−管理人のたわごとブログ− 法制執務
本市に限らず、ほとんどの地方公共団体では、法令の改正方法と同様に、既存の例規の一部を改正する方法として、溶け込み方式を採用しています。例えば、A条例の一部を改正する場合は、A条例の一部を改正する条例(B条例)を制定します。このB条例の本則で規定された改正内容が施行され、A条例に溶け込むことによってA条例が改正されるという方法です。そしてB条例の附則だけが残ることになります。
ところが、まれにB条例が公布され、まだ施行日が到来していない段階で、A条例の同じ部分を改正し、B条例の施行よりも先に施行しなければならない場合が生じることがあります。この3月31日付けで専決処分した市税条例等の一部を改正する条例が、正にそれです。
市税条例(A条例)を改正する平成26年総税市第9号による市税条例等の一部を改正する条例(B条例)第1条中附則第16条の改正規定の施行日は平成28年4月1日ですので、現在、同条の改正規定は、未施行の状態です。
平成27年総税市第23号による市税条例等の一部を改正する条例(C条例)第1条の規定により、A条例附則第16条が改正され、同条の改正規定の施行日が平成27年4月1日とされています。このため、C条例第1条の規定によるA条例の一部改正を前提として、C条例第2条でB条例の一部を改正しているのが、専決処分した市税条例等の一部を改正する条例です。
専決処分した条例は、次の会議で議会に報告し、その承認を求めなければならない(地方自治法第179条第3項)ので、担当部長に説明しているのですが、なかなか理解してもらえません。さて、どう説明しましょうか?
昨日、次のような質問を受けました。
「しょーもないこと聞くけど、本則で「法」て略称使たら、様式でも「法」て略称にせなアカンのけ?」
「しょーもないこと」ではなく、良い質問だと思います。ちなみに、次のように答えました。
「法制執務上は略称がスジなんやけど、様式の性格考えて、略称にせんでもええ」
略称規定は、「特にその及ぶべき条項を限定した場合を除いては、その法令の附則及び別表等にも及ぶものとされて」(「ワークブック法制執務」法制執務研究会編/ぎょうせい)います。しかし、「様式については、法令の一部とはいえ、実際には本則と切り離されて単独で用いられることが多いため、様式中で法令名の略称が用いられた場合、読み手(住民)がその略称が何を指しているか分からない可能性があります。そのため、このような事態を避ける趣旨で、本則中で略称規定の設けられた法令名でも、様式中では、正式名称を使用することが一般的」(「実務相談法制執務」鰍ャょうせいクリエイティブ事業部法制ソフト課編集/ぎょうせい)であるとされています。
なお、条項を限定して略称する方法もありますが、市町村の例規では、「本則中で略称規定の設けられた法令名でも、様式中では、正式名称を使用すること」の方が適当であると考えられます。
3月定例会の議案審査もようやく終わりが見えてきました。この議会での一番の難問は、やはり、介護保険条例(参考例)附則第8条をどう規定するかではないでしょうか。
自分は、まだ良い例が思いつきませんが、参考にしていただきたい記事を紹介しておきますので、皆さんも考えてみてください。
半鐘の半死半生 Re:介護保険条例参考例附則の読み方
自治体法制執務雑感 委任条例の規定の書き方
法令における表は、表を用いて表現した方が簡潔で分かりやすいと考えられる場合に用いられ、本則の条文中に置かれるものと、附則の次に置かれるものとがあります。このうち、附則の次に置かれる表を別表といい、別表が2以上になると、「別表第1」、「別表第2」……と表示します。
別表を細分する場合、一般職の職員の給与に関する法律では、イ、ロ、ハを使っていますので、市町村の横書きの条例の場合は、ア、イ、ウを使用しているところが多いのではないでしょうか。
11月19日に公布された一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律(平成26年法律第105号)第2条では、別表第8ロ及びハの改正規定を
「別表第八ロ及びハを次のように改める。
ロ 医療職俸給表(二)
(略)
備考 (略)
ハ (略) 」
としています。
一方、一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律(平成19年法律第118号)では、「別表第一イの表中「(略)」を「(略)」に改め、別表第一イの備考(二)中「179,200円」を「181,000円」に改め、別表第一ロの表中「(略)」を「(略)」に改める。」としています。
別表の名称及び備考があることを考慮した改正規定であると考えられますが、細分された表を重ねて引用する場合は、どのようにするのでしょうか。
防衛省の職員の給与等に関する法律施行令の一部を改正する政令(平成25年政令第72号)では、
「別表第一イの表中「(略)」を「(略)」に改め、別表第一ロの表一等陸佐、一等海佐及び一等空佐の(一)欄の項中「(略)」を「(略)」に改め、同表一等陸佐、一等海佐及び一等空佐の(二)欄の項中「(略)」を「(略)」に改め、同表一等陸佐、一等海佐及び一等空佐の(三)欄の項中「(略)」を「(略)」に改め、同表二等陸佐、二等海佐及び二等空佐の項中「(略)」を「(略)」に改め、同表三等陸佐、三等海佐及び三等空佐の項中「(略)」を「(略)」に改める。」
とありますので、「別表第1アの表」を「同表」で受けてもよいのでしょうが、「同表」が「別表第1」を指すのか、「アの表」を指すのか、分かりにくいという点において、問題があると思います。
〔複数法令の改正〕
問147 一部改正法の本則で幾つかの法律を同時に改正する場合は、どのような場合か。
答一 A法の一部改正を行う結果、B法及びC法の一部改正を行う必要が生ずるような場合には、A法
の一部を改正する法律の附則において、B法及びC法の一部改正を規定する。このような場合(ある
法令の一部改正をした結果、他法令を改正する必要が生ずる場合)とは異なり、共通の動機に基づ
いて複数の法令を改正しようとする場合には、原則として、その改正しようとする法律の数が二であ
るときは「A法及びB法の一部を改正する法律」の、その改正しようとする法律の数が三以上であると
きは「A法等の一部を改正する法律」の、それぞれ本則において改正する。(以下略)
二 ある法令の制定、改廃に伴って、相当多数の法令を改廃する必要が生じた場合、その原因を与え
た法令の附則において改正することもできるが、別の法令を制定して改正しようとするときは、それ
が法律の場合であれば、「○○法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理(等)に関す
る法律」という題名の法律の本則において、関係法律を改正する(以下略)。(「ワークブック法制執
務」法制執務研究会編/ぎょうせい)
A法の一部を改正する法律の施行に伴い、複数の条例を改正する必要がある場合は、「○○条例等の一部を改正する条例」又は「A法の一部を改正する法律の施行に伴う関係条例の整理(等)に関する条例」を制定し、複数の条例を一の条例で改正するのが原則です。
しかし、本市では、議会の委員会への付託先が問題になる場合や否決される可能性のある条例が含まれている場合には、原則どおりにいかないこともあります。そんなことがあるのかと思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、本市では、あるのです。そのような場合に、それを調整することも法規担当の仕事です。
本市では、様式の数が一つであれば「別記様式」と表示し、二つ以上であれば「様式第1号」、「様式第2号」……と表示することにしています。そして、一つの様式を細分して複数の様式を列記する場合には、「その1」、「その2」……と表示することにしています。
ローカルルールが支配する様式の改正ですが、様式第1号を細分し、様式第1号その1とその2とする場合は、どのようにするのでしょうか。
官報を検索してみました。
1 公職選挙法施行規則の一部を改正する省令(平成十年自治省令第一号)
(略)
別記第一号様式の見出し中「選挙人名簿」を「選挙人名簿等」に改め、同様式及び同様式備考3中
「抹(まつ)消」を「抹消」に、同様式備考5中「さしつかえない」を「差し支えない」に改め、同様式を同様
式その一とし、同様式その一の次にその二として次のように加える。
その二
(以下略)
2 船舶職員法施行規則等の一部を改正する省令(平成十一年運輸省令第二十四号)
(船舶職員法施行規則の一部改正)
第一条 船舶職員法施行規則(昭和二十六年運輸省令第九十一号)の一部を次のように改正する。
(略)
第十六号様式を第十六号様式その一とし、同様式に次のように加える。
第16号様式その2(第66条関係)
(以下略)
3 地方自治法施行規則及び市町村の合併の特例に関する法律施行規則の一部を改正する省令(平
成十四年総務省令第四十一号)
(略)
(市町村の合併の特例に関する法律施行規則の一部改正)
第二条 市町村の合併の特例に関する法律施行規則(平成七年自治省令第十一号。以下「合併規
則」という。)の一部を次のように改正する。
(略)
第三号様式を同様式その一とし、同様式にその二として次のように加える。
その二
(以下略)
4 海区漁業調整委員会委員の選挙等に関する省令の一部を改正する省令(平成十五年農林水産省
令第百二十七号)
(略)
別記第十六号様式を同様式その一とし、同様式の次に次の様式を加える。
その二
(以下略)
色々とつっこみどころはありますが、本市は、3によりました。
なお、この改正は、原動機付自転車の標識にいわゆるご当地ナンバープレートを追加したものです。
ほとんどの市では、生活保護法第19条第4項及び第55条の4第2項、児童福祉法第32条第2項、身体障害者福祉法第9条第9項、特別児童扶養手当等の支給に関する法律第38条第2項並びに地方自治法第153条第2項の規定により、市長の権限に属する事務の一部を福祉事務所長に委任しています。
生活保護法の一部を改正する法律(平成25年法律第104号)の施行に伴い、福祉事務所長事務委任規則の見直しを行いましたが、この規則、あまりデキが良くありません。複数の担当課で共管していることがその理由でしょうか。
各市の福祉事務所長事務委任規則を参照していて気になったのが、中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律第14条に規定する支援給付の実施に関する事務を福祉事務所長に委任する場合の規定ぶりです。同法による支援給付は、同条第4項の規定により、生活保護法の規定の例によるとされています。また、中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律の一部を改正する法律(平成19年法律第127号)附則第4条第2項において準用する施行前死亡者の配偶者の生活を支援する給付についても規定する必要があります。この場合、どのように規定するのが最も美しいのでしょうね。
市ごとに工夫が見られますが、個人的には、委任事務として「中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律第14条に規定する支援給付の実施(中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律の一部を改正する法律(平成19年法律第127号)附則第4条第2項において準用する場合を含む。)」と1号だけ建てるのが最も美しいと思います。
ついでにもう一つ重箱の隅をつついておくと、身体障害者福祉法における事務委任の根拠規定は、第9条第9項です。障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律(平成22年法律第71号)附則第44条で改正されています。念の為、御確認ください。
雨が上がって暑いです。暑いとアホなことを考えてしまいます。
「法令の各本条の前に置かれ、その法令の制定の趣旨、目的、基本原則を述べた文章を「前文」と」いいます。「前文は、具体的な法規を定めたものではなく、その意味で、前文の内容から直接法的効果が生ずるものではないが、各本条とともに、その法令の一部を構成するものであり、各条項の解釈の基準を示す意義・効力を有する」(「ワークブック法制執務」法制執務研究会編/ぎょうせい)とされています。そのためか、地方公共団体における条例では、とんでもない前文が登場することがあります。
この前文ですが、各本条の前以外に置かれた法律があったことを御存じでしょうか。海上衝突予防法(昭和52年法律第62号)による改正前の海上衝突予防法(昭和28年法律第151号)がそれです。同法では、第3章の章名の後に前文が置かれていました。
法律に実例があったのであれば、条例でも各本条の前以外の部分に前文を置いてみてはどうでしょうか。前文と合わせて、本則の中間や附則の後に置いたものを中文や後文と称すると、さらに注目を集めることができるかもしれません。議会での説明では、旧海上衝突予防法の例を挙げましょう。当該条例にハクが付きます。
まだまだ暑い日が続きます。くれぐれも御自愛ください。
ある地方公共団体から規則の改正方式について、こっそりと相談を受けたところ、この規則の冒頭が公布文ではなく、制定文になっていました。
「公布文とは、公布者の公布の意思を表示する文章をいい、公布する旨の文言、公布の年月日及び公布者の職・氏名から構成される。公布文は公布の際に公布される条例・規則の冒頭に付けられるものであり、したがって、条例・規則の一部を成すものではない。
制定文とは、制定者の制定の意思を表示する文章をいう。法律の場合は、全部改正法において既存の法律の全部を改正するものである旨を明らかにするために、政令の場合は、全ての政令において当該政令を制定することについての根拠を明らかにするために、題名の次に制定文が置かれる。条例・規則の場合も、全部改正条例・規則において、法律に倣って題名の次に制定文が置かれるのが一般である。そうして、これらの制定文は、いずれも当該法令・条例・規則の一部を成すものと考えられているが、その改正は行わないこととされている。」(「法制執務詳解」石毛正純著/ぎょうせい)
そのように理解していましたが、同書は、次のように続きます。
「* 省令の場合も、政令に倣って制定文が置かれるが、題名の前に置かれる。これに倣った規則の形式(3頁・30頁参照)をとる自治体もある。題名の前に置かれる制定文は、当該省令・規則の一部を成すものではないから、当該その改正ということもあり得ない。」
ということで調べてみると、結構な数の地方公共団体で採用されていました。ローカルルールと言ってしまえばそれまでですが、地方公共団体の規則と国の省令は、その性格を異にします。公布文の方が適当ではないでしょうか。
なお、本市では、令達文書のうち、規程形式によって公告するものを訓令といっていますが、訓令については、制定文を付すこととしています。
法令の本則は、一般的に「条」に区分されます。そして、その「条」を構成するものの一つに「付記」があります。
「付記」とは、例えば、次の道路交通法第7条の末尾に付された括弧書きのことをいいます。
(信号機の信号等に従う義務)
第7条 道路を通行する歩行者又は車両等は、信号機の表示する信号又は警察官等の手信号等(前
条第1項後段の場合においては、当該手信号等)に従わなければならない。
(罰則 第119条第1項第1号の2、同条第2項、第121条第1項第1号)
「付記」は、禁止規定や義務規定に違反した場合に、どのような罰則規定が適用されるのかがわかるように括弧書きで規定されたものですが、道路交通法にしかありません。条例では、おそらく例がないと思います。
ちなみに、道路交通法の一部を改正する法律(平成25年法律第43号)では、珍しい付記の改正方法を見ることができます。
いずれも時間的即時性を表す場合に用いられる用語ですが、「「遅滞なく」は、「直ちに」及び「速やかに」に比べると時間的即時性が弱い場合が多く、正当な又は合理的な遅滞は許されるものと解されている。「直ちに」と「速やかに」では、「直ちに」が時間的即時性が強く、一切の遅れを許さない趣旨で用いられる。これに比べると、「速やかに」は、「直ちに」よりは急迫の程度が低い場合に用いられる。
なお、「遅滞なく」及び「直ちに」の語を用いて規定されている場合には、遅滞により義務違反となるのを通例とするのに対し、「速やかに」の場合は訓示的な意味をもつにすぎないことが多い」(「ワークブック法制執務」法制執務研究会編/ぎょうせい)と解されているせいか、「直ちに」→「速やかに」→「遅滞なく」の順ではなく、「直ちに」→「遅滞なく」→「速やかに」の順に時間的即時性が弱くなると誤解している職員も見受けられます。
