前議長・元議長

 統一地方選挙が終了しました。
 HP等を見ていると、ほとんどの地方公共団体が議会改革に取り組んでいるようですが、それなりの成果を上げているところは少ないように思います。本気で議会を改革しようと考えているならば、次のような取扱いを検討してみてはどうでしょうか。
 「議会の母国である英国の下院議長は、議長をやめるときは議員をやめるときであるといわれています。このため議長経験者の議員はいません。我が国の場合、国会、地方議会とも議長辞任後も議員として在職しています。特に議長の短期交代をしている地方議会では、前議長、元議長が多くいます。
 議会での最高位に就いた議長が議長を辞職したあとも、一議員として在職することはおかしな現象といえます。議員全員の中から議長適任者として選挙された議員が交代することは、適任でなくなったこと、また選挙した議員に眼力がないことを意味すると言えなくもありません。前議長、元議長が多いのは、政治的な話し合いにより議長の短期交代をしていることに大きな理由がありますが、同時に議長経験議員が議員として在職することを禁止した規定がないことにも一つの理由があります。議長の地位の重要性や権威を考慮するならば、議長辞任後は議員を続けるべきではありません。」(「議員・職員のための議会運営の実際21」地方議会研究会編著/自治日報社)
 このことを条例で定めたところで、ある地方公共団体の多選自粛条例のようになる可能性が大きいと思います。しかし、議会を個々の議員の単なる集まりではなく、住民代表の議決機関として機能させるためには、一つの方法として検討してみるのも面白いのではないでしょうか。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 00:19 | 地方自治法 | コメント (0) | -

未施行の一部改正条例の改正

 本市に限らず、ほとんどの地方公共団体では、法令の改正方法と同様に、既存の例規の一部を改正する方法として、溶け込み方式を採用しています。例えば、A条例の一部を改正する場合は、A条例の一部を改正する条例(B条例)を制定します。このB条例の本則で規定された改正内容が施行され、A条例に溶け込むことによってA条例が改正されるという方法です。そしてB条例の附則だけが残ることになります。
 ところが、まれにB条例が公布され、まだ施行日が到来していない段階で、A条例の同じ部分を改正し、B条例の施行よりも先に施行しなければならない場合が生じることがあります。この3月31日付けで専決処分した市税条例等の一部を改正する条例が、正にそれです。
 市税条例(A条例)を改正する平成26年総税市第9号による市税条例等の一部を改正する条例(B条例)第1条中附則第16条の改正規定の施行日は平成28年4月1日ですので、現在、同条の改正規定は、未施行の状態です。
 平成27年総税市第23号による市税条例等の一部を改正する条例(C条例)第1条の規定により、A条例附則第16条が改正され、同条の改正規定の施行日が平成27年4月1日とされています。このため、C条例第1条の規定によるA条例の一部改正を前提として、C条例第2条でB条例の一部を改正しているのが、専決処分した市税条例等の一部を改正する条例です。
 専決処分した条例は、次の会議で議会に報告し、その承認を求めなければならない(地方自治法第179条第3項)ので、担当部長に説明しているのですが、なかなか理解してもらえません。さて、どう説明しましょうか?

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 23:32 | 法制執務 | コメント (0) | -

執務時間

 「新自治用語辞典」(新自治用語辞典編纂会編/ぎょうせい)によると、執務時間とは、「組織体としての国や地方公共団体が全体として執務を行う態勢にある時間をいう。執務時間として定められた時間には大部分の行政活動が行われ、行政サービスが提供されることとなる。したがって、執務時間は行政需要にいかに対応すべきかという観点から決定されるものであり、職員が勤務を提供することについての諸条件、いわゆる勤務条件とは異なり、国や地方公共団体の事務の管理及び運営に関する事項に係る概念である。従来、都道府県については官庁執務時間が準用され、市町村については明確な規定が存在していなかったが、昭和63年の自治法改正の際、都道府県に対する準用を外すとともに、すべての地方公共団体において、規則によって執務時間を定めるよう要請がなされた。職員の執務時間を定めるに当たっては、地方公共団体の執務時間中は常に職務の執行体制が整備されていなければならないことに十分注意する必要がある」とされています。
 昭和63年の自治法改正というと、「地方公共団体の休日は、条例で定める」とされ、4週6休制が導入されたときですね。その際、「すべての地方公共団体において、規則によって執務時間を定めるよう要請がなされた」のは知りませんでした。しかし、本市を含む多数の地方公共団体では、今も規則によって執務時間が定められていません。おそらく、勤務時間との関係上、又は地方公共団体の事務の性格上、執務時間をあえて規定する必要性が認められなかったからではないでしょうか。
 なお、執務時間を営業時間又は窓口時間として捉えるならば、規則よりも条例で規定する方が適当ではないかと思います。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 00:56 | 地方自治法 | コメント (0) | -

一事不再議の原則(後編)

