法律番号の訂正

 平成24年7月25日付(本紙第5849号)官報の正誤欄に次のような記載がありました。
「(誤)平成二十三年法律第   号 (正)平成   年法律第   号」
 これが、後日、「平成二十三年六月三日公布法律第六十一号民法等の一部を改正する法律附則第三十九条中「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律(平成  年法律第  号)」は、平成○○年○○月○○日労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律の公布により「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律(平成○○年法律第○○号)」となった。」と正誤欄に記載されるのでしょう。
 平成22年度の税条例の一部改正において、「地方開発事業団」を削る改正規定の施行日が「地方自治法の一部を改正する法律(平成22年法律第  号)の施行の日」とされながら、同法の公布が平成23年(地方自治法の一部を改正する法律(平成23年法律第35号))になってしまったことから、その改正の必要性について、話題になったことがありました。
 このことについては、参議院法制局の法制執務コラム集に「法律番号」という記事がありますので、引用しておきます。
「また、法律案中、引用すべき法律が未公布であれば法律番号を引用することはできないので、(平成12年法律第  号)というように法律番号は空白のままにします。当該法律案が成立して公布された後にその中で引用された未公布の法律が公布された場合、空白となっていた法律番号を補充し、官報の正誤欄にその旨を掲載することとなっています。これについては、引用される法律番号もその法律の一部であるから、それを補完する場合も法律改正によらなくてはいけないのではないか、という疑問が生ずるかもしれません。しかし、この場合、立法者の意思として引用する法律は明らかですし、空白の部分には引用する法律の法律番号が入ることも明白です。また、このような処理をすることは慣行として確立しています。
 ちなみに、法律案で未公布の法律を引用し、そのまま翌年になった場合、法律番号の年次の部分を改める必要が生じてきますが、過去には修正した例と正誤で処理した例とがあります。
 なお、連合国占領軍等の行為等による被害者等に対する給付金の支給に関する法律の一部を改正する法律(昭和42年法律第2号)では、第3条の改正規定で法律番号を空白にしたまま自らを引用していますが、同法は昭和41年に成立したものの公布が翌42年になり、法律番号の空白の補充とともに年次の部分を改める必要が生じました。しかし、執行上支障がなかったためか結局改正後の法律の第3条中にある法律番号は、年次が改められることも空白が補充されることもなく現在に至っていますが、これは珍しい例といえるでしょう。」
 公報を発行している場合は国に準じた取扱いが可能ですが、公報を発行していない場合はどうするのでしょうか。この場合も、やはり、掲示場に正誤表を掲示するのでしょうか?

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 20:18 | 法制執務 | コメント (1) | -

袋とじの契約書の契印

 ある日の午後、公印管守中に交わされたQ&Aです。
T君「袋とじの契約書の割印て、ホンマはどこに押したらえーんで?」
自分「ウチやったら、ここ(契約書裏面の袋とじ用紙(製本テープ)の継ぎ目部分)に1つ押印するだけで
 ええ。自治体によってローカルルールはあると思うけどな」