これらの用語、特に訓示的な意味合いの強い「速やかに」を用いる場合には、注意が必要です。本市の例規では、できる限り、確定期限によって定めるようにしています。それが分かりやすさであり、また、法令とは異なる例規の可能性であると考えるところです。
前掲書には、次のようにもあります。
「なお、昭和四〇年法律第四七号による改正前の銃砲刀剣類所持等取締法第一七条第一項にも、「すみやかに」の文言が用いられており、これについて、あいまいな規定であるとして違憲とされたこともある(もっとも、控訴審では破棄された(昭和三七年一二月一〇日大阪高等裁判所判決)。)。このようなこともあって、同項の規定は、昭和四〇年の改正で、現行の「二十日以内」に改められた。」
「「等」は、規定する事項が多い場合に、簡潔な表現にするために、主要なものを掲げて他は省略するときに用い」(「法制執務詳解」石毛正純著/ぎょうせい)られます。同書は、「等」の注意点として、次の3点を挙げています。
「@「等」に含まれるものは、「等」の前に掲げたものから類推される関係にあるから、「等」の前に掲げた事項から類推できないようなものまで「等」に含ませることのないようにしなければならない」
「A「等」に含まれる事項は必ずしも明確ではないので、住民の権利・自由に関わる規定や罰則規定には、「等」を用いるべきではない」
「B「等」の前に掲げた事項以外の事項もあることを示す趣旨で「等」を用いることがある。題名、章・節名、見出し、目的規定や趣旨規定、定義規定や略称規定などで「等」を用いる場合に多い」
ある日のヒアリング中。
S君「………。そやから、甲も対象になります」
自分「おい、甲は対象になれへんど」
S君「いや、対象ですて。A等の「等」で読むんですわ」
自分「あのな、このA等はな、○○法第○条に規定されてるA等やねん。で、○○法第○条を見るとな、
「A、B及びC(以下「A等」という。)」て略称してるねん。そやから、AとBとCをA等て言うてるんであっ
て、甲は入れへんのや」
S君「えー!そうなんですか?某市の担当者も「等」で読むんですわて言うてましたよ」
自分「………。法律で条文中に「等」が使われとったら、大体が略称か定義やねん。「等」で何でも読め
るて勘違いしてる職員も多いけど、「等」読むときは、気ィつけんとアカンわな」
「内閣法制局における審査」(自治体法制執務雑感)
コメントも含め、法規担当者にとっては、実に興味深い内容でした。こういう審査もあれば、とんでもない審査もあるのが市町村の法制です。現に本市では、一切の審査ができない条例案が法規審査に回ってくることがあります。これを審査というのかどうかはともかく、その意味は、………………………………御理解ください。
「市(町・村)税条例(例)及び市(町・村)国民健康保険税条例(例)の一部改正について」(平成25年6月12日付け総税市第29号)に次のような改正規定がありました。
「第四十七条の二第一項中「を当該年度の」の下に「初日の属する年の」を加え、同項第一号を削り、同項第二号を同項第一号とし、同項第三号を同項第二号とする。」
この場合は、「第四十七条の二第一項中「を当該年度の」の下に「初日の属する年の」を加え、第一号を削り、第二号を第一号とし、第三号を第二号とする。」とすると美しい改め文になります。「法制執務詳解新版U」(石毛正純著/ぎょうせい)425ページにも「字句の改正を行う「同条中」がかかっているものとして、号の削りと繰り上げを行う」とあります。
ちょっと興味を持ったので、官報情報検索サービスで検索してみると、次のようなものがありました。
「 児童手当法施行令の一部を改正する政令(平成24年政令第113号)
(略)
第十三条の見出しを「(法附則第二条第一項の給付についての予算決算及び会計令等の適用)」に改
め、同条第一項中「附則第六条第一項」を「附則第二条第一項」に改め、同項第一号を削り、同項第二
号を同項第一号とし、同項第三号中「及び第十七条」を削り、同号を同項第二号とし、同項第四号を同
項第三号とする。
(以下略)」
第3号中に字句の改正があるので、「第一項中」がかかっていない扱いにしたのかと思ったのですが、次のようなものもあります。
「 船員法の一部を改正する法律(平成24年法律第87号)
(略)
第七十一条第一項中「次の」を「次に掲げる」に改め、第一号を削り、第二号を第一号とし、同項第三
号中「海員」を「船員」に改め、同号を同項第二号とする。
(以下略)」
また、次のようなものもあります。
「 港湾の活性化のための港湾法等の一部を改正する法律(平成17年法律第45号)
(略)
(港湾運送事業法の一部改正)
第二条 港湾運送事業法(昭和二十六年法律第百六十一号)の一部を次のように改正する。
(略)
第六条の見出しを「(許可条件)」に改め、同条第一項中「免許」を「許可」に改め、同項第一号を削
り、同項第二号を同項第一号とし、同号の次に次の一号を加える。
(以下略)」
法制局が間違えたのか?それとも、ここまで徹底はされていないということでしょうか。
なお、前掲書の358ページには、「例2は、条・項中の字句の改正がなく各号の全部を改めるだけの場合に「第○条第○項各号を次のように改める」とする(「第○条第○項中各号を次のように改める」とはしない)ことを踏まえて、「同項各号を…」と引用する方式である。これに対して、例3は、条・項中の字句を改正する「同条第12項中」が「各号…」にもかかっているとみて、「同項」を引用することなく単に「各号を次のように改める」とする方式である。このような二通りの方式がとられていることは、条・項中の字句を改正するとともに当該条・項中のただし書・後段の全部を改める場合も、同様である」とありますので、どっちもOKということでしょうか。
半鐘さんの記事「題名を削る」を見て思い出したのが、地方自治法施行令等の一部を改正する政令(平成23年政令第235号)第1条中の「第二編第七章第三節及び第百九十条第三項を削る。」という規定です。「題名を削る」ほどのインパクトはないですが、これもめったにお目にかかれない改正規定ではないかと思います。
削られる前の第2編第7章第3節と第190条第3項は、次のとおりです。
第三節 雑則
(条例の制定改廃の報告)
第百七十四条の二十五の二 地方自治法第二百五十二条の十七の十一の規定による報告は、都道
府県にあっては二十日以内、市町村にあっては三十日以内にそれぞれ当該普通地方公共団体の長
がこれをしなければならない。
第百九十条 (略)
A (略)
B 都道府県の議会の解散の投票、議会の議員及び長の解職の投票並びに当該都道府県に関する
地方自治法第二百六十一条第三項の賛否の投票については、同法又はこの政令中特別の定がある
ものを除く外、町村に関する規定は、全部事務組合又は役場事務組合にこれを適用する。この場合に
おいては、公職選挙法第二百六十七条第二項及び公職選挙法施行令第百四十条第二項の規定を
準用する。
法令の一部を改正する場合は、一つの条ごとに一つの改正規定で行うことを原則としています。ただし、この原則については、相当な数の例外があります。この政令によると、章等とそこに含まれる条文の全部を削る場合で、後続する章等及びそこに含まれる条を繰り上げる必要のない改正であって、かつ、条・項・号を削る場合で、後続する条・項・号を繰り上げる必要がない改正とが連続するときは、この原則に対する例外として、二つ以上の条の改正を一つの改正規定で行うということのようです。
連続する3以上の条、項又は号中の同一の字句の改正をする場合に、当該連続する3以上の条、項又は号を指示するときは、「第○条(第○条第○項、第○条第○号、第○条第○項第○号)から第×条(第×条第×項、第×条第×号、第×条第×項第×号)までの規定中」と引用することとされています。
「「第○条から第×条まで中」と指示せず、「第○条から第×条までの規定中」と指示するのは、前者には表現上異和感があることによるものであろう。」(「ワークブック法制執務」法制執務研究会編/ぎょうせい)と考えられています。
では、連続する3以上の条、項又は号と他の条、項又は号中の同一の字句をまとめて改正する場合で、連続する3以上の条、項又は号が引用の最後でないときは、どのように表現するのでしょうか?
「この場合も「……までの規定」とするもの(例6の「第3条から第4条の2までの規定」や例9の「同条第1項から第3項までの規定」)と、単に「……まで」とするもの(例7の「第5条から第7条まで」や例8の「第31条第1項から第3項まで」)がある。「の規定」という語句を付け加えるのは、「まで中」という表現の違和感にあるから、引用の最後となる場合以外は、通常の「……まで」という表現で足りると思われる」(「法制執務詳解」石毛正純著/ぎょうせい)との見解があります。
法令上、どっちもありならば、短い方を選択したいです。
「法令における漢字使用等について」(平成22年11月30日付け内閣法制局長決定)
1−⑸ 常用漢字表にない漢字で表記する言葉及び常用漢字表にない漢字を構成要素として表記する
言葉並びに常用漢字表にない音訓を用いる言葉の使用については、次によるものとする。
ア 専門用語等であって、他に言い換える言葉がなく、しかも仮名で表記すると理解することが困
難であると認められるようなものについては、その漢字をそのまま用いてこれに送り仮名を付け
る。
【例】
暗渠(きょ) 按(あん)分 蛾(が) 瑕疵(かし) 管渠(きょ)……
昔、オアシスで例規原本を作成していたときは、行間を縮小した行を挿入して、添字機能を使って送り仮名を付けていました。ワードで例規原本を作成している今は、「専門用語等であって、他に言い換える言葉がなく、しかも仮名で表記すると理解することが困難であると認められるようなものについては、その漢字をそのまま用いる」こととしています。
ワードで例規原本を作成されている地方公共団体においては、漢字の送り仮名のみならず、模様どりによる改正やその場合の改行等々、苦労されていることと思います。
「法令番号とは、法令の種類及びその制定者別に、かつ、暦年ごとに、法令に付けられる番号をいう。したがって、毎年、法律の第一号があり、政令の第一号があることになる。内閣府令及び省令については、命令の制定者ごとに付けられるから、内閣府令第一号、法務省令第一号、農林水産省・経済産業省令第一号というようになる。そして、法令番号としては、当該法令が公布された暦年の元号を冠して、例えば「平成十九年法律第一号」等と表すが、これは、法律の番号であるから、法律番号ということになる。
法令番号は、公布の際に付されるものであるが、法令そのものの一部を成すものではない」(「ワークブック法制執務」法制執務研究会編/ぎょうせい)
このことは、地方公共団体の条例並びに規則並びにその機関の定める規則及びその他の規程で公表を要するものについても同様です。
法令番号や条例番号は、当該法令や条例を特定するための手段として付けられるものです。そうであるならば、地方自治法第252条の2の協議会、第252条の7に規定する機関等の共同設置及び第252条の14に規定する事務の委託における規約並びに第286条の一部事務組合の規約についても同様に考えられないでしょうか。
法令番号や条例番号が公布の際に付けられるものであるならば、協議会、機関等の共同設置及び事務委託の規約についても、告示の際に規約番号を付すべきではないかと考えられますが、関係する市町村ごとに告示日や番号が異なることが予想されます。また、一部事務組合の規約については、都道府県知事の許可番号を付している市町村もありますが、第286条第2項の規定により、知事宛て届出の場合もあります。
また、市町村ごとにローカルルールがあって調整の難しいところでもあります。
「法律で一定の字句について定義規定を設けた場合、その法律に基づく政令のうちに、法律上の定義を引用した上でその字句を用いている政令と法律上の定義を引用することなくその字句を用いている政令の二通りがあり、従来、必ずしもその使い分けの基準が明確ではなかった。
しかし、現在は政令中のその字句の解釈に疑問を生ずるおそれがなければ、その政令において法律上の定義を引用する必要はない」(「ワークブック法制執務」法制執務研究会編/ぎょうせい)とされています。
条例と規則の関係は、本来、法律とその法律に基づく政令の関係とは異なるものですが、条例の委任による規則又は条例を施行するための規則については、前掲と同様に解されます。
なお、関税法第2条は、「この法律又はこの法律に基づく命令において、次の各号に掲げる用語は、当該各号に掲げる定義に従うものとする」と規定しており、定義規定がこの法律に基づく命令にまで及ぶことを規定している珍しい例です。
「附則とは、当該法令の施行期日、経過措置、関係法令の改廃等に関する事項等当該法令の付随的事項を規定する部分の総括的名称であり」、一般的には、「@当該法令の施行期日に関する規定、A既存の他法令の廃止に関する規定、B当該法令の施行に伴う経過措置に関する規定、C既存の他法令の改正に関する規定、D当該法令の有効期限に関する規定、Eその他の規定」(「ワークブック法制執務」法制執務研究会編/ぎょうせい)の順に規定されます。
「その他の規定」としては、いわゆる検討条項、施行日前における事前行為、調整規定、本則の暫定措置や特例措置等が規定されます。
S君「特別職(非常勤)の報酬て、減額されてんと違うんけ?」
自分「おう。されてるで」
S君「例規集見たらされてへんやんけ」
自分「うん?あ、ここやねん。付則の第2項と第3項。ここに書いちゃあるんや。ほれ、「……から……ま
での間……同表に掲げる金額に100分の80を乗じて得た額とする」てな」
S君「おいや〜……何でまたこんなややこしいことすんねん?」
自分「期間限定の特例措置やからや。正味、報酬を減らしたんとは違うねんな。こういうとこに例規のス
トーリーっちゅーもんがあんねや」
S君「何やよう分からんけど、ややこしいのう……」
平成24年7月25日付(本紙第5849号)官報の正誤欄に次のような記載がありました。
「(誤)平成二十三年法律第 号 (正)平成 年法律第 号」
これが、後日、「平成二十三年六月三日公布法律第六十一号民法等の一部を改正する法律附則第三十九条中「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律(平成 年法律第 号)」は、平成○○年○○月○○日労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律の公布により「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律(平成○○年法律第○○号)」となった。」と正誤欄に記載されるのでしょう。
平成22年度の税条例の一部改正において、「地方開発事業団」を削る改正規定の施行日が「地方自治法の一部を改正する法律(平成22年法律第 号)の施行の日」とされながら、同法の公布が平成23年(地方自治法の一部を改正する法律(平成23年法律第35号))になってしまったことから、その改正の必要性について、話題になったことがありました。
このことについては、参議院法制局の法制執務コラム集に「法律番号」という記事がありますので、引用しておきます。
「また、法律案中、引用すべき法律が未公布であれば法律番号を引用することはできないので、(平成12年法律第 号)というように法律番号は空白のままにします。当該法律案が成立して公布された後にその中で引用された未公布の法律が公布された場合、空白となっていた法律番号を補充し、官報の正誤欄にその旨を掲載することとなっています。これについては、引用される法律番号もその法律の一部であるから、それを補完する場合も法律改正によらなくてはいけないのではないか、という疑問が生ずるかもしれません。しかし、この場合、立法者の意思として引用する法律は明らかですし、空白の部分には引用する法律の法律番号が入ることも明白です。また、このような処理をすることは慣行として確立しています。
ちなみに、法律案で未公布の法律を引用し、そのまま翌年になった場合、法律番号の年次の部分を改める必要が生じてきますが、過去には修正した例と正誤で処理した例とがあります。
なお、連合国占領軍等の行為等による被害者等に対する給付金の支給に関する法律の一部を改正する法律(昭和42年法律第2号)では、第3条の改正規定で法律番号を空白にしたまま自らを引用していますが、同法は昭和41年に成立したものの公布が翌42年になり、法律番号の空白の補充とともに年次の部分を改める必要が生じました。しかし、執行上支障がなかったためか結局改正後の法律の第3条中にある法律番号は、年次が改められることも空白が補充されることもなく現在に至っていますが、これは珍しい例といえるでしょう。」
公報を発行している場合は国に準じた取扱いが可能ですが、公報を発行していない場合はどうするのでしょうか。この場合も、やはり、掲示場に正誤表を掲示するのでしょうか?
