−管理人のたわごとブログ− 名誉市民に対する年金の支給(後編)
一方、「地方自治法質疑応答集」(地方自治制度研究会編著/第一法規)では、名誉市民に対する恩典として、「⑴公営住宅の優先的入居および使用料の減免、⑵水道料の無料および市営電車の無料パスの譲与、⑶住民税の減免」の適否について、次のような回答があります。
「公営住宅の優先的入居については、地方自治法第二四四条第三項において、公の施設の利用につき不当な差別的取り扱いを禁止している。不当な差別的取り扱いかどうかは憲法第一四条をも参酌して決めるべきであり、合理的な根拠がありさえしたら不当な差別ではない。公営住宅法は入居者募集を公募によるとし、その他入居者資格、選考基準等をも定める。したがって優先的に入居させようとしても、法の所定の手続を踏んだうえ、しかも不当な差別的取り扱いはできないとされている。その場合には「特権」とは言えない。また功労に報いるための常識的・合理的な範囲でなら、公営住宅の場合も水道料金の場合も不当な差別的取り扱いとして違憲と断定する必要はないが、それが功労に報いる適当な方法であるかどうかの問題は残ろう。……(略)……
手数料の減免についても、使用料の場合と同様に公益性の見地、栄誉をたたえるにふさわしいかの点、減免規定の通常の運用方法等からみて、憲法上の疑義はないとしても運用としては好ましくないと言えよう。
地方税法は、市町村民税の減免について、第三二三条で「天災その他特別の事情がある場合において市町村民税の減免を必要とすると認める者、貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者その他特別の事情がある者に限り」当該市町村の条例の定めるところにより、市町村民税を減免することができる、としている。つまり、天災、生活扶助の場合等特別の事情があり、担税力がなくなった場合に限り、条例で定めるところにより減免できるのである。担税力はありながらも功績著しく、それをたたえる必要がある場合というのは、ここでの特別の事情には予想されていない。また一般国民ないし市民が一般的に負うべき租税のような負担の減免は、やはり特権的色彩がかなり強いと言わねばならず、住民税の減免はなし得ないと解する。
以上を通じ名誉市民に与えられるべき恩典とは、その称号のもっている意味合い、国によって授与される栄典の場合との権衡をも考慮すれば、精神的に名誉を表彰する範囲にとどめるのが運用上適当といえよう。」
自分としては、この「精神的に名誉を表彰する範囲にとどめるのが運用上適当といえよう」を支持したいです。
名誉市民が「栄典」に該当することについては疑義がないようですが、年金の支給が「特権」に該当するかどうかについては、解釈が分かれるところです。しかし、文化勲章の授章者に対して、直接、年金を支給することができないのは、憲法第14条に違反するおそれがあるからです。そのため、文化勲章とは別の制度として、文化功労者に対する年金制度が文化功労者年金法によって定められているはずです。ならば、年金は「特権」であって、名誉市民に年金を支給することは、憲法第14条に違反することになると解すべきではないでしょうか。
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