−管理人のたわごとブログ− 地方自治法
統一地方選挙が終了しました。
HP等を見ていると、ほとんどの地方公共団体が議会改革に取り組んでいるようですが、それなりの成果を上げているところは少ないように思います。本気で議会を改革しようと考えているならば、次のような取扱いを検討してみてはどうでしょうか。
「議会の母国である英国の下院議長は、議長をやめるときは議員をやめるときであるといわれています。このため議長経験者の議員はいません。我が国の場合、国会、地方議会とも議長辞任後も議員として在職しています。特に議長の短期交代をしている地方議会では、前議長、元議長が多くいます。
議会での最高位に就いた議長が議長を辞職したあとも、一議員として在職することはおかしな現象といえます。議員全員の中から議長適任者として選挙された議員が交代することは、適任でなくなったこと、また選挙した議員に眼力がないことを意味すると言えなくもありません。前議長、元議長が多いのは、政治的な話し合いにより議長の短期交代をしていることに大きな理由がありますが、同時に議長経験議員が議員として在職することを禁止した規定がないことにも一つの理由があります。議長の地位の重要性や権威を考慮するならば、議長辞任後は議員を続けるべきではありません。」(「議員・職員のための議会運営の実際21」地方議会研究会編著/自治日報社)
このことを条例で定めたところで、ある地方公共団体の多選自粛条例のようになる可能性が大きいと思います。しかし、議会を個々の議員の単なる集まりではなく、住民代表の議決機関として機能させるためには、一つの方法として検討してみるのも面白いのではないでしょうか。
「新自治用語辞典」(新自治用語辞典編纂会編/ぎょうせい)によると、執務時間とは、「組織体としての国や地方公共団体が全体として執務を行う態勢にある時間をいう。執務時間として定められた時間には大部分の行政活動が行われ、行政サービスが提供されることとなる。したがって、執務時間は行政需要にいかに対応すべきかという観点から決定されるものであり、職員が勤務を提供することについての諸条件、いわゆる勤務条件とは異なり、国や地方公共団体の事務の管理及び運営に関する事項に係る概念である。従来、都道府県については官庁執務時間が準用され、市町村については明確な規定が存在していなかったが、昭和63年の自治法改正の際、都道府県に対する準用を外すとともに、すべての地方公共団体において、規則によって執務時間を定めるよう要請がなされた。職員の執務時間を定めるに当たっては、地方公共団体の執務時間中は常に職務の執行体制が整備されていなければならないことに十分注意する必要がある」とされています。
昭和63年の自治法改正というと、「地方公共団体の休日は、条例で定める」とされ、4週6休制が導入されたときですね。その際、「すべての地方公共団体において、規則によって執務時間を定めるよう要請がなされた」のは知りませんでした。しかし、本市を含む多数の地方公共団体では、今も規則によって執務時間が定められていません。おそらく、勤務時間との関係上、又は地方公共団体の事務の性格上、執務時間をあえて規定する必要性が認められなかったからではないでしょうか。
なお、執務時間を営業時間又は窓口時間として捉えるならば、規則よりも条例で規定する方が適当ではないかと思います。
「注釈地方自治関係実例集」(地方自治制度研究会編/ぎょうせい)には、この行政実例に対する注釈が次のようにあります。
「設問について一事であるかどうかを考えるに議案の形式だけから考える場合は同一、すなわち一事とはいえないであろうが、その内容について考えるならば、A案の否決が現状維持を是として行われたものである場合は、その数に関し、議会の決定的意思表示つまり定数は二〇とする決定があったことにほかならないから、同一会期中にはその後における客観情勢の変化等により必要が生じた場合でない限り、再びその数の変更に関する審議をすることは明らかに一事について審議するものといわざるを得ない。
しかし、その趣旨がA案に示された数に賛意を表しがたいがために、換言するならば改正原案の増加数が多すぎるとして、あるいは少なすぎるとして、つまり当該原案に示すその数自体に異議を求めて否決したものである場合は、右の現状維持を是として否決した場合と異なり、その数に関し決定的な一つの意思が表明されたということは根拠が薄く、したがってこの場合、改めて別の定数とする改正条例案(もちろんB案のようなものを含む。)を提案し、審議することは、その適否は別としても、必ずしもこれを一事とみる必要はなく、いわゆる一事不再議の原則には反しないと考えてよいと思われる。」
一事不再議の原則は、議会の議決があって初めてその適用があるものです。そして一事であるかどうかの認定は、議会が決定することとされています。では、もしも議員定数を16人とするものから20人とするものまで、A案からE案まで5種類の議員定数条例の一部を改正する条例案が議員から提案された場合は、どのように取り扱うのでしょうか。前掲書の注釈のとおり、否決された趣旨が当該条例案に示された数に異議を求めて否決したものであると考えるならば、一事不再議の原則には反せず、A案、B案、C案、D案、E案と順番に審議していくことになります。
確かに、一事不再議の原則には反しないのでしょうが、あまり適当な方法であるとは考えられません。現実にこのような問題が発生した場合は、審議の方法を少し工夫する必要があると思います。
一事不再議の原則とは、「議会の会議原則の一つであり、一つの事件が議決されると、同一事件については、その会期中に再び審議の対象とすることができないとする原則である。一時不再理の原則ともいう。
一事不再議の原則は、自治法上に明定されていないが、会議原則として、いわば条理上の原則として確立した原則である。この原則を認める理由としては、@議会の会議の能率を高めること、A議会の議決に権威をもたせることの二つがあげられる。
何が「一事」であるかについては、事件の題名など形式面からだけで判断するのではなく、再び事件に供するに至った目的、趣旨、事情などが異なっているか否かを実質的に判断することが必要である。
なお、一事不再議の原則の例外として、自治法176条、177条の再議の場合と、事情変更の原則の適用がある場合とがあり、更に、特別な場合として、自治法74条3項の規定により直請求に係る条例案が議決される場合がある」(「新自治用語辞典」新自治用語辞典編纂会編/ぎょうせい)とされています。
標準都道府県・市・町村議会会議規則は、「議会で議決された事件については、同一会期中は再び提出することができない」(市第15条)と規定していますが、会議規則中に一事不再議に関する規定の有無にかかわりなく、地方公共団体の議会についても、一事不再議の原則の適用があるものと解されています(昭和33年3月26日行政実例)。
実際に一事不再議の原則を適用する場合に問題となるのが「一事」の認定です。例えば、議員定数を16人とするものから20人とするものまで、5種類の議員定数条例の一部を改正する条例案が議員から提案された場合の取扱いはどうするのでしょうか?
昭和34年12月16日付けの行政実例には、次のようにあります。
問 議会の議員の定数が三六人であるところを二〇人に減少していた市において、議員定数を二六人
にする減少条例の一部改正案が議員から提案されたが否決された。同一会期中に議員定数の減少
条例を廃止する条例案を審議することは、一事不再議の原則に違反するか。
答 さきの議案を否決した趣旨が現状維持を是とする意思の表示である場合においては、地方自治法
第七四条第三項の規定により付議された議案であるとき又は事情の変更によりあらたな必要が生じた
ものであるときを除き、一事不再議の原則に反するものと解する。
前回の記事にした議会委員会条例は、その発案権が議員(議会の委員会を含む。以下同じ。)に専属していると解されていますが、基本的に条例の発案権は、長と議員の両方が有しているものであって、議員報酬条例も、その発案権は、長と議員の両方が有しています。
この議員報酬条例の一部を改正する条例の発案権について、近隣の市町村から面白いローカルルールを聞きました。それは、議員報酬を上げるときは長から提案し、下げるときは議員から提案するというものです。
平成26年12月議会での議員報酬条例の一部を改正する条例は、長から提案したそうです。ホンマに、色んな市町村があるものだと思います。
本市の法規係は、議会事務局からの依頼により、議員提案による条例案の審査も行います。場合によっては、事務局の職員を交えて、議員とヒアリングをすることもあります。
3月定例会でも法規審査の依頼があり、資料として、議会事務局から平成27年1月23日付け全議M1第2号通知のコピーが提出されました。地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律(平成26年法律第76号)附則第6条の規定により、地方自治法第121条第1項中「教育委員会の委員長」が「教育委員会の教育長」に改められたことに伴い、標準市議会委員会条例の一部を改正するものですが、気になったのが、「法令又は条例に基づく」を「法律に基づく」に改正している部分です。
同通知の改正趣旨によると、これは、「平成11年の地方自治法改正に合わせた改正です」とあります。地方分権一括法を見ると、当時の地方自治法第75条第3項、第98条第1項、第121条、第125条等に規定されている「法令又は条例に基づく委員会又は委員」が「法律に基づく委員会又は委員」に改められています。「Q&A改正地方自治法のポイント」(地方自治制度研究会編/ぎょうせい)によると、「「条例に基づく委員会又は委員」については、本規定の制定当初(昭和25年改正)においては、人事委員会及び人事委員が予定されていたようであるが、これらについては、現在法律に規定されており、「条例に基づく委員会又は委員」は存在していない。
また、昭和27年改正により、第138条の4において「普通地方公共団体にその執行機関として普通地方公共団体の長のほか、法律の定めるところにより、委員会又は委員を置く」こととされており、「条例に基づく」は不適切であるので、今回の改正に併せて整備を図ることとするものである」とあります。
標準・都道府県及び町村議会委員会条例は、既に改正されていますので、標準市議会委員会条例のみ改正漏れということのようです。たまには、こうゆうこともありますね。
なお、標準条例では、「法令又は条例に基づく」と引用していますが、「法令又は条例」で足りると思われます。おそらく、地方自治法第121条の改正規定が「基く」を「基づく」に改正していることから、このように引用してしまったのではないでしょうか。
地方自治法第102条第2項の「「毎年」とは、暦年(1月1日から12月31日まで)をいう」(昭和27年9月19日行政実例)と解されています。これは、同法第208条第1項(会計年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わるものとする)の規定のような特別の定めのない限り、民法の一般原則に従って計算されるためです(第143条)。
今年も年末の御挨拶をさせていただく時期になりました。しょぼい市のしょぼい職員のたわごとにお付き合いいただき、ありがとうございました。
皆さん、良いお年をお迎えください。
表決とは、「議長の要求により、議員が出席して問題に対して議会の意思決定に参加する行為で、いわゆる賛成・反対の意思表示をする行為」(「最新会議規則・委員会条例・傍聴規則逐条解説」中島正郎著/ぎょうせい)をいいます。議員が意思表示をすることを表決というのに対し、議長が意思表示を求めることを採決といい、その結果生ずる議会の意思決定を議決といいます。
地方自治法上、表決の方法は規定されていないことから、会議規則で定めることになっています。標準会議規則では、起立による表決を原則とし、その他の方法として投票による表決及び簡易表決を採用していますが、地方公共団体によっては、挙手による表決、電子投票による表決等を採用しているところもあります。
最近、議会改革の一環として、各議員の表決結果を公表している市町村議会があります。しかし、表決を公表するためには、記名投票による表決による必要があります。起立による表決や挙手による表決は、「起立(挙手)者の多少を認定して可否の結果を宣告する」(標準市議会会議規則第70条第1項)ものであって、起立(挙手)者の数を数えたり、氏名を確認したりするものではないからです。
HPを見ていると、起立(挙手)による表決にもかかわらず、表決結果を公表している市町村議会は、確かにあります。だからといって、「やっとるやないけっ」て言われてもねえ………
ところが、議会基本条例において、「議会は、議会活動に関し、審査、諮問又は調査のため必要があると認めるときは、別に条例で定めるところにより、附属機関を設置することができる」と規定している地方公共団体があります。
そうした地方公共団体では、「地方自治法上、議会に附属機関を設置することができると規定されていないのは、議会への附属機関の設置を禁じるという趣旨ではなく、法が想定していないと解すべきものであって、条例を根拠として設置することは可能である」と解釈しているようです。そして、このことに対する総務省行政課の見解は、「地方自治法は地方議会に附属機関を置くことを想定しておらず、議会基本条例に基づく附属機関が議会に設置されたとしても、地方自治法に根拠を有しない機関となる(条例のみを根拠とする機関となる)。地方自治法の想定の枠外の機関であることから、その委員の身分や報酬についても検討課題は残っているが、条例の根拠があれば、附属機関の設置それ自体が違法であるということにはならない」というものだそうです。
これが、自分には良く分かりません。特に、「地方自治法に根拠を有せず、条例のみに根拠を有する附属機関」や「条例の根拠があれば、附属機関の設置それ自体が違法であるということにはならない」という辺りは、全く理解できません。
議会に附属機関を設置する地方公共団体が増えてきていることは了知しています。また、東京電力福島原子力発電所事故調査委員会法によって、国会に東京電力福島原子力発電所事故調査委員会が置かれたことも理解しています。それでも、地方自治法を読む限りは、議会に附属機関を設置することはできないと解さざるを得ないのではないかと考えています。
なお、議会改革のホームページ等を見ていると、議会の附属機関の設置根拠を地方自治法第100条の2としている地方公共団体がありました。失礼ながら、もう少し整理する必要があるのではないかと思います。
議会に附属機関を設置することができるのでしょうか。
地方自治法第138条の4第3項本文は、「普通地方公共団体は、法律又は条例の定めるところにより、執行機関の附属機関として自治紛争処理委員、審査会、審議会、調査会その他の調停、審査、諮問又は調査のための機関を置くことができる」と規定していますが、議決機関である議会には、そのような規定がありません。そのため、議会に附属機関を設置することは、否定的に解されていました。
構造改革特区第9次・第10次の提案において、岐阜県多治見市が議会に附属機関を設置することができるよう求めた提案に対して、「議会は住民の代表である議員により構成される合議制の議事機関として、自らが多様な意思を反映させて意思決定を行う機関であり、その性格上附属機関の設置はなじまない」とした総務省の回答は、そうした従来の解釈を踏まえたものであったと考えられます。
また、第28次地方制度調査会の「地方の自主性・自律性の拡大及び地方議会のあり方に関する答申」において、「議会が、議案の審査又は当該地方公共団体の事務に関する調査のため必要があると認めるときは、その議決により、学識経験を有する者等必要な者に、個別具体の事項について調査・報告をさせることができることとするとともに、複数の者の合議による調査、報告もできることとすべきである」と提言されたことについては、地方自治法の一部を改正する法律(平成18年法律第53号)により、次のような規定が追加されました。
第100条の2 普通地方公共団体の議会は、議案の審査又は当該普通地方公共団体の事務に関する
調査のために必要な専門的事項に係る調査を学識経験を有する者等にさせることができる。
「この制度は、議会において地方公共団体の外部の者の知見を活用するためのものであり、執行機関において非常勤の特別職の委員等を任命、又は委嘱し、それらの者を構成員として組織して設置される執行機関の附属機関とは区別されなければならない」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)と解されています。
こうしたことは、議会に附属機関を設置することができないということを示したものであると理解していました。
第4条の2 地方公共団体の休日は、条例で定める。
A 前項の地方公共団体の休日は、次に掲げる日について定めるものとする。
⑴ 日曜日及び土曜日
⑵ 国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号)に規定する休日
⑶ 年末又は年始における日で条例で定めるもの
B 前項各号に掲げる日のほか、当該地方公共団体において特別な歴史的、社会的意義を有し、住民
がこぞって記念することが定着している日で、当該地方公共団体の休日とすることについて広く国民
の理解を得られるようなものは、第1項の地方公共団体の休日として定めることができる。この場合に
おいては、当該地方公共団体の長は、あらかじめ総務大臣に協議しなければならない。
C (略)
地方自治法第4条の2第2項の規定は、前項の規定により、地方公共団体が条例で定める休日の基準を示したものです。第2項各号は、例示列挙ではなく、限定列挙であるとされていることから、第3項の規定による場合を除き、第2項各号に掲げる日以外の日を地方公共団体の休日とすることはできないと解されています。
また、第4条の2第3項の「当該地方公共団体において特別な歴史的、社会的意義を有し、住民がこぞって記念することが定着している日で、当該地方公共団体の休日とすることについて広く国民の理解を得られるようなもの」には、盆、祭、市政記念日等は該当しない(平成3年4月2日付け自治行第38号通知)ものとされており、極めて限定的に解されています。現に、同項の規定による休日は、沖縄県及び県内市町村における慰霊の日と広島市の平和記念日のみとなっています。
さらに、第4条の2第2項第3号の「年末又は年始における日で条例で定めるもの」についても、国の行政機関の年末年始の休日よりも長い休日を定めることは、地方公務員法第24条第5項(均衡の原則)の規定に違反し、できないと解されています。
地方自治法第4条の2第1項で「地方公共団体の休日は、条例で定める」と規定しておきながら、地方公共団体に裁量の余地がほとんどないのは、同条が次のような理由によって規定されたからではないかと考えられます。
「官庁の休日を定めることは経済社会に重大な影響を及ぼすものであることに鑑みれば、官庁の休日は法律によって規定すべきものであるとした法制意見がある(昭二三、三、二七)。しかしながら、官庁の休日を定める法律は制定されることはなく、日曜日及び年末年始の日について、明治以来の確立した慣習として官庁の休日とされ、また、国民の祝日に関する法律(昭二三法一七八)に規定する休日についても官庁の休日とする取扱いがなされてきた。地方公共団体においても、官庁と同様、定着した慣習として日曜日、国民の祝日、年末年始の休日が閉庁日とされてきた。このため、公務員の週休二日制を実施し土曜閉庁方式を導入するに当たって、従来法的根拠があいまいであった日曜日等の閉庁を含め国及び地方公共団体の休日全体としての法制の整備が図られたものであり、国については行政機関の休日に関する法律(昭六三法九一)等の法律が定められ、地方公共団体については本条が設けられたものである。」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)
なお、地方公共団体の休日を条例で定めるということは、地方公共団体の事務処理の権能に効力を及ぼすものではありません。
5月18日は、市議会議員選挙の投票日でした。
20人の議員が決まり、昨日、当選証書が授与されました。
一般選挙があった場合、本市では、まず打ち合わせ会を開きます。その後、2、3日以内に会派結成届が提出され、議会運営の協議会を開いた上で、臨時会が開会されます。一般選挙後の最初の臨時会の招集手続については、2010年5月17日付けで記事にしたとおりです。
選挙といえば、全国的に投票率が低下し続けているようですが、本市も例外ではありません。4年前は55.41パーセントでしたが、今回は10ポイント以上も低下し、44.21パーセントと最低記録を更新しました。何でなんでしょうね?
基金には、特定の目的のために、財産を維持し、又は資金を積み立てるためのものと、定額の資金を運用するためのもの(地方自治法第241条第1項)とがあります。後者の定額運用基金は、「一定額の原資金を運用することにより特定の事務又は事業を運営するため設けられたものであり」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)、その額は、条例で規定しなければならないとされています。
定額運用基金は、「定額であるところに意義があり、例えば育英資金として運用するため定額を定め、当該額を数か年度にわたって一般会計より繰り入れるものと定めたような場合では当該基金は定額基金となるが(昭三九・六・二五行実)、寄附金を原資に奨学資金貸付基金を設置し、この原資の預金運用によって生ずる利子収益金を予算を通して奨学金として貸付するのは、原資を使って貸付を行うものではなく、利子のみを利用するのであり、定額の資金を運用するための基金とはいえず、特定の目的のために財産を維持するための基金の一種であると考えられ」(「地方財務実務提要」地方自治制度研究会編集/ぎょうせい)ています。
逆に言うと、原資に手を付けるならば、定額運用基金として管理する必要があり、また、その額が予算の定めるところにより積み立てられるのであるならば、定額運用基金の趣旨に照らし、しかるべき時点において、基金の額を改正する必要があると解されます。
一部事務組合は、特別地方公共団体であり、法人格を有します。よって、区域、権能及び構成員を有します。一部事務組合の設立に伴う効果は、次のとおりです。
「⑴ 一部事務組合が成立すれば、それによって共同処理するものとされた事務は、関係地方公共団
体の権能から除外される。」
「⑵ 一部事務組合を設けた場合において、組合内の地方公共団体につきその執行機関の権限に属す
る事項がなくなったときは、その執行機関は組合の成立と同時に消滅する(2後段)。」
「⑶ 一部事務組合が成立した場合、その権能に属することとなった事務に関する関係地方公共団体
の条例又は規則は、組合の成立によって当然には消滅することはなく存在する。」
「⑷ 一部事務組合が成立したとき、これを一般に周知する法律手続は明記されていない。」
(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)
そのように理解していましたが、平成26年度は、理解を超える人事異動がありました。うーん………あっ、自分は、いつもと同じ新年度を迎えています。
予算特別委員会が終了しました。毎年、設置されるこの委員会で、議会費の説明や質疑に対する答弁は、誰が行っていますか?本市では、議会事務局長が行っています。
しかし、議会事務局長は、地方自治法第121条の説明員に委任されていません。よって、議会費の説明や質疑に対する答弁はできません。おそらくは、議会や委員会に当然に出席していることから、慣例として行うようになったのではないかと思われますが、「事務局長は議長の隣席に着席していますが、これは議長を補佐するためであり、説明員として出席しているのではありません。
議会費に対する質問に対しては、予算編成権を持つ長、そして説明員として委任を受けている総務部(課)長が答弁すべきです」(「議員・職員のための議会運営の実際15」地方議会研究会編著/自治日報社)とあるのが本来の姿です。
なお、執行機関の委員会への出席義務については議論のあるところですが、ここでは、地方自治法第121条にその根拠を求め、委員会条例にその手続を規定していると解しています。
地方公共団体の名称について、地方自治法は、「従来の名称による」(第3条第1項)と規定しているのみです。また、平成11年に公布されたいわゆる地方分権一括法によって同条第3項以下が改正され、都道府県以外の地方公共団体の名称を変更する場合の手続が、知事の許可制から協議制に改められました。そのせいか、平成の大合併の結果、かなりユニークな名称の市町村が誕生しました。
失礼ながら、世間一般の評価によると、栃木県さくら市、埼玉県さいたま市、山梨県南アルプス市、愛媛県四国中央市が四大珍市町村名でしょうか。また、実現しなかったところでは、青森県あっぷる市、千葉県太平洋市、愛知県遷都麗空市、佐賀県湯陶里市なども珍名としての評価が高いようです。
従来の名称による市町村名は、歴史的にも地理的にも意味があるのであって、これらを無視して安易に名称を変更することは、歴史や文化を消失することであるという批判もありますが、ここでは、完全にいちびって(大阪弁で「ふざけて」という意味)、もっといちびった市町村名を考えてみたいと思います。
珍名とされる市町村名は、平仮名、片仮名、僭称、方角、合成、イメージ等に分類することができるようですが、僭称するならば、いっそ「日本」を僭称してはどうでしょうか。そのままだと面白くないので、「大」や「一」を付けて「大日本市」や「日本一市」とすると、さらにインパクトが増大します。また、「大」を付けるなら、「小京都」をもじって「大京都市」と名乗ると、観光客が増えるかもしれません。既存の市町村名を名乗るのがはばかられるならば、外国の市町村名をパクるのもえーでしょう。「ロンドン」や「ワシントン」や「ジュネーブ」を漢字にし、ついでに方角を入れて「東倫敦市」や「西華盛頓市」や「寿府中央市」とすると、ごっついかっこえーと思いませんか。イメージで漢字をあてるならば、「ヘルシンキ」を「地獄神鬼市」とすると、暴走族の名前みたいで、まちがヤンキーでにぎわうことが確実です。しかし、かわいいイメージで市町村名を決めるならば、やはり平仮名が一番です。定番のキーワードは、「あい」、「ゆめ」、「みらい」でしょうが、新鮮味に欠けますので、ここは、英語を平仮名にして「らぶふゅーちゃー市」や「どりーむらぶ市」とするのはどうでしょう。ニュース等で市町村名が出るだけで、その魅力を全国に発信することができるのではないでしょうか。
いつかは、そんな市町村名がホンマに誕生するかもしれません。それでも、金で市の名前を売るよりは、はるかにマシだと思います。
一方、「地方自治法質疑応答集」(地方自治制度研究会編著/第一法規)では、名誉市民に対する恩典として、「⑴公営住宅の優先的入居および使用料の減免、⑵水道料の無料および市営電車の無料パスの譲与、⑶住民税の減免」の適否について、次のような回答があります。
「公営住宅の優先的入居については、地方自治法第二四四条第三項において、公の施設の利用につき不当な差別的取り扱いを禁止している。不当な差別的取り扱いかどうかは憲法第一四条をも参酌して決めるべきであり、合理的な根拠がありさえしたら不当な差別ではない。公営住宅法は入居者募集を公募によるとし、その他入居者資格、選考基準等をも定める。したがって優先的に入居させようとしても、法の所定の手続を踏んだうえ、しかも不当な差別的取り扱いはできないとされている。その場合には「特権」とは言えない。また功労に報いるための常識的・合理的な範囲でなら、公営住宅の場合も水道料金の場合も不当な差別的取り扱いとして違憲と断定する必要はないが、それが功労に報いる適当な方法であるかどうかの問題は残ろう。……(略)……
手数料の減免についても、使用料の場合と同様に公益性の見地、栄誉をたたえるにふさわしいかの点、減免規定の通常の運用方法等からみて、憲法上の疑義はないとしても運用としては好ましくないと言えよう。
地方税法は、市町村民税の減免について、第三二三条で「天災その他特別の事情がある場合において市町村民税の減免を必要とすると認める者、貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者その他特別の事情がある者に限り」当該市町村の条例の定めるところにより、市町村民税を減免することができる、としている。つまり、天災、生活扶助の場合等特別の事情があり、担税力がなくなった場合に限り、条例で定めるところにより減免できるのである。担税力はありながらも功績著しく、それをたたえる必要がある場合というのは、ここでの特別の事情には予想されていない。また一般国民ないし市民が一般的に負うべき租税のような負担の減免は、やはり特権的色彩がかなり強いと言わねばならず、住民税の減免はなし得ないと解する。
以上を通じ名誉市民に与えられるべき恩典とは、その称号のもっている意味合い、国によって授与される栄典の場合との権衡をも考慮すれば、精神的に名誉を表彰する範囲にとどめるのが運用上適当といえよう。」
自分としては、この「精神的に名誉を表彰する範囲にとどめるのが運用上適当といえよう」を支持したいです。
名誉市民が「栄典」に該当することについては疑義がないようですが、年金の支給が「特権」に該当するかどうかについては、解釈が分かれるところです。しかし、文化勲章の授章者に対して、直接、年金を支給することができないのは、憲法第14条に違反するおそれがあるからです。そのため、文化勲章とは別の制度として、文化功労者に対する年金制度が文化功労者年金法によって定められているはずです。ならば、年金は「特権」であって、名誉市民に年金を支給することは、憲法第14条に違反することになると解すべきではないでしょうか。
社会や文化の発展等に功績があり、郷土の誇りとして市民から尊敬される者を名誉市民として顕彰している地方公共団体があります。こうした地方公共団体の中には、名誉市民に対して年金を支給しているところもあります。
憲法第14条第3項前段は、「栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない」と規定しています。ここでは、名誉市民に選定することが「栄典」に当たるのかどうか、年金を支給することが「特権」に当たるのかどうかが問題になります。
行政実例では、名誉市民に対し、「市の施設の使用に関する使用料及び手数料の減免、本人の生活に対する便宜の供与又は援護、その他市長が必要と認めた特典又は待遇」を与えることについては、「名誉市民に対し、その功績を顕彰するに相応しい礼を以て遇するものである限り憲法の規定の趣旨に反しないものと解」(昭和32年1月23日付け自丁行発第6号)されています。
このことを解説した「注釈地方自治関係実例集」(地方自治制度研究会編/ぎょうせい)によると、「憲法第一四条の栄典は、天皇の国事行為として授与する栄典(憲法七Z)とはその範囲を異にし、ここに規定する栄典に限られず、広く公に与えられる栄典をすべて含むものと解されている(法学協会編「詳解日本国憲法」上巻三五四頁)。このように憲法第一四条の栄典の意義を公の権威による表彰のいっさいであると考えるときは、地方公共団体が条例の定めるところにより、一定の功績のある者に名誉市民の称号を与え、表彰することは、規模の大小、程度の差はあるとしても、それは栄典に該当するものと解さざるを得ない。いわば、名誉市民として選定されることは、栄典の一態様であるといえる。次に名誉市民に与えられる待遇が憲法第一四条の特権に該当するか否かという点であるが、同条は、民主主義憲法の一つの特徴である封建制度の否定の一環をなすものであって、同一条件の下に、すべての国民が法規の適用上又は法規の立法上平等の取扱いをうくべきものとして、行政権、司法権を拘束し又は立法者を拘束しようとする平等の原理に基づく国民固有の基本的人権として認められている趣旨に照らして考えるならば、ここにいう特権とは、広くいっさいの事実上の差別待遇を意味するものではなく、例えば世襲的な華族制度とか、租税の免除のごときものを指すものということができ、それは生来的、先天的な差別待遇は特権とすべきであるが、個々の人の後天的な功績によって差別が与えられるがごときものは特権とすべきでないものと解してよかろう。また、個々の人の功績を公に称揚することは、国の例をみても、文化功労者に対する文化功労年金の授与(文化功労者年金法)等のごとく差し支えないものとされており、その功績にふさわしい限りにおいて、公の立場から便宜を供与することを憲法上の特権と解して憲法違反とする論拠を見出しがたい。
上述したところからして、設問の名誉市民条例については、名誉市民に種々の特典、待遇を与えることは、著しく不当な待遇でない限り、憲法違反とは考えられないとする結論が導き出されたものといえる」とあります。
名誉市民に対して年金を支給している地方公共団体でも、同様に解しているものと考えられます。
議会の委員会において、執行機関が明らかに不穏当であると認められる発言をしたことはありませんか?