「○○法の施行に伴う関係法律の整理に関する法律」が制定されるのは、ある法律の施行に伴い、多数の関係法律の改廃を必要とする場合で、この場合には、他法令の改廃事項のみを別に取り出し、これらを一括して単独法として規定する。最近では、ある法律の施行に伴う改正ではあるが必然的な改廃とまではいえないものも含めて「○○法の施行に伴う関係法律の整備(等)に関する法律」が制定されることが多い」(「ワークブック法制執務」法制執務研究会編/ぎょうせい)とされています。
本市では、あまり題名に「整理」や「整備」を用いず、「○○条例等の一部を改正する(等の)条例」とすることが多いです。「整理(整備)条例」とすることによって、一定の制限を受けてしまうのが表向きの理由ですが、本音は、カッコ良すぎて、本市の例規として使用するのには抵抗があるからです。また、やたらと題名が長くなってしまうこともあります。
例えば、株式会社ぎょうせいの「法令改廃情報」に「【更新版】住民基本台帳法の一部を改正する法律及び出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律〔例規整備〕」がアップされています。そこには、「4 複数例規をまとめて改正する場合の題名について」が追記されており、「住基改正法及び入管法等改正法の施行に伴い複数の条例の改正を行う場合において」、「「整理に関する条例」又は「整備に関する条例」とする場合」は、「次のような題名とすることが通常です」とされています。
「住民基本台帳法の一部を改正する法律及び出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に
基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律の施行
に伴う関係条例の整理に関する条例」
「整理(整備)条例」については、自治体ごとにローカルルールがあるかもしれませんが、正確には、このような題名になります。
同じ性質の名詞を列記することによって表が構成されている場合には、「その列記する名詞を読点でつなぐのではなく、1字空けて続けて書くこと」とされており、この場合における「字句の追加は、「「○○」の次に「△△」を加えるという方式はとられず、「「○○」を「○○ △△」に改める」という方式」がとられます。「1字分の空所の存在は、改正方法としては、図としてとらえる」(「法制執務詳解」石毛正純著/ぎょうせい)ということです。
これは、表中の字句を削除する場合も同様に考えられますが、削除する字句が最後に規定されている場合はどうでしょうか?この場合は、あえて「「○○ △△」を「○○」に改める」とする必要はなく、単に「「△△」を削る」とすれば足りるように思われます。実例としては、次のようなものがあります。
下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律(平成17年法律第
4号)
(略)
別表第五表……大田原簡易裁判所の管轄区域の欄中「黒磯市」を「那須塩原市」に改め、「西
那須町 塩原町」を削り、……
(以下略)
なお、表中の最初の字句を削除する場合に、「「△△」を削る」としているもの(例@)もありますが、この場合は、「「△△ ○○」を「○○」に改める」(例A)とする方が適当ではないかと思われます。空所は、後の字句がある場合には、その存在意義があると思うのです。
例@
国土交通省組織令の一部を改正する政令(平成14年政令第200号)
(略)
第二百十二条第一項の表中部運輸局の項中「富山県 石川県」を削り、……
(以下略)
例A
地方自治法第二百五十二条の二十二第一項の中核市の指定に関する政令の一部を改正する
政令(平成17年政令第204号)
附 則
(略)
(地方自治法第二百五十二条の二十六の三第一項の特例市の指定に関する政令の一部改正)
第三条 地方自治法第二百五十二条の二十六の三第一項の特例市の指定に関する政令(平成十二
年政令第四百十七号)の一部を次のように改正する
「函館市 盛岡市」を「盛岡市」に、「草加市 下関市」を「草加市」に改める。
(以下略)
理念型条例の勢いが止まりそうにありません。これも条例制定権の拡大なのでしょうか?
違います。そもそも、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律第1条の地方自治法の一部改正によって地方公共団体の条例制定権が拡大されたとされているのは、地方自治法第2条第2項が改正され、普通地方公共団体の事務が「地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるものを処理する」と規定されたことにより、自治事務であると法定受託事務であるとを問わず、法令に違反しない限りにおいて、法律の明示の委任を要せずに、条例を制定することができる(同法第14条第1項)とされたことによります。
条例制定権の拡大とは、何ら法的効果を有しない精神的な文章を羅列した作文を条例とすることではありません。予算というものが、ある政策目的を達成するために工事請負費や需用費等といった予算をつけるように、条例もそのようにあるべきではないでしょうか。
法令等や法制執務上のルールを無視して書きたい放題に書いたら、書いた者にとっては、さぞかし気持ちの良いものができるのでしょう。しかし、条文を作るという作業は、気持ちの良いものではありません。本来、条文を作るという作業は、怖いものなのです。
以前(2010年6月17日)、本市の文書法規担当主幹として最も重要な資質は、けんかに強いことであると書いたことがありました。矛盾するようですが、二番目に重要な資質を挙げるとすると、それは、臆病であるということです。
見出しは、各条ごとに付けるのが原則ですが、連続する2以上の条文をまとめて、その最初の条文の前にのみ付ける見出しを共通見出しといいます。
例規を改正する場合の見出しの引用については、「単独の条の見出しの場合には「第○条の見出し」とし、共通見出しの場合には「第○条の前の見出し」とする。また、条中の字句を改正する場合において「第○条中……」と引用するときの「第○条」には、「第○条の見出し」を含まない取扱いであり、条の全部を改める場合や削る場合において「第○条を……」と引用するときの「第○条」には、「第○条の見出し」を含む取扱いである」(「法制執務詳解」石毛正純著/ぎょうせい)とされていますが、共通見出しの場合には、「第○条を……」と引用するときの「第○条」にも、「第○条の前の見出し」は含みません。よって、共通見出しの付いている条の共通見出しを改めることなく、直後の条の全部を改める場合は、次のようになります。
第○条を次のように改める。
第○条 ……………………………………………。
共通見出しの付いている条の改正については、法制執務上の難易度もさることながら、それ以上に間違いやすいところです。そのため、何人もの高名なブロガーが記事にされていますので、紹介しておきます。
半鐘さん http://hanshoblog.blog50.fc2.com/blog-entry-153.html
kei-zu さん http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20090814
tihoujiti さん http://d.hatena.ne.jp/tihoujiti/20100418
hoti-ak さん http://d.hatena.ne.jp/hoti-ak/20090820
http://d.hatena.ne.jp/hoti-ak/20100423
等々
最後に、見出しの付いている条を改正することなく、見出しを共通見出しとし、その条の次に新たな条を追加する場合の実例を挙げておきます。
雇用保険法の一部を改正する法律(平成22年法律第2号)
(略)
附則第13条の見出しを削り、同条の前に見出しとして「(国庫負担に関する暫定措置)」を付し、同条の次に次の2条を加える。
第14条 (略)
第15条 (略)
(以下略)
例えば、
第○条 ………A……………。この場合において、…………………………。
を
第○条 ……… ……………。
とする場合には、どのようにしますか?
考えられる方法としては、次のとおりでしょうか。
@ 第○条中「A」を削り、同条後段を削る。
A 第○条中「A」及び後段を削る。
B 第○条前段中「A」を削り、同条後段を削る。
実例としては、
@ 漁業災害補償法施行令の一部を改正する政令(平成14年政令第254号)「第十四条中「及び養殖
施設」及び「中欄及び」を削り、同条後段を削り、……」
A 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律等の一部を改正する法律(平成15年法律第103
号)第3条の農産物検査法の一部改正「第八条中「第三条第二項及び」及び後段を削る」
B 刑法の一部を改正する法律(平成7年法律第91号)附則第14条の少年法の一部改正「第六十五
条前段中「刑法第二百条の罪以外の」を削り、同条後段を削る」
等があります。
本市では、Bを採用しています。「各号列記以外の部分中」(2008年6月9日付け記事参照)の用法と同様に、この方法が最も分かりやすく、適当であろうと考えられるからです。
いつも楽しみながら勉強させてもらっている半鐘さんの「半鐘の半死半生」の記事から
条例はどこまで・8
失礼ながら、「キツイ」を通り越して「ムゴイ」というのが偽らざる感想です。「地方公共団体の制定する条例は、憲法が特に民主主義政治組織の欠くべからざる構成として保障する地方自治の本旨に基き、直接憲法第94条により法律の範囲内において制定する権能を認められた自治立法にほかならない」(最高裁昭29.11.24・昭37.5.30)のであって、国法とともに国の法秩序を形成するものである以上、内部規範等を定めた一部の条例を除き、そこには、住民の権利義務について規律する法規的性質が必要であると考えるからです。果たしてこれが条例といえるのかどうか……
仕事というものに真剣に取り組めば、ある「思い」というものが生まれてくるように思います。医師には医師の、料理人には料理人の「思い」があるように、市職員には市職員の、例規屋には例規屋の「思い」があるのです。しょぼいけど譲られへんギリギリのもんが……
定義規定と略称規定は、その違いがはっきりとしません。「法制執務詳解」(石毛正純著/ぎょうせい)にも「定義規定は、用語の意義に社会通念上広狭の幅があり、又は解釈の余地があるという場合に、どのような意味でその用語を用いるのかを明らかにするために設けられるものであり、略称規定は、一定の長い表現を繰り返すことを避けるために、これを略して法文を簡潔にするために設けられるものである。定義規定と略称規定とは、以上のように区別されるが、そのいずれであっても、法文中の用語の意味内容を限定するという点からは共通の機能を有している面がある」とあります。
その定義規定としても、略称規定としても用いられる用語として、「特定○○」というのがあります。この「特定○○」という用語は、専門用語として法令ではしばしば使用されていますが、市町村例規の定義規定又は略称規定でその使用例を見かけることは、ほとんどありません。
市町村が独創的な条例を制定した場合、そこでの定義規定や略称規定には、メルヘンチックな用語が目に付きます。このような場合に、「特定○○」という用語をもっと使用していくべきではないかと考えています。
いつも勉強させてもらっている自治体法制執務雑感でhoti-akさんが興味深い指摘をされていました。
「最近、改正漏れがよく目に付くところですが、こうしたミスが多くなっているのは、例規の電子化が原因なのかもしれません。やや飛躍した考えかもしれませんが、そもそも改め文による改正方式は、デジタル化の時代にはあまり適さない改正方法なのかもしれません。」(「例規の過誤(その2)」)
いわゆる条項ずれなどの改正漏れを防ぐためには、例規のデジタル化が有効であると一般的には思われているのではないでしょうか。しかし、hoti-akさんも御指摘のように、実際は、デジタル化が進んだ結果、改正漏れが増加しているのではないかと思われるのです。
その原因というか、改め文方式とデジタル化の関係をうまく説明することはできませんが、それ以前の問題として、デジタル化によって例規を読むという最も基本的なことがおろそかになってしまい、それが法規担当者の能力の低下を招いているのではないかと感じています。
自らの戒めとして……
原則として、見出しは1条ごとに付けられますが、連続する2以上の条の内容が共通する場合には、これらの条の最初の条の前にのみ付けられることがあります。これを共通見出しといいます。
本市では、共通見出しはできるだけ使わないようにしています。見出しを付け忘れているのではないかと誤解されるおそれのあることがその理由です。また、共通見出しの付いている条を改正する場合は、その方式も少々ややこしいことになります。
「法制執務詳解」(石毛正純著/ぎょうせい)によると、「10条から成る本則において、第7条及び第8条の共通見出しとして第7条の前に見出しが付いている場合を例」として、「共通見出し及び第7条を削り、第8条以下を繰り上げるとともに、第8条に見出しを付ける場合には、次の例に示すように行う。
例
×第7条の前の見出し及び同条を削り、第8条に見出しとして「(………)」を付し、同条を第7条とし、第
9条を第8条とし、第10条を第9条とする。
* 例は、見出しを付した後に条の繰上げを行う方式である。これに対して、条の繰上げを行った後に見
出しを付ける方式もある(「第8条に見出しとして「(………)」を付し、同条を第7条とし」の部分を「第8
条を第7条とし、同条に見出しとして「(………)」を付し」とする。)。
なお、第7条から第9条までの共通見出しとして第7条の前に見出しが付いている場合で、共通見出
し及び第7条を削り、第8条以下を繰り上げるとともに、第8条の前に見出しを付けるときには、「第8条
を第7条とし、同条の前に見出しとして「(………)」を付し」とする(「第8条の前に見出しとして
「(………)」を付し、同条を第7条とし」とはしない。)」
とされています。
共通見出しとその直後の条を廃止する場合において、繰り上げた条に見出しを付けるときは、見出しを付けることと条の繰上げのどちらを先にしても良いとされていますが、繰り上げた条に共通見出しを付けるときは、条の繰上げを行った後に見出しを付けることとされていますので、注意が必要です。共通見出しは、その直後の条に従属するものではなく、第○条の前という場所に付けられていることに意味があるため、見出しを付けた後に、第○条を第×条に繰り上げるのは適当ではないということでしょうか。
ほとんどの地方公共団体では、罰則の定めのある条例を制定する場合は、事前に地方検察庁と協議し、「貴見のとおりで差し支えない」旨の協議書をいただくことが慣例になっています。協議の是非はともかくとして、条例の実効性を確保するためには、必要なことではないでしょうか(以前、某市の法規係長が「ウチは、市長の方針で検察協議せーへんことになってますねん。そやから、いっぺん、やってみたいですわ。」とおっしゃっていましたが、市長の代わった今は、どうしているのでしょうか。)。
実は、この根拠がはっきりとしません。そんな中、「自治実務セミナー43巻5号(平成16年5月号)」(第一法規)の「よりみち環境法」で、北村喜宣上智大学教授は、「「これが「本当の根拠」かどうかは、怪しいのであるが」と前置きをした上で、「こうした実務の開始であるが、「検察官が地方自治体の制定する条例のうち罰則の定めのあるものの立案等に関与するようになったのは、昭和26年4月1日付けで最高検察庁、高等検察庁及び地方検察庁に条例係検事が置かれてから」とされる。この措置は、法務府刑政長官通牒によるものであったが、その理由は、「一般的には地方自治体の条例は、国の法令に比べると技術的に未熟のうらみなしとしないので、罰則適用上不都合な点も多々ある」ことによる。「関係自治体から意見を求められた場合には条例係検事においてこれに協力して然るべき」という認識が、示されている」。その後、「この実務を当初担当していた「条例係検事」は、昭和34年2月26日付け法務大臣訓令「係検事に関する規程」により廃止されたが、条例審査は、「指導係検事の担当事務として引き継がれ、現在〔文書内容から推測すると、昭和61年以降のある時点〕に至っています。」という。」と書かれています。
おそらく、これが「本当の根拠」なんでしょうね。
法制執務は、決まり事の世界です。ただ、その決まり事の範囲内で、いくつかの答えがあり、その選択に立法者のセンスというか癖が反映される場合があります。例えば、一部改正の方法でいうと、次のようなケースです。
「一部改正法令の規定を立案するに際しては、元の法令の改正後の形をどうするかを考え、これと改正前の現在の形とを比較し、どの字句を削り、どこにどのような字句を加え、どの字句をどのように改めたらよいかを検討し、できるだけ簡潔な改正方式によって改正するようにすべきである。したがって、その場その場に応じて、加え方式又は削り方式と改め方式とのいずれを用いるべきかを吟味し、できるだけ簡単な方法を選ぶべきである。(ただ、問151及び前問でも触れたように、一つの言葉としてまとまっていると考えられるものについては、その一部のみを引用することは避けるべきである。)例えば、
「第○条 A、B、C及びDについて……」
とある文言を
「第○条 A、C、E及びDについて……」
と改めようとする場合に、
「第○条中「、B」を削り、「C」の下に「、E」を加える。」
とするより、
「第○条中「B、C」を「C、E」に改める。」
とする方が簡単である。
このように加え、削り方式をとるか、改め方式をとるかをその場に応じて選択し、一部改正法の規定は、できるだけ簡潔なものにすべきである。(なお、どの方式が簡潔であるかを判断するに当たり、従前は改正文の字数を数えてその少ない方を採用すべきであるということもいわれたが、最近では、必ずしも字数の多少に厳密にこだわらないこととされている。)」(「ワークブック法制執務」法制執務研究会編/ぎょうせい)。
