−管理人のたわごとブログ− 2012年3月
「財政破綻一歩手前の大阪府泉佐野市は新たな歳入確保策として、企業から広告料をもらう代わりに市の名称を企業名や商品名に変更する自治体名の命名権(ネーミングライツ)売却に乗り出すことを決めた。」(3月21日付け読売新聞夕刊)
「川端達夫総務相は23日の記者会見で、財政破綻の懸念を抱える大阪府泉佐野市が市名の命名権売却を検討していることについて「市名は安定的に同一の名称が用いられることが望ましい」と述べ、苦言を呈した。」(3月23日付け産経新聞夕刊)
「財政難の大阪府泉佐野市が市の名称のネーミングライツ(命名権)売却を検討している問題で、千代松大耕市長は27日、市議会全員協議会で検討内容を説明した。市の名称変更には議会の同意が必要で、市議からは「究極の身売り。金のためなら何をやってもいいのか」「泉佐野の恥」など批判的な意見が大勢を占める一方、「斬新ないい発想」と評価する声も上がった。」(3月28日付け産経新聞朝刊)
S君「エライ騒ぎになってるけど、市の名前て売れるんか?」
自分「売れるか、売ってもえーかはともかくとして、手続き的には、市の名称を変更する条例が可決され
たら可能やわのう」
S君「議決て、3分の2か?4分の3か?」
自分「いや、過半数やねん」
S君「えー!庁舎の場所変えんのん3分の2やのに、名前変えんのん過半数でえーんか?」
自分「自治法の3条1項で「地方公共団体の名称は、従来の名称による」て規定されてるしな。何ちゅー
ても、市の名前を売るっちゅーようなことは、想定してへんわい」
S君「ほか、手続きに問題はないんか?」
自分「3条4項でな、「あらかじめ都道府県知事に協議」てなってんやけど、協議するだけや。知事が不
同意でも条例ができたらオッケーや」
S君「市次第っちゅーことか」
自分「そうやな。昔は知事の許可が要ったんやけどな。地方分権一括法で改正されたんや」
S君「そうなんか。地方分権て、怖いのう」
「法令における漢字使用等について」(平成22年11月30日付け内閣法制局総総第208号内閣法制次長通知)によると、1の⑹で「配付」と「配布」については、「「配付」は交付税及び譲与税配付金特別会計のような特別な場合についてのみ用いる。それ以外の場合は「配布」を用いる。」とされています。
また、「言葉に関する問答集・総集編」(文化庁/国立印刷局)によると、「「くばる」意味の語に「はいふ」というのがあり、漢字で書き表すとき、「配布」と「配付」が使い分けられている。
これを漢字の意味から考えると、「布」は字訓が「しく」で、「広く行き渡らせる」意味を持っている。「布教・公布」などと用いるのがこれである。したがって、それに「配(くばる)」を組み合わせた「配布」は、「広く一般に配り渡す」意味の語である。「選挙公報を配布する」「配布刊行物」「配布網」などは、この意味の用例である。
これに対し、「付」の方は字訓が「つく・つける」で、「そこまで持っていく」意味を持っている。「付託・送付」などと用いるのがこれである。したがって、それに「配(くばる)」を組み合わせた「配付」は、「特定の人々に一人一人渡す」意味の語である。「資料を配付する」「配付議案」「配付額」などは、この意味の用例である」とあります。
「配付」と「配布」は、厳密には意味の異なる語ですが、「規律・紀律→規律」や「状況・情況→状況」と同様に、同義で異表記の語として「法令用語改正要領」(昭和29年11月法制局総発第89号)により、「配付・配布→配布」に統一されたものです。したがって、同要領の制定前に施行された法令では、「配付」が用いられており、国会法第73条や衆議院規則第28条第2項などにその用例を見ることができます。
事務の例示規定を削除したのは、「第1条の2を新設し、地方公共団体の役割を明示したこと、また、事務例示規定を存置することにより地方公共団体が処理する事務の範囲が限定的に解されないようにすること」(「Q&A改正地方自治法のポイント」地方自治制度研究会編/ぎょうせい)がその理由です。
同書の解説には、「地方公共団体の事務の例示規定(旧第2条第3項)は、第2項に普通地方公共団体の事務が規定されているが、規定の形式が抽象的であり、解釈上種々の疑問を生ずるのみならず、一般の理解を得ることが困難な実情にあったことから、普通地方公共団体の事務の内容を具体的に例示するものとして、昭和23年の法改正において設けられたものである。
この例示規定の内容については、従来より、
@ 例示された事務がすべて現実に地方公共団体が処理することとなるものではなく、ただし書の規定
により普通地方公共団体としては処理できないものが少なからず含まれていること
A 地方公共団体の事務の例示ではあるが、機関委任事務として処理されている事務が含まれている
こと
などの問題点も指摘されていた。」