 まず、厳密には、割印ではなく、契印です。「法律学辞典」(有斐閣)によると、割印とは「分離した2個の書類が相互に関連することを確証するために,両書類にまたがって1つの印章を押すこと,又はその印影」であって、契印とは「1個又は一連の書類が数紙又は数個の書類から成る場合に,その相互の連接が正当にされたことを確認するために,そのつづり目又は継ぎ目に1つの印象を押すこと,又はその印影」です。
 なお、同書には「割印の意で契印の語が用いられることもある(公証59)」とありますが、一般的には、割印と契印が逆の意味で用いられていることの方が多いのではないでしょうか。現に、大阪府の「文書事務の手引」では、契印と割印が逆の意味で用いられています。おそらく、割印に「契」の字のゴム印を使用したことが、本来の意味を逆転させた原因ではないかと考えられますが、これも一つのローカルルールなのでしょう。ややこしいので、ここでは、法律学辞典における意味で契印を用いることにします。
 次に、袋とじとは、「大辞林」(三省堂)によると、「書物・帳面の綴じ方の一。文字を書いた面が外側になるように紙を一枚ずつ二つ折りにし、折り目でない方を重ね合わせて綴じる方法」のことです。二つ折りにして綴じることで袋状(正しくは筒状だと思うのですが)に見えることから袋とじというようになったらしいのですが、両面印刷した用紙をそのまま綴じても袋とじというようですから、これも一般的には、帯状の紙等を用いて綴じる(製本化する)方法を慣例的に袋とじというのかもしれません。
 本市の場合、契約書の袋とじは、次のとおり行うことにしています。
@ A3サイズの用紙を二つ折りにし、折り目でない方を重ねて、端から約5ミリメートルのところを2か
 所、ステープラーで留めます。この場合のステープラーは、フラットクリンチが適当です。
A 市販の紙製の製本テープを契約書より少し長めにカットし、二つ折りにします。
B 契約書の綴じた部分に製本テープをかぶせます。
C 契約書裏面の製本テープの長さを契約書と同じ長さにカットします。
D 契約書表面の製本テープのシールをはがし、ステープルが隠れるように契約書に貼り付けます。こ
 のとき、契約書の長さを超える部分は、裏面に折り返して貼り付けます。
E 契約書裏面の製本テープのシールをはがし、契約書に貼り付けて完成です。
 契印は、契約書等が複数枚数になる場合に、改ざんや落丁を防止するための方法として用いられるものです。そして、袋とじは、各ページの綴じ目ごとに押印する手間を省略する方法として用いられています。契約書の表面及び裏面の製本テープの継ぎ目に契印を押している例も見受けられますが、このように袋とじをすることで、必ず裏面の製本テープをはがさなければならないことから、裏面1か所に契印すれば足りると考えるものです。
 なお、契印は、契約書に使用した印と同じ印を用いて、契約者全員が押印しなければなりませんが、契印がないからといって、契約が成立しないということはありません。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 20:19 | 文書事務 | コメント (0) | -

一寸五分

「一寸の虫にも五分の魂 小さな者・弱い者でも、それ相応の意地や感情はもっているから決してばかにしてはならない。」(「大辞林」三省堂)
 実は、このことわざを省略して「一寸五分」というのが、ブログタイトルの候補の一つでした。結局、「反則法制」になってしまいましたが……

 例規審査中、悪魔がささやきます。
「もうええやんけ。どうせパクッたアクセサリー条例やし。誰も分かれへんて」
 ギリギリのところで、五分の魂が逆らいます。
「そんなわけにいくかい」と。
 さて、ヒアリングしましょうか。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 19:22 | その他 | コメント (0) | -

第18回自治体法務合同研究会水戸大会

 第18回自治体法務合同研究会が、7月14日(土)及び15日(日)、茨城県水戸市で開催されます。
 開催テーマは、「誰でも法務・どこでも法務!!〜誰の身近にもある共通言語・共通ツールへ「原点回帰」〜」です。
 詳しくは、こちらのHPを御覧ください。
 茨城県、市長会及び町村会を始め、水戸市、笠間市に茨城町と後援していただいているんですね(確か、厚木、札幌もそうやったかな)。この辺の環境は、大阪から見ると羨ましいです。
 今回も所要により参加できませんが、大会の成功をお祈りしています。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 20:25 | 政策法務 | コメント (0) | -

