−管理人のたわごとブログ− 2012年2月
みなさんのところでは、保育所の経営責任者をしている議員はいませんか?また、町内会長をしている議員はいませんか?これらは、地方自治法第92条の2に規定する議員の兼業禁止規定に該当しないのでしょうか?
議員が保育所の経営責任者を兼ねることは、兼業禁止規定に該当しません。
「民法上「請負」とは、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してこれに報酬を与えることを約する契約とされている(民法六三二)が、地方自治法第九二条の二の「請負」とは、このような民法所定の請負のみならず、それと実質を同じくする継続的、反復的に行われる私法上及び公法上のいっさいの取引契約をいうものであるとされている。しかし、また同時にその反面、継続的、反復的な取引契約であっても、この立法趣旨に反するおそれがまったくないものは、請負に該当しない」(「地方自治法質疑応答集」地方自治制度研究会編著/第一法規)と解されています。
そして、「保育所が、児童福祉法第24条の規定に基づく措置により、市町村長から委託を受けて児童等の保育を行っている場合、この保育所の経営責任者が当該市町村の議会の議員であっても、」保育所は、同条の規定に基づく「措置により、市町村長から児童等の保育の委託を受けたときは、正当の事由がないかぎりこれを拒み得ないものであり(同法第46条の2)、保育所の行なう保護の基準、措置に要する費用についても法律により規制されているので(同法第45条、第51条)、保育の委託については、契約の成立及び契約内容が一方的に定められ、当事者の意思によってそれが左右される余地はほとんどないから、本条の規定の趣旨に照らし本条の請負に該当しないものと解」(昭和39年12月7日行政実例)されています。
一方、様々な分野で市町村から委託を受けている町内会の会長を議員が兼ねることは、兼業禁止規定に該当する可能性があります。「議員・職員のための議会運営の実際7」(地方議会研究会編著/自治日報社)には、次のような質疑応答があります。
「議 員 町内会長をしている議員が市営の児童公園の維持管理業務委託契約を締結することは、法
九二条の二に該当するか。
助言者 町内会には法人格がありませんので、町内会長である議員個人が契約の当事者となります。
地方自治法における請負は民法上の請負だけでなく、広く委託も対象とされますので、兼業禁止に
該当します。」
議員が兼業禁止規定に該当する場合、地方自治法第127条第1項の規定により、その職を失うこともありますので、議員が町内会長を兼ねる場合は、注意された方がよろしいのではないでしょうか。
「住民は、法律の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の役務の提供をひとしく受ける権利を有し」ています(地方自治法第10条第2項)。そして、役務の提供のうち、公の施設の利用関係について、普通地方公共団体は、「正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない」(同法第244条第2項)と規定されています。
「「正当な理由」に該当するかどうかは、個々具体的の場合に判断するほかはないが、一般的には、公の施設の利用に当たり使用料を払わない場合、公の施設の利用者が予定人員をこえる場合、その者に公の施設を利用させると他の利用者に著しく迷惑を及ぼす危険があることが明白な場合、その他公の施設の利用に関する規程に違反して公の施設を利用しようとする場合等は、正当な理由に該当すると解され」(最高裁平7.3.7参照。「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)ます。
正当な理由なく公の施設の利用を拒否された場合、住民は、「都道府県知事がした処分については総務大臣、市町村長がした処分については都道府県知事に審査請求をすることができる。この場合においては、異議申立てをすることもできる」(同法第244条の4第1項)とされています。また、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律第1条の地方自治法の一部改正により、不服申立ての前置規定が削除されましたが、公の施設を利用する権利に関する救済手続は、あまり活用されているようには思えません。
本市における裁判例も、公の施設を利用する権利に関する処分の取消しを求める行政事件ではなく、公の施設の使用が取り消されたことによって発生した損害に対する民事上の損害賠償請求事件でした。
理念型条例の勢いが止まりそうにありません。これも条例制定権の拡大なのでしょうか?
