。「再任用前の勤務において職務遂行の能力は実証されている(そのような者でなければ再任用できない。)」(「逐条地方公務員法」橋本勇著/学陽書房)とありますが、本市の実態は、そうではありません。
地方課(現在の市町村課)へ出向していた頃、法制化される前の再任用制度を勉強する機会がありましたが、当時、「こんな制度できたら、ウチあかんで」と思っていたことが現実になっています。
給与条例の一部を改正する条例を市議会12月定例会に追加提案しました。
今回の条例改正は、人勧のプラスαとして、平成20年1月1日の昇給に限り、本来の昇給の号給数に1号給を加えた号給数を昇給の号給数としています。これは、平成13年1月1日から昇給期間を24月延長(平成15年度から平成17年度までは給料月額の3パーセントをカット)したことの回復措置として実施するものですが、昇給期間で考えると、3月の短縮ということになります。
ここで問題となったのが、平成17年度の給与改定によって、平成18年4月1日から適用されることとなった新しい給料表の給料月額が、それまで受けていた給料月額を下回った場合の経過措置として、それまで受けていた給料月額(以下「現給保障額」といいます。)を保障することとされた職員(以下「現給保障者」といいます。)の取扱いです。
本来の昇給に1号給の特別昇給を加えた号給数の給料月額が現給保障額を上回った場合に、その給料月額を現給保障者の給料月額とすると、職員間で給料月額の逆転が起きてしまう場合があります。現給保障額は、現在の給料表には規定されていない給料月額だからです。そこで、現給保障者については、本来の号給数で昇給した場合に現給保障額に達しないときは、現給保障額に、本来の昇給額に1号給を加えた昇給額と本来の昇給額との差額に相当する額を加えた額を新たな現給保障額とする必要があります。
この規定を考えるのには、相当、力が要りました。
いわゆる生理休暇は、日本、韓国及びインドネシアにおいてのみ認められている休暇です。生理休暇は、病気休暇として扱うこととされており(「人事院規則10−7(女子職員及び年少職員の健康、安全及び福祉)の運用について」昭和61年3月15日職福第121号)、その要件は、単に生理日であるだけでは足りず、「生理日の就業が著しく困難」(労働基準法第68条)であることが必要です。「生理休暇に名を借りて登山やスキー、水泳等、著しく体力を消耗する運動を行うことが明らかな場合(後に明らかになった場合)は、それが本人の気分転換になると強弁しようとも、生理日の勤務が著しく困難な状況にあるとはいえず、生理休暇の要件に該当しないものとして承認しなくても差支えないものと考える……(略)……。また、看護師のように三交代勤務をとっている女性職員について、毎月の勤務割当表を作成する際に、あらかじめ仲間同士でいわゆる生理休暇の予定日を決めておき、生理日でもない当該予定日に休暇をとることは、現実に行われている「生活の知恵」といえる。実務上は便宜ではあるが、法律的には許されるものではない」(「地方公務員の新勤務時間・休日・休暇」小原昇・小川友次著/学陽書房)のです。また、「生理休暇をとった日が、各月の一定した日頃でないばかりでなく、いずれも日曜日か祭日の前後の日であることから、月経困難症のために休務したものとは認められない」とした判決(昭和47年7月4日東京地裁)もあります。
なお、昭和62年改正前の労働基準法では、生理に有害な業務が規定されており、当該業務に該当すれば、生理日の就業が著しく困難でなくとも休暇が取得できましたが、現在、そのような業務は医学的には考えられないことから、この規定は削除されています。
本市でも、不自然な生理休暇が散見されます。しかし、おかしなことですが、このことを問題視することは、一つのタブーとなっています。
他の市町村から顧問弁護士について照会されることがあります。一般的には、弁護士事務所と委託契約を締結し、第13節委託料により予算措置されていることと思います。しかし、本市の場合は、顧問弁護士を地方公務員法第3条第3項第3号に規定する特別職として雇用契約を締結し、第1節報酬により人事課で予算措置しています。
本市では、顧問弁護士は市の職員(非常勤特別職)ということになります。そのせいか、訴訟事務は、原課対応です。当然、文書法規係でも相談には乗りますし、頼まれれば弁護士事務所へも同行しますが、あくまで主体は、原課になっています。
なぜ、顧問弁護士を非常勤の特別職としているのかは、はっきりしません。今から30年以上前に前市長が初当選したときに、知り合いに現在の顧問弁護士を紹介していただいて以来のことであると聞いています。
地方公務員法第32条は、「職員は、その職務を遂行するに当つて、法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない」と規定しています。
職務命令が有効なものであるかどうか疑義があるに過ぎない場合は、その職務命令は有効であると推定されます。「職員が上司の職務命令を違法であるとして、その命令への服従を拒否し得るのは、一見明瞭な形式的適法性を欠く場合に限るべく、実質的な内容に立ち入つて審査しなければ容易に適法か違法か判明しない場合には、職員にその適否を審査する権限はなくたとえその主観において、職務命令の内容が違法または不当と考えられるものであつても、それが客観的に違法であることが明白でない以上、職員はそれを拒否することができず、ただ職務上の上司に対してこれに関する意見を述べることができるに過ぎないものと解するのが相当である」(昭和51年5月21日最高裁判決)とされています。
