地方公務員の範囲(後編)

 では、無報酬の「○○市特別顧問」というのは、当該市の地方公務員に該当するのでしょうか。
 どのような意図をもって任命したのか、前述の3つの要件を基に任命権者が判断することなのでしょうが、例えば、「大阪市特別顧問及び特別参与の設置等に関する要綱」を見てみると、「特別顧問」は、「……で、職員の身分を有しない者をいう」と規定されています。おそらく、ここでいう「職員」とは、一般職に限らず、特別職も含めた概念であると考えるべきではないでしょうか。そうであるがゆえに、特別顧問及び特別参与を要綱設置し、謝礼を支給する(報償費を支払う)と規定していると考えられるのです。
 しかし、大阪市における特別顧問及び特別参与の役割や謝礼金額等から考えると、ボランティアに対して謝礼を支給しているとは言い難いのではないでしょうか。この場合は、地方自治法第174条に規定する専門委員として規則設置し、報酬を支給することが、その実態にかなった措置ではないかと考えられます。
 報償費として注意すべき点は、「予算上は報償費として計上されていても実質上職員手当等の給与その他の給付であれば、違法支出となる」(「地方財務実務提要」地方自治制度研究会編集/ぎょうせい)と解されることです。「名目上記念品料として支給されたものであっても、当該支出が実質的に退職手当に類するものであると認められる限り違法たるを免れない」(昭和32年1月30日行政実例)とあるのが参考になるのではないでしょうか。
 一方、地方自治法第203条の2第1項には、「普通地方公共団体は、その委員会の委員、非常勤の監査委員その他の委員、自治紛争処理委員、審査会、審議会及び調査会等の委員その他の構成員、専門委員、投票管理者、開票管理者、選挙長、投票立会人、開票立会人及び選挙立会人その他普通地方公共団体の非常勤の職員(短時間勤務職員を除く。)に対し、報酬を支給しなければならない」と規定されています。
 民生委員法第10条で給与を支給しないと規定されている民生委員のような例外を除き、地方公共団体に勤務する全ての地方公務員には、議員報酬、報酬又は給与が支給されます。これらの報酬等は「普通地方公共団体が支給しなければならない義務を負うものであって、これを受ける権利は公法上の権利であるから、条例をもってこれを支給しないことと定めたり、あらかじめこれを受ける権利を放棄することはできない(大判大七、一二、一九参照)し、譲渡、相続、質入れすることができない」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)と解されています。
 しかし、地方公共団体によっては、無報酬とされている職も見受けられます。一般的に地方公務員に該当するかどうかの判断基準として、報酬の支払いは、重要な要件であったはずです。「一般的に地方公務員であるか否かを決める必要性も妥当性もない」のかもしれませんが、ややこしい時代になってきました。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 20:24 | 地方公務員法

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