自分は、相変わらず、字数の少ない方を採用しています。理由は、説明しやすいからですが、そんな質問をされた経験はありませんので、これからは、字数の多少にこだわらないようにしようかと考えています。
法令において外国の国名等を表記する場合は、「表現される対象の同一性を害しない範囲で熟した語(例えば「香港」)があれば、漢字を用いることもあるが、通常は、片仮名書きで示されることが多い」(「ワークブック法制執務」法制執務研究会編/ぎょうせい)とされています。
市町村の例規で外国の国名等を表記する場合は、法令と比べると、そう多くはありません。そういう場合は、機械的に法令の表記に合わせればよいのですが、参考までに、「実務立法技術」(山本庸幸著/商事法務)には、次のような記述があります。
「法令中において、外来語や外国の地名・人名を書き表わす場合の基準としては、国語審議会の答申「外来語の表記」があり、その原則的事項にはおよそ次のようなことが定められている。
「一 語形やその書き表し方については、その慣用が定まっているものはそれによる。
二 国語化の程度の高い語は、第一表に示す仮名で書き表し、その程度がそれほど高くない語や地
名・人名のようにある程度外国語に近く書き表わす必要のある語は、第二表に示す仮名で書き表
わす。この場合の第一表には、ア、イ、ウ……、ガ、ギ、グ……、パ、ピ、プ……、キャ、キュ、キ
ョ……、ン、ッ、ー、シェ、ツァ、デュ……」が示され、第二表には、「イェ、ウィ、クャ、ツィ、トゥ、グァ、
ドゥ、ヴァ、テュ、フュ、ヴュ」などが示されている。」
しかしながら、この方式で外国の国名や地名を表記すると、最近国内で使われている慣用的な表記とあまりにも違いがありすぎるということで、平成一五年には在外公館が置かれている国名と地名などについて、たとえば「ヴィエトナム」→「ベトナム」、「ジョルダン」→「ヨルダン」、「ブラッセル」→「ブリュッセル」にそれぞれ改めるような法律と政令の改正が行われた。」
ちなみに、外国の国名及び地名の表記の整理のための関係政令の一部を改正する政令(平成15年政令第125号)から他の事例を拾ってみると、「アルゼンティン」→「アルゼンチン」、「サウディ・アラビア」→「サウジアラビア」、「チェッコ」→「チェコ」、「ニュー・ヨーク」→「ニューヨーク」、「ノールウェー」→「ノルウェー」などや、中には、「連合王国」→「英国」というものまでありました。
平成15年の改正ですから、ついこの前まで、法令上は、「アルゼンティン」、「サウディ・アラビア」、「チェッコ」等々と表記されていたということになります。
「ワークブック法制執務」(法制執務研究会編/ぎょうせい)には、「号について「削除」の方式をとるのは、号の移動を行うと当該移動をした号を引用している他の条文又は他の法令が多数ある場合にそのすべてについて改正を行う必要が生じ、これが非常に煩わしいような場合とすべきものであるから〈問228 参照〉、そのような場合に該当する場合においては、「一 削除」とすることが許されないわけではない。しかし、実際上は、号について、このような場合に該当する例は通常考えられないし、仮にあったとしても、最初の号から「削除」とすることは、余り見栄えのよいものではないから、そのような改正が行われることはほとんどない」とあります。
逆に言うと、レアケースとして、「一 削除」が存在するということですね。検索してみると……ありました。特定非営利活動促進法第27条第1号が「一 削除」となっています。ということは、「第一条 削除」、「別表第一 削除」又は「様式第一号 削除」というのもありなのでしょう。見栄えを気にするならば、これらの規定の方がよくないように思うのですが……検索してみました。
身体障害者福祉法施行令が「第一条 削除」に、森林法施行令が「別表第一 削除」に、老齢福祉年金支給規則(省令ですが……)が「様式第一号 削除」になっています。
事例があるというだけで、あまり見習うべきものではないのでしょうね。
「ある法令の文章中で最も近い前の場所に表示された条、項、号、年、月等の字句をうけて、厳密に同一の対象であることを示す場合に用いられるのが、「同」である」(「ワークブック法制執務」法制執務研究会編/ぎょうせい)。
法令検索をしていると、次のような規定を見つけました。
○悪臭防止法の一部を改正する法律(平成七年法律第七十一号)
附 則
(経過措置)
第二条 改正前の第三条の規定により指定された規制地域は、改正後の第三条の規定により指定され
たものとみなす。
2 改正前の第四条の規定により定められた規制基準は、改正後の第四条第一項の規定により定めら
れたものとみなす。
気になったのが「改正後の第三条」及び「改正後の第四条第一項」という規定です。改正されているので、同一の対象ではないということで「改正後の同条」及び「改正後の同条第一項」とはしないのかと思ったのですが、さらに検索したところ、次のような事例がありました。
○踏切道改良促進法の一部を改正する法律(平成八年法律第二十六号)
附 則
(経過措置)
2 この法律の施行前にした改正前の第三条第一項又は第二項の規定による踏切道の指定は、改正
後の同条第一項又は第二項の規定に基づいてしたものとみなす。
うーん……この違いは、何なのでしょうか?
「法令の附則で既存の法令の一部改正をするのは、その法令が当該既存の法令の一部改正を行うのが直接の目的ではなく、新たな法規の定立又は規定の改廃を目的として立法が行われる場合において、それに伴って既存の他法令について改正する必要が生ずるときにおいてである」)「ワークブック法制執務」法制執務研究会編/ぎょうせい)とされています。
市町村によっては、部課長が所管外の条例を議会で説明する必要が生じることから、一の条例で複数の条例を改廃するのを嫌がるところもありますが、こうすることによって、附則で改正される条例の改正理由が明確になります。
では、例えば、A条例の一部を改正する条例によって、B条例の一部を改正する必要(これをB1とします。)が生じた場合で、同一議会にB条例の一部を改正する条例が提案されており、この条例によって、B1をさらに改正する必要(これをB2とします。)が生じたときは、どうするのでしょうか。
@ A条例の一部を改正する条例附則でB1を改正し、B条例の一部を改正する条例でB2を改正
A A条例の一部を改正する条例附則を2段ロケットとし、B1を改正後、B2を改正
B B条例の一部を改正する条例を2段ロケットとし、B1を改正後、B2を改正
スジは、@なんでしょうね。ウチは、Aでやっちゃいましたが……
市(町・村)税条例(例)の一部を改正する条例(例)の附則には、必ずといっていいほど、一般的経過措置として「別段の定めがあるものを除き、……」という規定が置かれています。
「ワークブック法制執務」(法制執務研究会編/ぎょうせい)によると、「「別段の定め」とは、当該条項で定められているのとは異なる趣旨の定め(規定)をいう。「別段の定め」が「特別の定め」とされることもあるが、両者で異なるところはない」とされており、また、「次の例一でいえば、不正競争防止法(平成五年法律第四七号)は、不正競争防止法(昭和九年法律第一四号)の全部を改正するものであるが、その附則第二条は、経過措置の原則を定め、かつ、「特別の定め」の存在を予定しているところ、同法附則第三条以下は差止請求権、損害賠償等に関する経過措置について定めており、附則第二条にいう「特別の定め」に当たるわけである。このような関係を、例二に示すように、「この附則に別段の定めがある場合を除き」として明示することが、最近では多くなっている。
■例一■
○不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)
附 則
(経過措置)
第二条 改正後の不正競争防止法(以下「新法」という。)の規定は、特別の定めがある場合を除いて
は、この法律の施行前に生じた事項にも適用する。ただし、改正前の不正競争防止法(以下「旧法」と
いう。)によって生じた効力を妨げない。
第三条 新法第三条、第四条本文及び第五条の規定は、この法律の施行前に開始した次に掲げる行
為を継続する行為については、適用しない。
(以下略)
■例二■
○所得税法等の一部を改正する等の法律(平成十八年法律第十号)
附 則
(たばこ税の特例に関する一般的経過措置)
第百五十三条 この附則に別段の定めがあるものを除き、第十三条の規定(租税特別措置法第八十八
条の改正規定及び同法第八十八条の二の改正規定(「平成十八年三月三十一日」を「平成十九年三
月三十一日」に改める部分を除く。)に限る。)の施行前に課した、又は課すべきであったたばこ税につ
いては、なお従前の例による。」とあります。
なお、同条例(例)の附則には、税目毎に経過措置が規定してありますが、一般的経過措置には、「別段の定めがあるものを除き」と規定されているもののほか、「第△項に定めるものを除き」と規定されているものがあります。
これは、「自治実務セミナー第35巻第9号」(良書普及会)に掲載された「条例改正の実例手引き(六・完)」によると、次のとおりです。
「〔例32〕平成八年度改正法附則第十条第一項及び第二項
(事業所税に関する経過措置)
第十条 別段の定めがあるものを除き、新法の規定中事業に係る事業所税(新法第七百一条の三十二
第一項に規定する事業に係る事業所税をいう。以下この項、第三項及び第六項並びに附則第十三条
第二項において同じ。)に関する部分は、施行日以後に終了する事業年度分の法人の事業及び平成
八年以後の年分の個人の事業(施行日前に廃止された個人の事業を除く。)に対して課すべき事業に
係る事業所税について適用し、施行日前に終了した事業年度分の法人の事業並びに平成八年前の
年分の個人の事業及び平成八年分の個人の事業で施行日前に廃止されたものに対して課する事業
に係る事業所税については、なお従前の例による。
2 第四項に定めるものを除き、新法の規定中新増設に係る事業所税(新法第七百一条の三十二第二
項に規定する新増設に係る事業所税をいう。以下この項及び第四項において同じ。)に関する部分は、
施行日以後に行われる事業所用家屋の新築又は増築に対して課すべき新増設に係る事業所税につ
いて適用し、施行日前に行われた事業所用家屋の新築又は増築に対して課する新増設に係る事業所
税については、なお従前の例による。
一般的経過措置と異なる経過措置を講じるべきものが複数あれば「別段の定めがあるものを除き」とし(〔例32〕中の事業に係る事業所税)、一般的経過措置と異なる経過措置を講じるべきものが一つしかなければ「第△項に定めるものを除き」とする(〔例32〕中の新増設に係る事業所税)こととしている。過去は(最近になるまで)必ずしも統制がとれていなかったが、今次はこのように考える原則を立てたところである。」
どこの市町村も、同条例(例)を参考にして税条例の一部を改正する条例を制定されると思いますが、4月1日施行分のみを専決処分した場合(それがスジだと考えています。今回は、6月1日施行分も専決処分しましたが)、「別段の定めがあるもの」が「第△項に定めるもの」になったり、なくなったりするケースがありますので、注意が必要です。
「「することができる」は、一定の行為をすることが可能であることを表す場合に用いる。一定の行為をするかしないかの裁量権を付与する場合と、一定の行為をする権利又は能力を付与する場合との、2通りの用い方がある」(「法制執務詳解」石毛正純著/ぎょうせい)とされています。では、後者の場合、「することができる」からといって、「しても・しなくても」どちらでもよいのでしょうか。
「法令用語の基礎知識」(田島信威著/ぎょうせい)には、次のようにあります。
「「することができる」というのは正に権能を与えたものであるが、本来の職務上の義務が別にあれば、してもしなくてもよいというわけにはいかなくなる。刑事訴訟法第213条には「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる」とある。権能の面でとらえるならば、現行犯人であれば、逮捕状なくして逮捕しても刑法第230条の逮捕罪は成り立たないということが定めているとみることができる。義務の面からみたらどうなるか。現行犯人をみかけた場合に、通りがかりの一般人ならば、手出しをしないで見過ごそうとも、勇を鼓して逮捕しようとどちらでもいいであろう。しかし、それが勤務中の警察官であったならば、「することができる」だからしてもしなくてもいいというわけにはいかない。黙って見過ごしたら職務上の義務を怠ったものとされるであろう。
すなわち、「することができる」として権能を与えられている場合でも本来の職務や地位などを勘案し、あるいは法律の建前や規定の趣旨などから、単に権能があるだけではなく、義務もあると解さなければならない場合もあるということである。」
次の場合は、どうでしょうか。
「普通地方公共団体の議会が成立しないとき、第113条ただし書の場合においてなお会議を開くことができないとき、普通地方公共団体の長において議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき、又は議会において議決すべき事件を議決しないときは、当該普通地方公共団体の長は、その議決すべき事件を処分することができる。」(地方自治法第179条第1項)
「普通地方公共団体の議会の権限に属する軽易な事項で、その議決により特に指定したものは、普通地方公共団体の長において、これを専決処分にすることができる。」(同法第180条第1項)
この時期になると、どこの市町村も専決処分を視野に入れて仕事をしているかと思いますが、本市の場合、定例化した市税条例の一部改正条例などを除き、なかなか市長が専決処分してくれません。その理由は、「(政治的に)でけへん」という理解できないものです。しかし、専決処分の要件に該当し、その必要があるならば、市長には、専決処分しなければならない責任があるのではないかと思うのです。
なお、第180条第1項の規定による専決処分についても、「できる」規定であることから、事件によっては、議決を経ている市町村があると聞いたことがあります。
法令や例規の条には、「その内容の理解と検索を容易にするため、見出しを付けるのが通例」です。また、「一つの条は、通常ワンセンテンスにされるが、二つ以上のセンテンスにされることもある。この場合に、その二つ以上のセンテンスが、条文の段落としての性質を有するときは、それぞれ別行にして書くこととされ、この別行にして書かれた部分を、「項」という。「項」には、第1項を除き、項番号が付けられ」(「法制執務詳解」石毛正純著/ぎょうせい)ます。
ただし、古い(おおむね昭和23年以前)法令の条には、見出しや項番号が付されていないものもあります。このような場合の改正方法は、例えば、次のようになります。
地方自治法の一部を改正する法律(平成二十年法律第六十九号)
地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)の一部を次のように改正する。
第百条第十一項の次に次の一項を加える。
議会は、会議規則の定めるところにより、議案の審査又は議会の運営に関し協議又は調整を行うた
めの場を設けることができる。
(略)
第二百三条第一項中……(略)……同条を第二百三条の二とし、第八章中同条の前に次の一条を加
える。
第二百三条 普通地方公共団体は、その議会の議員に対し、議員報酬を支給しなければならない。
普通地方公共団体の議会の議員は、職務を行うため要する費用の弁償を受けることができる。
普通地方公共団体は、条例で、その議会の議員に対し、期末手当を支給することができる。
議員報酬、費用弁償及び期末手当の額並びにその支給方法は、条例でこれを定めなければならな
い。
(以下略)
この法律による改正後の地方自治法を地方自治小六法(学陽書房)で見てみると、第100条第12項には「K」の項番号が、第203条には「〔議員報酬及び費用弁償〕」の見出しと項番号「A、B、C」が付されていますが、これは、同書の編集者が、利用者の検索等の便宜を図るために付けたものであって、本来、法令に付されている見出しや項番号とは異なるものです。
ちなみに、同書の凡例には、次のようにあります。
【条文見出】
本書の編集者がつけた条文見出しは、〔 〕を附して示し、法令自体についている( )の見出しと区別した。
【項番号】
項数の附されていない法令にあっては、検出の便宜上、編集者においてそれぞれ項数を附したが、最近の法令形式の2・3等と区別するため、A・Bとした。
「附則の形式には、項建てのものと条建てのものとがあり、更に、条建てのものには、附則において新たに第1条から始まるものと本則と通し条になっているものとがある。もっとも、本則と通し条になっているものは古い法令においてであり、現在は通し条とすることはしない取扱いである」(「法制執務詳解」石毛正純著/ぎょうせい)。
「通し条」とは、例えば、次のようなものです。
○○○法
第1条 …………………………………………。
第2条 ………………………………。
第3条 …………………………。
附 則
第4条 ………………………。
第5条 ……………………………………。
市町村の例規においては、通し条の附則は、ほとんどないであろうと思われます(ちなみに、本市にはありません。)が、市町村になじみの深い法律ですと、地方財政法の附則が通し条になっています。
この通し条の附則中の条文を引用する場合は、「単に「第○条」と表現する」(「ワークブック法制執務」法制執務研究会編/ぎょうせい)こととされています。
地方交付税法等の一部を改正する法律(平成21年法律第10号)第3条で地方財政法が改正され、いわゆる第三セクター等改革推進債が発行できるようになりました。この根拠条文は、地方財政法第33条の5の7なのですが、「地方財政法附則第33条の5の7」と表現している例がありました。市町村の例規において、実例がないゆえのミスだと思われます。
「条例・規則の題名には、どの都道府県・市町村の条例・規則であるかを明らかにするために、当該都道府県名・市町村名を冠するのが一般である。ただ、題名が長くなるものや法律の規定を施行するための規則のように、都道府県名・市町村名を冠すると語調が悪くなる場合には、都道府県名・市町村名を冠しないことが多いようである」(「法制執務詳解」石毛正純著/ぎょうせい)。
