−管理人のたわごとブログ− 退職願の撤回
民間企業における従業員の退職の申入れは、当該従業員からの意思表示のみによって効果が生ずる労働契約の解約と使用者の同意によってはじめて効果が生ずる労働契約の解約の申入れとがあります。一般的には、前者の場合に提出する文書を「退職届」といい、後者の場合に提出する文書を「退職願」といって使い分けているようです。「退職届」が提出された場合は、提出と同時に退職の期日が確定し、退職の意思表示を撤回することはできません。また、「退職願」を提出した場合も、使用者が退職を承認した後は、その申入れを撤回することはできないと解されています。
一方、地方公務員の場合は、「職員の任用は行政行為であると考えられるので、その辞職、すなわち職を離れるについても任命権者の行政行為によらなければならない。したがって、職員は、退職願いを提出することによって当然かつ直ちに離職するのではなく、退職願いは本人の同意を確かめるための手続であり、その同意を要件とする退職発令(行政行為)が行われてはじめて離職することとなるものである(高松高裁昭三五・三・三一判決行政裁判例集一一巻三号七九六頁)」と解されており、退職願を撤回することができるかどうかについては、「辞令交付前は信義則に反しない限り自由であるという判決がある(最高裁昭三四・六・二六判決(民事裁判集一三巻六号八四六頁)、同昭三七・七・一三判決(判例時報三一〇号二五頁))。この場合、どのような撤回が信義則に反するかということが問題となるが、最高裁判所の判決では、「(無制限に撤回を許すと)信義に反する退職願いの撤回によって、退職願いの提出を前提として進められた爾後の手続が徒労に帰し、個人の恣意により行政秩序が犠牲に供される結果となるので、免職辞令の交付前においても、退職願いを撤回することが信義に反すると認められるような特段の事情がある場合には、その撤回は許されないものと解するのが相当である。」と述べているにとどまり、これ以上具体的な基準は明らかではない。当局側が本人の退職の申出を信頼し、その後の人員配置などを進めてきた事情と、本人の撤回の時期、動機などとを相対的に勘案して個々のケースごとに判断するほかない」(「逐条地方公務員法」橋本勇著/学陽書房)と考えられています。
どこの地方公共団体においても、定年前早期退職者に係る勧奨制度が実施されていることと思いますが、みなさんのところでは、この制度の募集時期が早過ぎるということはないでしょうか?仄聞するところ、地方公共団体によっては、退職の日の半年以上前に募集を締め切るところさえあるようです。このような制度を実施している地方公共団体では、事情の変更等により退職願を撤回しようとする職員が発生することが予想されます。退職願の撤回については、「個々のケースごとに判断するほかない」ことは理解しますが、一定の基準が欲しいところです。
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