違います。そもそも、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律第1条の地方自治法の一部改正によって地方公共団体の条例制定権が拡大されたとされているのは、地方自治法第2条第2項が改正され、普通地方公共団体の事務が「地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるものを処理する」と規定されたことにより、自治事務であると法定受託事務であるとを問わず、法令に違反しない限りにおいて、法律の明示の委任を要せずに、条例を制定することができる(同法第14条第1項)とされたことによります。
条例制定権の拡大とは、何ら法的効果を有しない精神的な文章を羅列した作文を条例とすることではありません。予算というものが、ある政策目的を達成するために工事請負費や需用費等といった予算をつけるように、条例もそのようにあるべきではないでしょうか。
法令等や法制執務上のルールを無視して書きたい放題に書いたら、書いた者にとっては、さぞかし気持ちの良いものができるのでしょう。しかし、条文を作るという作業は、気持ちの良いものではありません。本来、条文を作るという作業は、怖いものなのです。
以前(2010年6月17日)、本市の文書法規担当主幹として最も重要な資質は、けんかに強いことであると書いたことがありました。矛盾するようですが、二番目に重要な資質を挙げるとすると、それは、臆病であるということです。
見出しは、各条ごとに付けるのが原則ですが、連続する2以上の条文をまとめて、その最初の条文の前にのみ付ける見出しを共通見出しといいます。
例規を改正する場合の見出しの引用については、「単独の条の見出しの場合には「第○条の見出し」とし、共通見出しの場合には「第○条の前の見出し」とする。また、条中の字句を改正する場合において「第○条中……」と引用するときの「第○条」には、「第○条の見出し」を含まない取扱いであり、条の全部を改める場合や削る場合において「第○条を……」と引用するときの「第○条」には、「第○条の見出し」を含む取扱いである」(「法制執務詳解」石毛正純著/ぎょうせい)とされていますが、共通見出しの場合には、「第○条を……」と引用するときの「第○条」にも、「第○条の前の見出し」は含みません。よって、共通見出しの付いている条の共通見出しを改めることなく、直後の条の全部を改める場合は、次のようになります。
第○条を次のように改める。
第○条 ……………………………………………。
共通見出しの付いている条の改正については、法制執務上の難易度もさることながら、それ以上に間違いやすいところです。そのため、何人もの高名なブロガーが記事にされていますので、紹介しておきます。
半鐘さん http://hanshoblog.blog50.fc2.com/blog-entry-153.html
kei-zu さん http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20090814
tihoujiti さん http://d.hatena.ne.jp/tihoujiti/20100418
hoti-ak さん http://d.hatena.ne.jp/hoti-ak/20090820
http://d.hatena.ne.jp/hoti-ak/20100423
等々
最後に、見出しの付いている条を改正することなく、見出しを共通見出しとし、その条の次に新たな条を追加する場合の実例を挙げておきます。
雇用保険法の一部を改正する法律(平成22年法律第2号)
(略)
附則第13条の見出しを削り、同条の前に見出しとして「(国庫負担に関する暫定措置)」を付し、同条の次に次の2条を加える。
第14条 (略)
第15条 (略)
(以下略)
F君「この前書いてましたけど、国や府の方が文書管理て、えー加減なんですか?」
自分「多分な。この分野に関しては、市町村の方がきっちりしてるとこあるわな」
F君「そら何でですん?」
自分「ベタな答えをすると、文書量が多すぎるっちゅーことと忙しいからやろうな」
F君「それ、答えになってないと思うんすけど」
自分「うーん……行革、行革て言われてる中で文書管理をきっちりするっちゅーのは、コストパフォーマ
ンスが悪すぎるねん。お前、2時間の会議のテープ起こして会議録作るのんでも何日かかんねや」
F君「2週間以上かかりますね。昔は委託料ついてたとこもあったみたいすけど、今や議会ぐらいすよ
ね」
自分「それほど手間と時間をかけて作った文書でも、ほとんどの保存期間が有限年やねんな。書庫も
限りあるしな。電子媒体で残すとなるともっと金かかる。文書管理はコスパが悪いっちゅーのは、そうい
うこっちゃ」
F君「それが、組織が大きなればなるほど悪なるっちゅーことっすか」
自分「そう思うな」
F君「そやけど、議事録作らんでもえーっちゅうーことにはなれへんすよね」
自分「当たり前や。公文書等の管理に関する法律の4条で、行政機関の職員は意思決定に至る過程と
か事務事業の実績を検証することができるように文書を作成しなければならないて規定されとるんや
からな」
自分「それとな、も一つ問題は、トップダウンの文書やろうな」
F君「何すかそれ?」
自分「ほな、この記事(2009年8月18日)でも読んどけ。ウチでも市長と誰それのトップ会談の文書と
かはないやろう。政治主導ちゅーか、政治家のパフォーマンスがようけあるほど、文書は作られへんよ
うになるわな」
「政府が1995年の阪神大震災以降の大規模災害の際に設置した緊急対策本部や非常災害対策本部の会議で、いずれも議事概要や議事録が作成されていないことが31日、分かった。複数の政府関係者が明らかにした。
東日本大震災関連の政府の会議で議事録が作成されていなかったことが明らかになったことから、内閣府が調査対象を過去の災害時の本部に拡大し、阪神大震災や北海道・有珠山、東京・三宅島の噴火、新潟県中越地震、台風などに関する非常災害対策本部会議など8会議の作成状況を調べた。
その結果、阪神大震災時に設置した兵庫県南部地震緊急対策本部会議で、議事概要の一部が官房長官記者会見の要旨として残っているのを除き、すべての会議で議事録も議事概要も残っていなかった。」(1月31日付け読売新聞夕刊)
そんなこっちゃろうと思った方も多いのではないでしょうか。一般的に、市町村より都道府県の方が、また、都道府県より国の方が事務能力に優れていると思われています。事実、そのとおりだと思います。しかし、議事録の作成等を含めた文書管理と情報公開に関しては、少なくない市町村でそれが逆転しているのではないかと考えていました。これは、それを証明する記事だと思います。
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