所得等報告書等の提出(後編)

 なお、「この法律に定めるもののほか、国会議員の資産等の公開に関する規程は、両議院の議長が協議して定める」(同法第6条)ものとされ、地方公共団体においては、「規則で定める」ものとされています。そして、報告書の閲覧については、「当該報告書を作成すべき期間の末日の翌日から起算して60日を経過する日の翌日から、することができる」(国会議員の資産等の公開に関する規程第10条第1項)と規定されています。その結果、国会議員及び地方公共団体の首長等の所得等報告書等(資産等報告書を除く。)の閲覧日が同じ日になるため、その日以降の各新聞に一斉に掲載されることになります
 7月12日付け読売新聞朝刊の記事です。
「泉佐野市は11日、前市長の新田谷修司氏の昨年の所得を公開した。市長給与収入などで1192万円だった。新田谷氏は、4月1日付で退職し、統一選で府議に初当選したが、4月中に所得などを市に報告する義務がありながら、していなかった。報道機関からの指摘があり、提出した。」
 資産等報告書等の提出期限までに、辞職等によって議員(又は首長)でなくなった者についても、報告書の提出義務があるのでしょうか?
 個人的には、ないと考えています。「議員は、……提出しなければならない」と規定していることがその理由です。つまり、議員でなくなった者は、その時点においては、もはや提出義務はないと考えるものです。また、例えば、所得等報告書の提出が前年1年間を通じて議員であった者にのみ義務づけられているように、政治倫理の確立のための国会議員の資産等の公開等に関する法律は、あくまで議員という身分を取得した又は取得している者に対して資産等を公開するものとして設計されているのではないかと解されるからです。
 前泉佐野市長は、4月1日の午後2時に辞職していますので、この時をもって、提出義務がありません。また、同月2日から30日までの間に提出しなければならない関連会社等報告書については、そもそも、提出義務が発生していません。
 ただし、政治家としての倫理的・道義的責任というものを考えると、辞職したから提出義務はないと単純に言い切れないことが、この記事の背景にあるのではないでしょうか。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 19:55 | その他

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