教育委員会の意見聴取

 地方教育行政の組織及び運営に関する法律第29条は、「地方公共団体の長は、歳入歳出予算のうち教育に関する事務に係る部分その他特に教育に関する事務について定める議会の議決を経るべき事件の議案を作成する場合においては、教育委員会の意見をきかなければならない」と規定しています。
 この「特に教育に関する事務について定める議会の議決を経るべき事件の議案」とは、「教育委員会の所掌事務について定める条例案や、教育機関の設置のための事件決議、教育事務に関する契約で議会の議決を要するもの、教育事業のための地方債に関するもの等についての議案等特に教育事務に関するもののことであるが、必ずしも教育事務のみに関する議案だけではなく、特定の議案の一部分であっても、特に教育事務に関するものは含まれる。ただし、間接的に教育事務に影響を及ぼすものであっても、一般的な財産管理条例案等教育のみならず他の各部門に関する事務にも共通する一般的なものは含まない趣旨である」(「逐条解説地方教育行政の組織及び運営に関する法律」木田宏著/第一法規)と解されています。
 また、「「意見をきかなければならない」とあるが、このような規定がなくても地方公共団体の長は予算や条例案を作る場合にそれぞれの事務を所掌する各執行機関の意見を聞き、それぞれの意見を尊重すべきは当然であるが、特に本条のように規定されている以上意見を聞かないで関係議案を作成することは許されないものと解」(前掲書)されます。
 一方、昭和42年7月28日付けの行政実例では、「意見を聞くことは法律上義務づけられているわけであるが、その意見に従うかどうかは、特に法令の規定がない限り、これには拘束されないと解すべきであり、同法第二九条の規定も同様である。したがって、長と教育委員会の間に意見の調整ができない場合、長が教育委員会の意見どおりに予算を調製しなくても、法律上は別段問題はない。
 長が教育委員会の意見を聞く場合の方法、手続については、法律上特別の定めはないので、地方公共団体において任意の方法、手続によることができると解される。一般的には、予算査定時における事情聴取等をもってこれに代えているのが通例である。この場合、教育委員会に代わって教育長が説明したとしても、これは教育委員会の権限を教育長が補助執行したものと解するので、このことをもって、長が教育委員会の意見を聞かなかったと解することはできない」(「注釈地方自治関係実例集」地方自治制度研究会編/ぎょうせい)とされています。
 なお、教育委員会の委員の任命については、議会の同意を得る必要がありますが、この場合、長は、教育委員会の意見を聞く必要はないものと解されています(昭和33年11月27日行政実例)。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 20:15 | その他

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