その他、例えば大阪府などは、職員の勤務時間条例や給与条例のように、直接住民に関係しないものについては、府名を冠しないこととしています。では、大阪府の例規を参考にしているであろう本市において、なぜ直接住民に関係しない人事関係の例規にさえ、市名を冠したり、冠しなかったりするものが混在するのでしょうか。
おそらく、当時は法規審査が機能していなかったからでしょう。準則等として示された題名が「○○市A条例」ならば市名を冠し、「A条例」ならば市名を冠せずに作成された原案が、そのまま通ってしまったからだと思われます。
なお、条例・規則の題名は、その内容を的確かつ簡潔に表すものでなければなりません。「地方公務員のための法制執務の知識」(山本武著/ぎょうせい)では、次のように述べられています。
「「簡潔であること」と「内容を的確に表現すること」という2つの要請を同時に満足させるような題名をつけようとするには、どのような点に留意すればよいだろうか。
その要点は、次のとおりである。
まず、第1点は、題名は、すべて漢字のみを用いて書き、漢字・ひらがなまじりの題名をなるべく避けることである。この点に注意すれば、例えば、「職員の給与に関する条例」という題名なども、必然的に、「職員給与条例」というような題名となろう。この場合、漢字のみを用いると内容を的確にいい表せないようなときは、動名詞をおり込めばよい。例えば、「監査委員条例」という題名では内容が不明であるならば、「監査委員設置条例」というように工夫すればよい。「公害条例」よりは「公害防止条例」の方が適切であることはいうまでもない。
第2点は、読点「、」はなるべく避けることである。この点に注意すれば、例えば、「集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例」、「○○基金の設置、管理及び処分に関する条例」という題名は、それぞれ、「公安条例」、「○○基金条例」というような題名となったであろう。」
また、「自治体法務の備忘録」でkei-zuさんが「法律名を「開く」」という記事を書かれています。こちらもなかなか興味深いです。
表の横の区切りを改める場合は、改正箇所を「部・款・項」で特定して行う方式と、改正箇所を「 」でとらえて行う方式とがあります。
別表(第○条関係)
┌─────┬────────────┐
│ A │ …………………………… │
├─────┼────────────┤
│ B │ …………………………… │
├─────┼────────────┤
│ C │ …………………………… │
├─────┼────────────┤
│ D │ …………………………… │
├─────┼────────────┤
│ E │ …………………………… │
├─────┼────────────┤
│ F │ …………………………… │
└─────┴────────────┘
を
別表(第○条関係)
┌─────┬────────────┐
│ A │ …………………………… │
├─────┼────────────┤
│ E │ …………………………… │
├─────┼────────────┤
│ X │ …………………………… │
├─────┼────────────┤
│ Y │ …………………………… │
└─────┴────────────┘
に改める場合
自分なら、
「別表Bの項からDの項までを削り、同表中
「 ┌─────┬────────────┐
│ F │ …………………………… │
└─────┴────────────┘」
を
「 ┌─────┬────────────┐
│ X │ …………………………… │
├─────┼────────────┤
│ Y │ …………………………… │
└─────┴────────────┘」
に改める。」
とするのですが、どのようにするのが、最も経済的で、かつ、分かりやすいのでしょうね。
まさか、「別表を次のように改める。」とか。
2の条例を1の一部改正条例の本則で改正する場合は、原則として「A条例及びB条例の一部を改正する条例」という題名を付け、3以上の条例を1の一部改正条例の本則で改正する場合は「A条例等の一部を改正する条例」という題名を付けることとされています。
しかし、「例外として、A法とA法の一部を改正する法律の二法のそれぞれ一部を改正する法律については、A法の一部を改正する法律の一部改正部分が当該法律の附則についてのそれであり(当該法律の本則は、いうまでもなく、A法の一部を改正するもので、その施行によってA法に溶け込んでしまっている〈問136 参照〉。)、実質的にみれば、A法の一部と考えてもよいから、わざわざ法律の題名において、A法の一部を改正する法律を改正するものであることを明示するほどのこともなく、題名の簡潔性の要請もあるので、次の例に示すように、「A法等の一部を改正する法律」という題名を付けること」(「ワークブック法制執務」法制執務研究会編/ぎょうせい)とされています。最近の事例では、「国会議員の秘書の給与等に関する法律等の一部を改正する法律(平成21年法律第89号)」などがあります。
また、一部改正と廃止を行う場合には、「A条例の一部を改正する等の条例」という題名を付けることとされています。
では、A条例の一部を改正する条例(平成○年条例第○号)とA条例の一部を改正する条例(平成×年条例第×号)の一部を改正する場合は、どのような題名を付けるのでしょうか。検索してみると、「恩給法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律」(恩給法の一部を改正する法律(昭和28年法律第155号)と恩給法等の一部を改正する法律(昭和51年法律第51号)の一部改正)というのがありましたので、この場合は、やはり「A条例の一部を改正する条例等の一部を改正する条例」という題名を付けるのが正しいのでしょう。
2段ロケット方式とは、「一つの条例の一部改正を2条以上に分けて行うものである。例えば、ある条例の一部を第1条で改正し、この改正について第2条における改正に先行した施行期日を定め、次に第2条で同一の条例につき第1条における改正が溶け込んだ形のものを更に改正することとし、その施行期日は第1条の施行期日より後の日とする」(「法制執務詳解」石毛正純著/ぎょうせい)改正方式で、条例番号は第1条にのみ付し、各条に見出しを付さないとされています。「実務立法技術」(山本庸幸著/商事法務)では、その施行が何段階にもわたる場合もあることから、多段階施行条方式と称しており、本市においても3段ロケット方式の例があります。
[例]
第○条第2号を削り、同条第3号中「A」を「B」に改め、同号を同条第2号とする。
(旧)第○条 …………………………………………………………………………………。
(1) …………………
(2) ………………………
(3) …………A…………
(新)第○条 …………………………………………………………………………………。
(1) …………………
(2) …………B…………
1 第○条第2号を削り、同条第3号を同条第2号とする改正規定が平成21年9月1日から施行され、第○条第3号中「A」を「B」に改める改正規定が同年12月1日から施行される場合
2 第○条第3号中「A」を「B」に改める改正規定が平成21年9月1日から施行され、第○条第2号を削り、同条第3号を同条第2号とする改正規定が同年12月1日から施行される場合
1の場合は、平成21年9月1日に第○条第2号が削られ、同条第3号が同条第2号とされていることから、同年12月1日には同条第3号が存在しませんので、第○条第3号中「A」を「B」に改めることはできません。よって、この場合には、2段ロケット方式によらなければならないことになります。
一方、2の場合は、平成21年9月1日に第○条第3号中「A」を「B」に改めた後、同年12月1日に第○条第2号を削り、同条第3号を同条第2号としても齟齬が生じませんので、この場合には、2段ロケット方式による必要はありません。
しかし、平成19年の市長の資産等の公開に関する条例の一部改正では、郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律と証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の施行に合わせて、2段ロケット方式により改正を行った市町村がありました。確か、2段ロケット方式による必要はなかったと記憶しています。ただし、分かりやすさということを考えた場合、2段ロケット方式をローカルルールとして活用してみるのも面白いのではないかと思います。
平成21年から例規原本作成用のワープロソフトをワードに変更しました。ソフトの変更は以前から考えていたのですが(2007年12月26日付けブログ参照)、今の庁内のOA環境等を考え、今年から思い切って変更してみました。
以前使っていたオアシスは、独自のフォントを使用していますので、ワードにすると、同じ10.5ポイントでもサイズが微妙に小さくなったような感じを受けます。また、題名は、14ポイント(オアシスの3分の4拡大機能を使用。10.5×4/3=14)にすると大き過ぎますので、13ポイントにしました。
出来上がりをこれまでと同じものにしようとしているのですが、ソフトが変わると、当然、機能も変わります。特に、けい線の使い方、句読点のぶら下げ方、外字やイメージデータの取扱いなどはまったく違いますので、結構難儀しています。
一般文書では以前からワードを使っていたのですが、例規文書を作成してみると、英字用のソフトやな〜と改めて感じています。
「鳥取県の平井伸治知事は19日、批判が相次ぎ施行されなかった人権侵害救済条例を廃止する一方、人権相談窓口の充実などを盛り込んだ「人権尊重の社会づくり条例」改正案を2月定例県議会に提案した。専門機関同士の連携を強めるとともに、教育、福祉などの専門相談員を増やし、人権を尊重するためのネットワーク構築を目指す。
人権侵害救済条例は平成17年10月に全国で初めて制定。人種差別や虐待、セクハラ(性的嫌がらせ)などを禁止し、加害者が勧告に従わない場合、過料など罰則も設けた。
しかし直後から、「人権侵害の定義があいまい」「表現の自由を侵害するおそれがある」などとする批判が法曹界などから続出。施行前の18年3月に停止されていた」(2月19日付け産経新聞夕刊)。
鳥取県人権侵害救済推進及び手続に関する条例は、鳥取県人権侵害救済推進及び手続に関する条例等の停止に関する条例により、その施行が停止されていました。珍しいケースだと思うのですが、条例の停止とは、何でしょうか。
「「法令の廃止」に似て非なるものに、「法令の停止」がある。
「法令の停止」とは、一定期間法令の効力を停止させて働かない状態に置くことをいう。
法令がまったく適用されなくなるという点で「法令の廃止」と似ているが、「法令の停止」の場合には、法令としては存在し、将来法令の効力を停止している法令が廃止されればその効力が復活することになるという点で、「法令の廃止」とは異なるものである。
「法令の廃止」の例としてよくあげられるものに「陪審法(大正12年法律第50号)」がある。
陪審法は昭和3年に施行されたが、陪審制度は国情に合わない等の理由により、昭和18年に至って、「陪審法の停止に関する法律(昭和18年法律第88号)」によってその施行を停止された。したがって、陪審法は現在でも法律として存在するのであり、「陪審法の停止に関する法律」が廃止されれば、その効力が復活するのである(もっとも、陪審法は、旧刑事訴訟法時代に制定されたものであるから、そのままの形で効力を復活させ、適用することができるかどうかは問題があろう)。
なお、右の陪審法のほかに、その効力が停止された法律の例として、「公立高等学校定時制課程職員費国庫補助法(昭和23年法律第134号)」と「新たに入学する児童に対する教科用図書の給与に関する法律(昭和27年法律第32号)とがある。この二つの法律は、国の財政の健全化及び中央地方を通ずる財政調整の見地から、後日適当の措置をとるまでの間の臨時的な措置として、昭和29年に「補助金等の臨時特例等に関する法律(昭和29年法律第129号)」によってその施行を停止されたものであるが、いずれも、その後効力を復活することなく廃止されている(後者の法律は、昭和31年に「就学困難な児童のための教科用図書の給与に対する国の補助に関する法律(昭和31年法律第40号)」附則第2項によって、前者の法律は、昭和60年に「国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律(昭和60年法律第37号)」第13条によって廃止された」(「立法技術入門講座3 法令の改め方」河野久編著/ぎょうせい)。
鳥取県人権尊重の社会づくり条例の一部を改正する等の条例を見るまで知らなかったのですが、停止された条例を廃止する場合は、停止する条例も廃止した上で、所要の改正を行うんですね。なるほど、就学困難な児童のための教科用図書の給与に対する国の補助に関する法律と国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律を見ても、停止する法律を廃止し、所要の改正を行っています。
先日、洋々亭さんのフォーラムで、公の施設の管理を指定管理者に行わせる場合、「することができる」と規定するべきか、それとも「するものとする」と規定するべきかということが話題になっていました。どちらを採用するかは、当該地方公共団体ごとの考え方によるものですが、楽しく読ませていただきました。
「することができる」は、「一定の行為をすることが可能であることを表す場合に用いる。一定の行為をするかしないかの裁量権を付与する場合と、一定の行為をする権利又は能力を付与する場合との、2通りの用い方」があります。また、「するものとする」は、「「しなければならない」よりは義務付けの感じが弱く、ある原則なり方針なりを示すという場合に用いる(「するものとする」は、解釈として、合理的な理由があればしなくてもよいという意味も出てくるので、その用い方には注意する必要がある。)」(「法制執務詳解」石毛正純著/ぎょうせい)とされています。
そして、地方自治法第244条の2第3項は、「普通地方公共団体は、……「指定管理者」……に、当該公の施設の管理を行わせることができる」と規定しています。これは、普通地方公共団体にその権限を付与しているものと解されます。
自分は、条例に「市長は、(公の施設)の管理を指定管理者に行わせることができる」と規定することは、普通地方公共団体に与えられた権限を市長に委任したものであると考えています。また、「(公の施設)の管理は、指定管理者に行わせることができる」と規定することは、法律で規定されていることを条例で2度書きしているだけで、その必要性が認められません。
これらのことから、本市では、指定管理者制度を導入しようとしている公の施設の条例については、その方針を示すため、「(公の施設)の管理は、指定管理者に行わせるものとする」と規定することにしています。
「県民にとって分かりやすい条例等の改正方式にする、という目的で導入した新旧対照方式については、県議会で審議をする議員には、議員提案による条例改正も新旧対照方式で行われていることもあり、理解しやすくなり、一定の評価をいただいていると考えている。
一方、その他の県民にとっては、新旧対照方式の改正内容を実際に目にするという機会は少ない。県議会事務局が、ホームページで議案を公開するようにしているので、それにアクセスされれば、議案段階で新旧対照方式での条例改正案を目にすることができるほか、議決後公布された条例を、紙ベース又はホームページに掲載された県公報で見る、ということができる程度である。したがって、県民から直接、新旧対照方式になって見やすくなった、などの声を聞くことはない」(「条例改正における新旧対照方式(鳥取県方式)の導入とその後〜分かりやすい条例へのステップとして〜」亀井一賀(「自治体法務NAVIvol.6」(第一法規))とあります。
何か、地方自治の主役であるべき住民(県民)が欠けていませんか。「県民にとって分かりやすい」ということは、「議員にとって分かりやすい」ということですか。現実は、住民にとって、例規の一部を改正する方法など、どうでもいいことではないでしょうか。そもそも、例規集を読んでいる、又は読んだことがあるという住民がどれぐらい存在するのでしょうか。「住民のため」とか「住民にとって」という言葉を使い、居もしない住民や有りもしない意見を行政側の都合で作り出すことには、少なからずの反発を感じます。大切なことは、当該地方公共団体において、例規つまりこういうルールができましたということを、いかに分かりやすく住民に広報することではないかと思うのです。
ただし、新旧対照表方式という新たな手法を編み出した鳥取県には、敬意を表します。安易に新旧対照表方式を採用することには賛成できませんが、新旧対照表方式は、現行の法制執務のルールを極めて簡素化できる可能性を示すことができたと考えています。例えば、例規の改正に当たっては、一部改正の方式ではなく、全部改正の方式によることとし、その都度全文を見直すこととするとか、一部改正の方式を極めて簡素化し、条項号単位ですべてを改める方式のみを採用するなど、先進的な地方公共団体の取組が期待されます。
また、現時点においては、新旧対照表方式が溶け込み方式の究極のローカルルールである以上、あえて新旧対照表方式を採用する必要性が認められませんが、「少なくとも私自身は、新旧対照表化は十分に可能と思っている次第である。また、内閣法制局としても、その具体的な方法を検討したこともある。今後、この問題をどう取り扱うか、内閣提出法律案にかかわる政府部内のみならず、そもそも立法機関である国会も含めて、立法に携わる関係者の広い合意が必要と思われる」(「実務立法技術」山本庸幸著/商事法務)との意見もあります。この問題は、今後のお楽しみといったところでしょうか。