しかし、「職務命令が当然無効である場合、すなわち、職務命令に重大かつ明白な瑕疵がある場合には、部下はこれに従う義務はない。たとえば、職務専念義務(法35)に違反して職務を放棄するよう命じられた場合、政治的行為の制限(法36)に違反して特定の公職の候補者のために選挙運動を行うよう命じられた場合、庁用自動車の運転手が制限スピードを超えて運転することを命じられた場合などはいずれも当然無効の命令であり、部下はこのような命令に従ってはならない」(「逐条地方公務員法」橋本勇著/学陽書房)のです。
本市の職員には、こんな簡単なこともわからない者がいます。「市長が言うてんやからしゃあない」ではないのです。
人事課が行政実務研修として、課長代理級職員(文書管理規程、情報公開条例及び個人情報保護条例)と係長級職員(文書管理規程、事務決裁規程、予算規則、会計規則、契約規則及び公有財産規則)に括弧内の研修を実施しています。そのうち、文書法規係で講師をするのが、文書管理規程、情報公開条例及び個人情報保護条例です。今では、係長が講師をしてくれますので、自分は楽になりました。
課長代理級職員の行政実務研修は、元々、文書管理責任者及び個人情報管理責任者の事務説明会として総務課で実施していたものを研修として位置づけたものです。
係長級職員の行政実務研修は、観念的な研修ではなく、実務上のスキルを身に付ける研修をしようということで平成16年度から実施するようになりました。
現実として、文書管理システムも財務会計システムも見たことがないという課長がいます。予算や決算を知らない課長がいれば、条例と規則の区別がつかない課長もいます。このような状態を将来的に改善しようと始まった行政実務研修ですが、好評のようです。本市の職員も実務上の知識を得たがっているのです。
地方公務員法上は、いわゆる「管理職」という概念はありません。地方公務員法においては、「重要な行政上の決定を行う職員、重要な行政上の決定に参画する職員、重要な行政上の決定に参画する管理的地位にある職員、職員の任免に関して直接の権限を持つ監督的地位にある職員、職員の任免、分限、懲戒若しくは服務、職員の給与その他の勤務条件又は職員団体との関係についての当局の計画及び方針に関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが職員団体の構成員としての誠意と責任とに直接に抵触すると認められる監督的地位にある職員その他職員団体との関係において当局の立場に立って遂行すべき職務を担当する職員」を管理職員等といい、管理職員等と管理職員等以外の職員とは、同一の職員団体を組織することができません(地方公務員法第52条第3項)。その範囲は、人事委員会規則又は公平委員会規則で定めることとされており(同条第4項)、本市では、代理級以上の職員のほか、秘書、企画、財政、人事、文書法規及び管財の係長が管理職員等とされています。
例えば、職員団体に加入している児童福祉係長が人事係長に異動すると職員団体を脱退しなければならず、さらに人事係長から市民税係長に異動すると職員団体に再び加入することができることになります。これが、数年前まで本市では守られず、管理職員等と管理職員等以外の職員とが同一の職員団体を組織していました(ただし、地方公務員法上の職員団体でないならば可能です。)。
このことの問題点については、以前から指摘していたのですが、聞いてはもらえませんでした。それが、平成12年度の人事異動で職員団体の委員長が管財係長に任命されたことによって議会で問題になり、以後、地方公務員法第52条第3項が遵守されています。自治体の問題点を是正するためには、外部からの指摘や不祥事の発生が必要なのかもしれません。
なお、管理職手当は、管理又は監督の地位にある職員の職務の特殊性に基づき支給される支給される手当です。ですから、管理職手当が支給されない管理職員等が存在します。
任命行為(つまり辞令)の効力は、いつ発生するのでしょうか?
「行政行為の効力発生の一般原則は、到達主義によっており、任命行為も法律に特別の定めがない限り、相手方に意思表示が現に到達し、または相手方が了知しうべき状態におかれたときにその効力を発生するものとされている(昭和25年11月18日法意一発第89号)。したがって、一般的には、辞令が交付されたときに任命行為の効力が発生することになる」(「逐条地方公務員法」橋本勇著/学陽書房)とあります。このことを厳格に解すると、例えば4月1日付けで総務課長が異動した場合、4月1日の決裁は、辞令交付式までは旧総務課長が、辞令交付式以後は新総務課長がするということになります。しかし、こんなことをしている自治体は、あるのでしょうか?
「逐条地方公務員法」は、次に「しかし、降任のように不利益処分に該当するものについては、常に到達主義によって効力を生ずるものと考えなければならないが、その他の任命は、むしろ発令の日付の午前零時から効力を生ずると解することが任命権者の意思に合致し、職員の利益にも反しないものと考えられる」と続きます。至極もっともな解釈ではないでしょうか。
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