立法事実

「もとより法律の本質は、国民の権利義務に係わる「法律事項」を定めるところにある。つまり、罰則を設け、義務を課すなど国民の権利を制限し、あるいは新たな権利を付与する規定を設けるものである。したがってまず行うべきことは、「立法事実」すなわち、その立案しようとする法律案の背景となる社会的事実として、どのようなものがあるのかを整理することである。
 そして、これに対していかなる法律事項を設けようとするのかを明らかにすることが必要である。たとえば、次のようなものがある。
 @ 国民の特定の行動を規制しようとするものか
 A 新たな税を課そうとするものか
 B 既存法令の例外を設けようとするものか
 C 特定の国民に独占的資格を付与しようとするものか
 D 行政機関等の組織を定めるものか
 こうして選択された法律事項が、果たしてその立法事実を解決するのに必要十分であるかについて、詳しく検討されなければならない。それがあまりに微温的で不十分なものであれば、立法事実を解決するどころか、その先送りという形となって、近い将来再び大きな問題となりかねない。さりとて、牛刀を持って鶏を割く類のようにあまりにも大げさで、かつ弾圧的なものであると、立法合理性が疑われるし、そもそも基本的人権にも抵触しかねない。また、特定の分野のみに偏った措置であると、法の下の平等原則上、問題となるであろうし、そもそも当該分野の集団の内部規律の問題として、法律をもって規律すべきではない事柄かもしれない。このようなもろもろの観点から十分に検討する必要がある。
 これと同時に、その立案しようとする法律分野の関係法令、行政や企業等の実務慣行、判例、学説、個別事例、諸外国の例などを包括的に収集し、調査分析することが必要である。これらの作業が進展すればするほど、その立法事実の把握と法律事項の確定を、より一層適切で正確なものにすることができる。」(「実務立法技術」山本庸幸著/商事法務)
 それなりの立法事実があるからこそ、市民に対して義務を課し、又は権利を制限する必要があるのであって、条例が制定されるのです。そうして制定された条例だからこそ、訴訟にも耐えることができるのです。
 金があるときは箱モノを建設し、金がないときは条例を制定するというのも、政治なのかもしれません。しかし、立法事実のない条例を制定するというのは、どうなのでしょうか。思いつきだけで条例を制定するのは、怖いことです。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 19:43 | 政策法務 | コメント (1) | -

地方公務員の範囲(後編)

 では、無報酬の「○○市特別顧問」というのは、当該市の地方公務員に該当するのでしょうか。
 どのような意図をもって任命したのか、前述の3つの要件を基に任命権者が判断することなのでしょうが、例えば、「大阪市特別顧問及び特別参与の設置等に関する要綱」を見てみると、「特別顧問」は、「……で、職員の身分を有しない者をいう」と規定されています。おそらく、ここでいう「職員」とは、一般職に限らず、特別職も含めた概念であると考えるべきではないでしょうか。そうであるがゆえに、特別顧問及び特別参与を要綱設置し、謝礼を支給する(報償費を支払う)と規定していると考えられるのです。
 しかし、大阪市における特別顧問及び特別参与の役割や謝礼金額等から考えると、ボランティアに対して謝礼を支給しているとは言い難いのではないでしょうか。この場合は、地方自治法第174条に規定する専門委員として規則設置し、報酬を支給することが、その実態にかなった措置ではないかと考えられます。
 報償費として注意すべき点は、「予算上は報償費として計上されていても実質上職員手当等の給与その他の給付であれば、違法支出となる」(「地方財務実務提要」地方自治制度研究会編集/ぎょうせい)と解されることです。「名目上記念品料として支給されたものであっても、当該支出が実質的に退職手当に類するものであると認められる限り違法たるを免れない」(昭和32年1月30日行政実例)とあるのが参考になるのではないでしょうか。
 一方、地方自治法第203条の2第1項には、「普通地方公共団体は、その委員会の委員、非常勤の監査委員その他の委員、自治紛争処理委員、審査会、審議会及び調査会等の委員その他の構成員、専門委員、投票管理者、開票管理者、選挙長、投票立会人、開票立会人及び選挙立会人その他普通地方公共団体の非常勤の職員(短時間勤務職員を除く。)に対し、報酬を支給しなければならない」と規定されています。
 民生委員法第10条で給与を支給しないと規定されている民生委員のような例外を除き、地方公共団体に勤務する全ての地方公務員には、議員報酬、報酬又は給与が支給されます。これらの報酬等は「普通地方公共団体が支給しなければならない義務を負うものであって、これを受ける権利は公法上の権利であるから、条例をもってこれを支給しないことと定めたり、あらかじめこれを受ける権利を放棄することはできない(大判大七、一二、一九参照)し、譲渡、相続、質入れすることができない」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)と解されています。
 しかし、地方公共団体によっては、無報酬とされている職も見受けられます。一般的に地方公務員に該当するかどうかの判断基準として、報酬の支払いは、重要な要件であったはずです。「一般的に地方公務員であるか否かを決める必要性も妥当性もない」のかもしれませんが、ややこしい時代になってきました。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 20:24 | 地方公務員法 | コメント (0) | -
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