市長部局での地方公営企業の事務の執行

 地方公営企業の管理者は、「その権限に属する事務の一部を、当該地方公共団体の経営する他の地方公営企業の管理者に委任することができ」(地方公営企業法第13条の2)ますが、管理者の権限に属する事務を当該地方公共団体の長に委任し、又はその補助職員に委任し、若しくは補助執行させることはできない(昭和58年4月7日付け公営企業第一課回答)と解されています。そのため、事務委任によって、水道事業の契約事務を市長部局の契約検査課で行うことはできません。
 ところが、水道事業の契約事務を市長部局の契約検査課で行っている市町村を見掛けることがあります。これは、どんな方法によっているのでしょうか。
 おそらく、この場合は、契約検査課の職員を水道企業職員に併任することによって、当該職員に水道事業の契約事務を補助執行させているのではないかと考えられます。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 13:28 | その他 | コメント (0) | -

「ほか」

 用法の難しい用語の一つに「ほか」があります。旧「常用漢字表」(昭和56年内閣告示第1号)の頃は、一般的に、「「ほか」は原則として平仮名で表記する。「外」は、「隊長、副隊長外3人」というような表記に限って用いる」(「分かりやすい公用文の書き方」礒崎陽輔著/ぎょうせい)こととされていました。「他」には、「ほか」の読みがなかったからです。
 このことについて、「言葉に関する問答集・総集編」(文化庁/国立印刷局)には、次のようにあります。
「「ほか」を漢字で書き表す場合は、昔から「外」と「他」とが使われてきたが、昭和二十三年に告示された「当用漢字音訓表」には、「外」「他」ともに「ほか」という訓が掲げられなかった。そのため、法令・公用文・新聞・教科書等では、すべて「ほか」と仮名書きにしていたので、書き分けの問題は生じなかった。ところが、昭和四十八年に改定された「当用漢字音訓表」では、「外」に「ほか」という訓が新たに加わり、それが現行の「常用漢字表」にも引き続がれた。しかし、「ほか」という語の用法すべてに「外」を当てることには抵抗感もあるところから、「外」と「ほか」との書き分けの問題が生じたわけである。」
 結局、明確な書き分けの基準がないまま、平成22年11月30日に「常用漢字表」(平成22年内閣告示第2号)が改定され、「他」にも「ほか」という読みが加えられます。しかし、「法令における漢字使用等について」(平成22年11月30日付け内閣法制局総総第208号)では、「外・他」については、常用漢字表にあっても、仮名で表記するものとされています。
 ある自治体では、公用文と法令文の表記は、できるだけ統一して用いることとしていると聞いたことがあります。新「常用漢字表」が定められましたが、「ほか」は、原則として平仮名で表記する方が適当ではないかと思います。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 20:24 | 文書事務 | コメント (0) | -

民生委員

 行政実例(昭26年3月14日付け地自公発第88号、昭26年4月26日付け地自公発第174号等)によると、民生委員は、地方公務員法第3条第3項第2号に規定する非常勤特別職の都道府県の職員であると解されています。
 民生委員は、都道府県知事の推薦によって、厚生労働大臣が委嘱するものとされていること(民生委員法第5条)。民生委員には給与を支給しないものとし、その任期は3年とされていること(同法第10条)。その職務に関して、都道府県知事の指揮監督を受けること(同法第17条)。そして、民生委員に関する費用は、都道府県が負担すること(同法第26条)がその理由です。
 しかし、「逐条地方公務員法」(橋本勇著/学陽書房)には、次のようにあります。
「都道府県知事の推薦によって厚生大臣(現厚生労働大臣、以下この説明について同じ)が委嘱し、無報酬である民生委員(民生委員法五1、一〇)が都道府県の地方公務員であるとする行政実例「民生委員及び統計調査員等の身分取扱について」(昭二六・八・二七地自公発第三六〇号、岩手県総務部長あて公務員課長回答)があるが、これは、厚生省(現厚生労働省、以下この説明について同じ)の民生委員は国家公務員ではないという解釈について人事院が異存ないと回答したことを受けて、地方自治庁(現総務省)が従来の解釈を変更したものである。厚生省が民生委員は国家公務員でないとする理由は、@厚生大臣の委嘱は公法上の任命行為ではなく私法上の無名契約の一種とみなすべきものであること、A民生委員の職は名誉職であり、無報酬で共同社会に挺身奉仕すべきものであり、民生委員に関する費用は少額の実費弁償であっていわゆる人件費ではなく、国または都道府県の負担において一定の報酬の支給を受けつつ、その事務を執行するという意味ではないこと、B民生委員の本来の趣旨は、民生委員が率先民間篤志家として共同社会の世話役を引き受け、自発的かつ自主的に個々の任意保護に当たるものであり、国の機関として国と特別権力関係にたって上司の命令指揮の下に執務するものではないことである(昭二三・一二・二九社発第二〇六五号、人事院事務局法制部長あて厚生省社会局長)。人事院は、これに対して、結論に異存がないとするのみで、その理由は明らかにしていない。厚生省のこの理由が正しいとするならば、民生委員は公務員ではないということであり、国家公務員ではないからといって地方公務員であるということにはならないと思われるが、実務上は、この行政実例に従って取り扱われている。」
 また、次のようにもあります。
「附属機関は、執行機関が直接に住民に対して行政を執行するのに対し、その行政の執行の前提となる調停、審査、調査などを行うものであり、民生委員や児童委員は直接に行政の執行の一部を行うものであるから附属機関ではない。」地方公務員法第3条第3項第2号の「「委員」は、本号の構成が組織上の特殊性による分類であると考えられることからみて、執行機関または附属機関の委員のみを指すものというべきであるので、執行機関または附属機関の委員に該当しない者は、たとえ法令などにより設けられた委員または委員会の構成員であっても、本号には該当せず、第三号に該当するものといえよう(行実昭二六・三・一四地自公発第八八号および昭二六・四・二六地自公発第一七四号は民生委員を本条第三項第二号に該当するとしているが賛成できない。)。」
 前(2009年5月22日付け記事)にも書きましたが、この本、オモロイです。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 23:49 | 地方公務員法 | コメント (0) | -