なお、本市では、条例案を議会に提出する際、議案の参考資料として、条例案の新旧対照表を付託される委員会に提出することとしています。
新旧対照表方式については、これまた愛読させていただいている「自治体法制執務雑感」でhoti-akさんが詳細な分析をされています。11月11日(火)の発表に当たっては、非常に参考にさせていただきました。お礼申し上げます。
一般的に、改め文方式の場合は、改正文が簡素であり、全国的に統一及び確立された方式であるが、改正内容が分かりにくく、非常に難解であるとされています。一方、新旧対照表方式の場合は、改正内容が分かりやすく、事務作業が軽減されるが、改正方式が未確立であり、改正の効力に疑問があること及び文書量が増大することが難点であるとされています。
本市の場合、担当課は、例規の案を作成する必要はありません(2007年2月2日付けブログ参照)。本市の現状から、担当課に法制執務の知識を求めるのは、コストパフォーマンスが悪すぎると考えているからです。ですから、新旧対照表方式を採用したとしても、担当課の事務作業が軽減されることにはなりません。逆に、「新旧対照表方式は、まだ運用されて間もなく、実績も十分とはいえないことから、試行錯誤の段階といっていい。各自治体の取組みを見ても、厚いマニュアルや事例集を作成するなど、標準化を目指している途上であろう。この点、実務担当にとってはむしろ難解な改正作業を強いられる結果になる」(「徹底比較!自治立法の動向を探る」出石稔(「ガバナンス平成18年年8月号」ぎょうせい))と考えられます。
例規における最も難解な規定は、附則です。新旧対照表方式によっても、これは変わりません。むしろ、条建てによる改正が多発する傾向がある新旧対照表方式では、更に難解になってしまう可能性があります。また、新旧対照表方式が条、項又は号を単位として引用する以上、本来改正する部分以外の部分に改正が波及する可能性も否定できません。
法制執務の技術は難解であると言われていますが、自分は、そうは思っていません。当然、完璧を期すことは至難ですが、8割から9割をもって合格点とするならば、そう難しいものではないと感じています。8割から9割で合格などとは、意外に思われるかもしれませんが、市町村の例規は、実質、そんなものです。現在では、「法制執務詳解」(石毛正純著/ぎょうせい)を始めとして、良書が多数あります。また、インターネットでは官報情報検索サービスによって法令等の検索が容易にできます。例規は、法令を真似て作る方が楽です。新旧対照表方式によって、自らルールを作る方がずっと難しいと思っています。
tihoujitiさんも強調されていますが、改め文方式にせよ、新旧対照表方式にせよ、これらは、例規を改正する一つの技術にすぎません。肝心なのは、改正後(溶け込んだ後)の例規です。法規担当者が例規審査に当たり、審査する本質は、改正後の例規であって、また、効力をもって適用されるのも改正後の例規です。これは、新旧対照表方式によっても変わりません。殊更に改正方法の分かりやすさが強調される新旧対照表方式ですが、逆に、改正方法が図式化つまりビジュアルっぽくなったことによって、分かったような気になってしまい、肝心の改正後の例規がないがしろになっていないかということの方が懸念されます。
最後に、新旧対照表方式の最大のメリットとして、「住民にとって分かりやすい」という点が挙げられます。しかし、果たしてそうでしょうか。
11日(火)、阪南8市4町法規事務担当者研究会があり、例規の一部を改正する方法として一部の地方公共団体で採用されている新旧対照表方式について、私見を述べさせていただきました。
日本の法令の改正方法は、従来から「「○○」を「△△」に改める」等とする改め文による溶け込み方式を採用しています。「既存の法令の一部を改正する法令は、それ自体独立した法令ではあるが、これが施行されたときには、一部改正法令の本則で規定している元の法令を改正する具体的内容は、元の法令の中に溶け込んでしまい、その附則だけが意味のあるものとして残るという取扱い」(「ワークブック法制執務」法制執務研究会編/ぎょうせい)です。地方公共団体の例規も、法令の改正方法に倣っています。しかし、この法令の改正方法については、法令で定められてはいません。つまり、慣習によっているわけです。自分は、日本語で法令を書くのと同じように、それが当然であると考えていましたし、今もそう考えています。
そうかといって、頭ごなしに新旧対照表方式を批判するつもりもありません。愛読させていただいている「初心忘るべからず(オモテ)」でtihoujitiさんが「新旧対照表方式でも改め文方式でもどっちでもいい」と述べておられますが、自分も同じ意見です。ただ、新旧対照表方式のメリットを強調した記事などを読むと、「そら、違(ちゃ)うやろ」と思うことがあるのです。
現在、各地方公共団体で採用されている新旧対照表方式は、溶け込み方式です。従来の改め文によっていた溶け込み方式を、新旧対照表という表を用いることによって、改め文を図式化したものです。それは、あくまで改正前の欄の下線で示した部分を改正後の欄の下線で示した部分に改正するという考え方です。一部改正の例規の本則が表から成るものを「この条例は、……」と言えるのかとか、下線は溶け込まないのかといった議論はさておき、自分は、新旧対照表方式は、究極のローカルルールであると考えています。
そもそも、地方公共団体の例規は、ガチガチに法令に準拠しているわけではありません。どこの地方公共団体においてもローカルルールは存在します。これまた愛読させていただいている「自治体法務の備忘録」でkei-zuさんが、一部改正の手法について、「どうやったって溶け込むから良いんです」と述べておられることがありますが、これまた自分も同じ意見です。ローカルルールの重要な点は、溶け込むかどうかです。新旧対照表方式が溶け込むのであれば、問題はありません。それを採用するかどうかは、地方公共団体ごとの判断だと考えています。
鳥取県を初めとして、新旧対照表方式を採用している地方公共団体が増えてきました。正確な数字は分かりませんが、相当数の地方公共団体が新旧対照表方式を採用していると思われます。当初、改正の効力を疑問視する意見もありましたが、相当数の地方公共団体が採用しているという事実をもって、この問題については、クリアしていると考えても良いのではないでしょうか。
例規において、「附則」を「付則」と表記している地方公共団体があります。本市でも、平成6年までは「付則」と表記していました。某議員から「附則」の間違いではないかと指摘され、返答できなかった当時の部長が誤りと認めたため、平成7年からは「附則」と表記しています。
法令で使用する漢字については、「法令における漢字使用等について」(昭和56年10月1日付け内閣法制局総発第141号)を基準としていますので、法令に準じて例規を制定しているのであるならば、「付則」と表記することは誤りです。しかし、当該地方公共団体が例規においては「付則」と表記すると決めたのであるならば、それはそれで一つのルールです。当然、誤りではありません。
漢字使用については、「常用漢字表」(昭和56年内閣告示第1号)によるものとされていますが、「附」も「付」も常用漢字表に掲載されています。「附」と「付」の使い方については、「言葉に関する問答集・総集編」(文化庁/国立印刷局)によると、「戦前には、「附」と「付」とは、漢語では一般に使い分けていた。すなわち、「つく・つける」の意を含む語には、例えば、「附属」「附表」のように「附」を用い、また、「わたす・あたえる・さずける」などの意を含む語には、例えば、「交付」「給付」などのように「付」を用いていた。
しかし、古くから「つく・つける」の意を表す場合に相通じて使われていたこともあり、特に戦後の国語施策の実施以降は、漸次「附」と「付」を使い分けず、「附」を用いる場合にも「付」を用いる方向に向かっていった。すなわち、「当用漢字表」では、「附」と「付」の両者ともに採用されてはいるが、これは当時国語審議会で審議中に、日本国憲法に「附」が用いられていることが分かったため、漢字の選定方針にかかわらず、いわゆる憲法用の他の漢字とともに無条件に表に採用することになったものである。また、旧音訓表でも「付」には「フ・つける」という音訓を採用し、「附」には「フ」という音だけを採用した。更に「当用漢字補正資料」(昭29・国語審議会)では、「附」を当用漢字表から削除する28字の中に入れた。以上のようなわけで、公用文を含めて社会一般でも、特に支障のある場合のほかは、「付」を用いるようになってきた。
その後、国語審議会から答申された新音訓表でも、「付」には「フ・つく・つける」という音訓を掲げ、「附」には「フ」という音だけを採用した。そして、「附」の語例として「附属」「寄附」を示しているが、他方、答申の中には「付表」という語も用いられており、全体の趣旨としては、なるべく「付」を用い、特にこの語例に見られるように、「附」を用いる慣用が強いと思われるものについては、「附」を用いることとしたものと考えられる。
このような経緯によって、法令及び公用文での取り扱いとしては、従来の用字法を尊重することが適当と考えられる「附属・寄附・附則・附帯・附置」については「附」を用い、これ以外のものは原則として「付」を用いることとした」とあります。
同音であったこと、「付」に統一しようとする傾向があったこと及び「当用漢字補正資料」で「附」が当用漢字表からの削除候補であったことなどから、「付則」が一部の地方公共団体で採用されることになったのではないかと思われます。
「法制執務詳解」(石毛正純著/ぎょうせい)によると、題名の配字は、「4字目から書く。題名が長くなって2行以上になる場合には、1行目を一番右端まで書き、折り返しは4字目」とされ、題名の改正は、「「題名を次のように改める」という柱書きを置き、次の行に改めた後の題名を書く方式(題名の全部を改正する方式)によることを原則とするが、長い題名のごく一部を改正するにすぎない場合には」、「「題名中「○○」を「△△」に改める」「題名中「○○」の次に「△△」を加える」「題名中「○○」を削る」という方式(題名の一部を改正する方式)によることも認められる」とされています。
また、「「次のように改める」「次の……を加える」として次の行から改められた後のものや加えられるものを書くような場合の配字(初字を何字目から書くか)は、改められる既存のものの配字や加えられるものの本来の配字(何字目から書かれているか)に合わせて書くことを原則とする。(溶け込む位置と同一の位置とする趣旨である。)。題名は、新制定の場合に4字目から書くこととされているから、「題名を次のように改める」として次の行に改められた後の題名を書く場合にも、その初字は4字目からということになる」とあります。
題名については、本市にローカルルールがあります。題名の初字は、4字目からですが、2行以上になる場合は、3文字分の余白を残して改行し、折り返しは4字目からとしています。おそらく、文書の標題の書き方に合わせたのではないかと思われます。また、活字の大きさは、10.5ポイントですが、題名のみ14ポイントとしています。
本市で「題名を次のように改める」場合は、14ポイントの活字で、4字目から書き初め、3文字分の余白を残して改行し、折り返しは4字目からとするべきなのでしょうが、10.5ポイントの活字で、4字目から一番右端まで書き、折り返しは4字目からとしています。この理由は、良く分かりません。議案の形式が条例原本になることから、おそらく、見栄えの問題ではないでしょうか。
なお、「法令の活字の大きさは、法令の形式の本体の問題ではなく、印刷技術の問題とされており、格別の決まりがあるわけではない」(「ワークブック法制執務」法制執務研究会編/ぎょうせい)とされています。
本市の場合、様式等の制定や改正は、原則として様式等のひな型をワープロソフトで作成します。ただし、その様式等があまりにも複雑な場合は、カッターナイフとのりと修正液とコピー機を駆使したり、現物を台紙に貼付したり、スキャナーで画像を読み込んだりして作成します。ちなみに、この作業に係る労力は、小さいものではありません。
「事務処理の便宜のためにその様式を画一化するとき」や「その目的からみて様式を定めておくことが望ましい場合」(「法制執務詳解」石毛正純著/ぎょうせい)に、どの程度まで規則に様式等として規定するのかということは、以前から疑問を感じていましたし、今もその答えは出ていません。徹底的に規則で様式等を定める方法もあれば、規則上は「市長が定める」として、課又は例規ごとに様式集を定める方法もあります。また、単純な申請書等であるならば、都市公園法施行規則第3条の「都市公園法第5条第1項の国土交通省令で定める事項」のように規定するのも一つの方法です。
本市では、昨年、電算事務を外部委託したことに伴い、市税条例施行規則の様式を大幅に変更しました。問題は、規則改正をせずに様式を変更したことです。これまでにも、このようなことが何度もあり、その都度、注意し、後追いで規則改正をしてきましたが、今回ばかりはキレました。そもそも担当課(税務課)に「規則で定められた様式」という意識が無いのですから、何度注意しても同じことです。そこで、できないことを規則で定めるぐらいならば、いっそ規則から様式を削除しよう、税条例に関する様式を規則で定めていない市町村も相当数あると税務課に話しをすると、税務課は大喜びしました。そして、市税条例施行規則には、徴税吏員証、固定資産評価員証、同評価補助員証、課税標識及び試乗標識のみを規定し、その他の様式はすべて削除することとし、税務課で様式集を作成させることにしました。
なお、市税条例を市(町・村)税条例(例)(昭和29年自乙市発第20号)のとおりに規定している場合は、固定資産に関する地籍図等の様式等と原動機付自転車及び小型特殊自動車の標識のひな型並びに標識の交付証明書は、規則で定めると条例中に規定されていますので、条例改正も必要になってきます。
今年度は、ぼちぼちと様式等の見直しをやっていくつもりです。
様式等は、「ワークブック法制執務」(法制執務研究会編/ぎょうせい)の問99〔表に類するもの〕で、「表に類するものとしては、付録、様式、書式、別図等がある。……(略)……。付録は、主として計算式を規定する場合に、様式又は書式は、主として申請書、届出書等の様式を規定する場合に、別図又は図は、主として服制や建築の技術的基準のように文章として書くことが極めて困難で、図で示さざるを得ないようなものを規定する場合に用いられる。また、付録、様式、書式、別図等と別表との使い分けについても、必ずしも明確な基準があるわけではなく、申請書、届出書の様式や図を規定する場合に別表という名称を用いる場合もある(国旗及び国歌に関する法律では、日章旗の制式と君が代の歌詞及び楽曲がそれぞれ別記として規定されている。また、自衛隊法施行令別表第1では、自衛隊旗を図でもって規定しているが、「別図」とはされていない。)」とされています。
一般的に、様式等は、手続等を定める省令や地方公共団体の規則などで規定されています。法律や条例で様式等が規定されている例は、例えば、法律では国旗及び国歌に関する法律のほか日本国憲法の改正手続に関する法律などがあり、条例では服務の宣誓についての条例などがありますが、こうした例は、多くありません。
様式等は、「許可申請や届出のように多数行われる行為について書面で行うことを要求する場合において事務処理の便宜のためにその様式を画一化するときや、立入検査の身分証明書のようにその目的からみて様式を定めておくことが望ましい場合に用いられる」(「法制執務詳解」石毛正純著/ぎょうせい)とされていますが、様式等を規定するかどうかの基準には、あいまいなものがあり、市町村の規則では、規定されている様式等にかなりばらつきが見られます。
また、様式等の改正は、別表の改正に準じて行えばよいとされ、「様式等の全部改正は、その様式等を特定して全部を「次のように改める」とする。様式等の部分の一部改正は、語句の改正を除き、項や号で特定できるような場合は稀であって、一般的にはカギ括弧でその部分を引用して改正する」(「法制執務の基礎知識」大島稔彦監修/第一法規)とされています。いわゆる「模様どり」という方法です。
「「各号列記以外の部分中」は、その用法が限定されており、改正しようとする字句が同一条項中の他の部分にもあり、その部分の字句は改正しない場合で、このような所在を特定する方式をとらなければ他に方法がないやむを得ない場合に用いられる」(「ワークブック法制執務」法制執務研究会編/ぎょうせい)ものとされています。
次の[例]で、「A」を「C」に、「B」を「D」に改める場合は、
[例]
(………)
第○条 ………………………A………………………………………………。
(1) ………B………
(2) ………A……………
「第○条中「A」を「C」に改め、同条第1号中「B」を「D」に改める」とするべきなのでしょうが、「1項から成る本則の改正」(2007年3月11日付けブログ参照)でも書きましたように、本市では「第○条各号列記以外の部分中「A」を「C」に改め、同条第1号中「B」を「D」に改め、同条第2号中「A」を「C」に改める」としています。以前は、「各号列記以外の部分中」を用いないこととしていたのですが、例規集の追録業者が第2号中の「A」を見落とすというミスをしたことから、「各号列記以外の部分と各号中の双方の字句を改正する場合には、前の方から順に改正を行うために改正箇所を特定する手段として、「各号列記以外の部分中」を用いる」(「法制執務詳解」石毛正純著/ぎょうせい)ことにしました。
なお、「「前段中」、「後段中」、「本文中」は、改正しようとする字句と同一の字句が同一条項中の他の部分にもあり、その部分の字句は改正しない場合には当然用いられるが、それ以外の場合には、単に「第○条中(第×項中)としてこれらの文言を用いないこともできるし、「ただし書中」と同じように、それに関係なく用いることも許される」(「ワークブック法制執務」法制執務研究会編/ぎょうせい)とされていますが、本市では「各号列記以外の部分中」と同様に、前段と後段又は本文とただし書の双方に別の字句の改正がある場合以外は用いないこととしています。