この場合、委員長が秩序維持権に基づき、不穏当発言の取消命令を出すことが考えられます。しかし、「委員長の発言取消し命令権は委員長が構成員である委員に対して行使するものです。執行機関の説明員は委員会の要求によって出席を求められた人達であり、委員会の構成員ではありませんから、仮に答弁の中に不穏当発言がありましても取消しの対象になりません。不穏当性が高いにもかかわらず、執行機関が取消しを委員長に申し出ないとき、委員長は取り消してはどうかと勧告することが適当です。これに応ずるかどうかは執行機関の判断です。」(「議員・職員のための議会運営の実際16」地方議会研究会編著/自治日報社)
これに応ずるのが大人の解決方法です。では、これに応じない場合は、どうすればよいのでしょうか?
その場合は、無視して放っておくか、それとも、不信任議決までいってしまいますか。
東京都の猪瀬直樹知事が徳洲会グループから5,000万円を受け取っていた問題が新聞等で報道されています。こういう問題が発生すると、地方自治法第100条に規定する調査を行うための特別委員会、いわゆる100条委員会が注目されますが、この規定、使いこなすには相当の能力が求められます。
第100条第2項は、次のように規定しています。
A 民事訴訟に関する法令の規定中証人の訊問に関する規定は、この法律に特別の定めがあるもの
を除くほか、前項後段の規定により議会が当該普通地方公共団体の事務に関する調査のため選挙
人その他の関係人の証言を請求する場合に、これを準用する。ただし、過料、罰金、拘留又は勾引に
関する規定は、この限りでない。
一般的には、同条に規定する調査権は、議会の議決により委任された委員会が行使するものとされますが、同項の規定による民事訴訟法の準用関係を理解している議員が何人存在するでしょうか。そもそも、民事訴訟法を理解している議員が何人存在するでしょうか。
「証人尋問」は、民事訴訟法第2編第4章第2節に規定されていますが、地方自治法第100条第2項の「証人の訊問に関する規定」の準用関係は、非常に難解です。東京都などでは、優秀な職員がゴロゴロ存在しているでしょうが、例えば、本市で100条委員会が設置された場合には、お寒い状況になりそうです。
「地方自治法質疑応答集」(地方自治制度研究会編著/第一法規)に「附属機関設置条例の提案権」という質疑応答があります。
「地方自治法第一三八条の四第三項の規定により長の附属機関を設置する場合において、当該設置条例の提案権は、長及び議員の双方にあるものと解して差し支えないか」という質疑に対し、次のような回答になっています。
「(略)……附属機関は、地方公共団体の執行機関の要請により、その行政執行のための必要な資料の提供等いわばその行政執行の前提として必要な調停、審査、審議、調査等を行なうことを職務する機関である(法二〇二の三@)。つまり、執行機関のための補助的な機関ではあるが、いわゆる長の権限の分掌組織ではなく、一般の局、部、課、出先機関等とは異なった独立性を有するものであること及び特に長に専属させる明文の根拠がなく、また条理上もそのようにいい切れないことから、条例提案権の原則からいって、本設問の提案権は、長及び議員の双方に属するものと解すべきであろう。」
この回答には、疑問があります。
地方自治法第158条第1項は、「普通地方公共団体の長は、その権限に属する事務を分掌させるため、必要な内部組織を設けることができる。この場合において、当該普通地方公共団体の長の直近下位の内部組織の設置及びその分掌する事務については、条例で定めるものとする」と規定しています。「普通地方公共団体の長は」と規定しているのは、長が法律上有している権限を分掌する事務処理組織に関する問題であることから、当該条例の提案権が長に専属することを示すものであると解されています。
一方、第138条の4第3項本文は、「普通地方公共団体は、法律又は条例の定めるところにより、執行機関の附属機関として自治紛争処理委員、審査会、審議会、調査会その他の調停、審査、諮問又は調査のための機関を置くことができる」と規定しており、長にその提案権を専属させる明文の根拠を欠いています。しかし、これは、「元来、附属機関なるものは、執行機関の行政執行に資するために設置されるものであるから、かつては(本条は、昭和二七年に新設されたものである。)、その設置は当該執行機関のもつ執行権限のうちに当然含まれているものと解されて、法令に特別の定めのない限りは、各執行機関が規則その他の規程で任意に附属機関を設置することができるものとされていたのであるが、附属機関といえども、普通地方公共団体の行政組織の一環をなすものであるから、普通地方公共団体において任意に設置しようとするときには、すべて条例で定めなければならないこととされ、各執行機関限りで任意に設置しうるという従来の建前は改められたのである」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)ことに伴うものであると考えられます。
附属機関が執行機関の附属機関であって、執行機関の行政執行のために条例の定めるところにより、その担任する事項について調停、審査、審議又は調停等を行う機関であるならば、附属機関設置条例の提案権は、長に専属するものであると解すべきではないかと考えます。
ある市議会の会議録を読んでいると、本会議の質問中に「……について要望させていただきます」、「……を要望して私の質問を終了させていただきます」、「……は要望ですので、答弁は結構です」といった発言が繰り返し行われているのが見受けられました。
質問の最後を要望で締めることが慣例になっているのであろうと思われるのですが、本来、質問の中で要望を述べることはできません。議員は、質問をするために議長から発言を許可されたのであって、議題外発言である要望を述べることは、認められないからです。この点、「委員は、議題について自由に質疑し及び意見を述べることができる」((標準)市議会会議規則〔準則〕第115条本文)委員会とは取扱いを異にしています。
「再質問では意見、希望、要望だけを述べて終わる例をみますが、やむを得ないものと解されます」(「議員・職員のための議会運営の実際2」地方議会編集会編著/自治日報社)という意見もあるようですが、同書の第15巻には、次のようにあります。
「議会は執行機関に対する要望団体ではありません。住民から選ばれた議員が住民のニーズを本会議の場で反映し、執行機関に公式の所信や対策を求めるところです。住民のために政策論争をして知恵を出し合い、より良い施策、経費の効率的使用を図ることを目的とします。これに対し要望は一方的な行為であり、議会本来の役目ではありません。要望を述べることは、見方を変えれば議員が口頭による請願を行っているようなものです。」
意味のない条例を制定することよりも、こういう点を改善していくことこそが本当の議会改革ではないかと思います。
(標準)市議会委員会条例〔準則〕では、「委員長は、委員会の議事を整理し、秩序を維持する」(第11条)ものとされ、表決権が付与されず、可否同数の場合における裁決権が認められています(第17条)。これは、委員長が、中立・公正な立場から委員会を運営しなければならないとされているからです。同様に、委員長は、付託案件の内容について、質疑又は討論をすることも認められていません。しかし、委員として発言することは認められており、(標準)市議会会議規則〔準則〕第118条では、次のように規定しています。
「委員長が、委員として発言しようとするときは、委員席に着き発言し、発言が終わった後、委員長席に復さなければならない。ただし、討論をしたときは、その議題の表決が終わるまでは、委員長席に復することができない。」
なお、「議員・職員のための議会運営の実際16」(地方議会研究会編著/自治日報社)には、「委員長が質疑する場合、委員長席から行ってもよいとする見解もありますが、委員長の中立、公平性に疑義を持たれますので、委員席から行うべきものと解されます」とあります。
委員長の発言について、実務上、他の市町村議会でどのように取り扱われているのか詳しくありませんが、厳格な取扱いをしているところは少ないのではないでしょうか。
しんぎ【審議】(名)スル 会議を開き、事情を調べ、可否を相談すること。「法案を―する」
しんさ【審査】(名)スル くわしく調べて、価値・優劣・適否などをきめること。「応募作品を―する」「資格
―」 「大辞林(三省堂)」
微妙に意味の違う2つの用語ですが、地方自治法上、地方公共団体の議会においては、次のとおり使い分けられています。
「議会は、前項の規定により付議された事件の審議を行うに当たっては、政令の定めるところにより、第1項の代表者に意見を述べる機会を与えなければならない。」(第74条第4項)
「常任委員会は、その部門に属する当該普通地方公共団体の事務に関する調査を行い、議案、請願等を審査する。」(第109条第2項)
「議会運営委員会は、次に掲げる事項に関する調査を行い、議案、請願等を審査する。」(同条第3項)
「特別委員会は、議会の議決により付議された事件を審査する。」(同条第4項)
「議員・職員のための議会運営の実際16」(地方議会研究会編著/自治日報社)によると、「審議」とは「一般的な表現(広義の概念)として本会議と委員会を合わせた議会全体の活動をいいますが、法的には本会議における活動を指します(狭義の概念)。したがって委員会では審議とはいわず、審査または調査の用語を用いて区別しています」と、「審査」とは「本会議から委員会に付託された案件について趣旨説明を聞き、疑義をただし(質疑)、討論し、表決するまでの一連の活動を指します」とあります。
さらに、同書には、常任委員会及び議会運営委員会は「審査」と「調査」を区別して規定していますが、特別委員会における「付議された事件」には「特定の事件についての調査」も含まれることから、第109条第4項の「審査」には「調査」も含まれるとあります。
ちなみに、本市では、「審議」と「審査」がごっちゃになっています。
行政財産を使用する権利に関する処分に不服がある者は、行政不服審査法の規定により不服申立てをすることができます。そして、この場合には、地方自治法第238条の7の規定が行政不服審査法の特例として適用されます。
この特例の一つとして、当該処分についての審査請求に対する裁決に不服がある者は、都道府県知事がした裁決については総務大臣、市町村長がした裁決については都道府県知事に再審査請求をすることができる(同条第6項)ものとされています。
一方、行政財産の目的外使用については、使用料を徴収することができる(地方自治法第225条)とされていますが、この許可処分中に附款された使用料に不服がある場合の不服申立てについては、同法第238条の7第6項の規定が適用されるかどうかが明確ではありませんでした。
今回、平成24年11月12日総行行第168号総務大臣裁決によって、行政財産の目的外使用許可処分に係る使用料に対する不服申立てについては、地方自治法第238条の7第6項の規定の適用が否定されています。「地方自治平成25年2月号第783号」の「行政財産の目的外使用に係る使用料に不服がある場合の再審査請求の可否について(平成二四年一一月一二日総行行第一六八号総務大臣裁決)」でこの裁決が紹介されています。事例が発生している地方公共団体においては、参考になると思います。
「普通地方公共団体がその当事者である審査請求その他の不服申立て、訴えの提起(普通地方公共団体の行政庁の処分又は裁決(行政事件訴訟法第3条第2項に規定する処分又は同条第3項に規定する裁決をいう。以下この号、第105条の2、第192条及び第199条の3第3項において同じ。)に係る同法第11条第1項(同法第38条第1項(同法第43条第2項において準用する場合を含む。)又は同法第43条第1項において準用する場合を含む。)の規定による普通地方公共団体を被告とする訴訟(以下この号、第105条の2、第192条及び第199条の3第3項において「普通地方公共団体を被告とする訴訟」という。)に係るものを除く。)、和解(普通地方公共団体の行政庁の処分又は裁決に係る普通地方公共団体を被告とする訴訟に係るものを除く。)、あっせん、調停及び仲裁に関すること」(地方自治法第96条第1項第12号)については、議会の議決が必要です。
労働関係調整法第18条の規定による調停の申請についても、議会の議決が必要です。ただし、同条各号に掲げられているもののうち、「相手方の申請又は労働委員会からの職権等による調停については、当事者が希望しない場合においても、強制的に手続に引き入れられるため、地方公共団体においては、議会の議決は不要」(「地方財務実務提要」地方自治制度研究会編集/ぎょうせい)であり、調停を成立させようとするときに議決を得れば足りると解されています。
現実には、労働関係調整法の規定による斡旋、調停及び仲裁について、「普通地方公共団体がその当事者」となる場合は、そう多くはありません。
正副議長選挙に立候補制を導入する議会が増えてきているようです。しかし、地方自治法第118条第1項前段は、「法律又はこれに基づく政令により普通地方公共団体の議会において行う選挙については、公職選挙法第46条第1項及び第4項、第47条、第48条、第68条第1項並びに普通地方公共団体の議会の議員の選挙に関する第95条の規定を準用する」と規定しています。
正副議長選挙で公職選挙法が準用されているのは、同法第46条第1項及び第4項の投票の記載事項及び投函、第47条の点字投票、第48条の代理投票、第68条第1項の無効投票並びに第95条の当選人の規定のみであって、第86条の4の立候補の届出等の規定は、準用されていません。このことから、正副議長選挙において、立候補制は認められないと解されています。
ある市議会のHPには、「市民にわかりやすく、開かれた議会を目指すため、正副議長選挙に立候補制度を導入しました」とあります。議会改革の一環として、裏で多数派工作が行われていた正副議長選挙に立候補制を導入し、その選出過程を公開することによって、透明性を高め、市民から信頼される議会を目指そうということのようですが、全員協議会等における事実上の行為としてではなく、本会議で立候補者の所信表明演説等を行っているのであれば、法律上の問題点をどのように整理しているのか聞いてみたいものです。
「第238条の4の規定により普通地方公共団体の長がした行政財産を使用する権利に関する処分に不服がある者は、都道府県知事がした処分については総務大臣、市町村長がした処分については都道府県知事に審査請求をすることができる。この場合においては、異議申立てをすることもできる。」(地方自治法第238条の7第1項)
この規定を読んだ本市の職員からの質問です。
「これ、どない読んだら、先に異議申立てせーなあかんて読めんねん?」
確かに、この規定をそのまま読むと、審査請求か異議申立てか、それとも、審査請求と異議申立ての両方をすることができるように読めます。しかし、行政不服審査法第20条本文では、「審査請求は、当該処分につき異議申立てをすることができるときは、異議申立てについての決定を経た後でなければ、することができない」と規定されており、これは、地方自治法第238条の7第1項の規定による不服申立てについても、適用されます。
何故に、こんな規定になったのでしょうか。「逐条地方自治法」(松本英昭著/学陽書房)によると、「第一項後段において、異議申立ての根拠規定をおいたのは、当該処分について第一項前段で総務大臣又は都道府県知事に審査請求をすることができる旨を定めたので、行政不服審査法第六条ただし書の規定による「法律に特別の定め」として規定されたものである」とあります。
T君「ゆるキャラの使用料取るっちゅー話あるやんけ」
自分「あるんか?知らんで」
T君「あんねん。ほんでな、取るんやったら、どの科目に入れんのかのーって思うてな。使用料及び手
数料か?」
自分「金取るて、著作権やろ。ほなら財産収入やで」
T君「そうなんか。ゆるキャラ使う権利て、行政財産の目的外使用許可と違うんか?」
自分「違うで。著作権っちゅーのは、普通財産やど」
T君「どっかで著作権は行政財産やて聞いたことあるで」
自分「著作権と違うて著作物と違うか。著作物が公の施設とかやったら、行政財産として管理してるやろ
うな。一般的に、著作権は普通財産やで。裁判例もあるしな」
T君「ほな、使用料は、どうやって決めんねん」
自分「契約やんけ」
T君「そうか。けど、あのゆるキャラ、人気あんのか?」
自分「そんなもん知るかい」
地方自治法の一部を改正する法律(平成24年法律第72号)によって、長による専決処分を規定した第179条に次の1項が加えられました。
「前項の場合において、条例の制定若しくは改廃又は予算に関する処置について承認を求める議案が否決されたときは、普通地方公共団体の長は、速やかに、当該処置に関して必要と認める措置を講ずるとともに、その旨を議会に報告しなければならない。」
「地方自治10月号(bV79)」(地方自治制度研究会編/ぎょうせい)の「地方自治法の一部を改正する法律について」によると、次のようにあります。
「長の行った専決処分については、次の会議において議会に報告し、その承認を求めなければならないこととされているが、議会がこれを不承認とした場合についても、その処分の効力に影響は生じず、長は政治的責任のみを負うこととなっている。しかし、条例と予算は議会の最も基本的な権限であることから、これらの専決処分が不承認となった場合にも何らの法的効果も生じないとされている現行制度は、長と議会の権限配分のバランス上課題があるものと考えられる。
そこで、今回の改正は、条例及び予算に関する専決処分に対し、議会がこれを不承認とした場合には、引き続き、専決処分の効力そのものには影響はないこととしつつ、長に対して、必要と認める措置を講じ、議会に報告することを求めるものである。ここで講じられる措置は、将来に向かって効力を生じることになるが、長に課される義務の内容は「当該処置に関して必要と認める措置を講じ、議会に報告する」ことであり、条例の一部改正案や補正予算の提出など、特定の措置に限定しているものではなく、長が適切に判断するものである。したがって、長が議会や住民に対して専決処分の考え方について説明責任を果たす観点から必要な対応を行うことも含まれるものである。」
同条第1項に加えられたただし書はえーとしても、この規定は、……。結局、どないせーっちゅーんでしょうね?そろそろ、どこかの地方公共団体で事例が出てくる頃でしょうか。
平成22年の国勢調査における不適正な事務について、統計法違反容疑で愛知県東浦町の元副町長が逮捕されるという事件がありました。報道によると、市制施行を目指し、補記制度を悪用して人口を水増ししていたようです。
地方自治法における人口は、「官報で公示された最近の国勢調査又はこれに準ずる全国的な人口調査の結果による人口による」(第254条)ものとされています。一方、同法第13条の2では、「市町村は、別に法律の定めるところにより、その住民につき、住民たる地位に関する正確な記録を常に整備しておかなければならない」と規定しているのですが、住民基本台帳の人口は、法定人口とされていません。
これは、住民基本台帳法の一部を改正する法律(平成21年法律第77号)等が施行(平成24年7月9日)されるまでは、住基人口に外国人は含まれていなかったということと住民基本台帳の登録人口と実際に居住している人口とは乖離する傾向があるのに比べて、一定の時点で全数調査を行う国勢調査の方が正確な人口を把握することができると考えられていることがその理由であったように思われます。
事件の詳細については分かりませんが、国勢調査の調査環境が厳しくなっていく中で、その信頼を失うような行為を犯した者には、逮捕も当然のことではないでしょうか。
なお、「「官報で公示された最近の国勢調査の結果による人口」とは、確定人口が官報に公示されるまでの間は、要計表によって算出された人口を指すものと解」(昭和55年9月3日行政実例)されており、東浦町の人口の速報値は50,080人、確定値は49,800人となっています。
「その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める契約を締結する」(地方自治法第96条第1項第5号)場合には、議会の議決が必要です。
この規定は、「市が行なうべき工事を県に委託する場合に、当該委託契約の金額が当該市の「議会の議決に付すべき契約に関する条例」に定める金額をこえるときは、当該委託契約は工事の請負に該当するから議会の議決を要する」(昭和41年10月1日行政実例)ものと解されていることから、契約の相手方によって、その適用が除外されるものではありません。これは、同項第8号の「その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める財産の取得又は処分をすること」についても、同様です。
土地開発公社が先行取得した土地を市が買収する場合は、買収のときに議会の議決を得る必要があります。ところが、市町村によっては、まれに議決を得ていない場合が見受けられます。そうした市町村では、慣例として、先行取得に関する委託契約や買戻しの際の仮契約を土地開発公社と締結せずに事務処理を行っている場合が多いようですが、議決を経ないで行った行為は、無効(昭和41年10月1日行政実例)と解されていますので、注意が必要です。
市議会政務調査費の交付に関する条例の一部を改正する条例の審査中に目にした衆議院総務委員会の会議録の一節です。
「これまで政務調査費については、条文上、交付目的は調査研究に資するもの、このように限定をしておりましたが、今後は、議員の活動である限り、その他の活動にも使途を拡大するとともに、具体的に充てることができる経費の範囲について条例で定めることとしております。
例えば、従来、調査研究の活動と認められていなかったいわゆる議員としての補助金の要請あるいは陳情活動等のための旅費、交通費、それから議員として地域で行う市民相談、意見交換会や会派単位の会議に要する経費のうち調査研究活動と認められていなかったといったものについても、条例で対象とすることができるようになると考えられます。」
ふーん……そうなんですか。
全国市議会議長会の「政務活動費の交付に関する参考条例等検討委員会報告書」を見ると……あれ、以前の通信費や調査旅費はどこにいったのでしょうか?
色んな意味で困るんですよね。こういう改正は……
行政実例では、「学校教育法にいう公立学校は、地方公共団体の営造物(現行法では公の施設)であって、一般に営造物(現行法では公の施設)の使用については、利用者から使用料を徴収しうべく、学校と学校生徒との間の関係は、この営造物利用の一般関係と異なるものではない。従って授業料も使用料の一であると解してさしつかえない」(昭和23年8月18日付け自発第652号)とされています。
前の記事(2012年11月13日)では、「授業料を公の施設の使用料と解するならば」と書きましたが、授業料を公の施設の使用料と解している地方公共団体は、今や少数派ではないでしょうか。
水道料金債権が民法第173条第1号の「生産者、卸売商人又は小売商人が売却した産物又は商品の代価に係る債権」であるとされた東京高裁判決(平成13年5月22日)や公立病院の診療債権が同法第170条第1号の「医師、助産師又は薬剤師の診療、助産又は調剤に関する債権」であるとされた最高裁判決(平成17年11月21日第二小法廷)などの考え方からすると、授業料についても私法上の債権(「学芸又は技能の教育を行う者が生徒の教育、衣食又は寄宿の代価について有する債権」同法第173条第3号)であると解するのが適当であると思われます。
なお、公法上の債権か私法上の債権か、行政実例と判例とで意見の異なる公営住宅の使用料ですが、債権管理条例を制定している地方公共団体のほとんどは、私法上の債権であると整理しているようです。
次のような法制意見があります。
問題 地方公共団体の条例が授業料その他教育に関する使用料について減免の措置をとりうることを
定めている場合、その減免の措置は教育委員会の所掌事務に属するか。
意見 お示しの減免の措置は、教育委員会の所掌事務に属する。
(昭和26年6月15日付け法務府法意1発第36号文部事務次官宛て法務府法制意見長官回答)
一方、次のような行政実例もあります。
問 授業料の減免の措置は、教育行政に属するとの理由により教育委員会で所掌すべきであるとの意
見があったが、右は知事の所掌事務であるか、委員会の所掌事務であるか。
答 授業料減免措置は、知事の権限である。
(昭和26年9月21日付け地自行発第286号和歌山県知事公室長宛て行政課長回答)
地方教育行政の組織及び運営に関する法律によって廃止された教育委員会法が施行されていた頃の法制意見と行政実例ですが、これらは、廃止された形跡がありません(おそらく、ないと思います。)。
さて、どうしましょうか?個人的には、授業料を公の施設の使用料と解するならば、行政実例を支持したいです。
「普通地方公共団体の長、教育委員会の委員長、選挙管理委員会の委員長、人事委員会の委員長又は公平委員会の委員長、公安委員会の委員長、労働委員会の委員、農業委員会の会長及び監査委員その他法律に基づく委員会の代表者又は委員並びにその委任又は嘱託を受けた者は、議会の審議に必要な説明のため議長から出席を求められたときは、議場に出席しなければならない。」(地方自治法第121条)
この規定は、「議会の審議権の自主性を確保する意図のものであり、執行機関側は、議長からの出席要求がある場合には、議場に出席しなければならないこととする反面、当然には議場に出席するものではないことを明らかにするもの」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)であると解されています。
一方、委員会については、地方自治法に明文の規定はなく、その根拠を同法第121条に求めながら、標準市議会委員会条例第21条では、次のように規定されています。
「委員会は、審査又は調査のため、市長、教育委員会の委員長、選挙管理委員会の委員長、公平委員会の委員長、農業委員会の会長及び監査委員その他法令又は条例に基づく委員会の代表者又は委員並びにその委任又は嘱託を受けた者に対し、説明のため出席を求めようとするときは、議場を経てしなければならない。」
これは、委員会への出席要求の手続を明確にするために規定したものであって、執行機関の委員会への出席は、義務ではないと解されています。また、委員会を代表するのは委員長ですが、執行機関等との関係において、議会を代表するのは、あくまで議長です。
執行機関は、慣例で委員会に出席していると思っている人もいるようですが、法的には、委員会条例で規定された出席要求があって初めて出席できるものなのです(「議員・職員のための議会運営の実際4」地方議会研究会編著/自治日報社 参照)。
市町村は、地方自治法第252条の2第1項の規定により協議会を設けたときは、その旨及び規約を告示するとともに、都道府県知事に届け出なければならないと規定されています(同条第2項)。
そしてこの規定は、協議会の規約に変更においてその例によることとされ(第252条の6)、機関等の共同設置及び事務の委託において準用されています(第252条の7第3項及び第252条の14第3項)。
ところで、「その旨及び規約」、告示していますか?
これとよく似た手続に一部事務組合の設立がありますが、この場合は、「その旨及び規約」を告示することは、法律上、規定されていません。昭和27年6月26日付け地自行発第192号の行政実例によって、法律上、公布の必要はありませんが、「組合の成立とその規約の内容は当該組合及び構成地方公共団体において、これを告示することが適当である」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)と解されているだけです。
では、「組合の成立とその規約」、告示していますか?