地方独立行政法人の定款の変更

 市町村が地方独立行政法人を設立しようとするときは、議会の議決を経て定款を定め、都道府県知事の認可を受けなければなりません(地方独立行政法人法第7条)。そして、その定款を変更するには、原則として、設立団体の議会の議決を経て、都道府県知事の認可を受けなければ、その効力を生じません(同法第8条第2項本文)。
 定款に規定しなければならない事項は、同条第1項各号に掲げられており、同項第9号には、「資本金、出資及び資産に関する事項」が規定されています。これらは、同条第2項ただし書に規定する政令で定める軽微な変更ではありませんので、地方独立行政法人の資産が増減する場合は、定款を変更する必要があります。
 ところが、一般的な地方独立行政法人の定款には、次のように規定されています。
(資本金等)
第○○条 法人の資本金は、法第67条第1項の規定により○○市から法人に対し出資されたものとさ
 れる金額とする。
2 法第67条第1項に規定する承継される権利に係る財産のうち土地及び建物については、別表に 掲
 げるものとする。
 この規定によると、移行型地方独立行政法人が設立市から承継した土地及び建物のみが定款に規定されていることになりますので、これら以外の土地又は建物の増減があったとしても、定款を変更する必要はありません。しかし、定款に規定しなければならない事項として「資本金、出資及び資産に関する事項」と規定されていることを考えると、この定款の規定には疑問を感じます。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 22:56 | その他 | コメント (0) | -

「権利の乱用」の答申

「大阪市は23日までに、ほぼ同じ内容の情報公開請求を3年間で約370件繰り返した同市生野区の女性の請求を「権利の乱用」に当たるとして、市情報公開請求条例に基づいて却下したと発表した。権利乱用を理由とした却下は市で初めて。
 市によると、条例に権利乱用の禁止規定はないが、民法の禁止規定を適用。女性の請求を巡っては、市情報公開審査会が「同種の請求は却下すべきだ」と答申していた。
 女性は生活保護の医療扶助を巡り、同区役所などに2010年度は35件、11年度は90件、12年度(今年2月末時点)は241件の情報公開を請求。12年度は市の全請求の約1割を占め、市の業務に支障が出ていたという。
 存在しない文書の請求が多く、大半が非開示になった。不服申し立ても259件に上り、同審査会は今月15日の答申で「制度の趣旨から著しく乖離(かいり)している」として権利の乱用に当たると判断した。
 条例で禁止を明文化する自治体もあるが、明文化しないまま答申を踏まえて却下するのは珍しいという。市は今後、禁止の明文化など条例改正も検討する。」(3月23日付け日経新聞夕刊)
 大阪市情報公開審査会の答申(平成25年3月15日付け大情審第332号)を読ませていただきました。注目すべきは、「第5 審査会の判断」の「11 今後の対応について」でしょうが、ここまでいかんと却下でけへんかというのが正直な思いです。それと、こういう請求をする人は、却下すると、不服申立てをしてくるでしょうから、その場合は、どう対応するのでしょうね。不服申立てっちゅーのも、やっかいな制度です。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 22:45 | 情報公開・個人情報保護 | コメント (0) | -

人事異動H25

 今年度、おおさか政策法務研究会の会員で、市職員から大学教授に転身された方が現れました。おめでとうございます。また、この3月31日をもって定年退職された方も現れました。お疲れ様でした。お祝いしないといけませんね。
 ちなみに、自分は相変わらずです。今もまだ、平成24年度の仕事に追われています。
 なお、人事異動は、組織の活性化、不祥事の防止、人材の活用とその育成などを主な目的として行われるものであって、報復や情実によることは、あり得ません。万が一、報復人事と思われるような人事異動があったとしても、確かな証拠がない場合、それは、人事行政上の必要に応じて行われた適正な転任処分であるとみなされます。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 23:07 | 地方公務員法 | コメント (0) | -
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