一事不再議の原則(後編)

 「注釈地方自治関係実例集」(地方自治制度研究会編/ぎょうせい)には、この行政実例に対する注釈が次のようにあります。
「設問について一事であるかどうかを考えるに議案の形式だけから考える場合は同一、すなわち一事とはいえないであろうが、その内容について考えるならば、A案の否決が現状維持を是として行われたものである場合は、その数に関し、議会の決定的意思表示つまり定数は二〇とする決定があったことにほかならないから、同一会期中にはその後における客観情勢の変化等により必要が生じた場合でない限り、再びその数の変更に関する審議をすることは明らかに一事について審議するものといわざるを得ない。
 しかし、その趣旨がA案に示された数に賛意を表しがたいがために、換言するならば改正原案の増加数が多すぎるとして、あるいは少なすぎるとして、つまり当該原案に示すその数自体に異議を求めて否決したものである場合は、右の現状維持を是として否決した場合と異なり、その数に関し決定的な一つの意思が表明されたということは根拠が薄く、したがってこの場合、改めて別の定数とする改正条例案(もちろんB案のようなものを含む。)を提案し、審議することは、その適否は別としても、必ずしもこれを一事とみる必要はなく、いわゆる一事不再議の原則には反しないと考えてよいと思われる。」
 一事不再議の原則は、議会の議決があって初めてその適用があるものです。そして一事であるかどうかの認定は、議会が決定することとされています。では、もしも議員定数を16人とするものから20人とするものまで、A案からE案まで5種類の議員定数条例の一部を改正する条例案が議員から提案された場合は、どのように取り扱うのでしょうか。前掲書の注釈のとおり、否決された趣旨が当該条例案に示された数に異議を求めて否決したものであると考えるならば、一事不再議の原則には反せず、A案、B案、C案、D案、E案と順番に審議していくことになります。
 確かに、一事不再議の原則には反しないのでしょうが、あまり適当な方法であるとは考えられません。現実にこのような問題が発生した場合は、審議の方法を少し工夫する必要があると思います。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 22:26 | 地方自治法

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