一方は普通地方公共団体相互間の協力について定めたものであり、一方は特別地方公共団体について定めたものですので、基本的には別の制度なのですが、何かバランスを欠いているように思われます。
「議会は、会議規則の定めるところにより、議案の審査又は議会の運営に関し協議又は調整を行うための場を設けることができる。」(地方自治法第100条第12項)
この規定は、地方自治法の一部を改正する法律(平成20年法律第69号)により規定されたものです。従来から、地方公共団体の議会では、全員協議会や委員会協議会、広報委員会や図書委員会といった法定外委員会が設置されていましたが、これらの委員会における活動は、法律の規定に基づくものではないことから、費用弁償や公務災害の対象外とされてきました。それを会議規則に定めることによって、法律上の議会活動として明確にすることがその趣旨であるとされています。
一方、「この規定がどのような法的効果を持つことになるのかについては、明らかではない。すなわち、これまでも地方議会においては、本法に規定がある本議会、常任委員会、議会運営委員会及び特別委員会、議員の派遣といった議会の会議や活動のほか、本法には定めはないが、事実上、議会にかかわる会議や活動が行われているという実態がある。そして、そうした事実上の会議や活動(例えば、全員協議会、正副委員長会議など)が否定されていたわけではない。したがって、改正は創設的効果をもたらすものではないと言える。また、この規定をもって、この規定によらない議案の審査又は議会の運営に関し協議又は調整を行う場を否定する、すなわち、この規定による以外の協議又は調整の場をなくすることとするものでもなかろう。このように考えると、必ずしも、この規定によって「議会の活動の範囲」が明確になるとは言い難いのではないかと思われる」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)という意見もあります。
現実問題としては、費用弁償や公務災害の対象となること以外には、あまり意味のない規定なのかもしれません。
本市の議会は、「議案の審査又は議会の運営に関し協議又は調整を行うための場」を会議規則によって設けていません。そして、議決事件以外で議会に報告しておきたい案件については、全協案件と称して全員協議会で報告することとしています。
地方公共団体の議員や委員会の委員等については、特定の職を兼ねることが禁止されています。この兼業禁止規定に違反する任命行為が行われた場合の取扱いについては、前職を失うとする説(「逐条地方自治法第12次改定新版」273頁・長野士郎著/学陽書房)と、後の任命行為が無効であるとする説(昭和31年2月4日付け自丁公発第21号)とがあります。
この問題は、次のように解するのが適当ではないでしょうか。
「前説は、任用された者の直近の意思を尊重しようとするものであり、後者は、法律違反の任命には重大かつ明白な瑕疵があるとするものである。いずれの説にも一長一短があり、立候補制限に反して立候補した公職の候補者の場合のように立法的に解決することが望ましいが(公選法九〇)、解釈としては、兼職禁止に違反して行われた任命に重大な瑕疵があることは間違いないとしても、それが明白であるか否かは必ずしも明らかではない(明白であれば、そのような発令をすることはあり得ない)ことから、後者の発令を取消し得べき行政行為と観念するのが妥当であろう。そして、このように解するときは、本人に対していずれかの職を辞することを促し、速やかに違法状態が解消された場合は当該発令を取り消す必要はないこととなるが、そうすることができないときは、当該発令を取り消すことによって、違法状態を解消することになる。」(「逐条地方公務員法」橋本勇著/学陽書房)
なお、後の任命行為を有効とする場合には、その時点で前職の退職発令があったものとみなすことが適当であると解されます。
「大阪市と共同設置している「府市エネルギー戦略会議」を含む大阪府の134の外部有識者会議について、議会の議決を経た条例に基づかずに設置したのは地方自治法違反にあたる可能性がある−として、府が9月議会に関連条例案などを提出し、施行されるまで会議を休止せざるを得ない状態に陥っていることが11日、分かった。」(9月12日付け産経新聞朝刊)
この問題、いつになってもなくなりませんね。地方自治法の無理解だけがその原因とも思えません。附属機関条例は、住民に対し、義務を課したり、権利を制限したりするものではありませんし、また、予算的にも委員の報酬ぐらいですから、条例制定(議会の議決)という面倒な手続を敬遠してしまうのではないかと個人的には考えています。これを予防する方法としては、外部から有識者を招く以上は、必ず報酬が発生しますので、財政サイドから附属機関をチェックするのも一つの方法かと思います。
なお、附属機関については、これまでにも「附属機関条例」と「続・附属機関条例」で記事にしています。興味のある方は、お立ち寄りください。
普通地方公共団体の議会には定例会と臨時会があり(地方自治法第102条第1項)、定例会は、毎年、条例で定める回数、招集しなければならない(同条第2項)のに対し、臨時会は、必要がある場合に、その事件に限って招集するものとされています(同条第3項)。そのため、臨時会の付議事件は、長があらかじめ告示しなければならない(同条第4項)とされており、告示された事件以外の事件については、緊急を要するもの以外は、審議することができません。
この「急施事件であるかないかの認定は当該議案の発案者が長である場合は長、議員である場合は議員がするものであるが、議会も当該議案の審議に当ってその認定をすることができるものと解」(昭和28年4月13日行政実例)されています。ただし、この認定には客観性が必要とされており、「もし、この認定に客観性がなければ、当該事案の提案及びこれに基づく議決は違法のものたるを免れない」(「注釈地方自治関係実例集」地方自治制度研究会編/ぎょうせい)と解されます。
ちなみに、長が急施事件として提出した事件を議会が認めない場合は、どうするのでしょうか。「議員・職員のための議会運営の実際1」(地方議会研究会編著/自治日報社)には、次のようにあります。
「急施事件の認定は提出者の長にありますから、議長が急施事件でないと判断したり、また、議会運営委員会の決定に基づき議事日程に掲載しなかったりすることはできません。当該事件に客観性があるならば、長と議会はともに急施事件と認定するはずですが、議会で審議の結果、議会が緊急性がないと認定するときは、当該事件を審議未了または継続審査とすることになります。これに対し長は必要があれば専決処分をすることができます。」
「専門委員は、専門の学識経験を有する者の中から、普通地方公共団体の長がこれを選任する」(地方自治法第174条第2項)と規定されています。
職務上において同様の性格を有しながら、その設置には、合議制の附属機関が必ず法律又は条例の根拠が必要であるのに対し、独任制の専門委員は、次のように解されています。
「長が専門委員を選任すれば、当該地方公共団体に置かれたことになるのであって、その設置について必ずしも、特別に条例なり規則の規定が必要であると解すべきではない。行政実例(昭二三、二、二六・昭二八、七、一)は、専門委員は、規則で置く方が適当であるとしているが、条例をもって設置及び定数を定めることも、妨げるものではないが、法文上からもまた専門委員の機能からしても、必ずそのような措置を必要とすると解する必要はないであろう。むしろ、第二項の規定は、規則で定める必要もないことを示していると解するのが妥当であろう」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)。
その設置が容易であるにもかかわらず、附属機関に比べると、専門委員はあまり活用されているようには思われません。独任制というのがネックになっているのではないでしょうか。
なお、専門委員は、地方公務員法第3条第3項第2号に規定する特別職であるとされています。同項第3号の顧問や参与等の設置規則を置いている市町村もありますが、その内容からは、職の設置規則ではなく、専門委員の設置規則と思われるものがあります。
「普通地方公共団体がその当事者である審査請求その他の不服申立て、訴えの提起(普通地方公共団体の行政庁の処分又は裁決(行政事件訴訟法第3条第2項に規定する処分又は同条第3項に規定する裁決をいう。以下この号、第105条の2、第192条及び第199条の3第3項において同じ。)に係る同法第11条第1項(同法第38条第1項(同法第43条第2項において準用する場合を含む。)又は同法第43条第1項において準用する場合を含む。)の規定による普通地方公共団体を被告とする訴訟(以下この号、第105条の2、第192条及び第199条の3第3項において「普通地方公共団体を被告とする訴訟」という。)に係るものを除く。)、和解(普通地方公共団体の行政庁の処分又は裁決に係る普通地方公共団体を被告とする訴訟に係るものを除く。)、あっせん、調停及び仲裁に関すること」(地方自治法第96条第1項第12号)については、議会の議決が必要とされています。
では、例えば、A法人を被告とする訴訟にB市が民事訴訟法第第42条の規定による補助参加をする場合、議会の議決は必要でしょうか?
「「訴え」とは、原告が被告を相手方として裁判所に対し権利又は法律関係の存否を主張し、その存否につき自己の有利な判決を求める要求であり、したがって、判決による保護行為を要求するものでないものは「訴え」ではないから、支払督促の申立(民訴三八三)、保全命令(仮差押及び仮処分)の申立(民事保全法一三)、再生手続開始の申立(民事再生法二一)等は、「訴え」には該当しない(行実昭三九、一〇、二参照)」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)と解されています。
また、補助参加とは、「係属中の民事訴訟の結果について法律上の利害関係をもつ第三者が当事者の一方を補助するため訴訟参加をすること」をいい、「補助参加人は原則として被参加人のために可能な一切の訴訟行為ができる」(「新法律学辞典」有斐閣)とされています。
しかし、補助参加人は、自己の訴訟を遂行して判決を受けるわけではないことから、当該判決の既判力や執行力は及ばず、その参加的効力を受けるものであるとされています。したがって、補助参加人がその当事者として判決による保護行為を要求するものではないと解され、議会の議決は必要ありません。
なお、補助参加は、訴訟参加の中でも当事者として訴訟に参加する独立当事者参加(民事訴訟法第47条)や共同訴訟参加(同法第52条)とは取扱いを異にしますので、注意が必要です。
4月のある日、住民基本台帳法の一部を改正する法律及び出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律の施行に伴う関係例規について、関係課とヒアリングをしていたところ、次のような通知が出てきました。
「大阪府後期高齢者医療広域連合規約の一部改正にかかる取扱いについて」(平成24年3月22日付け大高総第873号通知)です。この通知には、「本件は「規約の文言整理に留まり、表記記載があったとしても制度運営上、直接影響が生じるものではない。」ことから、今回は一部改正の取扱いを見送り、次回、規約の本文改正の必要が生じた際に併せて改正することといたします。」とあります。
別にえーんですけど、こういう通知が出ると、一組とか事務委託とか、ほかにも影響が出るやろな〜と思っていたら……やっぱり出てきましたね……
「都道府県は、市町村を包括する広域の地方公共団体として、第2項の事務で、広域にわたるもの、市町村に関する連絡調整に関するもの及びその規模又は性質において一般の市町村が処理することが適当でないと認められるものを処理する」(地方自治法第2条第5項)と規定されています。
都道府県は、1都1道2府43県からなっていますが、都を除き、基本的に、その権限等に違いはありません。この都道府県という名称の違いは、歴史的な理由によります。
大政奉還後、明治政府が幕府直轄地のうち、奉行の支配地を「府」、代官の支配地を「県」と称したのが府県の始まりとされています。この時点で「藩」は、大名が支配しており、その後の版籍奉還によってできた地方制度を府藩県三治制といいます。
当時、「府」となったのは10都市(函館府、越後府、甲斐府、江戸府、神奈川府、度会府、京都府、大阪府、奈良府、長崎府)ですが、1869年の太政官布告によって「府」は「京都、東京、大阪」に限られることになります、
そして1871年の廃藩置県によって藩が廃止され、1使(開拓使)3府302県の地方自治体が成立することになります。
その後、県の整理合併等が行われ、1943年の東京都制の施行によって東京府と東京市が合併して東京都となり、開拓使が北海道庁等の変遷を経て、戦後、北海道となり、地方自治法が施行され、1972年の沖縄の復帰により、現在の都道府県になっています。
原則として、「普通地方公共団体の財産は、条例又は議会の議決による場合でなければ、これを交換し、出資の目的とし、若しくは支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けてはならない」(第237条第2項)とされています。
このため、地方公共団体では、「財産の交換、譲与、無償貸付等に関する条例」(昭和38年10月30日自治丁行発第68号)を制定し、この条例の規定による場合には、議会の議決を得ることなく、財産の交換、譲与、無償貸付等を行っています。
当時、準則とされたこの条例どおりの規定をしているならば、普通財産を譲与又は減額譲渡できる場合の第3条第1号と、普通財産を無償貸付け又は減額貸付けできる場合の第4条第1号とでは、次のように微妙に異なっています。
「他の地方公共団体その他公共団体において公用若しくは公共用又は公益事業の用に供するため普通財産を他の地方公共団体その他公共団体に譲渡するとき。」(第3条第1号)
「他の地方公共団体その他公共団体又は公共的団体において公用若しくは公共用又は公益事業の用に供するとき。」(第4条第1号)
第3条第1号では、その相手方として公共的団体が規定されていません。よって、貸付けの場合とは異なり、公共的団体に財産を適正な対価なくして譲渡する場合には、議会の議決を得なければなりません。
この「「適正な対価」とは、通常は当該財産が有する市場価格(時価)をいう」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)とされています。しかし、現実に建物を譲渡する場合には、老朽化により時価0円と考えられるケースが少なくありません。公共的団体に対し、時価0円の建物を譲与し、土地を無償貸付けした場合には、全く議会のチェックが及ばないことになりますので、本市では、使用できる建物であるならば、「適正な対価」があるものとして議決を得るようにしています。
「財政破綻一歩手前の大阪府泉佐野市は新たな歳入確保策として、企業から広告料をもらう代わりに市の名称を企業名や商品名に変更する自治体名の命名権(ネーミングライツ)売却に乗り出すことを決めた。」(3月21日付け読売新聞夕刊)
「川端達夫総務相は23日の記者会見で、財政破綻の懸念を抱える大阪府泉佐野市が市名の命名権売却を検討していることについて「市名は安定的に同一の名称が用いられることが望ましい」と述べ、苦言を呈した。」(3月23日付け産経新聞夕刊)
「財政難の大阪府泉佐野市が市の名称のネーミングライツ(命名権)売却を検討している問題で、千代松大耕市長は27日、市議会全員協議会で検討内容を説明した。市の名称変更には議会の同意が必要で、市議からは「究極の身売り。金のためなら何をやってもいいのか」「泉佐野の恥」など批判的な意見が大勢を占める一方、「斬新ないい発想」と評価する声も上がった。」(3月28日付け産経新聞朝刊)
S君「エライ騒ぎになってるけど、市の名前て売れるんか?」
自分「売れるか、売ってもえーかはともかくとして、手続き的には、市の名称を変更する条例が可決され
たら可能やわのう」
S君「議決て、3分の2か?4分の3か?」
自分「いや、過半数やねん」
S君「えー!庁舎の場所変えんのん3分の2やのに、名前変えんのん過半数でえーんか?」
自分「自治法の3条1項で「地方公共団体の名称は、従来の名称による」て規定されてるしな。何ちゅー
ても、市の名前を売るっちゅーようなことは、想定してへんわい」
S君「ほか、手続きに問題はないんか?」
自分「3条4項でな、「あらかじめ都道府県知事に協議」てなってんやけど、協議するだけや。知事が不
同意でも条例ができたらオッケーや」
S君「市次第っちゅーことか」
自分「そうやな。昔は知事の許可が要ったんやけどな。地方分権一括法で改正されたんや」
S君「そうなんか。地方分権て、怖いのう」
事務の例示規定を削除したのは、「第1条の2を新設し、地方公共団体の役割を明示したこと、また、事務例示規定を存置することにより地方公共団体が処理する事務の範囲が限定的に解されないようにすること」(「Q&A改正地方自治法のポイント」地方自治制度研究会編/ぎょうせい)がその理由です。
同書の解説には、「地方公共団体の事務の例示規定(旧第2条第3項)は、第2項に普通地方公共団体の事務が規定されているが、規定の形式が抽象的であり、解釈上種々の疑問を生ずるのみならず、一般の理解を得ることが困難な実情にあったことから、普通地方公共団体の事務の内容を具体的に例示するものとして、昭和23年の法改正において設けられたものである。
この例示規定の内容については、従来より、
@ 例示された事務がすべて現実に地方公共団体が処理することとなるものではなく、ただし書の規定
により普通地方公共団体としては処理できないものが少なからず含まれていること
A 地方公共団体の事務の例示ではあるが、機関委任事務として処理されている事務が含まれている
こと
などの問題点も指摘されていた。」
「今回の改正においては、新たに第1条の2を設け、地方公共団体が地域における行政を自主的かつ総合的に処理する役割を広く担うことを規定した。
また、地方公共団体が広範な事務処理権能を有することは、今日においては広く国民に理解されているところであり、事務の例示規定はかえって事務の範囲を限定するような誤解を与えかねないことから、この際、削除することとした。
なお、地方分権推進委員会の第1次勧告では「地方公共団体の事務の例示の規定については、廃止することを含め抜本的に見直すものとする。」とされたのを受けて、地方分権推進計画では「なお、これに関連して、地方自治法における事務の例示の規定(地方自治法第2条第3項)については、これを廃止する。」とされているところである。」とあります。
以前、ある事業担当課のS君から「自治法に役所のせんならん仕事て書いてましたやんか。あれ、どこいったんですか」と聞かれたことがありました。そこで、同書を示して説明したところ、S君は、「そうやったんすか……けど、置いといてほしかったっすねえ」と言ったのです。その理由は、現場の第一線で仕事をしていると、市民の要求が際現なく拡大し、本来、市がすべき仕事なのかどうか疑問を感じるようなものが増えてきている。そういうときのため、法律上、一定の基準が欲しいというものでした。
事務の例示規定によって市町村の事務が確定するわけではありませんが、経常的経費を無理やりにでも一律削減して、花火を上げたりイベントをしたりしようとしているのを見ていると、この規定は、あった方が良かったのではないかと思うのです。
「A 普通地方公共団体は、地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により
処理することとされるものを処理する。
B 市町村は、基礎的な地方公共団体として、第5項において都道府県が処理するものと規定されて
いるものを除き、一般的に、前項の事務を処理するものとする。」(地方自治法第2条第2項及び第3
項)
第2項の規定は「普通地方公共団体が一定の行政区域内において行政機能を担う統治団体であり、住民福祉の向上を目的として、統治の作用としての事務一般を広く処理する権能を有することを明らかにするもの」であり、第3項の規定は「市町村が住民に最も身近な普通地方公共団体であり、住民の日常生活に直結する事務処理を幅広く包括的にその任務とすることを明らかにしたものである」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)と解されています。
地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律による改正前の地方自治法第2条第2項は、公共事務、団体委任事務及び行政事務を普通地方公共団体の事務として規定し、同条第3項では、その事務を例示していました。引用すると、次のとおりです。
「A 普通地方公共団体は、その公共事務及び法律又はこれに基く政令により普通地方公共団体に属
するものの外、その区域内におけるその他の行政事務で国の事務に属しないものを処理する。
B 前項の事務を例示すると、概ね次の通りである。但し、法律又はこれに基く政令に特別の定がある
ときは、この限りでない。
一 地方公共の秩序を維持し、住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持すること。
二 公園、運動場、広場、緑地、道路、橋梁、河川、運河、溜池、用排水路、堤防等を設置し若しくは
管理し、又はこれらを使用する権利を規制すること。
三 上水道その他の給水事業、下水道事業、電気事業、ガス事業、軌道事業、自動車運送事業、船
舶その他の運送事業その他企業を経営すること。
四 ドック、防波堤、波止場、倉庫、上屋その他の海上又は陸上輸送に必要な施設を設置し若しくは
管理し、又はこれらを使用する権利を規制すること。
五 学校、研究所、試験場、図書館、公民館、博物館、体育館、美術館、物品陳列所、公会堂、劇
場、音楽堂その他の教育、学術、文化、勧業、情報処理又は電気通信に関する施設を設置し若しく
は管理し、又はこれらを使用する権利を規制し、その他教育、学術、文化、勧業、情報処理又は電
気通信に関する事務を行うこと。
六 病院、隔離病舎、療養所、消毒所、産院、住宅、宿泊所、食堂、浴場、共同便所、公益質屋、授
産施設、救護施設等の保護施設、保育所、児童養護施設、児童自立支援施設等の児童福祉施
設、老人ホーム等の老人福祉施設、身体障害者更生援護施設、留置場、屠場、じんかい処理場、
汚物処理場、火葬場、墓地その他の保健衛生、社会福祉等に関する施設を設置し若しくは管理
し、又はこれらを使用する権利を規制すること。
七 清掃、消毒、美化、公害の防止、風俗又は清潔を汚す行為の制限その他の環境の整備保全、
保健衛生及び風俗のじゅん化に関する事項を処理すること。
八 防犯、防災、罹災者の救護、交通安全の保持等を行うこと。
九 未成年者、生活困窮者、病人、老衰者、寡婦、身体障害者、浮浪者、精神異常者、めいてい者
等を救助し、援護し若しくは看護し、又は更生させること。
十 労働組合、労働争議の調整、労働教育その他労働関係に関する事務を行うこと。
十一 森林、牧野、土地、市場、漁場、共同作業場の経営その他公共の福祉を増進するために適当
と認められる収益事業を行うこと。
十二 治山治水事業、農地開発事業、耕地整理事業、公有水面埋立事業、都市計画事業、土地区
画整理事業その他の土地改良事業を施行すること。
十三 発明改良又は特産物等の保護奨励その他産業の振興に関する事務を行うこと。
十四 建造物、絵画、芸能、史跡、名勝その他の文化財を保護し、又は管理すること。
十五 普通地方公共団体の事務の処理に必要な調査を行い、統計を作成すること。
十六 住民、滞在者その他必要と認める者に関する戸籍、身分証明及び登録等に関する事務を行う
こと。
十七 消費者の保護及び貯蓄の奨励並びに計量器、各種生産物、家畜等の検査に関する事務を行
なうこと。
十八 法律の定めるところにより、建築物の構造、設備、敷地及び周密度、空地地区、住居、商業、
工業その他住民の業態に基く地域等に関し制限を設けること。
十九 法律の定めるところにより、地方公共の目的のために動産及び不動産を使用又は収用するこ
と。
二十 当該普通地方公共団体の区域内の公共的団体等の活動の綜合調整をすること。
二十一 法律の定めるところにより、地方税を賦課徴収し、又は分担金、使用料、加入金若しくは手
数料を徴収すること。
二十二 基金を設置し、又は管理すること。
C 市町村は、基礎的な地方公共団体として、第6項において都道府県が処理するものとされている
ものを除き、一般的に、前項に例示されているような第2項の事務を処理するものとする。但し、第6
項第4号に掲げる事務については、その規模及び能力に応じて、これを処理することができる。」
この事務の例示規定、削除せずに残しておいてほしかったと思うのです。
みなさんのところでは、保育所の経営責任者をしている議員はいませんか?また、町内会長をしている議員はいませんか?これらは、地方自治法第92条の2に規定する議員の兼業禁止規定に該当しないのでしょうか?
議員が保育所の経営責任者を兼ねることは、兼業禁止規定に該当しません。
「民法上「請負」とは、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してこれに報酬を与えることを約する契約とされている(民法六三二)が、地方自治法第九二条の二の「請負」とは、このような民法所定の請負のみならず、それと実質を同じくする継続的、反復的に行われる私法上及び公法上のいっさいの取引契約をいうものであるとされている。しかし、また同時にその反面、継続的、反復的な取引契約であっても、この立法趣旨に反するおそれがまったくないものは、請負に該当しない」(「地方自治法質疑応答集」地方自治制度研究会編著/第一法規)と解されています。
そして、「保育所が、児童福祉法第24条の規定に基づく措置により、市町村長から委託を受けて児童等の保育を行っている場合、この保育所の経営責任者が当該市町村の議会の議員であっても、」保育所は、同条の規定に基づく「措置により、市町村長から児童等の保育の委託を受けたときは、正当の事由がないかぎりこれを拒み得ないものであり(同法第46条の2)、保育所の行なう保護の基準、措置に要する費用についても法律により規制されているので(同法第45条、第51条)、保育の委託については、契約の成立及び契約内容が一方的に定められ、当事者の意思によってそれが左右される余地はほとんどないから、本条の規定の趣旨に照らし本条の請負に該当しないものと解」(昭和39年12月7日行政実例)されています。
一方、様々な分野で市町村から委託を受けている町内会の会長を議員が兼ねることは、兼業禁止規定に該当する可能性があります。「議員・職員のための議会運営の実際7」(地方議会研究会編著/自治日報社)には、次のような質疑応答があります。
「議 員 町内会長をしている議員が市営の児童公園の維持管理業務委託契約を締結することは、法
九二条の二に該当するか。
助言者 町内会には法人格がありませんので、町内会長である議員個人が契約の当事者となります。
地方自治法における請負は民法上の請負だけでなく、広く委託も対象とされますので、兼業禁止に
該当します。」
議員が兼業禁止規定に該当する場合、地方自治法第127条第1項の規定により、その職を失うこともありますので、議員が町内会長を兼ねる場合は、注意された方がよろしいのではないでしょうか。
「住民は、法律の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の役務の提供をひとしく受ける権利を有し」ています(地方自治法第10条第2項)。そして、役務の提供のうち、公の施設の利用関係について、普通地方公共団体は、「正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない」(同法第244条第2項)と規定されています。
「「正当な理由」に該当するかどうかは、個々具体的の場合に判断するほかはないが、一般的には、公の施設の利用に当たり使用料を払わない場合、公の施設の利用者が予定人員をこえる場合、その者に公の施設を利用させると他の利用者に著しく迷惑を及ぼす危険があることが明白な場合、その他公の施設の利用に関する規程に違反して公の施設を利用しようとする場合等は、正当な理由に該当すると解され」(最高裁平7.3.7参照。「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)ます。
正当な理由なく公の施設の利用を拒否された場合、住民は、「都道府県知事がした処分については総務大臣、市町村長がした処分については都道府県知事に審査請求をすることができる。この場合においては、異議申立てをすることもできる」(同法第244条の4第1項)とされています。また、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律第1条の地方自治法の一部改正により、不服申立ての前置規定が削除されましたが、公の施設を利用する権利に関する救済手続は、あまり活用されているようには思えません。
本市における裁判例も、公の施設を利用する権利に関する処分の取消しを求める行政事件ではなく、公の施設の使用が取り消されたことによって発生した損害に対する民事上の損害賠償請求事件でした。
一般的に、学校給食センターは、公の施設ではないと解されています。それは、この施設が学校給食の供給を行うことを目的とするものであって、直接、住民の利用に供するための施設ではないからです。
その一方で、学校給食センターは、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第30条に規定する教育機関であるとされており、設置するためには、条例を制定する必要があります。そして、同法第31条第2項は、「学校以外の教育機関に、法律又は条例で定めるところにより、事務職員、技術職員その他の所要の職員を置く」と規定していますので、学校給食センター条例には、一般的に、そのような規定が置かれています。
なお、地方自治法上は、支所及び出張所、行政機関、長の直近下位の内部組織並びに公の施設の設置は、条例で定めなければならないとされています(同法第155条第2項、第156条第2項、第158条第1項後段、第244条の2第1項)。条例設置されている施設等が法律上の何であるのかをはっきりと規定することも必要ではないかと考えています
屋外広告物の許可等に関する事務を例に考えてみましょう。
条例による事務処理の特例制度の対象となる事務は、具体的に都道府県知事の権限に属する事務であることが必要であるとされています。このことから、屋外広告物法では、「都道府県は条例の定めるところにより広告物等の制限等をすることができることとされている(同法三〜六)が、このように法令の規定により都道府県の条例で定めることとされている事務に関しては、法令に基づく条例を制定し都道府県知事の職務権限が規定されることにより、はじめて具体の事務が発生するものであり、具体の事務として都道府県知事の権限に属することとされたものを市町村が処理することとすることは可能であるが、当該条例の制定という機能自体を条例による事務処理の特例の制度により市町村が行うこととすることはできない。このようなことから、平成十六年に制定された景観法による屋外広告物法の改正において、都道府県は、屋外広告物法の規定に基づく条例の制定又は改廃に関する事務の全部又は一部を、条例で定めるところにより、景観行政団体である市町村が処理することとすることができると規定され」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)ています。
都道府県屋外広告物条例の制定によって発生した屋外広告物に関する具体の事務については、同条例において市町村が処理することとされた事務には、同条例の施行に関し必要な事項を定めた都道府県屋外広告物条例施行規則で規定されている事項も含まれると解するのが適当ではないでしょうか。つまり、事務の移譲を受けた市町村において、屋外広告物条例施行規則を制定する必要はないのではないでしょうか。
また、「地方公共団体の長が定める規則は、条例と別個の地方公共団体の自治立法の形式であって、当然には、法律と法律に基づく政令のような関係に立つものではない。法律に基づく政令と同様に、条例の委任を受け又は条例を執行するために定められるものもあるが、必要的条例事項を除けば、法令又は条例の委任等がなくても、地方公共団体の住民の権利義務に関する法規たる性質を有するものを定めることができ、また地方公共団体の内部的規律たる性質を有する規則を定めることができる」(前掲書)と解されています。
「法律に根拠規定がある事務については、当該法律の外、これに基づく政令・省令を含めた総体が「法令」として市町村に適用される」のは、法律と法律に基づく政令又は省令の関係から導かれるものであるならば、「法律に基づく政令と同様に、条例の委任を受け又は条例を執行するために定められた」規則についても、「市町村が処理することとされた事務について規定する法令、条例又は規則」に該当するものであると解するのが適当ではないでしょうか。
