−管理人のたわごとブログ− 2012年9月
「議会は、会議規則の定めるところにより、議案の審査又は議会の運営に関し協議又は調整を行うための場を設けることができる。」(地方自治法第100条第12項)
この規定は、地方自治法の一部を改正する法律(平成20年法律第69号)により規定されたものです。従来から、地方公共団体の議会では、全員協議会や委員会協議会、広報委員会や図書委員会といった法定外委員会が設置されていましたが、これらの委員会における活動は、法律の規定に基づくものではないことから、費用弁償や公務災害の対象外とされてきました。それを会議規則に定めることによって、法律上の議会活動として明確にすることがその趣旨であるとされています。
一方、「この規定がどのような法的効果を持つことになるのかについては、明らかではない。すなわち、これまでも地方議会においては、本法に規定がある本議会、常任委員会、議会運営委員会及び特別委員会、議員の派遣といった議会の会議や活動のほか、本法には定めはないが、事実上、議会にかかわる会議や活動が行われているという実態がある。そして、そうした事実上の会議や活動(例えば、全員協議会、正副委員長会議など)が否定されていたわけではない。したがって、改正は創設的効果をもたらすものではないと言える。また、この規定をもって、この規定によらない議案の審査又は議会の運営に関し協議又は調整を行う場を否定する、すなわち、この規定による以外の協議又は調整の場をなくすることとするものでもなかろう。このように考えると、必ずしも、この規定によって「議会の活動の範囲」が明確になるとは言い難いのではないかと思われる」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)という意見もあります。
現実問題としては、費用弁償や公務災害の対象となること以外には、あまり意味のない規定なのかもしれません。
本市の議会は、「議案の審査又は議会の運営に関し協議又は調整を行うための場」を会議規則によって設けていません。そして、議決事件以外で議会に報告しておきたい案件については、全協案件と称して全員協議会で報告することとしています。
地方公共団体の議員や委員会の委員等については、特定の職を兼ねることが禁止されています。この兼業禁止規定に違反する任命行為が行われた場合の取扱いについては、前職を失うとする説(「逐条地方自治法第12次改定新版」273頁・長野士郎著/学陽書房)と、後の任命行為が無効であるとする説(昭和31年2月4日付け自丁公発第21号)とがあります。
この問題は、次のように解するのが適当ではないでしょうか。
「前説は、任用された者の直近の意思を尊重しようとするものであり、後者は、法律違反の任命には重大かつ明白な瑕疵があるとするものである。いずれの説にも一長一短があり、立候補制限に反して立候補した公職の候補者の場合のように立法的に解決することが望ましいが(公選法九〇)、解釈としては、兼職禁止に違反して行われた任命に重大な瑕疵があることは間違いないとしても、それが明白であるか否かは必ずしも明らかではない(明白であれば、そのような発令をすることはあり得ない)ことから、後者の発令を取消し得べき行政行為と観念するのが妥当であろう。そして、このように解するときは、本人に対していずれかの職を辞することを促し、速やかに違法状態が解消された場合は当該発令を取り消す必要はないこととなるが、そうすることができないときは、当該発令を取り消すことによって、違法状態を解消することになる。」(「逐条地方公務員法」橋本勇著/学陽書房)
なお、後の任命行為を有効とする場合には、その時点で前職の退職発令があったものとみなすことが適当であると解されます。
「息もできない夏」は、武井咲さん主演のフジテレビの連続ドラマです。
このドラマが無戸籍児をテーマにしたものであること、全国連合戸籍住民基本台帳事務協議会が取材協力をしていること、そして仕事上、この問題に直面したことがあったことから、毎週、見ていました。
初めて無戸籍児の存在を知ったのは、十数年前のことになります。住基マターでしたが、「出生届の提出に至らない子に係る住民票の記載について」(平成20年7月7日付け総行市第143号通知)のはるか前のことでしたので、当時は、衝撃を受けました。
改めてドラマを見ると……現実とは違いますね。当たり前のことですが……
「大阪市と共同設置している「府市エネルギー戦略会議」を含む大阪府の134の外部有識者会議について、議会の議決を経た条例に基づかずに設置したのは地方自治法違反にあたる可能性がある−として、府が9月議会に関連条例案などを提出し、施行されるまで会議を休止せざるを得ない状態に陥っていることが11日、分かった。」(9月12日付け産経新聞朝刊)
この問題、いつになってもなくなりませんね。地方自治法の無理解だけがその原因とも思えません。附属機関条例は、住民に対し、義務を課したり、権利を制限したりするものではありませんし、また、予算的にも委員の報酬ぐらいですから、条例制定(議会の議決)という面倒な手続を敬遠してしまうのではないかと個人的には考えています。これを予防する方法としては、外部から有識者を招く以上は、必ず報酬が発生しますので、財政サイドから附属機関をチェックするのも一つの方法かと思います。
なお、附属機関については、これまでにも「附属機関条例」と「続・附属機関条例」で記事にしています。興味のある方は、お立ち寄りください。
児童福祉法第6条の3第2項に規定する放課後児童健全育成事業を行う施設等への送迎に係る早出遅出勤務の導入について、ある地方公共団体が作成したQ&Aに次のようなものがありました。
Q 配偶者については、内縁関係であっても認められるのか?
