人事評価と分限処分(前編)

 大阪府の職員基本条例で問題になったものの一つが人事評価の手法です。同条例では、「相対評価(分布の割合を定めて区分し、職員がどの区分に属するかを相対的に評価する方法をいう。)」(同条例第15条第1項)を採用していますので、必ず全職員の5パーセントが最低ランクの職員として評価されることになります。
 障害者の人事評価は、どうするのでしょうね?
 そもそも公務員職場における人事評価は、その職務の性格から絶対的に正しい評価というものはできないということを原則として、様々な修正や工夫を加えた制度を模索しているところではなかったのではないでしょうか。同条例第14条第1項では、人事評価は、「職員の資質、能力及び執務意欲の向上を図ることを目的として行う」と規定していますが、このような人事評価が、同項の目的を達成できるかどうかは、甚だ疑問です。
 また、同条第2項は「人事評価の結果は、任用又は給与に適正に反映しなければならない」と、第3項は「勤勉手当については、人事評価の結果を明確に反映しなければならない」と規定しています。人事評価の結果で給与に差をつけ、ヤル気を引き出そうとするもので、既に類似の制度を実施している市町村もありますが、人件費の総額が増えないのであれば、誰かの給与が増えた分は、必ず誰かの給与が減ることになります。これまでの経験から感じたことは、地方公務員という職業を選んだ人間の大半は、金のためだけに仕事しているのではないということです。そういう大部分の人間が、仲間の給与を奪い合うことになる人事評価にヤル気を出すとは考えられないのです。
 さらに、この条例では、人事評価の結果で分限処分をしようとしています。
 地方公務員法第27条第2項は、「職員は、この法律で定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、若しくは免職され」ないと規定し、同法第28条第1項で「その意に反して、これを降任し、又は免職することができる」場合として、「@勤務実績が良くない場合、A心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合、B前2号に規定する場合の外、その職に必要な適格性を欠く場合、C職制若しくは定数の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合」を挙げています。そして、同条第3項は、「職員の意に反する降任、免職、休職及び降給の手続及び効果は、法律に特別の定がある場合を除く外、条例で定めなければならない」と規定しています。
 地方公務員法第27条第2項の規定により、同法で定める事由による場合でない限り、その意に反して降任又は免職の処分を受けることはないと法律で規定されているにもかかわらず、条例で降任又は免職の基準を定めることが可能なのでしょうか?

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 20:34 | 地方公務員法 | コメント (0) | -

○○法の施行に伴う関係条例の整理に関する条例

 「○○法の施行に伴う関係法律の整理に関する法律」が制定されるのは、ある法律の施行に伴い、多数の関係法律の改廃を必要とする場合で、この場合には、他法令の改廃事項のみを別に取り出し、これらを一括して単独法として規定する。最近では、ある法律の施行に伴う改正ではあるが必然的な改廃とまではいえないものも含めて「○○法の施行に伴う関係法律の整備(等)に関する法律」が制定されることが多い」(「ワークブック法制執務」法制執務研究会編/ぎょうせい)とされています。
 本市では、あまり題名に「整理」や「整備」を用いず、「○○条例等の一部を改正する(等の)条例」とすることが多いです。「整理(整備)条例」とすることによって、一定の制限を受けてしまうのが表向きの理由ですが、本音は、カッコ良すぎて、本市の例規として使用するのには抵抗があるからです。また、やたらと題名が長くなってしまうこともあります。
 例えば、株式会社ぎょうせいの「法令改廃情報」に「【更新版】住民基本台帳法の一部を改正する法律及び出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律〔例規整備〕」がアップされています。そこには、「4 複数例規をまとめて改正する場合の題名について」が追記されており、「住基改正法及び入管法等改正法の施行に伴い複数の条例の改正を行う場合において」、「「整理に関する条例」又は「整備に関する条例」とする場合」は、「次のような題名とすることが通常です」とされています。
「住民基本台帳法の一部を改正する法律及び出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に
 基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律の施行
 に伴う関係条例の整理に関する条例」
 「整理(整備)条例」については、自治体ごとにローカルルールがあるかもしれませんが、正確には、このような題名になります。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 21:16 | 法制執務 | コメント (0) | -

専門委員

 「専門委員は、専門の学識経験を有する者の中から、普通地方公共団体の長がこれを選任する」(地方自治法第174条第2項)と規定されています。
 職務上において同様の性格を有しながら、その設置には、合議制の附属機関が必ず法律又は条例の根拠が必要であるのに対し、独任制の専門委員は、次のように解されています。
「長が専門委員を選任すれば、当該地方公共団体に置かれたことになるのであって、その設置について必ずしも、特別に条例なり規則の規定が必要であると解すべきではない。行政実例(昭二三、二、二六・昭二八、七、一)は、専門委員は、規則で置く方が適当であるとしているが、条例をもって設置及び定数を定めることも、妨げるものではないが、法文上からもまた専門委員の機能からしても、必ずそのような措置を必要とすると解する必要はないであろう。むしろ、第二項の規定は、規則で定める必要もないことを示していると解するのが妥当であろう」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)。
 その設置が容易であるにもかかわらず、附属機関に比べると、専門委員はあまり活用されているようには思われません。独任制というのがネックになっているのではないでしょうか。
 なお、専門委員は、地方公務員法第3条第3項第2号に規定する特別職であるとされています。同項第3号の顧問や参与等の設置規則を置いている市町村もありますが、その内容からは、職の設置規則ではなく、専門委員の設置規則と思われるものがあります。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 20:09 | 地方自治法 | コメント (0) | -