「条文の冒頭に字句を追加する場合、例えば{第○条 ○○………。 → 第○条 △△○○…。}という場合には、「第○条中「○○」を「△△○○」に改める」とする」(「法制執務詳解」石毛正純著/ぎょうせい)とされています(あれほど楽しみにしていた「新版」が読みにくうてしゃあないです。要は、慣れでしょうが……)。また、「ワークブック法制執務」(法制執務研究会編/ぎょうせい)にも、「字句を追加する場所が、条、項又は号の冒頭である場合のように、「「○○」の下に」という形で表現し難い場合には、「「○○」の上に」という形を用いることもないわけではないが、通常は、次の例に示すように冒頭の語を改める方式がとられる」とあります。
では、{第○条 ………。ただし、○○………。 → 第○条 ………。ただし、△△○○…。}という場合は、どうするのでしょうか?この場合は、「「ただし、」の次に」という形で表現することが可能だからでしょうか、「第○条ただし書中「○○」を「△△○○」に改める」とはせず、「第○条ただし書中「ただし、」の次に「△△」を加える」としている例(特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律等の一部を改正する法律(平成19年法律第84号)等参照)が見受けられます。
なお、この法律は、官報情報検索サービスで検索しました。このサービスは確かに便利ですが、安易に頼ってしまうと、考える力というものが低下してしまうように思います。
地方税法等の一部を改正する法律が4月30日23時30分に公布されました。本市も市税条例の一部を改正する条例を同日23時40分に告示しました。
この件について、朝からいくつかの市町村の担当者からお電話をいただきましたが、4月30日中に専決及び告示をしなければならないこと以外は、自分もよく分かりません。いくつかの市町村が4月30日に告示しなかったようですが、大阪府からあえて開封確認メッセージの要求を付けてメールを送信してきたり、改正条例の公布の時刻を何時何分まで調査したりするのは、少々やり過ぎではないかと思いました。
「号は、「一、二、三……」と号名を漢数字で表すが、号の中を更に細分して列記するときは、まず、「イ、ロ、ハ……」を用いる。これを更に細分して列記するときには、「(1)、(2)、(3)……」を用いた例、「(一)、(二)、(三)……」を用いた例があるが、現在では、「(1)、(2)、(3)……」を用いることに統一されている。これを更に細分して、「(@)、(A)、(B)……」を用いて列記した次のような例もある」(「ワークブック法制執務」法制執務研究会編/ぎょうせい)とあります。
横書きの例規の場合は、文書横書きについての特別措置条例で「章、節および条番号の漢数字は算用数字に、号を表わす漢数字はかっこ書きの算用数字に、号をさらに細分する「いろは順」は「五十音順」に改める」と規定されていますので、「一、二、三……」とあるのは「(1)、(2)、(3)……」と、「イ、ロ、ハ……」とあるのは「ア、イ、ウ……」となります。では、法令において「(1)、(2)、(3)……」と表されている号の細分の細分は、どう表すのでしょうか。
本市も含めて昭和30年代の中頃までに制定された文書横書きについての特別措置条例では、号の細分の細分については規定されていません。おそらく、当時の条例中では使用されていなかったのであろうと思われます。一方、昭和30年代後半以降に制定された文書横書きについての特別措置条例では、号の細分を更に細分する場合は「(ア)、(イ)、(ウ)……」を、これを更に細分する場合は「a、b、c……」を用いることとされており、一般的に用いられている見出し符号(「1」→「(1)」→「ア」→「(ア)」→「a」→「(a)」)と整合します。
国民健康保険条例参考例の一部を改正する条例参考例(平成19年12月28日付け国健第2511号)で号の細分の細分が用いられています。これまで市町村の条例で号の細分の細分が用いられているのは、火災予防条例ぐらいではないでしょうか。自分は、この号の細分の細分を「(ア)、(イ)、(ウ)……」と表すことに妙な抵抗を感じています。「ア」の細分は、「ア」を括弧書きで表記するというのは理解できるのですが、「(」、「ア」、「)」と3文字を使ってしまうことに抵抗を感じてしまうのです。横書きの例規における号については、枝番号はともかくとして、1文字で表したいのです。印刷技術上の問題と言えばそうかもしれませんし、外字登録すればクリアできる問題かもしれません(号については、オアシスで登録されていない(21)以上は、外字登録しています。)。そこで、本市では、号の細分の細分は「@、A、B……」を用いることとしています。
なお、号の細分の細分等をカタカナやアルファベットで表すと、「ア、イ、ウ……」が「……ン」までいった場合、「a、b、c……」が「……z」までいった場合、どう表記するのかという悩ましい問題もあります。
今、話題のガソリン税等の暫定税率は、租税特別措置法で規定されています。同法第1条は、「この法律は、当分の間、………の特例を設けることについて規定するものとする」と規定しています。では、この「当分の間」とはいつまでのことでしょうか。
「最新法令用語の基礎知識」(田島信威著/ぎょうせい)によると、「法令上、不明確な期限を表わす場合には、「当分の間」という用語が使われる。終戦直後の混乱期には、どのように制度を定めたらよいかということがはっきり決められなかったために、当面の措置という意味で「当分の間」が法令上多く用いられた」、「法令上、「当分の間」という言葉が使われているときには、法令上の措置が臨時的・暫定的なものであり、早晩改廃されるべきものである旨を示すにとどまって、どのくらいの期間が経過したら「当分の間」でなくなるというものではない」、「最高裁判所の判決の中にも、当分の間(当時は、「当分ノ内」といった)とある場合には、かなりの年数を経過しても、他の法令によって廃止されないかぎり、法規としての効力を失うものではないとした判決がある」とあります。
なお、雑談の域を出ませんが、「当分の間」とは「おおむね5年から10年を想定しているらしい」と人づてに教えていただいたことがあります。
反則法制も今回で100回目になります。いつまでかはわかりませんが、「当分の間」は続けたいと思っています。
「新訂ワークブック法制執務」(法制執務研究会編/ぎょうせい)に続き、「自治立法実務のための法制執務詳解」(石毛正純著/ぎょうせい)の横書き版が近々発行される予定だと聞いて、今から楽しみにしています。そんな本の何が面白いのかと思われる方も多いと思いますが、法制執務にはパズルや将棋のような面白さがあり、難解な改め文や附則の経過措置を考えているときなどは、わくわくしながら仕事をしていることさえあります。
自分は、法律と条例とは、似て非なるものだと考えています。地方公共団体は、憲法第94条で「法律の範囲内で条例を制定することができる」と自治立法権が保障されています。ほとんどの地方公共団体では、法制執務上も法令に準じて例規の制定改廃を行っていますが、自治立法権を有する地方公共団体が1,800以上もあるわけですから、そこには当然ローカルルールというものが存在します。京都市の「右に」や大阪市の「中」の用法などは、その代表的なものです。これらの市のすごいところは、このようなルールを担当者の能力に依存するのではなく、組織的に連綿と遵守しているところだと思います。
また、平成12年に鳥取県で実施されるようになった新旧対照表方式による例規の改正方法は、自分にとっては衝撃でした。ローカルルールがここに極まったと感じましたが、現在では、岩手県、新潟県、愛媛県、武蔵野市、那覇市など十数団体(ぐらいでしょうか?)が新旧対照表方式を採用しています。県で結構採用されているのは、法規担当課が組織的に対応する場合、新旧対照表方式の方がやりやすいからでしょうか。
溶け込み方式と新旧対照表方式との優劣はともかくとして、本市では、国が新旧対照表方式を採用しない限りは、溶け込み方式を続けていくつもりです。理由は、自分が現行の溶け込み方式に何ら問題を感じていないのと、改め文を考えるのが面白いからです。改め文は、法制執務上、法令に準じた一定のルールの中で、分かりやすさと経済性を考慮しながら制定するのですが、どの本にも載っていない、官報を検索しても見付からないという場合に、一人で悶々と考えたあげくに出した答えには、例えそれが間違っているかもしれないにせよ、しびれるような何かがあります。
例規原本作成用のワープロソフトを平成20年からどうしようかと考えていました。本市では、議案及び例規原本はオアシスを使って作成していますが、オアシスは2002バージョンを最後に生産が中止され、以後のサポートがなくなっていると思い込んでいたからです。オアシスをオアシスU形式に変換して使うのも、そろそろ限界かなと感じていました。
自分が文書法規を担当するようになった時の庁内の標準ワープロソフトはオアシスでした。当時、その都度異なっていた例規の書式を統一しましたが、書式の統一に当たっては、文字を整然と並べるため、数字や符号についてもすべて全角で規定することとしました(当然、本市のローカルルールです。)。オアシスは、法規文書用のソフトとしては、けい線が文字キャラクターであるという欠点もありますが、法規文書を作成するには適したソフトであると思っています。
その後、OA化とともに庁内の標準ワープロソフトはワードに変わりました。しかし、ワードは元々が外国のソフトのため、半角をベースにしており、文字を整然と並べることができないことが、いまだにオアシスを使っている理由です。
まだオアシスを使うのか、シェアを考えてワードにするのか、それとも一太郎か、と考えていたのですが、オアシスV10が出て、サポートも続いていることが判明しました。
もう一年、結論は先送りしようかと思っています。
「○○市に、条例はいくつありますか?」と市内の中学生から質問がありました。「ワークブック法制執務」(前田正道編/ぎょうせい)の問2にも同様の問答が掲載されていますが、みなさんなら何と答えますか。
ほとんどの地方公共団体では、例規の改正方法は、法令と同様に溶け込み方式を採用しています。溶け込み方式の場合は、原則として、条例の一部を改正するには「一部を改正する条例」を、条例を廃止するには「廃止する条例」を制定しなければなりません。この「一部を改正する条例」及び「廃止する条例」は、それぞれが1件の条例ですので、例えば、平成19年に制定されたならば、同年に制定された条例としてそれぞれを1件としてカウントします。しかし、既存の条例全体からすると、「一部を改正する条例」は既存の条例に溶け込んでしまい、プラス1とはなりません。また、「廃止する条例」は既存の条例を廃止しますので、マイナス1となります。さらに、「一部を改正する等の条例」や「整理条例」といった複数の条例を改廃する場合や全部を改正する場合があり、また、廃止措置がとられない場合などもあります。このことから、冒頭の質問に正確に回答することは、非常に困難です。
自分は、このような場合は、「現時点で例規集に登載されている条例は、504件です。」と答えるようにしています。
例規の中には、法規担当でありながら、まったく理解できていないものもあります。その代表的なものが、退隠料条例及び退隠料年額改定条例です。
一般的には、退隠料条例というよりも、退職年金及び退職一時金条例と言った方が分かりやすいでしょうか。いわゆる、恩給法の条例版です。本市では、恩給法の一部改正法の附則別表として規定されている年額の改定を、その都度、新たに年額改定条例を制定することとしていますので、原始条例である退隠料条例と38件の退隠料年額改定条例とが存在します。これがよく理解できません。
そんな理解できない条例の改正作業はどうするのかというと、恩給法と退隠料条例及び退隠料年額改定条例との文言をリンクさせ、恩給法の改正に合わせて、機械的に退隠料条例及び退隠料年額改定条例を改正するようにしています。
退隠料条例の対象者は減り続け、残すところあと2人となっています。不謹慎な話しですが、この39件の条例は、早く廃止したいと思っています。
8月3日付け官報で証券取引法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令が公布され、証券取引法等の一部を改正する法律の施行期日が平成19年9月30日とされました。
郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律及び証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の施行に伴い、市長の資産等の公開に関する条例の一部を改正する条例を市議会9月定例会に提案するため、先日、課長及び部長のレクを済ませ、決裁を上げたところでした。そのレクでの部長からの質問が「「証券取引法等の一部を改正する法律(平成18年法律第65号)の施行の日又はこの条例の施行の日のいずれか遅い日」て何やねん?」でした。
その時点では政令が公布されていなかったことと証券取引法改正法の施行期日が9月頃と仄聞している中で、同法に係る改正規定の施行期日を規定したものです。
最近、法律の施行期日が政令に委任されることが多いように思います。今回は、無事に修正できましたが、これも地方公共団体の法規担当者を悩ませることの一つです。
平成19年6月22日付け国健第1453号通知における○○市(町・村)老人医療費の助成に関する条例施行規則(案)の準則の一部改正において、附則第2項で「なおその効力を有するものとする」と規定されていますが、この場合は、「なお従前の例による」と規定するべきではないでしょうか。
「自治立法実務のための法制執務詳解」(石毛正純著/ぎょうせい)によると、「「なお従前の例による」という表現は、旧条例・規則の規定はその効力を失っているが、一定の事項について包括的に旧条例・規則の規定が適用されていた場合と同様に取り扱うということを意味するのに対し、「なおその効力を有する」という表現は、一定の事項について旧条例・規則の規定はその効力を存続して適用されるということを意味する。…(略)…B前者の場合には、旧条例・規則の規定は失効しているので、後にこれを改正するということはあり得ないのに対し、後者の場合には、旧条例・規則の規定は効力を存続するので、後にこれを改正するということも可能である」とあります。また、「法令用語の基礎知識」(田島信威著/ぎょうせい)には、「両者は微妙な差異があるのであるが、経過措置の内容によっては結局同じ意味となってしまう場合もある」とあります。
ならば、経過措置として「なおその効力を有する」を用いるのか「なお従前の例による」を用いるのかの判断基準は何でしょうか。自分は、「その経過規定をいずれは改正する可能性があるのであれば、「なおその効力を有する」の方を選ぶべき」(「実務立法技術」山本庸幸著/商事法務)であり、そうでないならば「なお従前の例による」の方を選ぶべきであると単純に理解しています。
以前、「なおその効力を有する」当該規定を改正したところ、追録業者から「できません(改正を反映できませんとの意味だと思います。)。」と言われたことがあります。そこで以後は、「なおその効力を有する」当該規定を改正する場合には、「正面から旧法を改正するのではなく、効力を有すると定めた法令の当該条項を改正して、旧法に関する必要な読替規定を設けることの方が、実際的には、妥当であろう」(「条例規則の読み方・つくり方」上田章・笠井真一著/学陽書房)としようと考えましたが、いまだその事例はありません。
なお、1453号通知については、附則第2項ただし書は、規定する必要はないと考えています。また、同項ただし書の規定を適用し、改正後の第6条第3項の規定によるならば、附則第2項そのものが不要ではないでしょうか。
前文が置かれている条例があります。
「地方公務員のための法制執務の知識」(山本武著/ぎょうせい)には、「前文は、憲法のように格調高い理想をうたいあげる場合には必要であるかもしれないが、法律や条例に前文を設ける必要はない。法律や条例に前文が置かれた例もないわけではないが、法令の一部として、直接の法的効果をもたない精神的・政策的文章を織りこむことは邪道であり、悪趣味以上のものがある。条例を立案するにあたっては、いささかたりとも、国の悪例を見習う必要はない」とあります。自分は、この意見に全面的に賛成しています。
唯一、前文を置くことが認められる条例があるならば、それは、自治体の憲法として制定された自治基本条例であると考えています。
本市には自治基本条例はありませんが、前文が置かれている条例が1件だけあります。この条例については、何とかしたいと考えています。
今日のブログは、5月8日付けブログの続編として読んでいただけたらと思います。
実は、本市は昭和23年に市制施行していますが、昭和38年以前の例規原本がありません。昭和39年についても、一部欠落しています。
昭和49年の庁舎移転の際に紛失したとも、台風によって水損したとも聞いていますが、はっきりしたことは分かりません。事実として、ないものはないのです。しかし、例規台帳は、昭和23年の市制施行時から存在しています。
自分が法規担当になった当時は、数年にわたって例規台帳の整理がされていませんでした。また、旧例規台帳は、時間のある者が手書きしていたのか、ミスがよく目につき、信憑性に欠けるという欠点がありました。しかし、例規原本がない以上、例規台帳を不完全な状態のままにしておくわけにもいかず、時間を見つけて整理することにしました。この整理には大きな手間と時間がかかり、途中で中断したこともあって、いまだ、完成していません。また、時間を見つけて、整理しようと思っています。
「逐条地方自治法第4次改訂版」(松本英明著/学陽書房)216ページには、「議長が送付し、長が署名して公布した条例原本は、当該条例が廃止されるまで永久保存とし、当該条例の改正に応じて、現行条例台帳により整理を行うように配慮すべきである」とあります。この条例台帳、本市では規則その他の規程を合わせて作成し、例規台帳と呼んでいますが、皆さんのところの条例台帳は、どんな仕様になっていますか?