地方自治法第252条の17の3第1項は、「前条第1項の条例の定めるところにより、都道府県知事の権限に属する事務の一部を市町村が処理する場合においては、当該条例の定めるところにより市町村が処理することとされた事務について規定する法令、条例又は規則中都道府県に関する規定は、当該事務の範囲内において、当該市町村に関する規定として当該市町村に適用があるものとする」と規定しています。
この「市町村が処理することとされた事務について規定する法令、条例又は規則」とは、「当該事務処理の根拠規定があるそれぞれの法令、条例又は規則という意味である。すなわち、法令に根拠規定のある事務については当該法令、条例に根拠規定がある事務については当該条例、規則に根拠規定がある事務については当該規則を指す。したがって、法令に根拠規定がある事務に関し都道府県が定めている条例や規則は、本項でいう「条例又は規則」に該当せず、法令に根拠規定のある都道府県の事務を市町村が処理することとした場合においても、当該事務に関し都道府県が定めている条例や規則は、原則として市町村に適用されない。たとえば、墓地、埋葬等に関する法律に基づく事務のうち、同法第十条第一項の規定による墓地等の経営の許可権限を、条例による事務処理の特例の制度により市町村が処理することとした場合において、当該許可基準を都道府県の施行条例において定めているときには、当該条例に基づく事務についても併せて市町村が処理することとする旨の明示の規定がない限り、当該都道府県の施行条例は市町村に適用がなく、市町村が施行条例を定めることとなる。また、都道府県の条例に根拠規定がある事務に関し都道府県が定めている規則は、本項でいう「規則」に該当せず、原則として市町村に適用されない。なお、法律に根拠規定がある事務については、当該法律の外、これに基づく政令・省令を含めた総体が「法令」として市町村に適用される。政令に根拠規定がある事務についても同様である」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)と解されています。
このうち、「都道府県の条例に根拠規定がある事務に関し都道府県が定めている規則は、本項でいう「規則」に該当せず、原則として市町村に適用されない」というのは、どういう意味なのでしょうか。続くなお書きには、「法律に根拠規定がある事務については、当該法律の外、これに基づく政令・省令を含めた総体が「法令」として市町村に適用される。政令に根拠規定がある事務についても同様である」と記されています。ならば、条例に根拠規定がある事務についても、当該条例の外、これに基づく規則に関しては、「条例又は規則」として市町村に適用されると解されるべきではないでしょうか。
この問題は、けっこう意見が分かれるのではないかと思っているのですが……反則法制的には、@です。
まず、地方自治法第96条第1項第12号の和解は、「民法第695条の和解、民事訴訟法第89条の訴訟上の和解及び同法第275条の訴訟提起前の和解のすべてを含む」(昭和30年3月12日行政実例)と解されており、このうち、民法第695条は、「和解ハ当事者カ互ニ譲歩ヲ為シテ其間ニ存スル争ヲ止ムルコトヲ約スルニ因リテ其効力ヲ生ス」と規定しています。つまり、和解とは、交通事故が発生した場合には、加害者と被害者とが互いに譲歩して争いを解決する契約のことです。
そして、「地方公共団体が損害賠償の義務を負うことについて議会の議決に係らしめているのは、その賠償額の決定が地方公共団体にとって異例の支出義務を負うものであるとともに、その責任の所在を明らかにし、賠償額の適正を図るための趣旨によるものである。したがって、損害賠償の額の決定について執行機関の事務を監視して、その適正な事務処理を担保することにあるものと解されて」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)います。よって、地方自治法第96条第1項第13号の「法律上その義務に属する損害賠償の額」とは、当該地方公共団体が実際に支払う金額ではなく、法律上、損害賠償義務を負っている金額であるとされています。そのため、自動車損害賠償保障法第16条第1項の規定により被害者に直接保険金が支払われた場合には、それを含めた損害賠償額の総額が、また、過失相殺によって損害賠償義務を負う額と実際の支払額とが異なる場合には、損害賠償義務を負う額が、「法律上その義務に属する損害賠償の額」であると解されています。
そもそも、この問題のようなケースでは、どのような示談(和解契約)を締結しますか?相手方に現に損害が発生している以上は、当事者の一方のみが譲歩することにも、当事者間に争いがないとすることにも無理があるように思います。この場合は、「法律上その義務に属する損害賠償の額」を明記した示談を締結し、その上で、相手方に損害賠償請求権を放棄してもらいませんか?自分なら、そうします。これが@の理由です。
なお、損害賠償額が0円の場合は、和解にも該当しないと解している市町村もあるようですが、この問題は、損害賠償額が0円の場合ではありません。
「地方財務実務提要」(地方自治制度研究会編集/ぎょうせい)に「交通事故に係る損害賠償責任」という次のような質疑応答があります。
問 市の職員が公務遂行中に交通事故を起こした。被害者の方に損害賠償請求権があるにもかかわら
ず、何ら請求を行わないので、市が道義的積極的に金額を明示し、示談書を締結した。このような場
合でも、議会の議決が必要か。
答 質問の具体的事実が明らかではありませんので確答はしかねますが、職員の行為が、公務遂行中
ということから、国家賠償法上の公権力の行使に当たるものとの前提で考えますと、当該職員が故意
又は過失により違法に他人に損害を加えた場合であると推定されます。この場合、国家賠償法上市
は、損害賠償の責に任ずることが明定されており、相手方が損害賠償をしないとはいっても、示談書を
締結するといった具体的行動をみるならば、相手方が損害賠償請求権を放棄するといった内容であれ
ば前提が変わってきますが、右のような前提での見舞金等に係る示談書の締結である場合には、(そ
れが社会通念上損害賠償といえない程度のものであるならばこれまた別ですが)いちおう損害賠償と
解すべきであり、当然自治法第九六条第一項第一三号の議決を要するものと解します。
なお、次の行政実例を参考にして下さい。
○損害賠償の額を定める場合の議会の議決と長の専決処分
(昭和二六年一〇月一五日 地自行発第三三〇号 静岡市議会事務局長あて 行政課長回答)
問一 第九六条第一項提一一号(現行法では第一項第一三号)に規定する法律上その義務に属す
る損害賠償の額を定めることについて、市消防職員が誤って交通事故を起こしたが、当事者
(市当局及び被害者)間に、市当局から被害者に対し医療費及び見舞金を贈ることにより示談と
なった場合、これら二件の金額の決定については、その金額の多少にかかわらず法律上その
義務に属する損害賠償の額を定めることとして、当然議会の議決を必要とするか。
二 右の事由の有無にかかわらず第一八〇条第一項の規定に基き、一定の金額を限度としてあら
かじめ議決により特に指定し、その範囲内において長に専決処分させることができるか。
答一 医療費及び見舞金が損害賠償のためのものであるときはお見込みのとおり。
二 お見込みのとおり。
何だか分かりにくい答ですが、一応、議決が必要ということです。では、この問の場合で、相手方が損害賠償請求権を放棄したときには、議会の議決が必要でしょうか。
考えられる方法としては、次のとおりです。
@ 損害賠償の額を定めること及び和解についての議決が必要
A 和解についての議決のみ必要
B 議決不要
「第3条第3項の条例を除くほか、普通地方公共団体は、条例を制定し又は改廃したときは、政令の定めるところにより、都道府県にあっては総務大臣、市町村にあっては都道府県知事にこれを報告しなければならない。」(地方自治法第252条の17の11)
このことについて、Kei-zuさんが次のような記事を書かれています。
改正自治法の施行
実は、地方課(現在の市町村課)へ出向していたとき、この事務を担当していました。といっても、一べつもせずにファイルにつづって係内で供覧するだけでしたが……一方、自分の前の前の前にこの事務を担当されていたN市のMさんのように、喜々として条文を読みあさり、法制執務上のチェックまでしながら、ユニークな条例を月刊「自治大阪」で紹介していたような強者もいらっしゃいますので、担当次第というところでしょうか。
何はともあれ、報告義務がなくなって良かったです。
「普通地方公共団体は、普通地方公共団体の事務の一部を共同して管理し及び執行し、若しくは普通地方公共団体の事務の管理及び執行について連絡調整を図り、又は広域にわたる総合的な計画を共同して作成するため、協議により規約を定め、普通地方公共団体の協議会を設けることができる」(地方自治法第252条の2第1項)とされています。
また、「逐条地方自治法」(松本英昭著/学陽書房)に掲載されている「地方自治法第二百五十二条の四の規定による協議会の規約例」には、次のような規定があります。
(協議会解散の場合の措置)
第31条 協議会が解散した場合においては、各関係市(町村)がその協議によりその事務を承継する。
この場合においては、協議会の収支は、解散の日をもって打切り、会長であった者がこれを決算す
る。
2 前項の規定による決算は、事務を承継した各関係市(町村)長においてこれを監査委員の審査に付
し、その意見を附けて議会の認定に付さなければならない。
協議会を廃止した場合において、残余財産が発生したにもかかわらず、規約に規約例第31条(協議会解散の場合の措置)が規定されていないときは、その決算の根拠をどこに求めたらよいのかというのが今回のテーマです。
一部事務組合の場合は、組合規約に特別の定めがあるときは当該規約の定めるところにより、特別の定めのないときは地方自治法第292条において準用する地方自治法施行令第5条第2項及び第3項の規定をその根拠とします。ところが、協議会の場合は、同法上、一部事務組合のような準用規定がありませんので、協議会規約に規定がないと、決算の根拠がなくなってしまいます。にもかかわらず、規約例第31条を規定しなかったのは、おそらく、「「協議会」とは、一部事務組合のように法人格を有するものではなく、いわば関係地方公共団体の共同の執務組織ともいうべきものである。したがって、協議会固有の財産又は職員を有しないのが建前とされ」(前掲書)ているからではないかと考えられます。
ただ、残余財産が発生してしまった以上は、「監査委員の審査に付し、その意見を附けて議会の認定に付」すことが民意にも法意にもかなうものであろうということは理解できるところではないでしょうか。また、協議会が固有の財産又は職員を有しないと解するのであれば、解散に伴って発生した残余財産は、あくまで協議会を構成する市町村の共有の財産ということになります。市町村の財産であるならば、各構成市町村の首長が地方自治法第233条第2項の規定により監査委員の審査に付し、同条第3項の規定により議会の認定に付せば良いのではないでしょうか。
議案の訂正については、会議規則の定めるところによるものとされており、標準市議会会議規則第19条第1項は、「会議の議題となった事件を撤回し、又は訂正しようとするとき及び会議の議題となった動議を撤回しようとするときは、議会の承認を要する」と規定しています。
議案の「訂正は提出案件の内容を修正するものです。議題となったあとは、訂正表を配布し議会の承認を得なければなりません。訂正は通常、修正の内容が簡単な場合に用いられます。修正の個所が多数であったり、または、内容的に大幅な修正であったりするときは、訂正によらず撤回し、修正の上、再提出する方が議員にとって分かりやすいでしょう。案件は、提出するまでに慎重に検討されるものですから、提案後に事情変更がない限り大幅修正はあり得ません」(「議員・職員のための議会運営の実際2」地方議会研究会編著/自治日報社)と解されています。
議題となった後、議案の訂正をするためには、「訂正表を配布し議会の承認を得」ることになっていますが、この辺は、様々なローカルルールがありそうですね。本市の場合、議案を訂正するには、議案を訂正する議案を提出し、議会の承認を得ることとしています。この議案を訂正する議案は、修正の動議(地方自治法第115条の2)における修正案と同様に溶け込み方式によっていますので、理論上は、承認されれば原案に吸収されることになります。
ところで、本市で条例案の議案の訂正をしたのは、この6月定例会が初めてでした。これは政治的な理由から行ったことですが、政治と法の関係というのは……本当に難しいものです。
なぜ、行政庁によって指定代理人を指定できたり、できなかったりするのでしょうか?なぜ、行政庁によって事務委任規定があったり、なかったりするのでしょうか?
うーん……それがなぜなのかは、正直、よく分かりません。
反則法制的に考えてみると、@そもそも国の制度であったものを解釈や運用で地方公共団体に適用させていたが、地方分権一括法の施行に伴う機関委任事務の廃止等によって無理が生じた、A地方公共団体の場合、訴訟代理人(弁護士)を選任し、指定代理人を選任することがほとんどなかったため、あまり問題にならなかった、あたりがその理由ではないでしょうか。
「国を当事者又は参加人とする訴訟については、法務大臣が、国を代表する」(国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律第1条)ものとされ、その「所部の職員」又は「行政庁の職員で法務大臣の指定するものにその訴訟を行わせることができる」(同法第2条第1項及び第2項)とされています。また、「地方公共団体、独立行政法人その他政令で定める公法人は、その事務に関する訴訟について、法務大臣にその所部の職員でその指定するものに当該訴訟を行わせることを求めることができ」(同法第7条第1項)、「法務大臣は、国の利害を考慮して必要があると認めるときは、所部の職員でその指定するものにその訴訟を行わせることができる」(同条第3項)とされています。
このように訴訟を行わせるものとして指定された職員を指定代理人といいます。
「指定代理人は、個別の事件ごとに指定される訴訟代理人です。訴訟代理人は、一般に法令による訴訟代理人と委任による訴訟代理人とに分けられますが(民訴法54条1項、55条4項参照)、指定代理人は前者に属すると考えられます。もっとも、指定代理人は、個別の事件ごとに選任され、その事件についてしか権限を与えられていませんので、法令による訴訟代理人であるとはいっても、他の法令による訴訟代理人(例えば、商法上の支配人や船長など)とはかなり性格を異にし、むしろその実質は、委任による訴訟代理人に近いといえます。
指定代理人は、訴訟代理人としての地位にありますから、指定代理人がその権限内でした行為は、本人がしたのと同様な効果を生じ、その効力は本人に及びます。これは訴訟代理の本来的効果です。裁判の期日に指定代理人が欠席すれば本人が欠席したことになり、指定代理人の陳述したことは本人の陳述となります。
一方、指定代理人は、訴訟の当事者ではありませんから、判決の効力を受けることはありませんし、証人や鑑定人になることもできます。」(「地方公共団体の訴訟事務の手引」行政関係訴訟事務研究会編集/ぎょうせい)
地方公共団体の事務に関する訴訟については、当該地方公共団体又は行政庁が職員を指定代理人として選任することができます。この場合において、行政庁が長のときは地方自治法第153条第1項の規定が、教育委員会のときは地方教育行政の組織及び運営に関する法律第26条第3項の規定が、地方公営企業管理者のときは地方公営企業法第13条第2項の規定がその根拠となります。また、選挙管理委員会(地方自治法第193条)や監査委員(同法第201条)は、同法第153条第1項の規定を準用するとされています。
一方、公平委員会、農業委員会や固定資産評価審査委員会、さらに、通常、議決機関である議会には、このような事務委任の規定がありません。つまり、これらの行政庁(議会を含む。)は、指定代理人を選任することができないということになります。
議会に付議された事件については、「会議において提出者の説明を聞き、議員の質疑があるときは質疑の後、議長が所管の常任委員会又は議会運営委員会に付託」(標準市議会会議規則第37条第1項)するものとされており、議会の付託を待って、常任委員会は、「議案、陳情等を審査」(地方自治法第109条第4項)します。
委員会における付託案件の採決に当たり、委員は、表決を拒否して退席することができるのでしょうか?また、多数の委員が退席したために定足数を欠くこととなった場合は、どうするのでしょうか?
委員会は、議会の内部組織として付託案件について審査する権能を有していると同時に、審査の経過と結果を議長に報告する義務があります。同様に、委員会の委員には、付託案件を表決する責務があるのであって、表決を拒否することは、委員の職責を放棄するもので許されることではありません。また、多数の委員が退席したために定足数を欠くようになった場合は、流会になってしまいます。ですから、委員長は、出席している委員の退席を制止し、退席した委員には出席を要請しなければなりません。それでも委員が退席し、出席しないのであるならば、その行為は、標準市議会委員会条例第22条等に違反するものとして、懲罰の対象となります。
なお、国会では、「委員会において、議院の会議に付するを要しないと決定した議案は、これを会議に付さない。但し、委員会の決定の日から休会中の期間を除いて7日以内に議員20人以上の要求があるものは、これを会議に付さなければならない」(国会法第56条第3項)とされ、「前項但書の要求がないときは、その議案は廃案となる」(同条第4項)とされていますが、地方議会には、このような規定はありません。
委員会は、必ず、付託案件を可決若しくは否決又は継続審査のいずれかに決めなければならず、審査未了、廃案とすることはできません。そもそも審査未了とは、議長が閉会の宣告をした瞬間に生じる結果のことであって、委員会の審査結果ではありません。
(参照「議員・職員のための議会運営の実際4・16・21」地方議会研究会編著/自治日報社)
決議と附帯決議の違いは、「第一に、決議案は独立した議案であるのに対し、附帯決議案は文字通り案件に附帯、附随したものであることです。このため決議案は独立して議題となりますが、附帯決議は附帯の対象となった案件が可決されたあとで議題となります。
第二に、一般に決議案は本会議に提案されるのに対し、附帯決議案は委員会に提出されることです。決議案は可決されますと議会の意思になりますが、附帯決議は可決されても委員会段階のものであるため当該議会の意思になりません。当該議会の意思にするためには議員が別個に附帯決議の内容を盛り込んだ決議案を議長に提出し可決される必要があります。このため本会議へ決議案を提出するときは標準会議規則に定める○人以上の賛成者を必要としますが、附帯決議案は委員会で提出するため一人の委員でも提出することができます。
第三に、決議案は本会議での提案理由の説明、質問に対する答弁の準備等が必要であり、最終的には本会議で表決の対象になりますが、附帯決議案は委員会で可決された意思であり本会議へは委員長から報告されるだけで表決の対象になりません。附帯の対象となった案件について議員が表決態度を決めるときの参考になるだけです。
第四に、決議案は当該団体に関係のある問題であるならばいかなる事項でも対象とすることができますが、附帯決議案は内容的に議案に関連する事項に限定されます。しかも当該議案が可決された後の執行上の要望等を述べますので否決の案件についての附帯決議案はあり得ません。
第五に、決議案は可決後、長等第三者に送付されることがありますが、附帯決議案は可決されても当該議会の意思になっていませんので、長等第三者に送付されることはありません」「議員・職員のための議会運営の実際6」(地方議会研究会編著/自治日報社)とされています。
国会先例によると、委員会における附帯決議は、委員長が議院に報告するだけであって、採決しないとされています。しかし、市町村議会のローカルルールでは、本会議に附帯決議案を提案し、採決しているところがあります。
そもそも、議会は、議決に当たって、条件を付けることができません。そのような附帯決議は、「議会の単なる希望であると解されます」(昭和24年12月15日行政実例)。よって、「単なる機関意思の決定であり執行機関を拘束するものではなく、政治的、道義的なもの」(最新会議規則・委員会条例・傍聴規則逐条解説」中島正郎著/ぎょうせい)として取り扱われることになります。
地方自治法第197条は、「監査委員の任期は、識見を有する者のうちから選任される者にあっては4年とし、議員のうちから選任される者にあっては議員の任期による。ただし、後任者が選任されるまでの間は、その職務を行うことを妨げない」と規定しています。
このただし書の規定について、「逐条地方自治法」(松本英昭著/学陽書房)には、次のように記されています。
「任期が満了しても後任者が選任されるまでの間は、その職務を行うことができるとする本条ただし書の規定が設けられている。本来この規定は、識見を有する者のうちから選出の者及び議員のうちから選出の者それぞれについていずれかの委員の四年の任期が満了した場合において、監査機能の停滞を防止するために設けられた規定であるが、これについては、以下の諸点に注意を要する。@議員選出の監査委員については、議会の構成が一新されるような場合、すなわち、議員の総辞職又は議会の解散若しくは議会の解散請求の成立等の事由により、当該議員を含めてすべての議員の任期が、その四年の期間の満了をまたずして終了した場合にはただし書の規定の適用がある。Aこれに対して、当該議員に対する解職請求の成立、除名、議員の辞職等の場合にはただし書の適用はないと解すべきである。B同様に、議員選出の監査委員及び識見を有する者たる監査委員のいずれを問わず、これらの者が辞職し、又はこれらの者について、長又は副知事若しくは副市町村長と親族関係が生じた場合(法一九八の二)、第百九十七条の二の規定により罷免された場合にはただし書は適用されないと解する。」
「本条ただし書の規定は、元来、監査委員の職務を行う者が一人もいなくなるような事態を避けるために設けられたものであり、したがって、他に監査委員が在任する場合においては、特別の必要がない限り、適用されるべきではない(行実昭二六、七、一一)との行政実例があるが、しかしながら、後任者が選任されるまでの間監査委員職務執行者がその職務を行うべきかどうかは、客観的にその必要性の有無の判断がなされると同時に、たとえ他に監査委員が在職していても、職務を行うことを妨げるものではないと解すべきである。」
ちょっと分かりにくい解説だと思いますが、結論は、第197条ただし書の適用については、当該地方公共団体において、「客観的にその必要性の有無を判断」せよということなのでしょう。ちなみに、昭和32年8月1日付け行政実例にも「任期満了となった議会選出の監査委員は、後任の委員が選任されるまで、職務を行うことはさしつかえない」とあります。
しかし、自分の知る限りにおいては、後任者が選任されるまでの間、慣例として一律に、監査委員職務執行者を置いているところがあれば、まったく置いたことがないというところもあります。その実態は、「客観的にその必要性の有無を判断」しているとは思われないのです。
ちなみに、本市は、監査委員職務執行者を置いたことがありません。
どこかの市長がメチャクチャにやってくれたおかげで、本市では、ほとんどの職員が「専決処分」という言葉を覚えてしまいました。しかし、その一方で、誤って理解をしている職員も見受けられます。その一例が、職務代理者は専決処分することができないというものです。
「職務代理者が本条の規定によって普通地方公共団体の長の職務を代理し得る範囲は、原則として普通地方公共団体の長の職務権限等のすべてに及ぶものと解すべきである」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)とされています。一方、「普通地方公共団体の長の身分なり資格を要件として普通地方公共団体の長に附与された職務権限等については、一般的には職務代理者の代理権は及び得ないと解すべきである」(前掲書)とされており、行政実例によると、その例として、議会の解散権(昭和23年9月14日)や副市長等の選任権(昭和30年9月2日)が挙げられています
職務代理者が長の職務を代理し得る範囲は、原則として長の職務権限等のすべてに及ぶこと、また、専決処分については、長の地位に固有の権限ではないことから、職務代理者は、専決処分をすることができると解されます。
職務代理者は専決処分することができないという誤解は、どこかの市で、市長だけでなく、職務代理者である副市長までが違法な専決処分を行っているという報道によるものではないかと思われます。記憶がちょっと曖昧なのですが、ここで違法とされたのは、@そもそも副市長の選任が違法な専決処分によるものであること、A議会開会中に専決処分を行っていることがその理由ではなかったでしょうか。
「普通地方公共団体の長に事故があるとき、又は長が欠けたときは、副知事又は副市町村長がその職務を代理」(地方自治法第152条第1項前段)します。
この場合において、「普通地方公共団体の長の職務を代理する副知事若しくは副市町村長又は普通地方公共団体の長の指定する職員若しくは規則で定めた上席の職員の呼称は、たとえば、県に関する場合には、「何県知事職務代理者何県副知事(何県職員)何某」とするのが適当であろう」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)と解されています。また、職務代理者を置く場合には、その呼称も含めて公示することが適当であろうと考えられます。
ある市町村のホームページで、職務代理者を置いた場合の文書等の取扱いについて、市長名を変更することなく、「「○○市長△△△△」とあるのは、「○○市長職務代理者○○市副市長××××」と読み読み替えてください」とする記事がありました。おそらく公示した上で広報誌やホームページを使って広報しているのであろうと思われます。既存の文書の修正や電算システムの改修等、その変更には少なからずの労力と予算を必要とすることは予想できますが、こういう取扱いはどうなのでしょうか。
様々な意見のあるところとは思いますが、代理とは、「代理者が都道府県知事又は市町村長の職務代理者であることを明示して自己の名をもって、都道府県知事又は市町村長の職務権限に属する一切の事項を処理し、その行為自体は代理者の行為であるが、その行為の効果は都道府県知事又は市町村長が行ったと同じ効果を生ずることである。したがって、その効果は直接都道府県又は市町村に帰属することになる」(前掲書)ということを考えると、消極的に解します。
「ちょっと見てくれ」と言われてちょっと見た契約書の中に、いわゆる自動更新条項(契約期間を4月1日から翌年の3月31日までとする契約で、契約終了前の一定の期間までに当事者の一方から更新を拒否する申出がない場合は、当該契約を1年間更新したものとみなす旨の規定)が規定されていました。
なお、この契約書には「翌年度以降において歳入歳出予算の当該金額について減額又は削除があった場合は、当該契約は解除する」旨の条件も規定されていますが、この契約に係る債務負担行為は設定されていません。
会計年度独立の原則から、歳出予算に基づく契約については、債務負担行為等の予算措置をせずに次年度以降に経費の支出を伴うものを締結することはできません。このことから、例え「翌年度以降において歳入歳出予算の当該金額について減額又は削除があった場合は、当該契約は解除する」旨の条件を規定したとしても、自動更新条項を規定することはできません。
このような契約書が見受けられるのは、昭和40年9月1日付けの行政実例に「当該契約条項中に、翌年度以降において歳入歳出予算の当該金額について減額又は削除があった場合は、当該契約は解除する旨の条件を附した場合は債務負担行為とする必要はない」とあることがその原因ではないかと考えられます。しかし、そもそもこの行政実例は、長期継続契約において当該解除権を留保した条件を付した場合には、債務負担行為として予算で定める必要はないと解されたものです。単年度契約に自動更新条項を規定するによって長期継続契約のような効果を発生させ、かつ、解除権留保条項を規定することによって債務負担行為をも解除しようとすることはできません。
「大阪府議選泉佐野市選挙区(定数1)では1日朝、4選を狙う自民現職の山下清次氏(67)が立候補を届け出。午後には市長の新田谷修司氏(60)が市長を辞職し、維新新人として立候補を届け出ることにしており、中堅府議と直近の地元首長が議席を争う異例の構図となる。
泉佐野市長として3期目の新田谷氏は、維新代表の橋下徹知事が掲げる府政改革に共鳴し、市長の任期を1年近く残して府議への転身を決意。すでに市議会議長に辞表を提出し、1日午後2時で辞職することが承認されている」(4月1日付け産経新聞夕刊)。
地方自治法第145条は、市長の退職について、日を単位として規定しています。では、産経新聞の記事のように、市長が「平成23年4月1日の午後2時をもって退職」することは可能なのでしょうか?
結論から言うと、可能と考えます。
地方自治法第145条の規定による退職の申出が市長の一方的な意思表示によって成立すること、時間を単位とする退職の申出を無効とする理由がないことがその理由です。また、公職選挙法第90条においても「公職の候補者となったときは、当該公務員の退職に関する法令の規定にかかわらず、その届出の日に当該公務員たることを辞したものとみなす」と規定されていることから日を単位としていると解されますが、「逐条解説公職選挙法」(安田充・荒川敦編著/ぎょうせい)には、「「公職の候補者となったとき」とは、単に届出書類を選挙長に提出したときではなく、選挙長による届出書類の審査が終了し、公務員であることを除いてすべて適法であるとされ、選挙長が受理するときであると解する。この意味において「公職の候補者となったとき」は、本条の規定により、立候補制限を受ける現職の公務員たる地位を瞬間的かつ自動的に失うもの」とあります。
変な話ですが、例えば「平成23年3月31日をもって退職」する場合、一般職の職員は3月31日の24時に、市長は同日の午前0時に退職することになり、1日のズレが生じます。
一般職の職員の場合、「退職願いは本人の同意を確かめるための手続であり、その同意を要件とする退職発令(行政行為)が行われてはじめて離職することとなるものである(高松高裁昭三五・三・三一判決 行政裁判例集一一巻三号七九六頁)。退職の効力の発生時期は、死亡による退職の場合は当然にその死亡のときであるが、それ以外は、他の辞令交付による場合と同じく、法律的には到達主義によるもの、すなわち辞令が交付されたときであり、辞令の発信の時期ではない(最高裁昭三〇・四・一二判決 刑事裁判集九巻四号八三八頁)。この辞令が交付されたときとは、現実に本人が了知したときはもちろん、本人が了知しうべき状態に置かれたときを含むものである(最高裁昭二九・八・二四判決 判例時報三四号二二頁)。なお、実際には当日またはそれ以前に辞令が交付されることが普通で、その辞令に記載された日付の午後一二時に退職するものと観念されている」(「逐条地方公務員法」橋本勇著/学陽書房)と解されています。
一方、市長の場合は、地方自治法第145条が「退職しようとするときは、その退職しようとする日前、都道府県知事にあっては三十日、市町村長にあっては二十日までに、当該普通地方公共団体の議会の議長に申し出なければならない」と規定していることから、長からの意思表示のみで成立する法律行為であると考えられます。そうであるならば、長の意思表示に特段の定めがないことから、民法上の規定を適用し、3月31日という期限の到来(同日の午前0時)をもって、その効果が発生すると解されます。また、議長及び副議長の辞職についても、「「十月一日をもって辞職したい」旨の辞意を表明し、議会がこれを許可したときは当該辞職の効果は十月一日から発生する(行実昭二六、五、二)」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)とあります。
しかしながら、市長の退職の日をそのように考えるのであるならば、「長の退職申出による退職指定日前に、その退職に伴なう選挙を執行した場合における後任者の任期の起算日については」、「法第二五九条ただし書を類推適用し、前任者の退職の日の翌日から起算する」(「選挙関係実例判例集」選挙制度研究会編/ぎょうせい)とする昭和42年1月14日行政実例では、1日の空白期間が生じることになります。
会議録について規定している地方自治法第123条は、第4項で「議長は、会議録が書面をもって作成されているときはその写しを、会議録が電磁的記録をもって作成されているときは当該電磁的記録に記録された事項を記載した書面又は当該事項を記録した磁気ディスク(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録することができる物を含む。)を添えて会議の結果を普通地方公共団体の長に報告しなければならない」と規定しています。この会議の結果の普通地方公共団体の長への報告ですが、みなさんのところでは、どのような方法で行っていますか?