 「注釈地方自治関係実例集」(地方自治制度研究会編/ぎょうせい)には、この行政実例に対する注釈が次のようにあります。
「設問について一事であるかどうかを考えるに議案の形式だけから考える場合は同一、すなわち一事とはいえないであろうが、その内容について考えるならば、A案の否決が現状維持を是として行われたものである場合は、その数に関し、議会の決定的意思表示つまり定数は二〇とする決定があったことにほかならないから、同一会期中にはその後における客観情勢の変化等により必要が生じた場合でない限り、再びその数の変更に関する審議をすることは明らかに一事について審議するものといわざるを得ない。
 しかし、その趣旨がA案に示された数に賛意を表しがたいがために、換言するならば改正原案の増加数が多すぎるとして、あるいは少なすぎるとして、つまり当該原案に示すその数自体に異議を求めて否決したものである場合は、右の現状維持を是として否決した場合と異なり、その数に関し決定的な一つの意思が表明されたということは根拠が薄く、したがってこの場合、改めて別の定数とする改正条例案(もちろんB案のようなものを含む。)を提案し、審議することは、その適否は別としても、必ずしもこれを一事とみる必要はなく、いわゆる一事不再議の原則には反しないと考えてよいと思われる。」
 一事不再議の原則は、議会の議決があって初めてその適用があるものです。そして一事であるかどうかの認定は、議会が決定することとされています。では、もしも議員定数を16人とするものから20人とするものまで、A案からE案まで5種類の議員定数条例の一部を改正する条例案が議員から提案された場合は、どのように取り扱うのでしょうか。前掲書の注釈のとおり、否決された趣旨が当該条例案に示された数に異議を求めて否決したものであると考えるならば、一事不再議の原則には反せず、A案、B案、C案、D案、E案と順番に審議していくことになります。
 確かに、一事不再議の原則には反しないのでしょうが、あまり適当な方法であるとは考えられません。現実にこのような問題が発生した場合は、審議の方法を少し工夫する必要があると思います。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 22:26 | 地方自治法 | コメント (0) | -

一事不再議の原則(前編)

 一事不再議の原則とは、「議会の会議原則の一つであり、一つの事件が議決されると、同一事件については、その会期中に再び審議の対象とすることができないとする原則である。一時不再理の原則ともいう。
 一事不再議の原則は、自治法上に明定されていないが、会議原則として、いわば条理上の原則として確立した原則である。この原則を認める理由としては、@議会の会議の能率を高めること、A議会の議決に権威をもたせることの二つがあげられる。
 何が「一事」であるかについては、事件の題名など形式面からだけで判断するのではなく、再び事件に供するに至った目的、趣旨、事情などが異なっているか否かを実質的に判断することが必要である。
 なお、一事不再議の原則の例外として、自治法176条、177条の再議の場合と、事情変更の原則の適用がある場合とがあり、更に、特別な場合として、自治法74条3項の規定により直請求に係る条例案が議決される場合がある」(「新自治用語辞典」新自治用語辞典編纂会編/ぎょうせい)とされています。
 標準都道府県・市・町村議会会議規則は、「議会で議決された事件については、同一会期中は再び提出することができない」(市第15条)と規定していますが、会議規則中に一事不再議に関する規定の有無にかかわりなく、地方公共団体の議会についても、一事不再議の原則の適用があるものと解されています(昭和33年3月26日行政実例)。
 実際に一事不再議の原則を適用する場合に問題となるのが「一事」の認定です。例えば、議員定数を16人とするものから20人とするものまで、5種類の議員定数条例の一部を改正する条例案が議員から提案された場合の取扱いはどうするのでしょうか?
 昭和34年12月16日付けの行政実例には、次のようにあります。
問 議会の議員の定数が三六人であるところを二〇人に減少していた市において、議員定数を二六人
 にする減少条例の一部改正案が議員から提案されたが否決された。同一会期中に議員定数の減少
 条例を廃止する条例案を審議することは、一事不再議の原則に違反するか。
答 さきの議案を否決した趣旨が現状維持を是とする意思の表示である場合においては、地方自治法
 第七四条第三項の規定により付議された議案であるとき又は事情の変更によりあらたな必要が生じた
 ものであるときを除き、一事不再議の原則に反するものと解する。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 22:39 | 地方自治法 | コメント (0) | -

○○監

 今年度、本市に「○○監」という職が設置されました。
 「監」という漢字を調べると、「@見はる。とりしまる。「監禁・監護・監査・監察・監視・監修・監督・軍艦・舎監・統監」Aろうや。「監獄・監房・収監」」(「大辞林」三省堂)とあります。ちなみに、職ではありませんが、警察官には「警視監」及び「警視総監」という階級が、消防吏員には「消防監」、「消防正監」、「消防司監」及び「消防総監」という階級があります。
 国土交通省には、「命を受けて、国土交通省の所掌事務に係る技術を統理する」(国土交通省設置法第5条第2項)「技監」という特別の職があり、おそらくこれに倣ったものと思われますが、大規模な地方公共団体では、いわゆる技術吏員のトップとして「技監」という職を設置しているところがあります。東日本大震災以後に「危機管理監」という職が各地方公共団体で設置されたのを始め、最近では、「○○政策監」や「○○統括監」といった職を設置している市町村も増えてきました。
 こうした市町村の例規を見てみると、一般的に「○○監」は、特定の事務について、組織を超えて統括管理する職として位置付けているようです。しかし、既に「理事」や「参事」といったスタッフ職があるにもかかわらず、安易に「○○監」という職を設置することは、職務権限及び職務命令が不明確になり、組織に悪影響を及ぼすおそれがあるように思います。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 22:44 | 地方公務員法 | コメント (0) | -
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