補助参加と議会の議決

 「普通地方公共団体がその当事者である審査請求その他の不服申立て、訴えの提起(普通地方公共団体の行政庁の処分又は裁決(行政事件訴訟法第3条第2項に規定する処分又は同条第3項に規定する裁決をいう。以下この号、第105条の2、第192条及び第199条の3第3項において同じ。)に係る同法第11条第1項(同法第38条第1項(同法第43条第2項において準用する場合を含む。)又は同法第43条第1項において準用する場合を含む。)の規定による普通地方公共団体を被告とする訴訟(以下この号、第105条の2、第192条及び第199条の3第3項において「普通地方公共団体を被告とする訴訟」という。)に係るものを除く。)、和解(普通地方公共団体の行政庁の処分又は裁決に係る普通地方公共団体を被告とする訴訟に係るものを除く。)、あっせん、調停及び仲裁に関すること」(地方自治法第96条第1項第12号)については、議会の議決が必要とされています。
 では、例えば、A法人を被告とする訴訟にB市が民事訴訟法第第42条の規定による補助参加をする場合、議会の議決は必要でしょうか?
 「「訴え」とは、原告が被告を相手方として裁判所に対し権利又は法律関係の存否を主張し、その存否につき自己の有利な判決を求める要求であり、したがって、判決による保護行為を要求するものでないものは「訴え」ではないから、支払督促の申立(民訴三八三)、保全命令(仮差押及び仮処分)の申立(民事保全法一三)、再生手続開始の申立(民事再生法二一)等は、「訴え」には該当しない(行実昭三九、一〇、二参照)」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)と解されています。
 また、補助参加とは、「係属中の民事訴訟の結果について法律上の利害関係をもつ第三者が当事者の一方を補助するため訴訟参加をすること」をいい、「補助参加人は原則として被参加人のために可能な一切の訴訟行為ができる」(「新法律学辞典」有斐閣)とされています。
 しかし、補助参加人は、自己の訴訟を遂行して判決を受けるわけではないことから、当該判決の既判力や執行力は及ばず、その参加的効力を受けるものであるとされています。したがって、補助参加人がその当事者として判決による保護行為を要求するものではないと解され、議会の議決は必要ありません。
 なお、補助参加は、訴訟参加の中でも当事者として訴訟に参加する独立当事者参加(民事訴訟法第47条)や共同訴訟参加(同法第52条)とは取扱いを異にしますので、注意が必要です。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 21:40 | 地方自治法 | コメント (0) | -

ある通知

 4月のある日、住民基本台帳法の一部を改正する法律及び出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律の施行に伴う関係例規について、関係課とヒアリングをしていたところ、次のような通知が出てきました。
「大阪府後期高齢者医療広域連合規約の一部改正にかかる取扱いについて」(平成24年3月22日付け大高総第873号通知)です。この通知には、「本件は「規約の文言整理に留まり、表記記載があったとしても制度運営上、直接影響が生じるものではない。」ことから、今回は一部改正の取扱いを見送り、次回、規約の本文改正の必要が生じた際に併せて改正することといたします。」とあります。
 別にえーんですけど、こういう通知が出ると、一組とか事務委託とか、ほかにも影響が出るやろな〜と思っていたら……やっぱり出てきましたね……

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 10:22 | 地方自治法 | コメント (0) | -

刺青

 「市立児童福祉施設の職員が入所児童に入れ墨を見せていた問題を受け、大阪市は近く、全職員約3万7千人を対象に、入れ墨の有無などについて記名式アンケートを実施する方針を決めた。市役所職員は市民に接する機会が多いことから「人事配置上、把握する必要がある」(人事室幹部)として全ての職員に回答を求める。また、職員採用試験の受験資格に入れ墨がないことを条件に盛り込むことも検討しているという。」(4月30日付け産経新聞朝刊)
 所変われば品変わると言いますが、関東や東北などの市町村の職員は、こういう記事を見て、どう思っているのでしょうね。
 意外と「どこも似たようなもんやな」と思ってたりして……
 本市ですか?10年ぐらい前ですと、当然のようにいましたよ。TATTOOというより刺青を入れた職員が。ただ、今はどうなんでしょうか。よく分かりません。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 20:36 | 地方公務員法 | コメント (0) | -
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