本市の場合、議案に会議の結果を朱書(ゴム印を赤インクで押印)し、その他必要事項を記載したものを作成し、これを市議会会議結果報告書と称して市長に送付することとしています。
報告の方法について、法上は何ら規定されていませんが、第16条第1項では「普通地方公共団体の議会の議長は、条例の制定又は改廃の議決があったときは、その日から3日以内にこれを当該普通地方公共団体の長に送付しなければならない」と、第219条第1項では「普通地方公共団体の議会の議長は、予算を定める議決があったときは、その日から3日以内にこれを当該普通地方公共団体の長に送付しなければならない」と規定しています。このことから、本市では、会期の最終日にすべての案件を議決し、その日から3日以内に会議結果報告書を市長に送付することとしています。
この報告の方法については、様々なローカルルールがあるのではないでしょうか。
標準都道府県・市・町村議会会議規則第1条には「招集日の開議定刻前に議事堂に参集し」と規定されていることから、招集場所の告示は必要ないとの意見もあるようですが、議会の招集告示には、期日と場所が規定されます。
「議員・職員のための議会運営の実際1」(地方議会研究会編著/自治日報社)には、「地方団体の招集告示をみると、@○○市(町村)に招集する、A○○県(市町村)議会議事堂(または議場)に招集する−に大別されます。どちらの方法でも差し支えありません」とあります。
一般的に「議場」とは、議会の会議が開かれる場所を指し、原則として特定されていなければならないと解されていますが、特に必要がある場合は、議長は、地方自治法第104条の規定により、議場を別の場所に変更する権限を有していると解されます(「地方自治法質疑応答集」地方自治制度研究会編著/第一法規)。また、「町村会合併問題等ノ事情ノ為町村会ヲ他町村内ニ招集スルハ差支ナシ」(昭和6年5月23日行政実例)とあることから、他の市町村で議会を開くことも可能です。
東日本大震災の津波で庁舎が壊滅した岩手県大槌町の議会が、15日(火)、公民館で開かれたという報道を見ました。一日も早い復興をお祈りします。
地方自治法第180条の2本文は、「普通地方公共団体の長は、その権限に属する事務の一部を、当該普通地方公共団体の委員会又は委員と協議して、普通地方公共団体の委員会、委員会の委員長、委員若しくはこれらの執行機関の事務を補助する職員若しくはこれらの執行機関の事務を職若しくはこれらの執行機関の管理に属する機関の職員に委任し、又はこれらの執行機関の事務を補助する職員若しくはこれらの執行機関の管理に属する機関の職員をして補助執行させることができる」と規定しています。
「本条の委任又は補助執行は、長と当該委員会又は委員との間に協議が成立することが必要である。この協議は、長、委員会又は委員のいずれからでも申し入れをすることができる」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)と解されていますが、この「協議」の方法については、法律上、何ら規定されていません。
「地方自治法質疑応答集」(地方自治制度研究会編著/第一法規)などによると、この「協議」は、口頭、文書等のいずれによっても差し支えないと解されるが、文書によることが適当であり、協議が成立した際は、告示することが望ましいとされています。
各地方公共団体の例規集を見てみると、その告示文を例規集に登載しているところも見受けられますが、一部の地方公共団体では、事務委任又は補助執行に関する規則を制定しているところがあります。協議が成立した際、その旨の規則を制定することは、より望ましい方法ではないかと思います。
規則の活用(2月23日付け記事)の一例として、思いつきましたので……
「地方公共団体の休日は、条例で定める」(地方自治法第4条の2第1項)ものとされ、同条第2項にその基準が示されています。そのうち、同項第3号は、「年末又は年始における日で条例で定めるもの」と規定しています。
「国の行政機関は従来から毎年十二月二十九日から翌年の一月三日までの期間をいわゆる年末年始の休日としており、地方公共団体においても、これらの日を休日としている団体が多いが、地方公共団体の業務は住民に身近なものが多いこと等から、地域の実情に応じ年末の休日の時期を遅らせるなど国と異なる対応もみられる。このようなことから、年末又は年始における休日については、各地方公共団体が、その実情も踏まえながら、条例で定めることとした」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)そうです。
本市の休日を定める条例第2条第1項第3号は、「12月30日から翌年の1月4日までの日」と規定しています。この条例が制定された当時は、中小企業の多い南河内、泉南地域等の市町村では、年末年始の休みを1日ずらしていたようなのですが、国・府に合わせて改正する市町村が相次ぎ、泉南地域の市町村も「12月30日から翌年の1月4日まで」とする年末年始の休日は、今年度限りとなります。
なお、「年末年始における地方公共団体の休日については、国の行政機関に関して定められている年末年始の休日の期間よりも長い休日を定めることはできないと解され」(前掲書)ています。
今年最後の反則法制です。今年もたわごとにお付き合いいただき、ありがとうございました。
みなさん、良いお年をお迎えください。
「 普通地方公共団体は、普通地方公共団体の事務の一部を共同して管理し及び執行し、若しくは普通
地方公共団体の事務の管理及び執行について連絡調整を図り、又は広域にわたる総合的な計画を
共同して作成するため、協議により規約を定め、普通地方公共団体の協議会を設けることができる。
2 普通地方公共団体は、協議会を設けたときは、その旨及び規約を告示するとともに、都道府県の加
入するものにあっては総務大臣、その他のものにあっては都道府県知事に届け出なければならない。
3 第1項の協議については、関係普通地方公共団体の議会の議決を経なければならない。ただし、普
通地方公共団体の事務の管理及び執行について連絡調整を図るため普通地方公共団体の協議会を
設ける場合は、この限りでない。」(地方自治法第252条の2第1項から第3項まで)
この議案を作成するに当たり、関係普通地方公共団体の担当課が調整を行うのですが、これが簡単にはいきません。そもそも、議案というものは、ローカルルールの塊みたいなものですから、普通地方公共団体ごとに独自のルールがあり、それが調整を難しくさせています。本市の場合、一応意見は言いますが、示された案のとおりにするのが基本的なスタンスです。ですから、このタイプの議案は、いまだに定型化できていません。
12月定例会で地方自治法上の協議会を廃止する議案を提案しました。この議案についての意見は、次の3点です。
1 協議会は、普通地方公共団体相互間の協力の方法の一つです。「「協議会」とは、一部事務組合のように法人格を有するものではなく、いわば関係普通地方公共団体の共同の執務組織ともいうべきものである。したがって、協議会固有の財産又は職員を有しないのが建前」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)とされています。
2 「協議する」ことについて議決を得るのではなく、「廃止する」という協議の内容について議決を得るべきです(2010年8月6日付け記事参照)。
3 「協議会を廃止しようとするときは、第252条の2第1項から第3項までの例によりこれを行わなければならない」(地方自治法第252条の6)とされています。第252条の2第1項が規約を定めることによって協議会を設けることができるならば、協議会を廃止するには、規約を廃止するべきだと考えられます。ただし、これは、少数意見と思われます。
A君「府庁、WTCに引っ越してるみたいすけど、あれたしか、否決されたんと違(ち)ゃいましたん?」
自分「おう。否決されたけどな。自治法で規定してる「事務所」っちゅーのは、主たる事務所のこっちゃね
ん。せやから、あくまで府庁の本庁舎は谷四(谷町四丁目)にあって、WTCの方は、分室っちゅーか分
庁舎みたいな位置付けやな。」
A君「それやったら、WTCの方も条例で規定せなアカンと違(ち)ゃいますん?」
自分「行政実例があってな、支所や出張所、府の場合やと支庁や地方事務所やな、を設置するんやっ
たら、条例で規定せんならんねんけど、あくまで庁舎の分室として設置するんやったら、条例で規定
せんでもええとされてんねん。」
A君「……。それと、モトの府庁の位置を定める条例てどこにあるんですか?」
自分「よう見つけんか。そらそやろ。ないんやさけ。」
A君「えー!?なんでないんすか?」
自分「地方自治法施行規程っちゅー政令があってな、その第1条で「地方公共団体の事務所の現に在
る位置は、地方自治法第4条の条例で定めたものとみなす」とされとるよってや。そやから、WTC行く
ときの府庁の位置を定める条例は、一部改正条例やのうて、新規の制定条例として提案されてんね
ん。」
A君「ふーん。」
自分「基礎的自治体である市町村とそれを包括する都道府県やったら、その庁舎の性格も違うわな。W
TC移転の件は、府やから起きた騒動やと思うで。」
A君「たしかに。市町村やったら、移転の話はタブーっすね。しかし、WTCて、交通の便悪いっすよね。
ほんで、あの辺、コスプレイヤーの聖地になってますよ。」
自分「ワシもこの前行ってびっくりしたわ。」
A君「新聞とか見たら、維持管理費にごっつい金かかるみたいやし、雨漏りやとか携帯圏外やとか。なん
であんな不便なとこ行くんすか?」
自分「そら知らん。直接、知事に聞いてくれ。ま、自治法の4条2項は、「事務所の位置を定め又はこれ
を変更するに当っては、住民の利用に最も便利であるように、交通の事情、他の官公署との関係等に
ついて適当な考慮を払わなければならない」て規定されてんのやけどな。」
A君「WTC行くぐらいやったら、RGT行ったらええんすよねえ。」
自分「RGTてなんや?」
A君「りんくう・ゲート・タワーですわ。」
自分「府庁がりんくうタウン来るんか。わははは〜。そらええのう。」
なお、議会の事務局についても、「市町村の議会に条例の定めるところにより、事務局を置くことができる」(同法第138条第2項)と規定されています。
ところが、競争試験等を行っていない公平委員会に事務局が置かれていたり、条例ではなく、規則その他の規程の定めるところにより、事務局が置かれているケースがあります。これは、何故でしょうか?
公平委員会に事務局を置くことについては、次のような行政実例があります。
「公平委員会には事務職員のみを置く旨規定してあるが共同設置の場合、事務局を設置しても違法ではないが、一般的にはその必要がないものと解される。」(昭和26年8月23日行政実例)
「公平委員会に事務局を置くことは、法律の予想するところではない。」(昭和40年10月6日行政実例)
一方、選挙管理委員会に事務局を置くことについては、次のような行政実例があります。
「選挙管理委員会等の事務部局の組織として条例をもって事務局を設置することはできないが、機関の内規で定めることはさしつかえないと解する。」(昭和25年12月19日行政実例)
「選挙管理委員会規程により、書記長その他の職員の職の名称として事務局長等を定めることはさしつかえないと解される。」(昭和43年6月18日行政実例)
規模の小さい市町村では、教育委員会を除き、複数の委員会及び委員を総合行政委員会と称して、これらの事務組織を職員が兼務しているのが一般的です。そうすると、総合行政委員会内で委員会ごとに事務局が設置されていたり、されていなかったりということや、また、職名が異なるということは、非常に面倒かつややこしいことだったのではないでしょうか。
そこで、昭和25年12月19日付け行政実例のとおり、すべての委員会及び委員に事務局を設置(法律上、設置を想定していない委員会については、規則その他の規程で設置)したのではないでしょうか。
委員会及び委員の事務組織等に関する規定を見比べると、昭和25年12月19日付け行政実例には、無理を感じます。個人的には、そもそも、これらの規定に整合性がとれていないと感じています。
市町村に置かれる委員会及び委員は、次のとおりです。
教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会又は公平委員会、監査委員、農業委員会、固定資産評価審査委員会(地方自治法第180条の5第1項及び第3項)
これらの委員会及び委員の事務局その他の事務組織等に関する法律上の規定を見てみると、教育委員会(「教育委員会の権限に属する事務を処理させるため、教育委員会に事務局を置く」地法教育行政の組織及び運営に関する法律第18条第1項)と人事委員会(「人事委員会に事務局を置き、事務局に事務局長その他の事務職員を置く」地方公務員法第12条第1項)のみが事務局を置くこととされています。そして、監査委員は、「条例の定めるところにより、事務局を置くことができる」(地方自治法200条第2項)とされ、「事務職員を置く」(地法公務員法第12条第5項)とされている公平委員会のうち「競争試験等を行う公平委員会」については、「事務局を置き、事務局に事務局長その他の事務職員を置くことができる」(同条第6項)とされています。競争試験を行う公平委員会に事務局を設置する場合は、「その設置条例にその旨を規定しなければならない。そして、公平委員会に事務局を設置したときは、本条第一〇項によって人事委員会の事務局の組織について定める本条第八項が準用され、その組織は公平委員会が定めることとされるほか、長との関係についても人事委員会の事務局の場合と同じ扱いになる」(「逐条地方公務員法」橋本勇著/学陽書房)と解されています。
また、選挙管理委員会は「都道府県及び市の選挙管理委員会に書記長、書記その他の職員を置き、町村の選挙管理委員会に書記その他の職員を置く」(地方自治法第191条第1項)と、農業委員会は「農業委員会に職員を置く」(農業委員会等に関する法律第20条)とされていますが、固定資産評価審査委員会は、何ら規定されていません。
地方自治法第180条の5第4項は、「委員会若しくは委員の事務局又は委員会の管理に属する事務を掌る機関で法律により設けられなければならないものとされているものの組織を定めるに当たっては、当該普通地方公共団体の長が第158条第1項の規定により設けるその内部組織との間に権衡を失しないようにしなければならない」と規定しています。同項後段は、「当該普通地方公共団体の長の直近下位の内部組織の設置及びその分掌する事務については、条例で定めるものとする」と規定していますので、委員会及び委員に事務局等の内部組織を設置する場合は、条例で定めるべきであると考えられます。
「普通地方公共団体は、その議会の議員に対し、議員報酬を支給しなければならない。」(地方自治法第203条第1項)
議員報酬は、国会議員の歳費とは根本的に異なります。歳費は年額を基準(支給は、歳費月額)とする生活給ですが、議員報酬は、そのほとんどが月額を基準とし、また、生活給ではありません。
なお、「逐条地方自治法」(松本英昭著/学陽書房)には、「「報酬」も、月を基準として金額を定めるほか、一年を基準として金額を定め、支給は月額で支給してもよい。また、最近は議員の報酬を日当制にしている団体もある。このようなことを勘案して、地方議会には固有の名称の「議員報酬」を支給することとされたものと思われる」とあります。
では、その議員報酬の適正な金額とは、いくらなのでしょうか?「議員・職員のための議会運営の実際1」(地方議会研究会編著/自治日報社)には、昭和37年11月21日付け自治省行政局長内簡(自治省の見解としては、都道府県議会の議員の報酬月額については、当該都道府県における部長(都にあっては、局長)に適用される等級の号給のうち、その中間程度を基準として定めることを適当と考えるというもの。特別職報酬等審議会の設置に伴い、事実上消滅したとあります。)から特別職報酬等審議会の設置に至る経緯や全国町村議長会の政策審議会が昭和53年7月25日にまとめた議員報酬のあり方についてなど、詳細に説明されています。しかし、議員報酬の基準額について、言及するには至っていません。
市町村議会の場合、議員報酬は、10万円程度から100万円超まで、10倍近くもの差があります。これをどう説明するのでしょうか?
最近では、議会改革の一環として、議員報酬と定数を削減しているところが多いようですが、そもそも、現行の議員報酬が適正かどうかという議論は、ほとんどされていないように思われます。都道府県議会の議員報酬の範囲内で、近隣市と比較しながら何となく決まってきたのが議員報酬の実態なのでしょうが、議員報酬が生活給ではないからこそ、説明責任が果たされるべきではないかと思うのです。
現状の議員報酬を説明するため、次のような算式を考えてみました(シャレです。)。
議員報酬 = 当該市町村議会議員一般選挙当選者平均得票数 × @……円 × 地域率
阿久根市で2人の議員を除名にする懲罰動議が可決されたそうです。事の是非はともかくとして、これまた非常に珍しい事例ではないでしょうか。
地方自治法上の懲罰は、@公開の議場における戒告、A公開の議場における陳謝、B一定期間の出席停止、C除名の4種類です。懲罰動議を議題とするには、議員定数の8分の1以上の者の発議が必要で、さらに、除名については、議員の3分の2以上の者が出席し、4分の3以上の者の同意が必要とされています(第135条)。
報道によると、除名された議員は、この処分を受け入れるようですが、懲罰議決に対する救済制度が、これまた非常にややこしいのです。このことについて、「逐条地方自治法」(松本英昭著/学陽書房)は、次のように記しています。
「懲罰は、その内部規律に関する議会の自律作用であって、一般の行政庁の処分と同様に解すべきものではないから、行審法第四条第一項第一号(新行審法案では第六条第一号)の規定により同法に基づく不服申立ての対象とはならない。したがって、第二百五十五条の四の審決の申請を行うこととなる(行政不服審査法の一部が準用される。法二五八)が、基本的に議会の自律作用であることから除名処分についてだけその対象となることとされている(自治大臣審決昭三九、一〇、一九)。被処分者からの訴訟については、議員の懲罰処分について、従来、裁判所においては、かつての行政事件訴訟特例法(現行政事件訴訟法)の規定により懲罰処分無効確認、又は取消の訴訟として事件を受理し裁判している場合も多い(最高裁昭二六、四、二六、昭二七、一二、四等)。もっとも、出席停止の処分については、裁判外にあるとする判決(最高裁昭三五、一〇、一九)から考えて、訴訟も除名処分だけについて認められるということであると一般的には解される(大阪高判平一三、九、二一。なお、上告は不受理決定)。なお、すべての懲罰処分が訴訟(審決も)の対象となると解するものもある(出席停止について認め、執行停止も認めたものとして岡山地裁昭二八、三、一〇)」。
単純に言うと、議会の議決のうち、「行政処分としては、少なくとも除名の議決がこれに該当するものと解する」(昭和31年9月27日行政実例)ということでしょうか。
一部事務組合の「監査委員は義務設置であり、その定数、選任の方法および任期に関する事項ならびに事務局および職員の設置に関する事項は規約に規定しなければならない」(昭和41年1月13日行政実例)と解されています。
地方自治法第292条は、「地方公共団体の組合については、法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか、都道府県の加入するものにあっては都道府県に関する規定、市及び特別区の加入するもので都道府県の加入しないものにあっては市に関する規定、その他のものにあっては町村に関する規定を準用する」と規定していますが、同法第287条第1項第6号の規定により、「一部事務組合の執行機関の組織及び選任の方法」については、規約事項とされているからです。
よって、監査委員の組織及び選任の方法については、地方自治法第195条や第196条の規定にかかわらず、規約で任意に定めることができます。そのため、監査委員の定数が2人の場合で、2人共に識見を有する者から選任しているような事例も見受けられます。
おそらく、一部事務組合の議会の議員は、当該一部事務組合を構成する地方公共団体の議会の議員の中から選挙されている場合がほとんどです。このような議会の構成上、識見を有する者からのみ選任するとした方が、色々と都合がいいのでしょうか?しかし、地方自治法第196条第1項の規定と比較すると、何か居心地の悪い、妙な違和感を感じてしまいます。
法規担当者といっても、地方自治法を丸暗記しているような人は、いません(ひょっとしたら、いるかもしれませんが……)。そんなことは不可能ですし、そもそも、意味がありません。大切なのは、事あるごとに、自治六法で条文を確認することです。そうすると、どの辺りにどういうことが規定されているかは、自然と覚えてしまいます。逆に、ほとんど確認することのない条文については、すっぽりと抜け落ちてしまっていることがあります。
その典型的な条文の一つが、地方自治法第261条ではないでしょうか。
同条は、憲法第95条の規定により、一の地方公共団体のみに適用される特別法の住民投票に関する手続等について規定したものです。
この手続によって成立した法律には、広島平和記念都市建設法、長崎国際文化都市建設法、別府国際観光温泉文化都市建設法、横浜国際港都建設法、奈良国際文化観光都市建設法、芦屋国際文化住宅都市建設法、軽井沢国際親善文化観光都市建設法などがありますが、すべて、昭和24年から26年までの間に制定されたものばかりです。
「普通地方公共団体の委員会の委員又は委員は、当該普通地方公共団体に対しその職務に関し請負をする者及びその支配人又は主として同一の行為をする法人(当該普通地方公共団体が出資している法人で政令で定めるものを除く。)の無限責任社員、取締役、執行役若しくは監査役若しくはこれらに準ずべき者、支配人及び清算人たることができない」(地方自治法第180条の5第6項)。
委員会の委員又は委員は、当該普通地方公共団体に対する請負が禁止されています。ただし、首長(第142条)や議員(第92条の2)と異なるのは、「その職務に関し」請負が禁止されている点です。「逐条地方自治法」(松本英昭著/学陽書房)によると、「たとえば、市町村教育委員会の委員は、その所管する小学校の建設の請負は禁止される。この場合、予算の執行権を委任されていると否とを問わない(行実昭三一、九、二八・昭三二、七、一〇)。監査委員については、「その職務」が当該団体の全体に及ぶので、広く請負が禁止される」とあります。
また、議員と異なり、首長と委員会の委員又は委員には、当該普通地方公共団体が出資している法人で政令で定めるもの(普通地方公共団体が資本金、基本金その他これらに準ずるものの2分の1以上を出資している法人)については、請負の禁止が除外されています。
ただし、固定資産評価審査委員会の委員については、地方税法第425条第2項が「固定資産評価審査委員会の委員は、当該市町村に対して請負をし、又は当該市町村において経費を負担する事業について当該市町村の長若しくは当該市町村の長の委任を受けた者に対して請負をする者及びその支配人又は主として同一の行為をする法人の無限責任社員、取締役、執行役若しくは監査役又はこれらに準ずべき者、支配人及び清算人であることができない」と規定しています。
「当該普通地方公共団体が出資している法人で政令で定めるもの」も「その職務に関し」も規定されていません。固定資産評価審査委員会の委員は、他の委員会の委員又は委員よりも広く請負が禁止されることになりますので、注意が必要です。
地方自治法は、「普通地方公共団体及び特別区は、第6項の場合を除くほか、その事務の一部を共同処理するため、その協議により規約を定め、都道府県の加入するものにあっては総務大臣、その他のものにあっては都道府県知事の許可を得て、一部事務組合を設けることができる」(第284条第2項)とし、同項の「協議については、関係地方公共団体の議会の議決を経なければならない」(第290条)と規定しています。
一部事務組合を設ける場合、どのような議案を作成していますか?
議案については、様々なローカルルールが存在すると考えられますが、一般的には、「○○に関する協議について」という件名を付し、「××と協議する」としているところが多いのではないかと思われます。ちなみに、大阪府の「議案作成の手引」にもそのように記載されています。
しかし、「議会の議決は、協議の内容についてなさるべきもので、関係地方公共団体の長が当該地方公共団体を代表して協議することについて議会の議決を要するものではない」(昭和34年12月16日行政実例)と解されていることを考えると、「○○の設置について」という件名を付し、「○○を設置する」とする方が適当ではないかと考えられます。
地方自治法第180条第1項は、「普通地方公共団体の議会の権限に属する軽易な事項で、その議決により特に指定したものは、普通地方公共団体の長において、これを専決処分にすることができる」と規定しています。
そして、このことについて、条例を定めている市町村があります。「長においては、専決処分事項の指定の提案権はもちろん有しない。ただ、議長に対して事件を指定して議決を依頼することができるのみである(行実三〇・一二・一七)」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)とされていることから、議員提案条例なのでしょう。問題は、法律上要求されていないにもかかわらず、なぜ条例を制定しなければならないのかということです。
重要事項条例主義という考え方もできるのでしょうが、前の記事でも書いたように、単に提案権が議会に専属するということ(法規審査が及ばないということ)がその理由なのかもしれません。
議会運営委員会の委員定数は、条例中に明確に規定すべきであると解されます。「議員・職員のための議会運営の実際8」(地方議会研究会編著/自治日報社)においても、「常任委員会について、行政実例は「委員の定数は明確に規定すべきである」と述べており(昭三一・九・二八)、この考え方は議会運営委員会の定数についても同様と解されます」とあります。
ところが、地方公共団体によっては、「議会運営委員会の委員の定数は、議会の議決で定める」としているところがあります(中には、常任委員会の委員定数も「議会の議決で定める」としているところもありますが……)。これは、何故でしょうか?
会派制をとっている地方議会の場合、議会運営委員会の委員は、「会派別の委員数は所属議員数に応じて割り当て、会派から委員を推選してもらい、本会議で選任するのが実態」(前掲書)とされています。また、各会派の代表者を委員として選任し、会派代表者会が議会運営委員会を兼ねることとしているところもあります。
地方議会においては、会派の変更がしばしば行われます。その結果、議会運営委員会の委員定数に影響を与える場合が生じます。こうしたケースに対応するため、その都度「議会運営委員会の委員の定数は、議会の議決で定める」としているのではないかと考えられます。
さらにもう一つ。委員会条例の提案権は、議会に専属することとされています。このことも大きな理由の一つかもしれません。
臨時会の招集については、2009年9月4日付けのブログで記事にしています。では、一般選挙後の最初の臨時会の招集手続は、どうすればよいのでしょうか?