本市の現行例規台帳は、平成10年からの行政文書のA4判化に合わせて仕様を変更し、原始例規の写しに続いて一部改正例規の写しをつづっていくようにしています。
それ以前の旧例規台帳は、専用の用紙に原始例規を手書きし、改正があると改正情報を欄外に記載し、赤色二重線を引いて訂正印を押印した上で、改正後の規定を改正箇所の上部余白に記載していました。余白が足りなくなってくると、用紙を切り貼りして記載しますので、頻繁に改正が行われる例規ですと、昔、流行した飛び出す絵本のようになりました。この旧例規台帳の整理には、赤と黒のデスクペン、定規、のり、カッターナイフ、メンディングテープ及び訂正印が七つ道具でした。
「○○二丁目」は、町名を表す固有名詞です。ですから、公用文では縦書き横書きにかかわらず、「二丁目」は、漢字で表記するのが原則です。横書きであるからといって、四国を「4国」、八尾市を「8尾市」、三原山を「3原山」と表記しないのと同様です。
しかし、市町村によっては、「○○2丁目」とアラビア数字によって表記している例が見られます。これは、「住民票の住所及び本籍欄に記載する土地の名称「二丁目」は、固有名詞と解されるが、横書きの場合は、便宜「2丁目」と記載して差し支えない」(昭和38年7月9日民事甲第1974号)との先例があるからです。また、住民登録法(※)における「住居表示に関する法律の施行に伴う住民登録及び戸籍事務の取扱いについて」(昭和37年5月29日民事甲第1448号)においても、住民票が横書きで調製されている場合の記載例は、アラビア数字になっています。
本市では、住民票上も「○○二丁目」と漢字で表記していますが、例え住民票がアラビア数字で表記していたとしても、それはあくまで住民票における取扱いであって、法規文書では漢字で表記するべきであると考えています。
(※)住民登録法は、住民基本台帳法の施行によって廃止されましたが、住民基本台帳法における事務の取扱いについては、「住民基本台帳事務処理要領」(昭和42年10月4日民事甲第2671号・自治振第150号ほか)に基づくこととされており、同通知によると、住民票の記載要領については、従前の例によって処理して差し支えないとされています。
本市では、条例、規則その他の規程等を合わせて、年間約100件の例規を制定します。その中には、例規の形式や内容等に間違いが生じることがあります。
本来、間違いはあってはならないものですが、国法においてさえも立法の過誤が見受けられるぐらいですから、市町村の例規では、やむを得ないのかもしれません(官報で立法の過誤を見つけると妙にうれしいものです。この気持ち、法規担当者なら理解していただけると思います。)。
では、間違いが生じた場合は、どうするのでしょうか?本市では、条例案が可決された場合(規則の場合は、公布されたとき)は、間違いがあってもそのまま条例となります。当然、間違いを訂正するには、一部改正条例を制定しなければできません。
昔の例規原本を見ると、訂正された痕跡のあるものがありますし、公布後においても内容の差し替えをしていたということを仄聞しています。しかし、自分が法規を担当するようになってからは、このようなことは一切やめました(法規を担当して間も無い頃、条例の内容を差し替えてくれと某課長に言われて大げんかしました。)。
「逐条地方自治法」(松本英明著/学陽書房)にも「ひとたび議決が終わった後には、もはや条例の字句を変更したり修正したりすることは許されない。事務当局のミスプリントその他の手違いが、そのまま議会の議決によって条例となり、公布手続をとる前に、ちょっと二、三の字句を担当者が改変するなどという取扱いは厳に排されなければならない」とあります。
しかし、例規の過誤は現に発生します。実は、3月にもやってしまいました。そんなときは、一人で思いっ切り落ち込みます。
地方税法の一部を改正する法律(平成19年法律第4号)が今日告示されました。市税条例の一部を改正する条例を3月30日又は31日付けで専決処分し、公布することになります。
市税条例の全部を改正した(1月25日付けブログ参照)のは、例年行事である市税条例の一部を改正する条例の専決処分を、税務課からの条例案を待つことなく、文書法規係で行いたかったからです。条例(例)に何箇所かの誤りがあったのは御愛敬として、予想以上にスムーズな改正作業でした。
なお、一部の市町村では、地方税法の一部改正に伴う市税条例の一部を改正する条例のすべてを専決処分している場合がありますが、自分は、あくまで4月1日施行分に限るべきだと考えています。
予算特別委員会が終了しました。その中で「例規システムデータ更新委託料 2,100千円」、これが高いのではないか、職員が自前ですべきではないかという質疑がありました。
追録式の例規集を発行していた頃は、年1回の更新で約500万円かかっていました。あの頃は、追録作業のために会議室を押さえて、例規集を集めるのに苦労しました。キャリアの長い又は一昔前に法制を担当されていた方は、理解していただけると思います。また、単価契約(1枚当たり何円)でしたので、予算を気にしながら例規改正をされていた方もいらっしゃったのではないでしょうか。現在は、更新は年4回、追録及び単行本はなしで定額により契約しています。
アウトソーシングを進めてスリムで効率的な行政運営に努めよという声が大きくなる中、「例規システムデータ更新委託料 2,100千円」というのは高いですか?
「本則が1項だけから成る法令の一部改正をする場合には、附則の規定との関連上誤解を生じない場合には、特に「本則」という表示をしなくてもよい」(「ワークブック法制執務」前田正道編/ぎょうせい)とされています。ならば、次の[例]のように1項から成る本則が各号を含む場合で、「A」及び「B」を改める場合には、どのようにしますか?
[例] ○○○条例
………………………A……………………………………………………………
……………………………………………………………。
(1) …………………
(2) ………B…………
附 則
この条例は、平成○年○月○日から施行する。
1 「A」を「C」に改めるだけの場合
「A」を「C」に改める。
2 「B」を「D」に改めるだけの場合
第2号中「B」を「D」に改める。(平成11年法律第220号附則第5条参照)
3 「A」を「C」に、「B」を「D」に改める場合
本則中「A」を「C」に改め、本則第2号中「B」を「D」に改める。(平成11年法律第83号第8条参照)
なお、本市では、3の場合、「各号列記以外の部分と各号中の双方の字句を改正する場合には、前の方から順に改正を行うために改正箇所を特定する手段として、「各号列記以外の部分中」を用いる方が適当であろう」(「自治立法実務のための法制執務詳解」石毛正純著/ぎょうせい)ということに従い、「本則各号列記以外の部分中「A」を「C」に改め、本則第2号中「B」を「D」に改める。」としました。
「法規事務の手引」(大阪府)170ページには、「掲げる」と「定める」の使い方として、「表において、例えば、「次の表の上欄に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に定める金額」というように、「掲げる」は、ある特定の場合や事項を表す欄を指す場合に用い、「定める」は、それに対応する欄を指す場合に用いる。」とあります。しかし、3月定例会に提案する条例の参考にさせていただいた大阪府A条例では、このケースで「掲げる」と「掲げる」が用いられています。
どう読んでも「掲げる」と「定める」が用いられるべきだと思うのですが、自分の理解が間違っているのか、更なる奥義があるのか、ひとつの流行か、それとも府の単純ミスか…
そういえば、「自治立法実務のための法制執務詳解」(石毛正純著・ぎょうせい)においても、三訂版では「罰則規定の場合には、「次の各号のいずれかに…」の表現は用いないのが一般である。」(537ページ)とされていたのが、四訂版では「罰則規定で刑罰を科せられるべき行為を掲げる場合には、「次の各号の一に…」という表現を用いるのが通例であったが、最近は「次の各号のいずれかに…」の表現に統一されつつある。」(575ページ)とされています。法制執務の世界でも流行があるのです。
皆さんのところでは、例規審査は具体的にどのようにしているのでしょうか?本市では、条例、規則その他の規程及び議案については、各課から依頼を受けて、すべて文書法規係で作成しています。それを各課が起案するのですが、回議の途中で、法規審査を受ける必要があります(令達のうち訓令、訓達及び庁達についても法規審査が必要)。事務決裁規程上は、法規審査を行うのは総務課長ですが、文書法規担当主幹も承認印を押します。実質的には、法規審査とは、文書法規係が作成したことの確認ということになります。このことを担保する方法として、公告式条例に規定する掲示場には施錠をし、その鍵を文書法規係で保管しています。自分が文書法規を担当するようになったころは、例規があまりにもずさんな状態だったため、こういう方法を選択することにしました。
また、本市では、企業管理規程、行政委員会の規則その他の規程についても法規審査が必要です。「委員会がその権限に属する事務に関して必要な規則を制定する場合、長はこれに積極的に干渉することは事前においても事後においてもできない。」(昭和28年6月16日行政実例)ということについては当然了知していますが、本市の実情からは、やむを得ないと考えています。
地方税法の一部を改正する法律の施行に伴う税条例の改正については、各市町村とも苦労されていることと思います。本市では、市議会3月(第1回)定例会に市税条例の全部を改正する条例を提案する予定です。
地方分権一括法の施行前は、市(町・村)税条例(準則)(昭和29年自乙市発第20号)に加え、大阪府地方課(現在の市町村課)からも市(町・村)税条例(準則)(昭和29年29地第688号)が示されていました。本市の市税条例はこれが逆に作用し、国の準則と府の準則の規定が混在し、規定の順序がおかしい上に、必要な規定が無いのに不要な規定があるという状態になっていました。当然、条例の改正作業は困難を極めていましたので、自分は、当時から市税条例の全部改正を主張していました。今回、ようやく10年越しの願いがかなうことになります。
地方分権一括法が施行され、「(準則)」が「(例)」に変わり、府からの条例(例)が示されなくなったことを機会に、税条例を国の条例(例)に合わせて全部改正を行った市町村があったと思います。本市も同様に、市税条例を平成19年4月1日時点における国の条例(例)に合わせるものです。ただし、数条の独自規定はありますし、文言等の所要の整理は行いました。また、附則の経過措置については、苦労しました。市税条例と国の条例(例)との対応表を作成し、秋頃から時間を見つけては、少しずつ作業をしてきました。その結果、本則127条附則55条の大条例が出来上がりました。
地方自治法の一部を改正する法律(平成18年法律第53号)が公布されたことに伴い、関係条例の整理についての条例等及び一部事務組合の規約変更の協議を市議会12月(第4回)定例会に提案しました。このうち、甲一部事務組合については、府との事前協議が終わっていないため、12月(第4回)定例会を見送り、3月(第1回)定例会に提案することとしました。
今日、甲一部事務組合規約の一部を変更する規約案を見せてもらいましたが、法制執務上、いくつかの間違いが見受けられます。担当課の話では、事前協議も済んで完璧とのことでしたが、細かい部分はともかくとしても、第9条第6項の改正規定や附則第1項ただし書の規定などは、見過ごすことのできない間違いです。甲一部事務組合の関係市の法規担当者が、議案審査に当たり、この規約案を承認するとは思えません。おそらく、修正案が送付されてくるものと考えていますが、とりあえず、このままにしておきます。
附則の項は、本則の項と同様に、「枝番号」や「削除」は、用いられないとされています。確かに、法令において、そのような事例は、見受けられません。しかし、本市においては、附則の項の「枝番号」及び「削除」方式を用いています。法制執務における本市のローカルルールの一つです。
以前、ある市の方から附則の項を削るのに際し、「削除」が使えないために項の繰上げをするのは煩雑なので、何か良い方法がないかとの電話をいただきました。そこで、本市においては附則の項の「枝番号」及び「削除」方式を用いていること及び「条例・規則作成の手引」(自治大臣官房文書課編・第一法規)109ページに「本則における項は、単なる法文の区切りとなる段落を示すもので、項番号も項の順番を示す便宜的な符号にすぎないということから条又は号と異なり枝番号もつけられず、削る場合であっても形がいを残す削除方式を用いることはできないが、これに対し附則における項は、単なる法文の段落ではなく独立したものであるから、枝番号をつけたり、項を削る場合において、形がいを残す削除方式が認められる。」との記述があることを紹介させていただきました。現在発行されている「条例・規則作成の手引」(地方自治法規実務研究会編/第一法規)では、この記述は削除されていますが、本則の項及び附則の項の性格を考えるならば、理解できる内容ではないでしょうか。
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