袋とじの契約書の契印

 ある日の午後、公印管守中に交わされたQ&Aです。
T君「袋とじの契約書の割印て、ホンマはどこに押したらえーんで?」
自分「ウチやったら、ここ(契約書裏面の袋とじ用紙(製本テープ)の継ぎ目部分)に1つ押印するだけで
 ええ。自治体によってローカルルールはあると思うけどな」

 まず、厳密には、割印ではなく、契印です。「法律学辞典」(有斐閣)によると、割印とは「分離した2個の書類が相互に関連することを確証するために,両書類にまたがって1つの印章を押すこと,又はその印影」であって、契印とは「1個又は一連の書類が数紙又は数個の書類から成る場合に,その相互の連接が正当にされたことを確認するために,そのつづり目又は継ぎ目に1つの印象を押すこと,又はその印影」です。
 なお、同書には「割印の意で契印の語が用いられることもある(公証59)」とありますが、一般的には、割印と契印が逆の意味で用いられていることの方が多いのではないでしょうか。現に、大阪府の「文書事務の手引」では、契印と割印が逆の意味で用いられています。おそらく、割印に「契」の字のゴム印を使用したことが、本来の意味を逆転させた原因ではないかと考えられますが、これも一つのローカルルールなのでしょう。ややこしいので、ここでは、法律学辞典における意味で契印を用いることにします。
 次に、袋とじとは、「大辞林」(三省堂)によると、「書物・帳面の綴じ方の一。文字を書いた面が外側になるように紙を一枚ずつ二つ折りにし、折り目でない方を重ね合わせて綴じる方法」のことです。二つ折りにして綴じることで袋状(正しくは筒状だと思うのですが)に見えることから袋とじというようになったらしいのですが、両面印刷した用紙をそのまま綴じても袋とじというようですから、これも一般的には、帯状の紙等を用いて綴じる(製本化する)方法を慣例的に袋とじというのかもしれません。
 本市の場合、契約書の袋とじは、次のとおり行うことにしています。
@ A3サイズの用紙を二つ折りにし、折り目でない方を重ねて、端から約5ミリメートルのところを2か
 所、ステープラーで留めます。この場合のステープラーは、フラットクリンチが適当です。
A 市販の紙製の製本テープを契約書より少し長めにカットし、二つ折りにします。
B 契約書の綴じた部分に製本テープをかぶせます。
C 契約書裏面の製本テープの長さを契約書と同じ長さにカットします。
D 契約書表面の製本テープのシールをはがし、ステープルが隠れるように契約書に貼り付けます。こ
 のとき、契約書の長さを超える部分は、裏面に折り返して貼り付けます。
E 契約書裏面の製本テープのシールをはがし、契約書に貼り付けて完成です。
 契印は、契約書等が複数枚数になる場合に、改ざんや落丁を防止するための方法として用いられるものです。そして、袋とじは、各ページの綴じ目ごとに押印する手間を省略する方法として用いられています。契約書の表面及び裏面の製本テープの継ぎ目に契印を押している例も見受けられますが、このように袋とじをすることで、必ず裏面の製本テープをはがさなければならないことから、裏面1か所に契印すれば足りると考えるものです。
 なお、契印は、契約書に使用した印と同じ印を用いて、契約者全員が押印しなければなりませんが、契印がないからといって、契約が成立しないということはありません。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 20:19 | 文書事務

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