「議員・職員のための議会運営の実際1」(地方議会研究会編著/自治日報社)によると、この場合、「@各派代表者により招集予定日を決め長に招集を要請する、A長と各派代表者が協議して招集日を決める、B議員定数の四分の一以上により臨時会の招集を請求する、C長が先例により招集する−などが考えられます」とあります。
本市の場合は、Cです。市長が先例によって招集しています。
なお、新議員の任期開始前であっても、招集日に新議員の任期が開始されているのであれば、長は、臨時会を招集しても差し支えないと解されています(昭和30年5月4日行政実例)。
市町村議会の議員の定数は、地方自治法第91条第2項各号に掲げる市町村の区分に応じ、当該各号に定める数を超えない範囲内で条例で定めなければならないとされています。
議員定数条例は、事務分掌条例や議会委員会条例とは違い、長及び議会の双方にその提案権があると解されていますが、本市では、議会が提案するのが慣例になっています。
第1回(2月)臨時会で議員定数が1人削減され、20人になりました。これで、最大で30人あった定数が、30年ほどの間に3分の2に減ったことになります。人口が約10パーセント増加し、また、それ以上に行政需要が増大し、複雑・多様化してきているにもかかわらずです。これは、何を意味しているのでしょうか。
端的に言うと、議員のなり手がないということではないでしょうか。需要と供給のバランスを取りながら定数を定めてきた結果が定数削減ではないかと考えるところです。
本市には、市議会議員の任期満了前に、お別れ議会と称して臨時会を開く慣例があります。今日は、そのお別れ議会(第2回(4月)臨時会)がありました。
本市の場合、費用弁償は発生しませんが、こんなことをしている市町村は、ほかにあるのでしょうか?自分は、寡聞にして知りません。
ここで、臨時会の招集を請求するには、「付議すべき事件」が必要ではないかという疑問を持たれたかと思います。「付議すべき事件」は、あえて用意するのです。今回の場合で言うと、3月定例会で議員定数条例の改正をしているのですが、議会委員会条例の改正をわざとしていません。これが、お別れ議会の「付議すべき事件」になります。
なお、「付議すべき事件」は、「@事件が議会の権限に属するものであること、A議員に発案権のあるものであること、B具体的な事件であること」(「議員・職員のための議会運営の実際1」地方議会研究会編著/自治日報社)がその要件であるとされています。
このことについては、「地方財務実務提要」(地方自治制度研究会編集/ぎょうせい)5942ページに次のように記されています。
「これらの規定を文理解釈すれば、たしかにすべての契約について入札保証金及び契約保証金を収めなければならないことになるでしょう。しかしながら、この規定は法律上、相手方に対して納付義務を課しているわけではなく、したがって、相手方としては契約締結義務はあっても、保証金の納付義務は負わない旨の主張をすることも考えられ、契約保証金についていえば、すべての契約について契約保証金を納付させるということはできないでしょう。
したがって、いくら地方公共団体の契約事務執行者に保証金の徴収を義務付けられてはいても、例えば、地方公共団体が私人から特定の土地を購入する場合、借りる場合、相手方がそれを拒否すれば、契約が締結できないということになり、結局、契約の放棄か契約保証金の徴収を放棄するかいずれのデメリットが大きいかという比較の問題となるわけで、入札保証金、契約保証金は、契約の締結、契約の履行を担保するために徴収するものであり、他の手段によってそれが担保されれば納付させる必要がないことから考えますと、自治令第一六七条の七,第一六七条の一六の規定は、これらの場合を除き納付させなければならない、という趣旨であると解すべきです。」
うーん……理解できますか?自分は、理解できません。
同書によると、入札保証金の全部又は一部を納付させないことができる場合に、「⑴契約書の作成を省略することができるとき。⑵一〇〇万円以下の契約を締結するとき。⑶入札参加資格のある者の入札」を規定することは差し支えないかとの質疑に対し、平成12年4月18日付け自治行第19号行政局長通知によると、入札保証金の全部又は一部を納付させないことができる場合は、「@入札保証金に代わる保険等によって担保されている場合、A入札保証金を没収するような事態の発生が考えられないか、若しくはその可能性が極めて低いことが客観的に認められる場合」であって、「この観点から設問の態様を考察してみますと、⑴〜⑶ともに、右の通知で示している具体的事例に比較してこれを免除する理由とするには十分とは言い難いと思われ、したがって、ここに示した理由のみをもって一律にこれに該当する場合について入札保証金の納付を免除する取扱いとすることは、極めて不適当と考えられます」とあります。
また、「⑴自治令第一六七条の五及び第一六七条の一一に規定する資格を有する者による一般競争に付する場合において、落札者が契約を結ばないこととなるおそれがないと認められるとき(予算決算及び会計令第七七条第二号参照)、⑵自治令第一六七条の五及び第一六七条の一一に規定する資格を有する者による一般競争に付し、若しくは指名競争若しくはせり売りに付し、又は随意契約による場合において、その必要がないと認められるとき(予算決算及び会計令第一〇〇条の三第二号参照)」という規定を追加することについても、「地方公共団体の減免できる場合の基準は、国の場合の基準と比べると相当厳しいということができますが、これは、従来の地方公共団体の実際の運用について、公正を欠く事例があったため契約の締結及び契約の履行の確保を一段と確実たらしめるための要請に基づくものです。
したがって、設問のような規定を設けることについては、通知で示されている場合を相当緩和した内容になっていますので、法令上許容された範囲なのか疑問が生じることになると考えます」とあります。
ところが、相当数の市町村が財務規則や契約規則でこうした規定を置いています。現実の問題として、入札保証金や契約保証金を納付させるのは、色々と難しいのでしょう。法律の規定が実務と乖離した結果、地方公共団体の規則において、グレーな規定が散見される事例の一つです。
「公共工事の入札で「最低制限価格」を事前公表している自治体で、不況による過当競争のため複数の業者が下限価格で並び、くじ引きで落札業者が選ばれる事態が急増した。工事の質の低下や下請けへのしわ寄せが懸念されるとの指摘もあり、国土交通省は事後公表への転換を各自治体に要請。大阪府でも09年度の対象となる入札のくじ引き率が85%に達し、一部を試験的に事後公表に切り替えた」(3月10日付け朝日新聞夕刊)。
予定価格の事前公表や最低制限価格制度は、地方公共団体特有の制度です。これらの制度については、「公共工事の入札及び契約の適正化の推進について」(平成20年3月31日付け総行行第38号・国総入企第35号通知)でも「その価格が目安となって適正な競争が行われにくくなること、建設業者の見積努力を損なわせること、談合が一層容易に行われる可能性があること等の入札前に予定価格を事前公表することによる弊害を踏まえ、予定価格の事前公表の取りやめ等の対応を行うものとすること」及び「最低制限価格等と同額での入札による抽選落札を増加させ、適切な積算を行わず入札を行った業者が受注する事態が生じることが特に懸念されることから、最低制限価格等の事前公表を行っている地方公共団体においては、上記弊害を踏まえ、最低制限価格等の事前公表の取りやめ等の対応を行うこと」とされています。
本市も予定価格及び最低制限価格を事前公表している地方公共団体の一つですが、そろそろ「事前公表の取りやめ等の対応」について、検討した方がいいかもしれません。
「普通地方公共団体は、一般競争入札により契約を締結しようとするときは、入札に参加しようとする者をして当該普通地方公共団体の規則で定める率又は額の入札保証金を納めさせなければならない。」(地方自治法施行令第167条の7第1項)
「普通地方公共団体は、当該普通地方公共団体と契約を締結する者をして当該普通地方公共団体の規則で定める率又は額の契約保証金を納めさせなければならない。」(同令第167条の16第1項)
同令では「させなければならない」と規定していますが、「入札保証金及び契約保証金について」(平成12年4月18日付け自治行第19号行政局長通知)によると、「これらの規定の趣旨は、契約締結や契約履行をより一層確実に担保しようとするものであり、この趣旨に反しない限り、規則で定めるところにより、入札保証金又は契約保証金の全部又は一部を納付させないこととすることも差し支えない」とされており、別添でその場合が掲げられています。
それによると、入札保証金の全部又は一部を納付させないことができる場合は、@競争入札に参加しようとする者が保険会社との間に当該地方公共団体を被保険者とする入札保証保険契約を締結したとき、A競争入札に付する場合において、地方自治法施行令第167条の5及び第167条の11に規定する資格を有する者で過去2か年の間に国(公社、公団を含む。)又は地方公共団体と種類及び規模をほぼ同じくする契約を数回以上にわたって締結し、かつ、これらをすべて誠実に履行したものについて、その者が契約を締結しないこととなるおそれがないと認められるときとされています。
また、契約保証金の全部又は一部を納付させないことができる場合は、@契約の相手方が保険会社との間に当該地方公共団体を被保険者とする履行保証保険契約を締結したとき、A契約の相手方から委託を受けた保険会社、銀行、農林中央金庫その他予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)第100条の3第2号の規定に基づき財務大臣が指定する金融機関と工事履行保証契約を締結したとき、B地方自治法施行令第167条の5及び第167条の11に規定する資格を有する者と契約を締結する場合において、その者が過去2か年の間に国(公社、公団を含む。)又は地方公共団体と種類及び規模をほぼ同じくする契約を数回以上にわたって締結し、これらをすべて誠実に履行し、かつ、契約を履行しないこととなるおそれがないと認められるとき、C法令に基づき延納が認められる場合において確実な担保が提供されたとき、D物品を売り払う契約を締結する場合において、売払代金が即納されるとき、E随意契約を締結する場合において、契約金額が少額であり、かつ、契約の相手方が契約を履行しないこととなるおそれがないときとされています。
しかし、政令で「させなければならない」と規定しているものを、通知によって「この趣旨に反しない限り、規則で定めるところにより、入札保証金又は契約保証金の全部又は一部を納付させないこととすることも差し支えない」とすることには、疑義があります。やはり、政令で、当該普通地方公共団体の規則で定めるところにより、入札保証金又は契約保証金の全部又は一部を納付させないことができるとする規定を置くべきではないでしょうか。
「指定管理者制度のすべて 制度詳解と実務の手引〈改訂版〉」(成田頼明監修/第一法規)には、次のようなQ&Aがあります。
「Q52 一般社団・財団法人法等が施行され、現在指定を受けている公益法人が、公益社団法人・公益財団法人または一般社団法人・一般財団法人に移行することになりましたが、移行の際に再度指定を行う必要がありますか。
A 現在指定を受けている公益法人について、公益社団法人・公益財団法人または一般社団法人・一般財団法人への移行が認められ、当該法人について移行後においても団体としての同一性が認められる場合には、再度指定を行う必要はないと考えられます。
ただし、例えば、公益社団法人・公益財団法人への移行の認定基準を満たすために、事業内容や財務内容、組織等を変更し、移行前後で団体としての同一性が認められないと判断されるような場合には、再度指定を行う必要があると考えられます。
※なお、現行の公益法人は、公益社団法人・公益財団法人等へ移行するまでの間、「特例民法法人」として位置づけられることになりますが、この「特例民法法人」は、法律上の名称であって実質的には現行の公益法人と変わりませんから、再度指定を行う必要はありません。」
公益社団法人・公益財団法人又は一般社団法人・一般財団法人への移行は、法人格に変更が加えられたものであって、再度指定を行う必要があると考えていたのですが………現実の問題としては、再度指定を行う必要がないならば、何よりです。
昨年の末頃、研究会内で話題になったネタです。考えていくと、ツッコミどころが結構あります。
「議員・職員のための議会運営の実際2」(地方議会研究会編著/自治日報社)に次のような記述があります。
「議員 補正予算一号と二号が提出され、二号が可決、一号が継続審査となったとき、一号の既定予算が変動するが、長は訂正する必要があるか。
助言者 会期中に二つ以上の補正予算が提出されることは、しばしばあることです。議会が提出順に可決するならば問題ないのですが、後から提出した補正予算を先に可決したり、または先に提出した補正予算を継続審査に決定したりしますと、既定予算に変動を生じます。議会が修正すれば問題ないのですが、しない場合はどうするかです。この場合の取扱いとしては、適当ではありませんが、計数整理を議長に一任することが考えられます。
これとは別に、長が既定予算の訂正を申し出る方法もあります。議長に計数整理を一任しなかった場合、補正第一号の既定予算は提案のままの数字になっていますので、長は訂正を申し出る必要があります。この申し出は、継続審査の議決前にするのが原則ですが、会期中であれば継続審査の議決の後でも差し支えありません。次の会期で訂正を申し出ることも考えられますが、第一号の既定予算が変更になった場合は、できる限り早く訂正する必要がありますので、同一会期中に行うことが適当です。」
こうした事態が本市で起こった場合を考えると、議長に計数整理を任せることは無理でしょうから、おそらく、次の会期で長が既定予算の訂正を申し出ることになろうかと思われます。ここで気になったのが、修正されないまま可決された補正予算第2号の取扱いです。また、この場合において、補正予算第1号が否決されたときは、どうするのでしょうか。
「地方財務実務提要」(地方自治制度研究会編集/ぎょうせい)第1巻2134ページには、次のように記されています。
「問 同一会期中に第三回、第四回の補正予算案が審議(第三回は継続されたもの)されたが、採決において、第四回補正予算案が先に可決され成立したが、第三回補正予算の方はその後否決された。この場合計数整理はどのようにすべきか。
答 質問のような場合、すなわち同一会期中にあるいはそれ以上の補正予算がやむをえず提出されることが考えられるところです。この場合、議会として、その提案順序により可決成立させるとしたならば特に問題は生じませんが、その順序を変え、あるいは一は可決するが他は否決するといったことも可能ですし、そのような事態が生じたこともあります。
これらの場合、議会の議決の対象となるものは補正額そのものであると解されますので予算の効力の問題はないわけですが、ただ補正予算における様式中のいわゆる「補正前の額」等について不正確なものがそのまま可決されることが予想されます。したがって、そのような場合には議会で可決する際にその形式を整えて可決することも考えられますし、またあまり複雑になり、時間の余裕もないということから、議会の議決で議長にその整理を委任し、議長がこれを整理することも考えられます。」
うーん、議長の計数整理に議会の議決が必要ですか。一方、同書の2083ページには計数整理について、「実際の運用としては、議会において、議長が議事整理権で、「既定予算額」・「補正の額」・「計」の欄に所要の計数整理を行い修正をし整合するようにしておくのが適当な取り扱いと考えられます」とあります。こちらの方が適切でしょう。
しかし、現実の問題としてこのような事態が発生すると、議長の計数整理だけでなく、再議の可否など、かなり難儀しそうです。
「大阪ワールドトレードセンタービルディング(WTC、大阪市住之江区)への大阪府庁移転構想をめぐり、府議会は27日、本会議を開き、WTC購入案を賛成61、反対50の賛成多数で可決した。一方、本庁舎の移転条例案は賛成52、反対60で可決に必要な出席議員の3分の2の賛成を得ることができず、2月議会に引き続き否決された。両案はともに記名投票だった。橋下知事は「議会の信認はありがたい」と結果を評価。WTCは当面、第2庁舎などとして活用しつつ、将来、3度目の移転条例案を提案する意向を明らかにした」(10月27日付け産経新聞朝刊)。
この記事を読んだI君からの質問です。
I君「同じ議案を何べんも議会にかけてええんすか?何かアカンて聞いたように思うんすけど」
自分「同一の会期中と違うたらええ。議会が活動できる期間を会期っちゅうねん。例えば、9月議会の招集日から閉会まで、これが会期やな。議会の意思っちゅうのは、会期ごとに独立しているとされとって、次の会期に継続することはないし、次の会期を拘束することもないんや。せやから、次の会期に同一の議案が提出されても一事不再議には抵触せえへんとされてんねん。これが会期不継続の原則とか会期独立の原則て言われてるやっちゃ。あ、例外はあるで」
I君「ほな、丸もらうまで何べんもかけたらええんすね」
自分「理論上は可やけど、道義性とか、経済性とかあるやろ……どうかのう……」
当たり前のことですが、公の施設の管理を指定管理者に行わせることができるのは、「公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるとき」(地方自治法第244条の2第3項)です。「経費の削減を図るため必要があると認めるとき」でもなければ、「法人その他の団体からの要望があるとき」でもありません。
当然、何が何でも指定管理者制度を維持しなければならない訳でもありません。直営に戻すことも、その一部を業務委託することも、また、公の施設を廃止することも選択肢の一つとして存在します。
こんな基本的なことが分からない職員が多すぎます。
A市○○センターとは、何でしょうか。支所又は出張所?行政機関?内部組織?公の施設?それとも単なる施設でしょうか?
支所及び出張所、行政機関、長の直近下位の内部組織並びに公の施設の設置は、条例で定める必要があります(地方自治法第155条第2項、第156条第2項、第158条第1項後段、第244条の2第1項)。
「法に規定する支所である限り出張所等の他の名称を使用することは適当でない」(昭和22年11月19日通知)とされていますが、「もとよりこれらの名称を用いないから違法であるという問題は生じない」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)と解されていることから、○○センターという名称の支所や出張所もあるのでしょう。この場合は、当該条例中に「第155条第1項の規定に基づき」や「出張所として」等の文言を規定することによって、○○センターの性格を明確にするのが適当ではないかと思われます。
なお、支所と出張所の相違については、「支所は市町村内の特定区域を限り主として市町村の事務の全般にわたって事務を掌る事務所を意味するのに対し、出張所は住民の便宜のために市役所又は町村役場まで出向かなくてもすむ程度の簡単な事務を処理するために設置するいわゆる市役所又は町村役場の窓口の延長という観念である」(昭和33年2月26日行政実例)とされています。
行政機関とは、「普通地方公共団体の長の権限に属する全般の事務を処理するようなものを除き、特定の行政部門の権能(たとえば、保健、徴税、河川管理等)を処理するため設置する機関(「個別出先機関」又は「特定(特別)出先機関」)を意味する」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)ものと解されており、長の直近下位の内部組織とは、「地方公共団体の長の権限に属する事務を分掌するために設けられる最上位の組織を意味するものであり、局又は部若しくはこれに準ずる組織の名称如何にかかわらず条例で定めることが必要」(平成15年7月17日通知)とされています。また、公の施設とは、「住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設」(地方自治法第244条第1項)です。
行政機関又は公の施設の条例を制定する場合、大阪府では、「当該施設の性格に応じ、例のように「大阪府」と「大阪府立」とを区分して題名を付ける。すなわち、当該施設が行政機関であれば「大阪府」を冠し、公の施設(自治法244条1項)であれば「大阪府立」を冠すること」(「法規事務の手引」大阪府)としています。
長の直近下位の内部組織は事務分掌条例等で、直近下位の内部組織の下の組織は事務分掌規則等で規定されています。しかし、中には、単独で規則設置されている○○センターがあります。これは、例えば工事事務所、物産斡旋事務所等の「局部の下の分課に相当するもの」(昭和29年5月12日・昭和29年10月16日行政実例)であると考えられます。
議会の招集は、長に専属した権限です(地方自治法第101条第1項)。議長は、議会運営委員会の議決を経て、会議に付議すべき事件を示して、また、議員の定数の4分の1以上の者は、会議に付議すべき事件を示して、長に対し、臨時会の招集を請求することができます(同条第2項及び第3項)が、これは、長に専属している議会招集権の例外をなすものと考えられています。ですから、長が招集する臨時会については、付議事件の制約がありませんが、議長又は議員の請求による臨時会の招集については、議員に発案権のある具体的な法定の議決事件に限定されると解されています(昭和28年2月22日・昭和28年8月25日・昭和40年4月14日行政実例)。
また、「招集行為がなければ、事実上議員が一堂に会して会議を行っても、有効な議会活動はできない。議会が有効に議会活動を行うために「招集」は絶対の要件である」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)とされています。
ところで、もしも、議員定数の4分の1以上の議員から臨時会の招集請求を受けたにもかかわらず、長が招集しないまま定例会の会期を迎えることになった場合は、どうしたらよいでしょうか。
議長又は議員から臨時会の招集請求があると、長は、招集の義務を負いますが、「招集の日時は、請求の日時に必ずしも拘束されない」(昭和24年7月11日行政実例)と解されています。「次の定例会が間近である場合、長は定例会で請求事件を審議しても目的を達すると判断するときは、臨時会を招集しなくても違法とはなりません(行実昭5.3.1)。この場合、長は定例会の冒頭に臨時会を招集しなかった理由を述べる必要があります」(「議員・職員のための議会運営の実際1」地方議会研究会編著/自治日報社)とされています。もしもの場合、議会には、この線で説明してはどうでしょうか。
「高知県東洋町議のリコール(解職請求)をめぐり、公務員の農業委員が請求代表者として集めた署名が有効かどうかが争われた訴訟で、最高裁第1小法廷(涌井紀夫裁判長)は24日、住民側の上告を受理、裁判官15人で構成する大法廷(裁判長・竹崎博允長官)に審理を回付した。公務員は議員の解職請求の代表者になれないとする地方自治法施行令の規定が争点。規定は有効とした上で「農業委員が請求代表者に含まれている場合、署名は無効」と判断した昭和29年の最高裁判例を見直す可能性が出てきた。大法廷回付は、新たな憲法判断や判例変更をする場合などに行われる」(6月25日付け産経新聞朝刊)。
この記事を見た本市職員のT君からの質問です。
「公務員が議員の解職請求の代表者になられへんて、自治令のどこに書いちゃあるんですか?」
議員の解職請求については、地方自治法第80条で規定され、同法第85条第1項で「政令で特別の定をするものを除く外、公職選挙法中普通地方公共団体の選挙に関する規定」は、地方自治法第80条第3項の規定による解職の投票にこれを準用するとしています。そして、地方自治法施行令第115条で議員の解職の投票に公職選挙法を準用する場合における読替えを規定し、同令第113条で同令第109条の規定を準用するとしています。同条では、公職選挙法第89条第1項ただし書(同項第2号に関する部分を覗く。)の規定は、準用しないとしていることから、同条第1項は、本文及びただし書中第2号が準用されます。
読替え後の同項本文は、「国若しくは地方公共団体の公務員又は特定独立行政法人(独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第2条第2項に規定する特定独立行政法人をいう。以下同じ。)若しくは特定地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成15年法律第118号)第2条第2項に規定する特定地方独立行政法人をいう。以下同じ。)の役員若しくは職員は、在職中、普通地方公共団体の議会の議員の解職請求代表者となることができない」となりますので、特別職の地方公務員である農業委員会の委員は、議員の解職請求の代表者にはなれないということになります。
三社で構成する共同企業体と議会の議決を経て工事請負契約を締結後、工事完了前に共同企業体のうちの一社が倒産した場合は、改めて議会の議決を得る必要はないとされています。
共同請負の場合は、各構成員が共同企業体協定書に従って連帯して工事を施工することになります。標準的な共同企業体協定書には、工事途中における構成員の破産又は解散に対する処置があらかじめ定められています。このように「契約の内容においてその要素の変更に関する定めをしていた場合、その定めに従って契約の内容を変更することは、契約の実現とみなされるもので、新たな契約を締結するものではない」(「地方財務実務提要」地方自治制度研究会編集/ぎょうせい)ことから、改めて議会の意思を問う必要はないと解されているからです。
また、共同企業体は、民法上の組合と解されています。共同企業体と締結する契約書に構成員全員の名称を列記するのは、共同企業体自体に法人格がないからです。そして、共同企業体の債権債務は、全構成員に合有しており、各構成員の債権債務とは別に、共同企業体という一つの団体の債権債務として存在しているのであって、例え構成員が脱退しても、共同企業体は、同一性をもって残存構成員間に存続すると解されています。
「なお、2者で組織された組合では、1者の脱退は、組合の解散事由になる」(「自治大阪平成4年3月号」相談室)と解されています。
一方、「二社で構成する建設工事共同企業体の一部が脱退した場合の事務の取扱いについて」(昭和56年3月13日建設省計振発第52号)には、「2社で構成する建設工事共同企業体(甲型)の構成員のうち1社が倒産等の理由で脱退した場合であっても、残存構成員たる1社で当該工事を完成する能力も意志もあると認められるときは、当該共同企業体は継続し、かつ、従前の契約は有効として取扱うことが適当である」とあります。
しかし、2者で組織された組合では、1者の脱退は組合の解散事由になると解されていることから、共同企業体の存続には疑問があります。共同企業体の権利義務を残存構成員に包括承継した上で共同企業体を解散し、残存構成員の単独施工に切り換えるというのが、現実的な解決策ではないでしょうか。
なお、この場合は、改めて議会の議決を得る必要があります。
一般的に、議会は日曜日を休会にしています。休会とは、議会が会期中に一時活動を休止することをいい、@日曜日及び休日、A議決による休会、B自然休会の3種類があります。
標準市議会会議規則は、第10条で休会について規定しています。いわゆる日曜議会など、休会日に会議を開く必要があれば、「その前日中に開議の通知をし出席を求め会議を開くことができる。この場合議長は「何月何日は休会日であるが(日曜日・祝祭日・記念日・閉庁日及び議会休会日等)、特に会議を開く必要があると認めるので、会議規則第10条第3項の規定により同日何時から会議を開くので御出席願いたい。」のように通知すればよく、これは、文書・口頭・電話等のいずれの方法でもよい」(「最新会議規則・委員会条例・傍聴規則逐条解説」中島正カ著/ぎょうせい)とされています。
ところが、一部の市町村では、会議規則に休会についての規定がないところがあります。このような市町村では、先例により、休日等には議事日程を作成しないこととし、事実上、会議を開かないという自然休会の扱いにしているものと考えられます。この場合、日曜議会を開くのであれば、当該日に議事日程を作成することになります。
地方公共団体の財政の健全化に関する法律第26条第1項の規定により、財政健全化計画を定めなければならない地方公共団体の長は、あらかじめ、監査委員に対し、財政の健全化のために改善が必要と認められる事務の執行について、監査の要求をしなければなりません。この場合、同項の規定により読み替えられた地方自治法第252条の41第1項の規定により、長は、理由を付して監査委員の監査に代えて個別外部監査契約に基づく監査によることを求めなければならないとされ、そして、同条第4項において準用する同法第252条の39第4項の規定により、監査委員の意見を付けて、監査委員の監査に代えて個別外部監査契約に基づく監査によることについて、議会に付議しなければならないとされています。
市議会6月定例会に、監査委員の監査に代えて個別外部監査契約に基づく監査によることについて、議会に付議する予定なのですが、監査委員の意見をどうしようかと頭を悩ませています。「何で監査委員の意見を法規担当が考えるねん」と思われる方もいらっしゃるかとは思いますが、そこは、本市の本市たるゆえんで……
25日(金)に開催されたおおさか政策法務研究会第40回定例会で話題になった条例の話です。
要綱設置の懇話会に公金を支出したことに対する損害賠償等請求事件(さいたま地裁平成14年1月30日判決)では、懇話会が条例に基づかず、市の内部規範にすぎない要綱によって設置、運営されたことは、地方自治法第138条の4第3項の規定に違反したものであるが、市に実質的な損害が生じていないとして却下しています。
この判決では、附属機関について、「法138条の4第3項には、審査ないし諮問の目的や機関の存続期間についても何の限定もされていない以上、一定の事項についての提言をするまでの臨時的、一時的な住民参加型会議組織であるからといって、本件懇話会が附属機関に当たると解する妨げとはならないものというべきであるから、被告の主張は採用の限りではない。
なお、このように附属機関の意義を解することについては、行政に対しては、随時、専門的、科学的あるいは民主的意見を反映させることが必要であり、そのためには、弾力的に行政を運用することができなければならないとする近時の要請に適合しないとする非難が予想される。このような社会的要請にそれなりの合理性があることは否定できないけれども(もっとも、前記の事実関係のもとにおいては、本件懇話会の設置条例を制定する時間的いとまがなかったとは想定しにくい。)、法138条の4第3項の規定の制度趣旨は前記のとおりであり、これに合理性が肯定できる以上、上記の社会的要請も、この法の趣旨に反しない程度で実現されるほかないものというべきである。例えば、その調和点として、予想される附属機関の目的や類型、存続期間等を定めておき、所定の条件を満たす附属機関については、市長等執行機関が行政執行上の必要に応じて随時設置することを認める旨のいわゆる委任条例を制定しておくことなどは、法の許容するところと解される」としています。
ならば、次のような条例は、可能でしょうか。
附属機関の設置に関する条例
(目的)
第1条 この条例は、法律又は他の条例に定めるもののほか、地方自治法(昭和22年法律第67号)第
138条の4第3項に規定する附属機関の設置に関し基本となる事項を定めることにより、弾力的かつ
適正な行政運営を図ることを目的とする。
(設置)
第2条 市長その他の執行機関は、法律又は他の条例に定めがある場合を除くほか、次の各号のいず
れかに該当する場合に限り、調停、審査、諮問又は調査を行うため、附属機関を随時設置することが
できる。
(1) 一時的に設置が必要な場合
(2) 急施を要する場合
(3) 専門的又は技術的な意見が必要な場合
(4) 政治的中立性の確保が必要な場合
(5) 市民の意見の反映が必要な場合
(施行の状況の報告)
第3条 市長は、毎年度、各執行機関におけるこの条例の施行の状況を取りまとめ、議会に報告するも
のとする。
(委任)
第4条 この条例の施行に関し必要な事項は、執行機関が別に定める。
附 則
(施行期日)
1 この条例は、平成○○年○月○日から施行する。
(経過措置)
2 この条例の施行の日の前日までに、市長その他の執行機関が規則又は告示により、調停、審査、
諮問又は調査を行うために設置した機関は、第2条の規定により設置した附属機関とみなす。
この条例によって「条例の定めるところにより」、「調停、審査、諮問又は調査のための機関を置」いたとことにはならないと考えています。「その設置の旨のみならず、その構成、担任事務及び運営の大綱等について、基本的な事項についても条例に規定することが「条例の定めるところにより」とした法の趣旨に適合するものと考える」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)からです。これでは、その設置の旨さえも規定されているとは言い難いのではないでしょうか。
今年度になってから、議員の兼業禁止に関する質問が増えています。
内容については差し控えますが、地方自治法第92条の2は、「普通地方公共団体の議会の議員は、当該普通地方公共団体に対し請負をする者及びその支配人又は主として同一の行為をする法人の無限責任社員、取締役、執行役若しくは監査役若しくはこれらに準ずべき者、支配人及び清算人たることができない」と規定しており、当該議員が同条の規定に該当するときは、その職を失います。そして、この規定に該当するかどうかは、議会が自立権に基づき自主的に決定するとされています(同法第127条第1項)。
平成18年に、ごみ袋の販売契約に関して、I市の議員が失職するという事件がありました(審査請求の結果、大阪府知事は、営利性がなく、請負契約には当たらないとして、失職を取り消しました。)。同じ頃、同様の事例が本市でもありました(本市の場合、資格決定の要求が出され、資格審査特別委員会を設置したものの、I市の裁決が出たことから、撤回しました。)。
当時は、それなりの騒ぎになりましたが、このことが一つの教訓になっているならば、あの騒ぎも無駄ではなかったと思います。
今年度から顧問弁護士を変更しました。この機会に、非常勤特別職(地方公務員法第3条第3項第3号)として雇用契約を締結していた(2007年8月20日付け記事)のを改め、総務課で弁護士事務所と法律顧問の委託契約を締結することにしました。
それはいいのですが、問題は、この弁護士事務所が市長の意向で最初から決まっていたことです。委託契約が「売買、貸借、請負その他の契約」である以上、地方公共団体の契約は、一般競争入札を原則とし、少なくとも公正性と経済性を確保するようにしなければならないはずです。
一応は、地方自治法施行令第167条の2第1項第2号(その性質又は目的が競争入札に適しないもの)該当による随意契約となっていますが、どうも納得できません。
顧問弁護士は、あくまで市の顧問弁護士であって、市長の顧問弁護士ではありません。
「市町村は、その事務を処理するに当たつては、議会の議決を経てその地域における総合的かつ計画的な行政の運営を図るための基本構想を定め、これに即して行なうようにしなければならない」(地方自治法第2条第4項)。
一般的に総合計画と呼ばれているものの根拠規定です。10ごと又は首長の任期に合わせて策定している市町村が多いのではないでしょうか。
「この規定は、昭和44年の改正によって創設されたものであるが、その趣旨は、急激な地域経済社会の変動の中にあって市町村が真に住民の負託に応え地域社会の経営の任務を適切に果たすためには、市町村そのものが将来を見とおした長期にわたる経営の基本を確立することが必要であると考えられたものであり、このことは当時の各種の地域問題に関する諸法律が整備されてきたこととの関連においても改めて強く認識されるに至ったからである。したがって、ここにいう基本構想は、当該地域の発展のために立てられる各種の具体的な計画のすべての基本となるべきものでなければならない」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)ものです。
ところが、コンサルタント会社に委託し、ワーキンググループで検討を重ね、パブコメを実施し、審査会の答申を得て策定したにもかかわらず、明日の財政健全化団体で出来上がった総合計画は、単に美辞麗句を並べただけのものになっています。膨大な労力と金をかけた割には、これが「当該地域の発展のために立てられる各種の具体的な計画のすべての基本」とは思えません。
市議会3月定例会に第4次総合計画が追加議案として提案されました。3月定例会は、次年度の当初予算案がありますので、施政方針演説があります。総合計画が提案されていない中で行われた施政方針演説にも、何の意味があるのかと思ってしまいました。
「議案の提出は議会の開会中に限る」(昭和24年8月16日行政実例)とされていますので、理論上は、会期中であれば、いつでも議案を提出することが可能です。しかし、現実の問題として、議案を作成する時間及び議会で審議する時間が必要ですので、議案の提出期限には、地方公共団体ごとにローカルルールが存在します。
