死者の個人情報

 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律は、「個人情報」を生存する個人に関する情報に限っており、死者に関する情報を対象としていません。
 これは、「本法は、個人情報の取扱いに関連する個人の権利利益を保護することを目的とするものであるが、本人関与等により権利利益の保護を求めることができるのは生存する個人であることから、本法における「個人情報」の範囲を「生存する個人に関する情報」に限ったものである」と解されていることによります。そして、「死者に関する情報であっても、当該情報が遺族等の生存する個人に関する情報でもある場合(例えば、死者に関する情報である相続財産等に関する情報の中に遺族(相続人)の氏名の記載があるなど遺族を識別することができる場合において、当該情報は、死者に関する情報であると同時に、遺族に関する情報でもある。)には、生存する個人を本人とする個人情報として保護の対象になる」(「行政機関等個人情報保護法の解説」総務省行政管理局監修/社団法人行政情報システム研究所編集/ぎょうせい)と解されています。
 一方、地方公共団体の個人情報保護条例は、生存する個人に関する情報に限定し、死者に関する情報を対象としていないものもあれば、限定せず、死者に関する情報を対象としているものもあります。
 死者に関する情報を対象としていない地方公共団体では、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律と同様に、死者に関する情報のうち、請求者自身の個人情報でもあると考えられるものや社会通念上、請求者自身の個人情報とみなし得るほど請求者と密接な関係があるものについては、条例に基づく開示請求の対象になると解しているところが多いようです。例えば、親権者であったとしても、本人の死亡によって代理関係は消滅しますので、一定の関係がある場合には、死者の個人情報を請求者自身の個人情報とみなすことによって開示請求を認めることは、首肯できる解釈ではないかと思われます。
 一方、死者に関する情報を対象としている地方公共団体の個人情報保護条例では、特定の範囲にある遺族等が「開示請求をすることができる」と規定しています。この規定によって、特定の範囲にある遺族等には開示請求が認められていますが、特定の範囲にない遺族等の開示請求をどうするのかという問題が生じます。この件については、「実施機関が審査会の意見を聴いた上で必要があると認めるときは、開示請求をすることができる」と規定している例が多いようですが、現実の問題として、運用の困難な規定ではないでしょうか。
 なお、死者に関する情報の中には、死者のプライバシーに関するものや遺族等に対しても知られたくないと考えられるものが含まれている場合もありますので、死者に関する情報の全てを請求者自身の個人情報であるとして開示請求を認めることには問題があります。死者の個人情報については、この点についても、十分に配慮する必要があります。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 23:19 | 情報公開・個人情報保護

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