「今回の改正においては、新たに第1条の2を設け、地方公共団体が地域における行政を自主的かつ総合的に処理する役割を広く担うことを規定した。
また、地方公共団体が広範な事務処理権能を有することは、今日においては広く国民に理解されているところであり、事務の例示規定はかえって事務の範囲を限定するような誤解を与えかねないことから、この際、削除することとした。
なお、地方分権推進委員会の第1次勧告では「地方公共団体の事務の例示の規定については、廃止することを含め抜本的に見直すものとする。」とされたのを受けて、地方分権推進計画では「なお、これに関連して、地方自治法における事務の例示の規定(地方自治法第2条第3項)については、これを廃止する。」とされているところである。」とあります。
以前、ある事業担当課のS君から「自治法に役所のせんならん仕事て書いてましたやんか。あれ、どこいったんですか」と聞かれたことがありました。そこで、同書を示して説明したところ、S君は、「そうやったんすか……けど、置いといてほしかったっすねえ」と言ったのです。その理由は、現場の第一線で仕事をしていると、市民の要求が際現なく拡大し、本来、市がすべき仕事なのかどうか疑問を感じるようなものが増えてきている。そういうときのため、法律上、一定の基準が欲しいというものでした。
事務の例示規定によって市町村の事務が確定するわけではありませんが、経常的経費を無理やりにでも一律削減して、花火を上げたりイベントをしたりしようとしているのを見ていると、この規定は、あった方が良かったのではないかと思うのです。
「A 普通地方公共団体は、地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により
処理することとされるものを処理する。
B 市町村は、基礎的な地方公共団体として、第5項において都道府県が処理するものと規定されて
いるものを除き、一般的に、前項の事務を処理するものとする。」(地方自治法第2条第2項及び第3
項)
第2項の規定は「普通地方公共団体が一定の行政区域内において行政機能を担う統治団体であり、住民福祉の向上を目的として、統治の作用としての事務一般を広く処理する権能を有することを明らかにするもの」であり、第3項の規定は「市町村が住民に最も身近な普通地方公共団体であり、住民の日常生活に直結する事務処理を幅広く包括的にその任務とすることを明らかにしたものである」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)と解されています。
地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律による改正前の地方自治法第2条第2項は、公共事務、団体委任事務及び行政事務を普通地方公共団体の事務として規定し、同条第3項では、その事務を例示していました。引用すると、次のとおりです。
「A 普通地方公共団体は、その公共事務及び法律又はこれに基く政令により普通地方公共団体に属
するものの外、その区域内におけるその他の行政事務で国の事務に属しないものを処理する。
B 前項の事務を例示すると、概ね次の通りである。但し、法律又はこれに基く政令に特別の定がある
ときは、この限りでない。
一 地方公共の秩序を維持し、住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持すること。
二 公園、運動場、広場、緑地、道路、橋梁、河川、運河、溜池、用排水路、堤防等を設置し若しくは
管理し、又はこれらを使用する権利を規制すること。
三 上水道その他の給水事業、下水道事業、電気事業、ガス事業、軌道事業、自動車運送事業、船
舶その他の運送事業その他企業を経営すること。
四 ドック、防波堤、波止場、倉庫、上屋その他の海上又は陸上輸送に必要な施設を設置し若しくは
管理し、又はこれらを使用する権利を規制すること。
五 学校、研究所、試験場、図書館、公民館、博物館、体育館、美術館、物品陳列所、公会堂、劇
場、音楽堂その他の教育、学術、文化、勧業、情報処理又は電気通信に関する施設を設置し若しく
は管理し、又はこれらを使用する権利を規制し、その他教育、学術、文化、勧業、情報処理又は電
気通信に関する事務を行うこと。
六 病院、隔離病舎、療養所、消毒所、産院、住宅、宿泊所、食堂、浴場、共同便所、公益質屋、授
産施設、救護施設等の保護施設、保育所、児童養護施設、児童自立支援施設等の児童福祉施
設、老人ホーム等の老人福祉施設、身体障害者更生援護施設、留置場、屠場、じんかい処理場、
汚物処理場、火葬場、墓地その他の保健衛生、社会福祉等に関する施設を設置し若しくは管理
し、又はこれらを使用する権利を規制すること。