本市では、議会の招集日の7日前に議会運営委員会を開催することとしていますので、その日の前日に議案(正確には同一内容の印刷物)を送付しています(3月定例会を除く。2007年2月27日付けブログ参照)。そして、この後に提出する議案を追加議案と称しています。
追加議案は、委員会の終了後、後半の本会議の前に置かれる議会運営委員会の前日に送付します。追加議案は、原則として委員会付託を省略することとしていますので、追加議案とする案件が決まっています。それが、地方自治法第221条第3項の法人の経営状況の報告と人事案件(2007年6月23日付けブログ参照)です。
本市の場合、この経営状況報告と人事案件、そして一部の例外、例えば給与改定に伴う給与条例の一部を改正する条例などを除き、すべての議案は、議会の招集日前に開催される議会運営委員会の前日に送付することがルールになっています。
最近、このルールが崩れてきています。3月定例会の追加議案は、政治的な理由から、今日の時点でまだ固まっていません。追加議案の送付日は、24日(火)です。外的な要因でやむを得ないものは別として、委員会付託を省略する以上は、安易に追加議案として提案することには、疑問を感じます。
学校事故に係る示談で、地方公共団体が「法律上その義務に属する損害賠償の額を定める」(地方自治法第96条第1項第13号)場合は、独立行政法人日本スポーツ振興センターから支給される災害共済給付金を含まないと解されています。
これは、次の理由によります。
「独立行政法人日本スポーツ振興センター法(以下「法」という。)に基づき日本スポーツ振興センターが行う災害共済給付は、日本スポーツ振興センターと災害共済給付契約を締結している学校設置者の所管学校の児童生徒に対し、学校設置者からの共済掛金を主財源としてなされます(法第18条)。給付の対象は、幼稚園から高等専門学校に至る児童生徒の学校の管理下における災害であって、不法行為事故に限らず、児童生徒の人身事故があれば、自然災害でない限り対象となります(法第16条、同法施行令第5条)。給付の請求は、学校側のほか被害者側からもでき、給付内容は、医療費、障害・死亡見舞金となっています(法施行令第3条)。また、学校設置者が日本スポーツ振興センターに特別掛金を支払う免責特約を結ぶことによって、給付の価額の限度においてその損害賠償の責めを免れることとなっています(法第16条)。
ところで、自治法第96条第1項第13号に基づき議会の議決の対象となる額については、自動車損害賠償保障法第16条に基づき被害者に直接支払われた保険金も含めた総額と解されていますが、その理由は、被害者請求による保険金の支払いも地方公共団体の損害賠償義務を前提とすること、具体的金銭の支出でなく法律上の損害賠償の総額を議会の議決にかからしめることに意義があること、被害者請求による保険金を除くと損害賠償額の妥当性の判断が困難となること、被害者請求による場合と他の場合で議決の対象額が異なるのは不合理であること等とされています。
以上のことから質問について検討しますと、前述の日本スポーツ振興センターの災害共済給付金については、その給付は地方公共団体の損害賠償義務を前提としないこと、給付の限度において損害賠償義務を免れること、給付額は被害の程度により明定されていること等被害者請求による保険金の支払いの場合とは性格が異なるものと考えられます。したがって、学校事故に係る損害賠償額については、法第16条により学校設置者が免責される額を除いた額についてのみ議決を要するものと解します」(「地方財務実務提要」地方自治制度研究会編集/ぎょうせい)。
この3月定例会で学校事故に係る和解案件(民事訴訟法第89条の訴訟上の和解)があったのですが、担当課からどうしても既払いの災害共済給付金を議案に明記してくれと頼まれました。前掲のとおり、議決を要するのは「法律上その義務に属する損害賠償の額」なのですが、日本スポーツ振興センターから、災害共済給付金が支払われていることをはっきりさせておいてほしいと言われている(?)とのことでした。
考えたあげく、「損害賠償額○○円(独立行政法人日本スポーツ振興センターの災害共済給付金○○円を除く。)」としました。
本市では、公の施設や財産区を財産と混同している職員をたまに見かけます。
公の施設は、普通地方公共団体が「住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設」(地方自治法第244条第1項)ですから、財産管理上は、公有財産又は物品に分類されるものですが、その本質は、施設の利用による住民サービスの一つです。
また、財産区は、「法律又はこれに基く政令に特別の定があるものを除く外、市町村及び特別区の一部で財産を有し若しくは公の施設を設けているもの又は市町村及び特別区の廃置分合若しくは境界変更の場合におけるこの法律若しくはこれに基く政令の定める財産処分に関する協議に基き市町村及び特別区の一部が財産を有し若しくは公の施設を設けるものとなるもの」(同法第294条第1項)のことであって、特別地方公共団体の一つです。
これらのことは、地方自治法の目次に、「第9章 財務」とは別に、「第10章 公の施設」及び「第3編 特別地方公共団体 第4章 財産区」として規定されているのを見ると理解しやすいと思います。
目次は、「条例・規則の本則が章、節等に区分される場合には、その内容の理解と検索を容易にするため、必ず目次を付けること」(「法制執務詳解」石毛正純著/ぎょうせい)とされています。
見過ごしてしまいがちな目次ですが、検索だけでなく、条文を理解するのにも役に立ちます。
地方自治法第238条の6第1項は、「旧来の慣行により市町村の住民中特に公有財産を使用する権利を有する者があるときは、その旧慣による。その旧慣を変更し、又は廃止しようとするときは、市町村の議会の議決を経なければならない」と規定しています。
旧慣による公有財産の使用権とは、市制町村制施行以前から、市町村有の公有財産について、「溜池ノ用水及柴草山ノ肥料山林ノ下草ヲ採取スル為メ慣行アル区域ニ限リ使用スルモノ」(行政実例)として認められてきたものです。また、旧慣による公有財産の使用権は、公法上の権利であって、「入会権その他の私法上の権利と同様な内容を有するものであっても、それは旧慣によるものである限り純然たる私法上の権利とすることはできない」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)と解されています。
本市には、財産区がありません。財産区に類似した制度として、行政財産であるため池に、この旧慣による公有財産の使用権が認められています。ため池を処分する場合は、議会の議決を経て、処分した金額は、5(市):3(関連公共事業費):2(水利補償費)で案分することになっています。これは、全国的にも珍しい取扱いではないかと思います。
「その他の規程で公表を要するもの」として、内部規範たる規程が公表、つまり告示されているのであるならば、「その他の規程で公表を要するもの」と「地方公共団体の内部的規律たる性質を有する規則」とを区別する必要があるのでしょうか。地方分権一括法施行後において、同じ手続を経て制定されたモノを「規則」と「規程」とに分ける実益はないように思われます。
規則が「地方公共団体の住民の権利義務に関する法規たる性質」又は「地方公共団体の内部的規律たる性質」を有するものであって、「法令に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し」(地方自治法第15条第1項)て制定することができるものであるならば、議会又は議長においても、規則制定権があると解するのが自然ではないかと思うのです。
議会の規則制定権は、地方自治法の一部を改正する法律(平成12年法律第89号)で政務調査費が法制化されたときに話題になりました。その際、「地方財務2000年11月号」(ぎょうせい)に掲載された「地方議会の規則制定権についての一考察」(加藤幸雄)では、次のように述べられています。
「地方議会の規則制定権について、議会は、法的効力の強い上位法たる条例制定権があるが、その下位法たる規則制定権がないとする考えは、法理論上考えさせられる。
……(略)……
もし、規則の制定が必要な場合、議員立法の条例に長の制定した規則という法体系となり、極めて不合理である。……(略)……
自己決定・自己責任を原則とする地方分権が具体化するなかで、議員の条例制定の必要性、重要性が強く叫ばれている。しかし、議会に規則制定権がないとすると、これらの条例には、一般の条例のように委任による項目を定める規則、実施に関する細則を定める規則を制定することはできない。
議会は、規則制定権を有し、議員立法になる場合、条例事項は条例に、規則事項は規則に、規程事項は規程などに規定すべきであるとするのが法理にあった解釈であろう。」
議会基本条例を制定している地方公共団体があります。ある町の議会基本条例を読んでいると、議会の規則制定権が気になり、長々と書いてしまいました。
なお、政務調査費に関する規則については、ほとんどの地方公共団体が長の規則で制定しています。
各地方公共団体の例規集を調べてみると、ほとんどが、「会議規則」も「会議の傍聴に関し必要な規則」も「議会規則」として制定しています。「議会規則」と「議長規則」とを区別する実益がないという考え方でしょうか。しかし、地方自治法第120条と第130条第3項の主語が異なっている点、つまり、議会と議長とは、その権限を異にしている点は、一考を要する問題ではないかと思います。
また、いくつかの地方公共団体では、「会議規則」及び「会議の傍聴に関し必要な規則」以外にも「議会規則」を制定しています。こうした地方公共団体は、おそらく、議会には規則制定権があると解されていると思われます。そもそも規則制定権を有しない議会又は議長に、「会議規則」と「会議の傍聴に関し必要な規則」のみの規則制定権があるとする昭和26年7月11日付け行政実例は、おかしいのではないでしょうか。
なお、大阪市は「会議規則」を「議決」、「会議の傍聴に関し必要な規則」及びその他規程を「議長決定」として、鹿児島市は「会議規則」、「会議の傍聴に関し必要な規則」及びその他規程をすべて「議会告示」として定めていることから、議会又は議長には規則制定権がないと考えているようです。
条例と規則は、法律と法律に基づく政令のような関係ではありません。規則には、政令と同様に条例の委任を受けて制定されるものもありますが、「必要的条例事項を除けば、法令又は条例の委任等がなくても、地方公共団体の住民の権利義務に関する法規たる性質を有するものを定めることができ、また地方公共団体の内部的規律たる性質を有する規則を定めることができる」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)とされています。
昭和26年7月11日付け行政実例において、規則という法形式の使用を限定的に解した理由は、いわゆる地方分権一括法施行前の機関委任事務に関する規則を意識したものではなかったのではないでしょうか。同法の施行に伴い、機関委任事務(機関委任事務に関する規則)が廃止され、また、地方自治法第14条第2項において「義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない」と規定されたことにより、「規則並びにその機関の定める規則及びその他の規程で公表を要するもの」の存在意義に変化があったと考えるべきではないでしょうか。
「前2項の規定は、普通地方公共団体の規則並びにその機関の定める規則及びその他の規程で公表を要するものにこれを準用する」(地方自治法第16条第5項本文)。
「他の機関の定める規則とは、他の執行機関の定める規則のみならず、議決機関の規則、すなわち、たとえば、会議規則(法120)、傍聴規則(法130B)も含まれる趣旨である」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)。
これだけを読むと、議会には規則制定権があるようにも思われますが、原則として、議会は、規則を制定することができないと解されています。その主な理由は、次の行政実例(昭和26年7月11日)があるからです。
「問 議会又は議長は、第120条及び第130条第3項に規定されているものの外、議会運営上必要な規則又は規程等(規定事項が単に議会内部を対象とするものと、議会外にも及ぶものたとえば議会図書室の運営上図書の貸出に関する規定を設けるものとが考えられる。)の制定権はないか。ないとすればその理由
答 規則という形式によって制定することはできないが、その権限に属する事項につき所要の規程を設けることはさしつかえない。」
「注釈地方自治関係実例集」(地方自治制度研究会編/ぎょうせい)によると、この行政実例の「注釈」には、「一般に行政機関が、その権限に属する事務の処理等に関して内規のごときなんらかの規律、通常規程と称せられるものを設けることは、特にそのことに関しての法律上の根拠を必要とせずになし得るとされている。けだしかかる規律制定権は、当該事務の処理権限のうちに当然含まれていると解されるからである。したがって、議会及び議長においても同じであって、その権限に属する事務の処理について右のごとき規律を設けることはなんら差し支えないところであろう。ただそれを会議規則や傍聴人取締規則と同じく「規則」の形式によって定めることは、特にその旨の法の規定の存しない限り消極に解すべきものであろう」とあります。
つまり、議会及び議長も、内部規範としてならば、「規程」であろうが「訓令」であろうが「要綱」であろうが制定することができるが、「規則」は、地方自治法で規定された「会議規則」と「会議の傍聴に関し必要な規則」以外は制定できないということです。
なお、地方自治法第120条は「普通地方公共団体の議会は、会議規則を設けなければならない」と、同法第130条第3項は「議長は、会議の傍聴に関し必要な規則を設けなければならない」と規定しています。このことから考えると、「会議規則」という「議会規則」と、「会議の傍聴に関し必要な規則」という「議長規則」が議会の例規の体系として存在することになります。
「行政財産の目的外使用許可」(2008年9月12日付けブログ参照)を読んだ本市職員のT君から、次のような質問がありました。
「行政財産の目的外使用許可を受けている者が死亡し、その相続人から同じ用途で継続して使用したいと申出があるんですが、どうしたらいいですか?」
この場合は、相続人から新たに行政財産の目的外使用許可の申請を受け、適当であると認めたならば、許可することになります。
「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。但し、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない」(民法第896条)とされています。ただし、同条は、私法上の権利義務について定めたものですので、公法上の権利義務である行政処分に係る地位の承継については、当該処分の性質を考慮して個別に判断する必要があります。
「地方財務実務提要」(地方自治制度研究会編集/ぎょうせい)に「行政財産の目的外使用許可がされていた会社が吸収合併された場合の承継」が掲載されていますので、以下に抜粋します。
「行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可できるものであり(自治法第238条の4第7項)、それはあくまでも例外的な措置であり、その運用は必要最小限度にとどめるべきとされ、また、この使用については借地借家法の規定を適用しないとされています(同第8項)。そして、行政財産の用途又は目的外使用の許可をする場合には、当該使用により当該行政財産本来の目的が阻害されることのないように、相手方の選定に当たり資力、信用、技能等を十分に調査すべきものとされています。さらに、使用許可を受けても、これを他の者に転貸することは認められていません。
このような事情から判断して、会社合併の場合、消滅会社が行政財産の目的外使用の許可を受けていても、存続会社又は新設会社はそれを承継するものではなく、改めて許可を受ける必要があると考えます。」
同様に、申請人の主観的事情に着目してなされる処分の効果は、許可を受けた者の一身に専属するものであって、被相続人が行政財産の目的外使用許可を受けていたとしても、相続人には当該行政財産を使用する地位を承継することはないと解するのが相当であると考えられます。
なお、余談ですが、本市の職員には、普通財産の貸付けと行政財産の目的外使用許可の区別がついていないものが多数見受けられます。
基金の設置については、地方自治法第241条第1項の規定により、条例によらなければならないとされていますが、法律の規定により基金の設置が義務づけられているものについては、その必要はないものと解されています。
例えば、災害救助法に基づく災害救助基金は、「災害救助基金法第37条の規定によって、都道府県にその設置が義務づけられ、さらに同法第39条から第43条までにその管理方法が規定されていることから、議会において意思決定を行う余地がないものと思われるので、地方自治法第241条の規定の適用を受けない」(昭和33年11月17日行政実例)とされています。
しかし、この災害救助基金が条例設置されている例があります。「特別会計条例」(2008年2月28日付けブログ参照)でも書きましたが、必要のない条例を何故制定するのかは、よく分かりません。
なお、地方財政法第4条の3及び第7条の積立金については、一定の場合に積立てが義務づけられているものですが、これを基金として設置する場合には、条例が必要であるとされています(昭和41年6月30日行政実例)。
公の施設の管理について指定管理者制度が導入されたときの「地方自治法の一部を改正する法律の公布について」(平成15年7月17日付け総行行第87号総務省自治行政局長通知)には、「地方公共団体の長は、条例の定めるところにより、指定管理者に使用許可を行わせることができるものであるが、使用料の強制徴収(第231条の3)、不服申立てに対する決定(第244条の4)、行政財産の目的外使用許可(第238条の4第4項(注:現行法では第7項))等法令により地方公共団体の長のみが行うことができる権限については、これらを指定管理者に行わせることはできないものであること。(第244条の2第3項関係)」とあります。
行政財産の目的外使用については、実務と解釈に若干のズレが見られることから、地方公共団体に都合のいい解釈がされることがあります。
指定管理者に行政財産の目的外使用許可を行わせることはできません。当然、目的外使用に係る使用料を利用料金のように指定管理者の収入として収受させることもできません。
行政財産は、「普通地方公共団体において公用又は公共用に供し、又は供することと決定した財産」(地方自治法第238条第4項)で、原則として「これを貸し付け、交換し、売り払い、譲与し、出資の目的とし、若しくは信託し、又はこれに私権を設定すること」はできません(同法第238条の4第1項)。しかし、本来の用途又は目的外に使用させることで、当該行政財産の効用を積極的に高めるような場合などには、「その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる」(同条第7項)とされています。
行政サービスの多様化に伴い、近年、設置される公の施設では、食堂や売店等の設置が、その本来の用途又は目的と考えられるようなものもあります。しかし、そのような場合でも、原則としては次のように解されます。
「体育館等の施設を設置する場合、食堂、売店等は施設の利用者にとってなくてはならないものと考えられ、事実、設計に当たり、これらの設備が考慮されている場合が多いものです。しかもこれらの食堂、売店等は、直営であることはほとんどなく、私人をしてその経営に当たらせることが多いものです。
このような場合に、食堂、売店に充てられる部分を普通財産の貸付けとして処理することが可能かどうかですが、建物の区分所有の考え方から不可能ではないものとも考えられますが、やはり自治法第238条の4第4項(注:現行法では第7項)の規定による目的外使用の許可処分とすべきです」(「地方財務実務提要」地方自治制度研究会編集/ぎょうせい)。
「附属機関たる性格を有するものは、名称のいかんを問わず、臨時的、速急を要する機関であっても、条例によらなければ設置できない」(昭和27年11月9日行政実例)とされています。
本市では、以前、どう考えても附属機関たる性格を有するものでありながら、条例で設置されていない審査会等がありました。そこで、平成12年度に報酬及び報償費が予算計上されている審査会等をピックアップし、見直しを実施しました。附属機関たる性格を有する審査会等は、すべて条例で設置することとし、個別法に設置根拠があるものを除き、地方自治法第138条の4第3項の規定による単一の附属機関条例を制定しました。附属機関の委員の構成、会議公開の有無等は、附属機関ごとに規則で規定し、規則の標準化を図りました。また、「審議会等への市民参加の推進に関する規程」を制定し、委員定数の上限、在任期間の制限や市民公募の実施等を規定しました。
この審査会等の見直しの際に、「附属機関の構成員に議会の議員を加えることは、違法ではないが適当ではない」(昭和28年1月21日行政実例)とされていることから、議会の議員を附属機関から排除しようと考えたのですが、これは、そうはいきませんでした。ただし、議員には、附属機関の委員の報酬は、支給しないこととしています。
現在、おかしな審査会等は、本市には存在していないはずですが、見直しから8年が経過していますので、そろそろ調査の必要があるかもしれません。
GW中にほとんど使うことがなくなったデータフロッピィを整理していると、地方課(現在の市町村課)出向中に書いた「自治大阪・相談室」のボツ原稿が出てきました。埋もれたままにしておくのも忍びないので、ここに掲載します。
地方公共団体の執行機関の附属機関からの請願について
問 甲市議会において、A議員の紹介により甲市条例設置の附属機関である乙審議会から請願が行われた。
この請願を受理することは可能か。
答 受理することはできない。
説明 請願とは、公の機関に対し、その職務に関する事項について希望を述べることをいい、憲法第16条では、国民の基本的人権の一つとして請願権を保障しています。普通地方公共団体の議会に対する請願については、地方自治法(以下「法」という。)第124条で「普通地方公共団体の議会に請願しようとする者は、議員の紹介により請願書を提出しなければならない」と規定されています。
この「請願しようとする者」とは、国籍あるいは自然人・法人を問わず、すべての住民を指すものであるとされており(昭和23年6月16日、昭和25年3月16日行政実例)、当該普通地方公共団体の住民に限定されるものではありません。また、一般的には、町内会、PTA等の権利能力のない社団も請願をすることができるとされています(昭和29年7月26日行政実例)。しかし、普通地方公共団体の議会には法律上の権限として請願権はないものと解されており(昭和28年2月18日行政実例)、また、教育委員会等の普通地方公共団体の執行機関も、行政執行上の希望については、執行機関内において解決すれば足りることから、当該地方公共団体の議会に対し請願することはできないとされています(昭和27年12月1日、昭和33年2月26日行政実例)。
また、附属機関とは、執行機関の要請により、その行政執行の前提として、必要な調停、審査、審議又は調査等を行うため、普通地方公共団体に法律又は条例の定めるところにより設置されるものであり、普通地方公共団体の行政組織の一部を構成するものです(法第138条の4第3項、法第202条の3第1項)。
ところで、設問についてですが、附属機関が執行機関の行政執行の前提としての職務を行うために設置されたものである以上、自らの議会に対して請願するような事項があったとしても、それは執行機関に対する報告、意見等によって目的を果たすことができることから、甲市議会に対して請願することはできないと解されます。したがって、このような請願を受理することはできません。
この原稿がボツになった理由は、普通地方公共団の執行機関は、そもそも請願することができるのかはっきりしなかったからです。昭和27年12月1日行政実例では、「請願しようとする者」とは自然人及び法人を指すものであり、地方議会の請願能力(昭和28年2月18日行政実例)と同様、地方公共団体の執行機関は、法律上の権限として請願権がないものと解されます。一方、昭和33年2月26日行政実例では、行政執行上の請願事項については、執行機関内において解決すれば済むことから、当該団体に対しては請願することはできないが、他の地方公共団体の議会に対しては請願することができるとされており、双方の解釈に矛盾があります。
地方自治法第203条第5項は、普通地方公共団体の非常勤の職員(短時間勤務職員を除く。)の「報酬、費用弁償及び期末手当の額並びにその支給方法は、条例でこれを定めなければならない」と規定しています。
しかし、現実は、「非常勤職員及び臨時職員並びにこれらに準ずる職員」については、「常勤の職員との権衡を考慮し、予算の範囲内で市長が定める額」(非常勤職員の報酬及び費用弁償に関する条例別表)が支給されています。つまり、いくら支給されているのか、条例上は分かりません。
住民ニーズが多様化し、行政組織が複雑化してきている現在では、非常勤職員等の種類も多様化しています。月額にして10万円程度の報酬もあれば、行政職給料表(1)の5級(課長級)や6級(部長級)に相当するような報酬もあります。これらをすべて条例で規定することは無理があるというのが人事課の意見です。しかし、自分は、そうは思いません。どれだけ複雑であろうが、非常勤職員等の報酬は、「条例でこれを定めなければならない」と考えています。
収入役が3月31日をもって退職し、会計管理者が4月1日から任命されています。
収入役から会計管理者への事務引継については、地方自治法の一部を改正する法律(平成18年法律第53号)附則第5条第1項で「出納長及び収入役(前条後段の規定により出納長又は収入役の職務を代理する副出納長若しくは副収入役又は吏員を含む。)から会計管理者への事務の引継ぎに関する事項は、政令で定める」と、同条第2項で「前項の政令には、正当の理由がなくて事務の引継ぎを拒んだ者に対し、100,000円以下の過料を科する規定を設けることができる」と規定されています。そして、地方自治法施行令の一部を改正する政令(平成18年政令第361号)附則第4条第1項では「改正法附則第3条第1項の規定により出納長又は収入役として在職するものとされた者の更迭があった場合においては、その者は、退職の日から出納長にあっては15日以内、収入役にあっては10日以内にその担任する事務を当該普通地方公共団体の会計管理者に引き継がなければならない」と規定され、同令附則第5条第1項で「前条の規定による事務の引継ぎをする場合においては、引継ぎをする者において現金、書類、帳簿その他の物件の目録及び引継書を作成し、引継書に引継ぎの年月日を記載し、引継ぎをする者及び引継ぎを受ける者において引継書に連署し、現金、書類、帳簿その他の物件及びこれらの物件の目録とともに引継ぎをしなければならない」と、同令附則第6条で「正当な理由がなくて前2条の規定による事務の引継ぎをしない者に対しては、都道府県に係る事務の引継ぎにあっては総務大臣、市町村に係る事務の引継ぎにあっては都道府県知事は、100,000円以下の過料を科することができる」と規定されています。
一方、会計管理者から会計管理者への事務引継については、法上は何ら規定されていません。これは、特別職であった収入役とは異なり、「会計管理者は、普通地方公共団体の長の補助機関である職員のうちから、普通地方公共団体の長が命ずる」(地方自治法第168条第2項)こととされたためです。では、事務引継はどうするのかというと、普通地方公共団体ごとに、一般職の人事異動に合わせて行われている事務の引継ぎに準じて行えばよいものと思われます。また、事実行為として、「引継ぎをする者において現金、書類、帳簿その他の物件の目録及び引継書を作成し、引継書に引継ぎの年月日を記載し、引継ぎをする者及び引継ぎを受ける者において引継書に連署し、現金、書類、帳簿その他の物件及びこれらの物件の目録とともに引継ぎ」をすることも一つの方法として考えられます。
なお、会計管理者の職務代理者の順序を規則で定めている地方公共団体もありますが、本市では収入役の退職に伴い、「収入役の職務代理者の順序を定める規則」は、廃止しました。
本市では、毎年のように機構改革を行っています。
年度末の例規改正にはすさまじいものがありますが、機構改革に伴う関係例規の改正ついても、相当な数になります。また、機構改革に伴う工事やサインの変更に係る予算についても、小さな額ではありません。
どうしても必要な機構改革は別として、課の名称や庁舎のレイアウトをころころ変えることは、市民にとってややこしい以外の何ものでもありません。数年間で3度も名称を変更した課さえあります。
組織を編成するのは、首長の権限です。地方自治法第158条第1項前段は「普通地方公共団体の長は、その権限に属する事務を分掌させるため、必要な内部組織を設けることができる」と規定されていますが、同条第2項には「普通地方公共団体の長は、前項の内部組織の編成に当たっては、当該普通地方公共団体の事務及び事業の運営が簡素かつ効率的なものとなるよう十分配慮しなければならない」と規定されている意味を考えなければなりません。
会議録からの「発言の削除」は、標準市議会会議規則第65条に「発言の取消し又は訂正」として規定されています。会議録は、会議録署名議員が真正であることを確認し、署名した後は、原則として「発言の取消し又は訂正」をすることができません。また、「発言の取消し又は訂正」は、議会が活動能力を有している会期中に限られています。
「発言の訂正」は、「字句に限るものとし、発言の趣旨を変更することはできない」(同条ただし書)とされており、議長の許可を得なければなりません。一方、「発言の取消し」は、議会の許可を得なければならず、その方法には、@発言議員が発言の取消しを申し出る方法、A議長が発言の不穏当性を認め取消しを命ずる方法、B議員が取消し動議を提出、可決、これに基づき議長が取消命令を出す方法があります。このうち、Aの方法については、「「発言を取り消させ」とは、さきの発言を取り消すこと(取り消す旨の発言)を命ずることであって、議長が自ら取り消すのではない」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)と解されていますが、「議員・職員のための議会運営の実際8」(地方議会研究会編著/自治日報社)には「いきなり命令するのでなく、発言議員に対し自ら取り消すよう勧告することが適当であるとされています。発言議員が議長の勧告を受け入れ取消し申し出をすれば議会の議決で取消しを認めることになりますが、勧告を受け入れないときは、議長が取消しを命令します」とあり、また、「最新会議規則・委員会条例・傍聴規則逐条解説」(中島正郎著/ぎょうせい)には「国会先例からみて、議長から取消しを勧告したが応じないので取消しを命じた、あるいは議長が議院運営委員会に諮って取り消した、又は議長が不穏当と認め取り消す場合、院議により取り消した等いろいろある」とあります。地方公共団体の議会においては、地方自治法第129条第1項の規定により、議長が発言を不穏当と認め、取消しを命じている例が多いのではないでしょうか。
なお、「執行機関側からの発言の取消しについては、明文の規定がないが、議員の例に準じて」(「最新会議規則・委員会条例・傍聴規則逐条解説」中島正郎著/ぎょうせい)行えばよいと解されます。
議会の会議録には、原本と配布用のものとがあります。
会議録とは、「会議に関する唯一の公の記録であり、会議に関する争訟を生じた場合の有力な証拠書類となるものであるから、会議の経過をありのままに記録しておくことを使命とするものであり、これを修正したり抹消することは許されない(本人が発言を取消し又はこれを訂正した部分あるいは議長が発言の取消しを命じた部分といえども、原本にはそのまま記載すべきを至当する。)」(「注釈地方自治関係実例集」地方自治制度研究会編/ぎょうせい)とされています。よって、「秘密会の議事並びに議長が地方自治法第129条の規定により取消を命じた発言についても原本には記載しておくべき」(昭和33年3月10日行政実例)であって、また、「その内容の体裁を整える意味において、重複した発言(たとえば議長が会議次第書を誤見し、重複発言をした場合)を抹消する等についても、発言の内容に修正を加えるべきでない」(昭和28年6月27日行政実例)と解されています。
一方、「会議録は、印刷して、議員及び関係者に配布する」(標準市議会会議規則第79条)とされ、この配布用の会議録には、「秘密会の議事並びに議長が取消しを命じた発言及び第65条(発言の取消し又は訂正)の規定により取り消した発言は、掲載しない」(同規則第80条)とされています。
3月12日付けの各紙朝刊に、大阪府知事の発言が会議録から削除されたことが報じられています。この場合についても、発言が削除されるのは配布用の会議録についてであって、原本には、そのままの発言と削除された旨が記載されることになります。
「特別会計は、普通地方公共団体が特定の事業を行なう場合その他特定の歳入をもつて特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合において、条例でこれを設置することができる」(地方自治法第209条第2項)とされています。
特別会計は、「他の法律において特別会計の設置が義務づけられている場合、たとえば、国民健康保険に関する特別会計(国民健康保険法一〇)、介護保険に関する特別会計(介護保険法三2)、農業共済事業に関する特別会計(農業災害補償法九九の二2)等も、改めて条例を制定する必要がない」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)と解されているのですが、法律上設置が義務づけられている特別会計を条例で設置している地方公共団体が多数あります。本市も以前は、こうした特別会計を条例設置していましたが、現在はしていません。地方公共団体ごとの考え方によるものですが、「改めて条例を制定する必要がない」と解されているものは、正にその必要はないと考えられます。
なお、前掲の「逐条地方自治法」によると、「特別会計設置条例は、特別会計をすべて一つの条例にまとめて制定しても、特別会計ごとに条例を制定してもいずれでも差しつかえないが、当該条例には特別会計設置の目的、事務事業の内容等について規定する必要がある場合もあるので、このような場合には個別条例として制定することが適当である」とありますが、あえて法上義務設置である特別会計を条例設置するならば、特別会計をすべて一つの条例にまとめて制定する方が適当であるように思います。
昨日、市議会第1回臨時会が開会し、閉会しました。
1月27日に大阪府知事選挙と同時に市議会議員補欠選挙が執行されましたので、新人議員の歓迎会の意味を込めて臨時会を開催することが本市の慣例になっています。
「臨時会は、必要がある場合において、その事件に限りこれを招集する」(地方自治法第102条第3項)とされていますので、付議すべき事件をどうするのかという疑問を持たれるでしょうが、これは、臨時会用に議会事務局と総務課とで協議し、準備することになっています。今回は、議員が月の中途で離職した場合の報酬を日割計算とする旨の「議員報酬及び費用弁償等についての条例の一部を改正する条例」を付議すべき事件としました。
なお、本市における議会の呼称は、暦年単位で、定例会の場合は「○月(第×回)定例会」と、臨時会の場合は「第×回(○月)臨時会」とすることとしています。
本市職員H君からの質問です。
H君「議員て、どれくらいもらえるんですか?」
自分「うちか?」
H君「いえ、一般的に。」
自分「うーん、ピンキリやな。」
普通地方公共団体の議会の議員は、地方自治法第203条の規定により、報酬のほか、費用弁償及び期末手当を受けることができ、報酬、費用弁償及び期末手当の額並びにその支給方法は、条例で定めなければならないとされています。ちなみに、福島県矢祭町が議員報酬を月額から日額に変更して話題になりました。
「どれくらいもらえる?」と聞かれても、議員が監査委員に選任されたり、一部事務組合の議員を兼ねている場合などは、別途報酬が支給されますので、今回は特例措置等も無視して単純に議員報酬のみを比較してみます。何か調査したモノがあればいいんですが見当たりませんので、例規集から高そうなところと低そうなところを適当に拾ってみます。例えば、O市の場合は1,020,000円/月(本市の場合は550,000円/月)、北海道のO村ですと123,000円/月ですので、正に「ピンキリ」です。ついでに最近話題の政務調査費を見てみると、O市の場合は600,000円/月(個人の場合は500,000円/月。本市の場合は60,000円/月)、O村は政務調査費に関する条例が見当たりませんので、0円です。
市町村議会の議員の仕事に大差はないと思うのですが、この差、H君どう思う?
