−管理人のたわごとブログ− 2012年8月
行政機関の保有する情報の公開に関する法律等の一部を改正する法律案が、現在衆議院で審議中です。
この法律案は、「情報公開制度が「国民の知る権利」を保障する観点から定められたものであることを明示(1条)するとともに、同制度を「国民の知る権利」の保障にふさわしい充実した内容に改正」するものとされていますが、注目したいのは、第5条に加えられた次のただし書です。
「ただし、当該開示請求が権利の濫用又は公の秩序若しくは善良の風俗に反すると認められる場合に該当するときは、この限りでない。」
いわゆる権利濫用禁止規定といわれるものですが、どのような場合を想定しているのでしょうか。参議院HPに掲載された答弁書によると、「開示請求の回数や開示請求に係る行政文書の量を重要な判断要素としつつも、これらを含めて個々の開示請求が全体として明らかに行政機関の事務の遂行を阻害するために行われ、又は行政文書の開示を受ける意思がないにもかかわらず行われたと認められるような場合には、同条ただし書に規定する場合に該当するものと考えられる」とあります。
一方、地方公共団体の情報公開条例の中には、利用者の責務として「権利を正当に行使しなければならない」や「権利を濫用してはならない」と規定しているのと合わせて、「実施機関は、権利の濫用に当たる請求があったと認めるときは、当該請求を拒否することができる」と規定しているものもあります。
これらの地方公共団体の情報公開事務の手引等によると、@「○○課の全ての文書」というような常識の範囲を超える大量請求が行われた場合、A公開決定を受けたのに交付を受けず、又は閲覧をせず、同一の請求が繰り返された場合、B特定の職員を誹謗中傷する請求が繰り返された場合、C文書の特定又は請求書の補正に応じない場合などは、権利濫用禁止規定に抵触するものと考えられているようです。
そもそも権利の濫用禁止は、条例に規定することによって発生するものではなく、一般法理(民法第1条第3項)として確立しているものですが、この法律案が成立すると、権利濫用禁止規定を条例に規定する地方公共団体が増えてくるのではないでしょうか。
「附則とは、当該法令の施行期日、経過措置、関係法令の改廃等に関する事項等当該法令の付随的事項を規定する部分の総括的名称であり」、一般的には、「@当該法令の施行期日に関する規定、A既存の他法令の廃止に関する規定、B当該法令の施行に伴う経過措置に関する規定、C既存の他法令の改正に関する規定、D当該法令の有効期限に関する規定、Eその他の規定」(「ワークブック法制執務」法制執務研究会編/ぎょうせい)の順に規定されます。
「その他の規定」としては、いわゆる検討条項、施行日前における事前行為、調整規定、本則の暫定措置や特例措置等が規定されます。
S君「特別職(非常勤)の報酬て、減額されてんと違うんけ?」
自分「おう。されてるで」
S君「例規集見たらされてへんやんけ」
自分「うん?あ、ここやねん。付則の第2項と第3項。ここに書いちゃあるんや。ほれ、「……から……ま
での間……同表に掲げる金額に100分の80を乗じて得た額とする」てな」
S君「おいや〜……何でまたこんなややこしいことすんねん?」
自分「期間限定の特例措置やからや。正味、報酬を減らしたんとは違うねんな。こういうとこに例規のス
トーリーっちゅーもんがあんねや」
S君「何やよう分からんけど、ややこしいのう……」
職員には、「法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない」(地方公務員法第35条)義務が課されています。この職務専念義務は、法令等及び上司の職務上の命令に従う義務(同法第32条)と合わせて、職務遂行上における最も基本的な義務であって、「この二つの義務が忠実に履行されることによって、地方公共団体の能率的で秩序ある事務の執行が確保され、住民の負託に応えることができるものである」(「逐条地方公務員法」橋本勇著/学陽書房)とされています。そして、職務専念義務を免除することが公務の正常な運営を妨げることなく、かつ、合理的な理由がある場合には、例外的にその免除が認められます。ただし、この場合には、法律又は条例に特別の定めのあることが必要となり、条例で定める場合として、「職務に専念する義務の特例に関する条例(案)」(昭和26年1月10日地自乙発第3号)第2条第2号には「厚生に関する計画の実施に参加する場合」が規定されています。
例えば、共済組合主催の球技大会に参加する場合は、当然に職務専念義務免除の対象となるとはいえませんが、当該球技大会が地公法第42条に規定する地方公共団体の職員の厚生に関する計画の一環とされているならば、職務専念義務を免除することができる(昭和42年9月4日行政実例)と解されています。しかし、一般的には、そのような球技大会を厚生計画の一環として位置付け、職務専念義務を免除することは困難であると考えられますので、年次有給休暇を取得して参加することになるのではないでしょうか。
自治大阪94年11月号の相談室に「国際マラソン大会出場職員に対する職務専念義務の免除について」という記事があります。回答としては、前述のとおりになっているのですが、当時、行政係内でも地域とスポーツのあり方や市としての関わり方が議論となり、場合によっては、職専免を認めてやってもよいのではないかという意見もありました。
そういう意味で、先日、洋々亭さんのフォーラムで話題になっていた「官公庁野球大会の取扱い」については、興味深く拝見させていただきました。
「大津市立中学2年の男子生徒が昨年、自殺した問題で、テレビに映った黒塗り文書の画像を視聴者が加工し、関係者の実名を割り出してネット上に流出させる事態が起きた。高画質が売りのデジタル時代にあって、放送局側の情報管理の甘さも浮き彫りになった。」(7月18日付け朝日新聞朝刊)
情報公開制度においても、マジックインクで黒塗りした部分は、マジックインクの品質が劣化したりしていると、コピーしてもトナーが透けて判読できる場合がありますので、注意が必要です。
一般的に、情報公開制度における非公開部分は、黒く塗りつぶされていることから、黒塗り部分といわれます。しかし、情報が紙媒体の場合、原本をコピーして黒塗りしたものを再度コピーしなければならないことや、それでも判読できる場合があることから、黒色の紙質のマスキングテープを貼付してコピーしている自治体が多いのではないでしょうか。
そう考えると、正しくは、黒塗り部分ではなく、黒貼り部分というべきなのでしょうが……どうでもえーか。
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