−管理人のたわごとブログ− 立法事実
「もとより法律の本質は、国民の権利義務に係わる「法律事項」を定めるところにある。つまり、罰則を設け、義務を課すなど国民の権利を制限し、あるいは新たな権利を付与する規定を設けるものである。したがってまず行うべきことは、「立法事実」すなわち、その立案しようとする法律案の背景となる社会的事実として、どのようなものがあるのかを整理することである。
そして、これに対していかなる法律事項を設けようとするのかを明らかにすることが必要である。たとえば、次のようなものがある。
@ 国民の特定の行動を規制しようとするものか
A 新たな税を課そうとするものか
B 既存法令の例外を設けようとするものか
C 特定の国民に独占的資格を付与しようとするものか
D 行政機関等の組織を定めるものか
こうして選択された法律事項が、果たしてその立法事実を解決するのに必要十分であるかについて、詳しく検討されなければならない。それがあまりに微温的で不十分なものであれば、立法事実を解決するどころか、その先送りという形となって、近い将来再び大きな問題となりかねない。さりとて、牛刀を持って鶏を割く類のようにあまりにも大げさで、かつ弾圧的なものであると、立法合理性が疑われるし、そもそも基本的人権にも抵触しかねない。また、特定の分野のみに偏った措置であると、法の下の平等原則上、問題となるであろうし、そもそも当該分野の集団の内部規律の問題として、法律をもって規律すべきではない事柄かもしれない。このようなもろもろの観点から十分に検討する必要がある。
これと同時に、その立案しようとする法律分野の関係法令、行政や企業等の実務慣行、判例、学説、個別事例、諸外国の例などを包括的に収集し、調査分析することが必要である。これらの作業が進展すればするほど、その立法事実の把握と法律事項の確定を、より一層適切で正確なものにすることができる。」(「実務立法技術」山本庸幸著/商事法務)
それなりの立法事実があるからこそ、市民に対して義務を課し、又は権利を制限する必要があるのであって、条例が制定されるのです。そうして制定された条例だからこそ、訴訟にも耐えることができるのです。
金があるときは箱モノを建設し、金がないときは条例を制定するというのも、政治なのかもしれません。しかし、立法事実のない条例を制定するというのは、どうなのでしょうか。思いつきだけで条例を制定するのは、怖いことです。
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立法事実の重要性はまさにご指摘のとおりです。
しかし、そんな地味なことを言っていると「政策法務がわかっていない」といわれるのが今の流れでは?
とりあえず既存の条例を適当にひっぱてきて、空き家対策条例などを作るのが現在求められている「政策法務」とされているように思います。
弁護士出身の某市長は条例を作るに当たっても、A案・B案・C案を作ってくるよう言うらしいです。
交渉のオプションと違うって!
投稿者 はじめましてです : 2012年7月16日 15:51
投稿者 : 2013年11月5日 12:01