1月8日(火)に議会事務局、財政課及び政策推進課と市議会3月定例会の打ち合わせをし、同月11日(金)に各課あてに議案の照会をしました。
市長選挙(今回の場合は1月27日。大阪府知事選挙と同時施行)のある年は、当初予算案は骨格予算とし、6月定例会で市長が施政方針を行い、肉付けの補正予算を組むこととしていますが、今回は、現職の無投票当選の可能性が大きいことから、例年どおりの予定です。
毎年、この時期になると「議案、納期によう間に合わすかなあ」と思ってしまいます。当然、「でけへんかった」というようなことは、これまでに一度もありませんが、このプレッシャー、法規(又は議案の作成)を担当されている方又はされていた方ならば、理解してもらえるかと思います。
12月22日付け朝日新聞朝刊によると、S市議会は、同月21日、公の施設の指定管理者の指定に関する議案を「選考過程が不透明で、市内の企業を優先する配慮もなかった」として否決したそうです。
指定管理者による公の施設の管理は、「公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるとき」(地方自治法第244条の2第3項)にできるものであって、「地域活性化のため、市内の企業を優先すべきだ」という反対意見には疑問を感じざるを得ません。
「指定管理者の指定は行政処分の一種であり、契約ではない」(「地方自治第669号『地方自治法の一部を改正する法律の概要について』篠原俊博」地方自治制度研究会編/ぎょうせい)と解されていますが、「地元企業優先」という考え方は、契約事務において不文律のものとなっているように思われます。
地方公共団体の「売買、賃借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする」(地方自治法第234条第1項)とされ、それは一般競争入札を原則とし、「指名競争入札、随意契約又はせり売りは、政令で定める場合に該当するときに限り、これによることができる」(同条第2項)とされています。しかし、現実には、入札というと圧倒的に指名競争入札が実施されています。問題は、指名競争入札に参加する者を指名する場合の基準です。本市の場合、契約規則で「市長は、指名競争入札に参加する者を指名する場合の基準を定めなければならない」と規定し、「地方支分部局工事請負業者選定事務処理要領」(昭和41年12月23日付け建設省厚第76号)を参考に内規で指名業者選定基準を定めています。それには「市内登録業者の中から○者以上を選定する」又は「市内登録業者を優先し」と規定しています。確かに、市内業者を育成することで市内経済が活性化し、更なる産業が振興され、税収の増加が期待できるという建前はあります。また、競争入札を採用することで、業者間で公正な競争が行われているという建前もあります。しかし、現実は落札額が高止まりし、このことが談合の温床になる可能性が極めて大きいと考えられます。
行政改革の一環として契約事務の改善や経費削減が叫ばれている中、職員でさえ疑問視するようになってきている「地元業者優先」という指名基準を、なぜか市長や議員は問題とは考えていないようです。
議案を撤回し、又は訂正しようとするときは、「会議規則の定めるところによるべきであるが、原則としては、提案者の意思のみによって撤回することはできず議会の同意を必要とするものと解」(昭和28年4月6日行政実例)されています。
「標準」都道府県・町村会議規則は、「会議の議題となった事件を撤回し、又は訂正しようとするとき及び会議の議題となった動議を撤回しようとするときは、議会の許可を得なければならない。ただし、会議の議題となる前においては、議長の許可を得なければならない」と規定しています。
なお、「標準」市議会会議規則では、会議の議題となる前については規定していませんが、都道府県及び町村と同じ取扱いをしているものと思われます。
こうした撤回や訂正とは異なり、単なる印刷ミスや計算ミス、「てにをは」などの誰が見ても誤りが明らかであるもの(議案に実質的な内容の変更がないもの)については、どの地方公共団体も正誤表を提出することとしていると思われますが、問題は、正誤表を提出する時期です。
「正誤表は実質的な審議が終了するまでの間に配布されなければなりません。質疑終了(討論の前)までに配布されるのが望ましいですが、法的には表決直前まで可能と言えます」(「議員・職員のための議会運営の実際2」地方議会研究会編著/自治日報社)とありますが、本市では、会議の議題となる前までに限って提出することとしています。では、会議の議題となった後に正誤表を提出する必要が生じた場合はどうするのでしょうか?幸いにして、これまでそのような事態は生じていませんが、もしも生じた場合は、おそらく反則技を繰り出すことになると思います。
本市の木は、いちょうです。市内には街路樹としてたくさんのいちょうの木がありますが、この季節になると葉が落ち、そのことがちょっとした問題になっています。
以前は、市民が善意で落葉を拾い集め、ごみの収集場所に出していただいていたのですが、最近ではそういうことがめっきり減ってきています。その原因の一つは、家庭用ごみの有料化ではないかと自分は思っています。確かに、ボランティア用のごみ袋を使えば無料ですが、市役所へ出向いた上で申請しなければならないという手間から敬遠されているのではないでしょうか。
本市は、平成18年4月1日から家庭用ごみの有料化を実施しました。当時、有料化の実施に際して色々と問題もあったのですが、今でも自分が疑問に思っているのは、家庭用ごみの収集、運搬及び処分に係る手数料の徴収根拠です。
地方自治法第227条は「普通地方公共団体は、当該普通地方公共団体の事務で特定の者のためにするものにつき、手数料を徴収することができる」と規定しています。すべての住民が受益者である家庭用ごみの有料化は、「特定の者のためにするもの」には該当せず、この規定を根拠として手数料を徴収することはできないと解されていたはずです。だからこそ、廃棄物の処理及び清掃に関する法律第6条の2第6項で「市町村は、当該市町村が行う一般廃棄物の収集、運搬及び処分に関し、条例で定めるところにより、手数料を徴収することができる」と規定されていたはずです。当時の厚生省の解釈は、廃掃法第6条の2第6項の規定は、地方自治法第227条の特則であって、廃掃法第6条の2第6項の規定によって「特定の者のためにするもの」に限らず、すべての住民が受益者である場合であっても手数料の徴収が可能であるとしていたのではないでしょうか。その後、地方分権一括法によって、廃掃法第6条の2第6項の規定は、削除されました。手数料の徴収根拠は、どこにいったのでしょうか。また、いつ解釈が変更されたのでしょうか。
「循環型社会の形成に向けた市町村による一般廃棄物処理の在り方について(意見具申)」(平成17年2月14日中央環境審議会)で一般廃棄物の有料化の推進が提言されていますが、これ以降、急激に全国の市町村が有料化に傾いていったように思います。財政が悪化している市町村にとっては、収入を確保するためにも有り難い提言だったと思います。
「普通地方公共団体は、公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるときは、条例の定めるところにより、法人その他の団体であって当該普通地方公共団体が指定するもの(以下本条及び第244条の4において「指定管理者」という。)に、当該公の施設の管理を行わせることができる。」(地方自治法第244条の2第3項)
公の施設の指定管理者制度は、平成15年の地方自治法の一部改正によって制定されたものですが、その当時から自分は、この制度を危惧しています。「自治実務セミナー42巻5号(平成15年5月号)」(第一法規)の「法窓記」では、成田頼明横浜国立大学名誉教授が「公の施設が地方の顔役、利権屋、暴力団などのいかがわしい会社の喰いものにならないように慎重で良識のある運営がなされるように望まれる」と述べておられます。
こうした危惧が杞憂に終わるのか現実になるのか、そろそろ全国の地方公共団体で答えが出てくるのではないでしょうか。
注文していた平成20年版の地方自治小六法が届きました。自分は、学陽書房のものを使っています。他の出版社からもセールスがありますが、14年間も学陽書房を使っていますので、今更、変更する予定はありません。
以前、財政課との予算要求ヒアリングの際に、「何で毎年六法買うねん」と言われたことがあります。本市の職員の認識は、そんなものです。中には、何(十)年も前の六法を「なじんで使いやすいんやあ」と言って机の上に大事に飾っている職員さえいます。
当たり前の話ですが、法令というものは改正されますので、古い六法は役に立ちません。法令を調べる場合は、少なくとも最新の六法を使う必要があります。
「自治大阪平成19年8月号」の相談室に「特別職の懲戒処分について」が掲載されています。実は、本市でも平成16年度に助役の懲戒事案(助役が理事長である財団法人の業務上横領事件)が発生したことがあります。
市町村の特別職の懲戒については、地方自治法施行規程第16条の規定により準用する第13条に規定されています。それによると、懲戒の処分は、免職、500円以下の過怠金及び譴責とされ、免職及び過怠金の処分は、職員懲戒審査委員会の議決を経なければならないとされています。当時、市長等にこのことについての説明をしたところ、「免職にはならんやろ。ほな、職員懲戒審査委員会開いて、議決して、過怠金500円か?」と驚かれました。「500円以下の過怠金」は、地方自治法施行規程の制定時(昭和22年)から改正されていませんので、現在の懲戒処分として考えると、確かに現実離れしているように思われます。
結果として、本市では助役に対し、懲戒処分ではなく、相当分の給与を自主的に返還してもらうことになりました。
「1議案を2以上の委員会に付託すべきものではない。予算は不可分であって、委員会としての最終的審査は一つの委員会において行うべく、2以上の委員会で分割審査すべきものではない」(昭和29年9月3日行政実例)とされています。
しかし、本市では、当初予算案については予算特別委員会に付託しますが、補正予算案については各常任委員会に分割付託することとしています。本日の総務委員会でも、補正予算案のうち、総務費についてのみ分割付託しました。
ただし、「予算を各常任委員会に款・項・目と分けて付託することを分割付託というが、議案一体の原則からして不可とする見解があるが、地方議会での議案とりわけ予算は重要議案であることと、所管事務の調査及び所管の条例、請願・陳情等総合的見地から同一委員会で審査したいということで事実上各常任委員会に分割して付託しているところがかなり多い。筆者は議会内部としての事実運営で分割付託としても実害がなく、議員の気持からすると、やむを得ないものと考えている」(「会議規則・委員会条例・傍聴規則逐条解説」中島正郎著/ぎょうせい)との見解もあります。さらに、同書は「明解な解決策がなく、長年のネックであるのでむしろ抜本的には地方自治法の改正によってはっきりした指導がほしい」としています。
市長は、議会に「予算に関する説明書その他当該普通地方公共団体の事務に関する説明書を提出しなければならない」(地方自治法第122条)とされています。
予算に関する説明書を提出する必要があるのは「「予算を議会に提出するとき」に、当該予算に関するものに限られる」と解されています(「逐条地方自治法」松本英明著/学陽書房)。また、同条は「Aその他Bを提出しなければならない」と規定していますので、「事務に関する説明書」も、当初予算、補正予算を問わず、「予算を議会に提出するとき」には必ず提出しなければなりません。ただし、「地方自治法質疑応答集」(地方自治制度研究会編著/第一法規)には、「特定の経費に限られた補正予算案で、それが諸情勢により、あえて説明をするまでもないようなものについてまで必要とするかどうかは消極的に考えてよいのではなかろうか」とあります。
「予算に関する説明書」とは、同法第211条第2項に規定する「政令で定める予算に関する説明書」のことですが、「事務に関する説明書」とは、どのようなものでしょうか。
以前本市では、各課の事務を数値化した「事務報告書」という説明書を暦年で作成し、当初予算案が提案される3月定例会にのみ提出することとしていました。ところが、この「事務報告書」は、本市では、予算委員会でほとんど使われることがなく、専ら決算委員会での審議に使われていました。決算は会計年度で調製されるのに対し、事務報告書は暦年で作成されているのですから、当然、数字に相違が生じることになります。すると、議会は言うまでもなく、部課長からも会計年度で作成し、決算の認定に合わせて9月定例会に提出するようにとの要望がありました。自分は、そのたびに「事務報告書」が「事務に関する説明書」である以上は、そのような取扱いはできない又はすべきではないとの説明を行っていましたが、さすがに一人では抗しがたく、「平成14年中事務報告書」を最後に、「事務報告書」を会計年度で作成し、9月定例会に提出することになってしまいました。この9月定例会にも「平成18年度事務報告書」が提出されます。
なお、本市では、「予算に関する説明書その他」の説明書としては、投資的経費に限り「予算概要説明書」というものを作成し、提出することとしています。
議会の会議に付す事件は、原則として「議長が所管の常任委員会又は議会運営委員会に付託する」(標準市議会会議規則第37条第1項)とされていますが、人事案件については、「事前に各派に説明、了承を得ている場合が多く、また人格にわたる審査になる可能性もありますので、委員会付託を省略しているところが多い状況」(「議員・職員のための議会運営の実際3」地方議会研究会編著/自治日報社)です。
本市も人事案件については、委員会付託を省略しています。本市の場合、追加議案は原則として委員会付託を省略することとしていますので、人事案件は必ず追加議案として提案することになっています。
人事案件の議案は、名前を記載せずに提案し、会議中に自ら記載することとしています。「公安委員選任議案で名前の記載がない議案を、不完全な議案であるとして議長が本会議に上程しなかったのは、妥当である」(昭和25年6月1日行政実例)とあることから、これを議案として取り扱うことの問題はありますが、これも本市のローカルルールの一つです。
また、同一の人事案件で複数の者の選任同意を求めるような場合は、1件の議案にまとめて提案しています。これも、本来は1人につき1件の議案とするべきですが、全員同意を前提として便宜上行われている方法です。
こうしたローカルルールは、人事案件という特殊性ゆえのものと考えられます。
専決処分の報告には、地方自治法第179条第3項の規定によるものと第180条第2項の規定によるものとがあります。同じ報告でも、第179条第3項の場合は「報告し、その承認を求めなければならない」のに対し、第180条第2項の場合は単に「報告しなければならない」とされています。このことから、専決処分の報告議案は、「承認を求める」ものと「報告する」ものの2種類が存在します。
本市の場合、議案番号は「専決報告」として、第179条・第180条の区分にかかわらず、一連番号を付しています。その上で、第179条については1件ずつ「承認を求め」、第180条については会議ごとに一括して「報告する」こととしています。
なお、第180条の専決処分の場合、市町村によっては、適正に運用されていない例が見受けられます。本市でも、平成9年までは、第180条第2項の規定による専決報告をしていませんでしたし、現在においても、「次の会議において議会に報告することが法意と解され」(昭和31年4月2日行政実例)ているにもかかわらず、次の定例会にのみ報告することとしています。
第1回(5月)臨時会で市議会議長及び副議長が選挙されました。任期は、申合わせにより1年です。
地方自治法第103条第2項は、「議長及び副議長の任期は、議員の任期による」と規定しています。「議長及び副議長を一年交代等にする場合が多いが、本条第2項の規定がある以上、このことを会議規則に規定することはできない。したがって、申合わせにより、本人の辞職による交代を行うほかはないが、このような短期交代制は法の趣旨からして適当でない」(「逐条地方自治法」松本英明著/学陽書房)のです。
市議会議長及び副議長の短期交代制は、古くから指摘されている問題ですが、なかなか改めることができません。こうした事例は、多数存在します。市町村では、たとえ無茶苦茶なことであっても、それが何年も積み重ねられていくと、一つの秩序を構成してしまうのです。
「市議会市政相談所規則」。地方自治法の一部を改正する法律に係る市議会委員会条例及び市議会会議規則の一部改正に伴い、3月に見直しを行った議会関係の例規の一つです。
市政相談所は、議員の自宅に置き、別記様式の看板を掲示し、@市行政の普及及び宣伝、A市行政の相談及び指導をその業務として行うと規定されています。大阪府にも議員の自宅又は事務所に府政相談所が置かれていますが、そもそも市政相談所とは、何なのでしょうか?@に当たる業務は、行われていませんし、Aの業務は、本来の議員活動の一環として行われるべきものではないでしょうか。
調べてみると、市議会五十年史に「各方面から要望があり、先進市の状況を調査し、試験的に実施したところ、非常に好評である」ということで、昭和31年に規則設置されたとの記述がありました。そこで、インターネットで検索してみましたが、「市政相談所規則」なるものは、本市と隣のK市以外は、見当たりませんでした。
いわゆる流行モノで、放置しすぎて忘れられてしまった例規の一つかと思われましたので、思い切って理屈を付けて議会に廃止の提案をしました。すると、意外にもすんなりと了解していただきました。
平成19年度一般会計予算案が否決されました。そこで本市がとった方法は、議事日程を変更し、修正を加えた予算案を再提案するというものです。その結果、無事に可決されましたが、これは、一事不再議の原則に抵触しないのでしょうか?
否決した議会の意向を踏まえて内容(款・項)に修正を加えた予算案は、一事には当たらないというが本市の解釈です。たしかに、同じ議決でも、可決とは異なり、否決については、柔軟に対応するべきだと考えられています。可決された議案は、そのことについての議会の意思が決定されていますので、同一内容は当然のこととして、修正を加えた議案についても、事情変更の原則が働かない限り、提出することはできません。これに対し、否決された議案については、@議案を議会の意思として採用していない、A議会は他の案についての意思決定をしていないと考えられることから、同一内容の議案を提出することはできませんが、修正を加え、内容を変更した議案については、提案することができると考えられるからです(「議員・職員のための議会運営の実際21」地方議会研究会編著/自治日報社 参照)。
しかし、今回の修正部分は、議会で問題とされた事業予算を削除しただけです。「当初の否決された条例案を分割してその一部だけで新たな条例案として提出することも一事不再議の原則に抵触するものである」(「地方自治第367号 実務・研究『一事不再議の原則に関する若干の考察』浦野昭治」地方自治制度研究会編/ぎょうせい)のと同様に、今回の修正予算案は、一事に当たると考えるべきではないでしょうか。
最近、各地で当初予算案が否決されるケースが見受けられます。各自治体は、苦心の上での対応をされているとは思いますが、自分は、当初予算案が否決された場合は、3月定例会の会期を延長するなり、4月臨時会を招集するなりして、再議に付さなければならないと考えています。当初予算には、必ず「法令により負担する経費、法律の規定に基き当該行政庁の職権により命ずる経費その他の普通地方公共団体の義務に属する経費」が含まれているはずです。それを「削除し又は減額する議決をしたときは」必ず「長は、理由を示してこれを再議に付さなければならない」(地方自治法第177条第2項)と規定されているのがその理由です。また、一事不再議の原則の適用を除外する事項として、長の再議(地方自治法第176条・第177条)が規定されている意味も考えてみるべきではないでしょうか(予算案が可決する前に新年度が始まる場合は、予算の空白期間を防ぐために3月31日までに暫定予算を専決処分する必要があります。また、当初予算案が否決された自治体の対応としては、3月間の暫定予算を専決処分し、6月定例会で当初予算案を提案するという方法が見受けられます。)。
今回の事例は、自分の意見がまったく採用されなかったものです。「一事不再議の認定権者は議会であり、あるいは委員会であって基準がないことと、執行機関が関与すべきものではない。もしも、一事不再議に疑問がある場合どうするかは、特別にこの種のものに対する法規定がないことから、議員の思惑や立場、面子から混乱することになるが、そうした場合、議会運営委員会又は全員協議会で論議して、合意されたらそれに従えばよいし合意されなければ、一事不再議の理論を貫かないで、問題の事件に対して、採決することも解決の方法である」(「最新会議規則・委員会条例・傍聴規則逐条解説」中島正郎著/ぎょうせい)ということで自分を納得させようとはしていますが、悪しき先例ができてしまったという思いが強いです。
市議会3月定例会が3月6日に開会します。本市の場合、招集日の7日前に議会運営委員会を開催し、招集告示をするのが通例です。議案については、議会運営委員会の前日に議員に送付し、議会運営委員会終了後、各課に配布することになっています。ですから、今日、3月定例会の議案を各課に配布しました。
しかし、議員には、2月26日ではなく、既に2月20日に議案を送付しています。これは、3月定例会については、できるだけ早く議案(特に来年度の当初予算)が見たいという議員の要望により、議案の送付日は、その都度、協議して定めることになっているからです。自分が文書法規を担当し始めた頃は、まだ作成中である当初予算のゲラをコピーして議員に渡すというようなことまでしていました。この悪習を是正するための条件が議案の送付日の前倒しだったわけです。
「議案の提出は議会の開会中に限る」(昭和24年8月16日行政実例)とありますので、本来は、議案は招集日に送付すべきものと考えられます。しかし、議案審議の効率化を図るためにも、ほとんどの自治体が「提出を予定されている議案と同一内容の印刷物を配付するということであるならばあえてさしつかえない」(昭和26年8月20日行政実例)ということで、事実行為として、議案と同一内容の印刷物を事前に配付しているものと思われます。
昨日、議員協議会(いわゆる法定外委員会)にオブザーバーとして出席してきました。案件は、地方自治法の一部を改正する法律(平成18年法律第53号)の施行に伴う議会関係例規の改正についてです。2月2日付けのブログ(法規審査)でも述べましたように、本市の例規は、すべて文書法規係が作成します。議員提案条例も同様です。
今回の議会委員会条例の改正に当たって問題となったのが、議会運営委員会の取扱いです。本市の場合、議会運営委員会は、条例設置されていません。平成3年の自治法改正によって議会運営委員会が法定されたのですが、あくまで任意設置であり、問題は、公務災害及び費用弁償ぐらいであろうと従前のまま(議会規則により設置。議会に規則の制定権があるかどうかは、異論があると思いますが…)にしていました。しかし、今回の自治法改正によって、議長が臨時会の招集を請求するためには、議会運営委員会の議決を経る必要があるとされたことに伴い、議会運営委員会を条例設置することとしました。この件で驚いたのは、「地方自治9月号」(地方自治制度研究会編/ぎょうせい)28ページによると、約99.7パーセントの市が議会運営委員会を条例設置しているということでした。
3月(第1回)定例会の議案審査の真っ盛りです。本市では、議案の作成は文書法規係の事務であり、議案の提案には法規審査が必要です。
議案が出そろったところで議案一覧表を作成するのですが、この配列には、地方公共団体ごとに先例による決まりがあることと思います。本市の場合は、まず、@報告案件、A事件・条例案件、B予算案件の順に並べます。その後、報告案件については、監査報告、専決報告、その他報告の順に配列します。事件・条例案件については、常任委員会の編成順に分けた後、事務分掌条例施行規則の課の編成順に配列することとしています。議案の審議をスムーズに行うためです。その中でも事件と条例の場合は事件を先にし、条例の中では制定、一部改正、廃止の順とし、一部改正と廃止の中では制定の古い順に配列します。最後に、予算案件については、補正予算と当初予算の場合は補正予算を先にし、その中で制定の古い順に配列します。
なお、人事案件については追加議案の最初に配列し、工事請負契約については事件・条例案件の最初に配列することとしています。
議案の配列に従って議案番号を付していくのですが、本市では、議案番号に枝番号や削除を認めていません。「議案番号は、議会に多数提案される議案を整理するための記号であり、議案の一部をなすものではありません。したがって、議案番号を付さない議案があっても、議案として有効であり、審議の対象となります。」(議員・職員のための議会運営の実際1・地方議会研究会編著/自治日報社)とありますが、締切り後の議案の追加提案や取下げは、頭の痛い問題です。
(追加議案についても、本市のローカルルールがあるのですが、それはまた別の機会に述べたいと思います。)
市議会12月定例会(第4回)が閉会しました。前市長の頃は、議会運営委員会が終われば(議案を送付すれば)、総務課文書法規係としての議会は終了でしたが、現市長になってからは、議案の否決、修正、撤回又は撤回した上での再提案等々、閉会するまで気が抜けない議会になっています。そんな議会の諸問題に対するオススメの図書が「議員・職員のための議会運営の実際1-21」(地方議会研究会編著/自治日報社)です。21巻をそろえるとなると高額になりますが、その価値はあると思います。実務を行っていく上で、非常に役に立つ図書です。
地方自治法第100条というと、議会の調査権に関する規定ですが、同条には、第17項で図書室の設置についても「議会は、議員の調査研究に資するため、図書室を附置し前2項の規定により送付を受けた官報、公報及び刊行物を保管して置かなければならない。」と規定されています。確かに、本市の議会でも図書室を設置し、送付されてくる官報、公報及び刊行物を保管していますが、問題は、その図書室の内容です。図書と呼べるような本は、ほとんどありません。そうすると、たまに、総務課文書法規係まで調べ物(質問)にくる議員がいます。今日も、ある議員に頼まれて松本逐条第2次改訂版を貸し出しました。
本市では、以前、行財政改革の一環として、議会図書室の廃止が検討されたことがありました。地方自治法上、議会図書室は義務設置ですので、廃止にはなりませんでしたが、地方分権と言われる中で議会の機能の充実を図ろうとするならば、その一つの方法として、議会図書室の内容を充実させ、これを一般の利用に供させるように検討するべきではないでしょうか。
12月1日(及び6月1日)は、本市の財政状況の公表日です。地方自治法第243条の3第1項の規定により、普通地方公共団体の長は、条例の定めるところにより、毎年2回以上歳入歳出予算の執行状況並びに財産、地方債及び一時借入金の現在高その他財政に関する事項を住民に公表しなければならないとされています。公表事項や公表方法等については、各団体が条例で定めることとされていますので、各団体の取扱いに違いはありますが、インターネットによる公表を実施している団体ならば、容易に財政状況を知ることができます。しかし、この財政状況の公表は、住民に周知されているのでしょうか。また、予算や決算とは違い、テレビや新聞等でもほとんど報道されません。この規定が、ニーズに合わなくなっているように感じます
一方、平成12年3月に自治省(現総務省)が自治体バランスシートの作成マニュアルを公表したことを受け、今では、ほとんどの自治体でバランスシートや行政コスト計算書についても公表されています。さらに、企業会計の手法を取り入れた財務会計システムを導入しようという自治体も見受けられるようになりました。バランスシート等の公表は、財政状況の公表の一つの方法ですが、公表日との関係上、別の制度として実施されているように見受けられます。
行政情報の公表制度としては、平成16年の地方公務員法の改正により人事行政の運営等の状況の公表が法定されましたが、この際、財政状況の公表の規定についても、見直してみる必要があるのではないでしょうか。
ちなみに、財政状況の作成及び公表に関する条例〔市の事例〕(「市町村例規準則集」第一法規)によると、公表の期日は5月1日と11月1日、公表の方法は公告式条例によるほか、公表日から6月間、市長の指定する場所で閲覧することができるとなっています。
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