七 清掃、消毒、美化、公害の防止、風俗又は清潔を汚す行為の制限その他の環境の整備保全、
保健衛生及び風俗のじゅん化に関する事項を処理すること。
八 防犯、防災、罹災者の救護、交通安全の保持等を行うこと。
九 未成年者、生活困窮者、病人、老衰者、寡婦、身体障害者、浮浪者、精神異常者、めいてい者
等を救助し、援護し若しくは看護し、又は更生させること。
十 労働組合、労働争議の調整、労働教育その他労働関係に関する事務を行うこと。
十一 森林、牧野、土地、市場、漁場、共同作業場の経営その他公共の福祉を増進するために適当
と認められる収益事業を行うこと。
十二 治山治水事業、農地開発事業、耕地整理事業、公有水面埋立事業、都市計画事業、土地区
画整理事業その他の土地改良事業を施行すること。
十三 発明改良又は特産物等の保護奨励その他産業の振興に関する事務を行うこと。
十四 建造物、絵画、芸能、史跡、名勝その他の文化財を保護し、又は管理すること。
十五 普通地方公共団体の事務の処理に必要な調査を行い、統計を作成すること。
十六 住民、滞在者その他必要と認める者に関する戸籍、身分証明及び登録等に関する事務を行う
こと。
十七 消費者の保護及び貯蓄の奨励並びに計量器、各種生産物、家畜等の検査に関する事務を行
なうこと。
十八 法律の定めるところにより、建築物の構造、設備、敷地及び周密度、空地地区、住居、商業、
工業その他住民の業態に基く地域等に関し制限を設けること。
十九 法律の定めるところにより、地方公共の目的のために動産及び不動産を使用又は収用するこ
と。
二十 当該普通地方公共団体の区域内の公共的団体等の活動の綜合調整をすること。
二十一 法律の定めるところにより、地方税を賦課徴収し、又は分担金、使用料、加入金若しくは手
数料を徴収すること。
二十二 基金を設置し、又は管理すること。
C 市町村は、基礎的な地方公共団体として、第6項において都道府県が処理するものとされている
ものを除き、一般的に、前項に例示されているような第2項の事務を処理するものとする。但し、第6
項第4号に掲げる事務については、その規模及び能力に応じて、これを処理することができる。」
この事務の例示規定、削除せずに残しておいてほしかったと思うのです。
以前、ある大学教授から、情報公開請求された情報に第三者情報が含まれている場合における当該第三者の権利保護規定は、適正に運用されているのかどうか聞かれたことがあります。
行政機関の保有する情報の公開に関する法律第13条は、次のように規定されています。
(第三者に対する意見書提出の機会の付与等)
第13条 開示請求に係る行政文書に国、独立行政法人等、地方公共団体、地方独立行政法人及び開
示請求者以外の者(以下この条、第19条及び第20条において「第三者」という。)に関する情報が記
録されているときは、行政機関の長は、開示決定等をするに当たって、当該情報に係る第三者に対
し、開示請求に係る行政文書の表示その他政令で定める事項を通知して、意見書を提出する機会を
与えることができる。
2 行政機関の長は、次の各号のいずれかに該当するときは、開示決定に先立ち、当該第三者に対し、
開示請求に係る行政文書の表示その他政令で定める事項を書面により通知して、意見書を提出する
機会を与えなければならない。ただし、当該第三者の所在が判明しない場合は、この限りでない。
⑴ 第三者に関する情報が記録されている行政文書を開示しようとする場合であって、当該情報が第
5条第1号ロ又は同条第2号ただし書に規定する情報に該当すると認められるとき。
⑵ 第三者に関する情報が記録されている行政文書を第7条の規定により開示しようとするとき。
3 行政機関の長は、前2項の規定により意見書の提出の機会を与えられた第三者が当該行政文書の
開示に反対の意思を表示した意見書を提出した場合において、開示決定をするときは、開示決定の日
と開示を実施する日との間に少なくとも2週間を置かなければならない。この場合において、行政機関
の長は、開示決定後直ちに、当該意見書(第18条及び第19条において「反対意見書」という。)を提出
した第三者に対し、開示決定をした旨及びその理由並びに開示を実施する日を書面により通知しなけ
ればならない。
ネットで公開されている情報公開審査会の答申事例を見ると、情報公開決定の取消しを求める第三者からの不服申立事例がありますので、おおむね、適正に運用されているのではないでしょうか。
ただし、ほとんどの市町村は、本市と同様に、第1項に規定する任意的意見聴取を行ったこともなければ、第2項に規定する義務的意見聴取を行わなければならないような公開決定をしたこともないのではないでしょうか。
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