暴力団排除条例・外伝2

 「大阪府枚方市の暴力団員の男(46)が2012年から社会福祉行政に協力する民生委員を務めていたことがわかった。大阪府警が3日に男を詐欺容疑で逮捕する際、発覚した。市は4日に記者会見し、「大変申し訳ない」と謝罪した。厚生労働省に解嘱を求めるという。」(6月5日付け毎日新聞朝刊)
 ちなみに、非常勤特別職の都道府県の職員であると解されている民生委員(昭和26年3月14日、昭和26年4月26日等行政実例)の不祥事件に対し、枚方市が謝罪しているのは、同市が中核市であるため、地方自治法施行令第174条の49の3第1項の規定により、民生委員法及び民生委員法施行令の規定により都道府県が処理することとされている事務を処理するとされているからですが、この記事で気になったのは、民生委員が詐欺容疑で逮捕されたことではなく、暴力団員を民生委員に委嘱していたことが問題になっているところです。
 暴力団員=民生委員が不適当であるということは、誰でも理解できると思います。しかし、暴力団員であったとしても、当該市町村の議会の議員の選挙権を有し、「人格識見高く、広く社会の実情に通じ、且つ、社会福祉の増進に熱意のある者であつて児童福祉法(昭和22年法律第164号)の児童委員としても、適当である者」(民生委員法第6条第1項)が存在するかもしれません。現に、この暴力団員=民生委員は、自治会長やPTA役員を歴任し、評判も非常に良かったそうです。
 解嘱は、民生委員法第11条に規定されています。同条によると、厚生労働大臣が都道府県知事の具申に基づいて解嘱することができる場合は、⑴ 職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合、⑵ 職務を怠り、又は職務上の義務に違反した場合、⑶ 民生委員たるにふさわしくない非行のあった場合とされています。
 暴力団員であるということは、同条第何号に該当するのでしょうか?第3号でしょうか?今回のケースでは、詐欺容疑で逮捕されていることから同号が適用されると思われますが、本来、非行とは、違法又は反社会的な「行為」のことであり、単に暴力団員であることをもって非行というのには無理があるのではないでしょうか。制限すべき、又は禁止すべきは、暴力団員の行う暴力的要求行為等の行為であって、単に暴力団員又は暴力団密接関係者であることをもって市の事務及び事業等から排除しようとする暴力団排除条例には疑問を感じています。
 なお、暴力団員又は暴力団密接関係者であろうとなかろうと、自ら若しくは第三者の利益又は第三者の不利益を暴力的に図ろうとする人間を、一切擁護するつもりはありません。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 22:18 | 政策法務

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