A 配偶者とは、法律上の婚姻関係にある者をいう。よって、内縁関係にある者の子は、配偶者の子に
は当たらない。
人事給与関係においては、「配偶者」には「届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む」ものだと思っていました。例えば、一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律第20条第1項や一般職の職員の給与に関する法律第11条第2項第1号の「配偶者」は、「届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む」と規定されているからです。
確かに、人事院規則15−14(職員の勤務時間、休日及び休暇)第22条第1項第3号のドナー休暇や第11号の子の看護休暇については、「配偶者」に「届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む」とは規定されていませんので、全て含まれるということでもないのでしょう。
なお、同項第13号の忌引休暇及び第23条の介護休暇については、「配偶者(届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)」と規定されています。この違いは何なのか?実は、よく分かりません。
市議会議員選挙などの候補者が、町内会や自治会の推薦を受けているというようなことはありませんか?
自治会(従前の町内会)が選挙告示前に自治会の公認として単に誰を推すかを協議する程度に止まる限りは、公選法第129条違反とはならないという行政実例(昭和29年10月25日付け自丙管発第140号)があります。これは、いわゆる事前運動に関するものですが、このような行政実例が出されているということは、選挙の告示後であれば、自治会推薦は、特に問題はないと考えてもよさそうです。
一方、鳥取県HPの「県民の声」に対する回答には、次のようなものがあります。
「特定候補者の町内会推薦についてですが、この推薦自体は公職選挙法上、特に規制できるものではありません。しかしながら、本来、町内会は典型的な地縁に基づく組織で、生活の利便や地域の安全確保などを目的として結成されるものであり、その構成者である住民の政治理念や思想が一致することは現実にはほとんどないと考えられます。このような背景から、選挙人の自由な意思によって行われるべき選挙において町内会で推薦を行うことは好ましくないものと考えています。」
また、あるサイトでは、某県の選挙管理委員会の見解として、次のようなものも紹介されていました。
「自治会推薦について、自治会の全ての世帯の参加がある総会において、一人の反対もなく、全会一致で決定された場合であるならば、自治会推薦という言葉が使えるが、一人でも反対があった場合は使えない。したがって、現実問題として全会一致ということはあり得ないことから、自治会推薦という言葉は使えない。」
うーん……これが某県選管の正式見解なのかどうかの確認はできていませんが、地域によって、温度差のある問題であることに間違いはないでしょう。とにかく、公職選挙法は、よく分かりません。
なお、地方自治法第260条の2第9項は、「認可地縁団体は、特定の政党のために利用してはならない」と規定しています。「この規定は、認可を受けた地縁による団体が、特定の政党の党利党略に利用されて、その本来の目的の達成を阻害されることのないよう設けられた規定である。したがって、構成員各個人に対してその政党支持を制限するものではもとよりなく、また、団体として政治家個人の政治活動を地縁による団体の目的の範囲内において支援することを禁止する趣旨のものでもない」(「地方自治」平成3年6月号「自治会、町内会等の地縁による団体の権利義務について」)と解されています。
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