−管理人のたわごとブログ− 2011年7月
 「普通地方公共団体は、普通地方公共団体の事務の一部を共同して管理し及び執行し、若しくは普通地方公共団体の事務の管理及び執行について連絡調整を図り、又は広域にわたる総合的な計画を共同して作成するため、協議により規約を定め、普通地方公共団体の協議会を設けることができる」(地方自治法第252条の2第1項)とされています。
 また、「逐条地方自治法」(松本英昭著/学陽書房)に掲載されている「地方自治法第二百五十二条の四の規定による協議会の規約例」には、次のような規定があります。
(協議会解散の場合の措置)
第31条 協議会が解散した場合においては、各関係市(町村)がその協議によりその事務を承継する。
 この場合においては、協議会の収支は、解散の日をもって打切り、会長であった者がこれを決算す
 る。
2 前項の規定による決算は、事務を承継した各関係市(町村)長においてこれを監査委員の審査に付
 し、その意見を附けて議会の認定に付さなければならない。
 協議会を廃止した場合において、残余財産が発生したにもかかわらず、規約に規約例第31条(協議会解散の場合の措置)が規定されていないときは、その決算の根拠をどこに求めたらよいのかというのが今回のテーマです。
 一部事務組合の場合は、組合規約に特別の定めがあるときは当該規約の定めるところにより、特別の定めのないときは地方自治法第292条において準用する地方自治法施行令第5条第2項及び第3項の規定をその根拠とします。ところが、協議会の場合は、同法上、一部事務組合のような準用規定がありませんので、協議会規約に規定がないと、決算の根拠がなくなってしまいます。にもかかわらず、規約例第31条を規定しなかったのは、おそらく、「「協議会」とは、一部事務組合のように法人格を有するものではなく、いわば関係地方公共団体の共同の執務組織ともいうべきものである。したがって、協議会固有の財産又は職員を有しないのが建前とされ」(前掲書)ているからではないかと考えられます。
 ただ、残余財産が発生してしまった以上は、「監査委員の審査に付し、その意見を附けて議会の認定に付」すことが民意にも法意にもかなうものであろうということは理解できるところではないでしょうか。また、協議会が固有の財産又は職員を有しないと解するのであれば、解散に伴って発生した残余財産は、あくまで協議会を構成する市町村の共有の財産ということになります。市町村の財産であるならば、各構成市町村の首長が地方自治法第233条第2項の規定により監査委員の審査に付し、同条第3項の規定により議会の認定に付せば良いのではないでしょうか。
 次のような情報公開請求がされたことがありませんか?
「○月○日、××についてA課に相談中、甲係長が△△と発言したその真意と理由について情報公開を請求する」
 このような請求が何度も繰り返された場合、みなさんのところでは、どのように対応しますか?考えられる方法としては、
@ 不服申立てを恐れず、不存在決定処分をする。
A 権利の濫用であるとして受理しない。
B 請求に対する文書を作成して公開する。
といったところでしょうか。
 このうち、Bについては、第17回自治体法務合同研究会のJ1グランプリにエントリーされたニセコ町情報公開条例に次のような規定があります。
(公開請求に係る町政情報が不存在の場合の手続)
第13条 実施機関は、公開請求に係る町政情報が存在しないときは、公開請求があった日から起算し
 て15日以内に、次の各号のいずれかの措置を執らなければならない。
 ⑴ 当該町政情報が不存在であることを理由として公開をしない旨の決定をすること。
 ⑵ 当該公開請求に係る町政に関する文書等を新たに作成し、又は取得して、当該文書等を請求者
  に対して公開する旨の決定をすること。
2 実施機関は、前項第2号の決定をしたときは、請求者に対し、速やかにその旨、同号の規定による公
 開の時期についての見通しその他規則で定める事項を書面により通知しなければならない。
3 第11条第2項から第6項まで(第5項を除く。)の規定は第1項第1号の決定に、同条第2項及び第6
 項の規定は第1項第2号の決定について準用する。
4 実施機関は、第1項第2号の決定に基づき関係する文書等を新たに作成し、又は取得したときは、請
 求者に対して、速やかに当該文書等により公開請求のあった町政情報を公開する旨その他規則で定
 める事項を書面により通知するものとする。
 ニセコ町が上記のような情報公開請求に対し、第13条第1項第2号の決定をするかどうかは分かりませんが、以前からこの規定は、非常にユニークで魅力的な規定だと思っていました。J1グランプリでどのようなプレゼンをされたのか聞きたかったです。
 その反面、当該請求に対して文書を作成して公開することは、もはや情報公開制度の枠を超えてしまっているのではないかとも思います。
 第17回自治体法務合同研究会が、7月16日(土)及び17日(日)、神奈川県厚木市で開催されます。
 開催テーマは、「自治立法を極める!−誰がための政策法務−」です。
 なお、16日(土)午後から厚木市文化会館で開催される全体会Tの基調講演(「自治と法」講演者:兼子仁氏(東京都立大学名誉教授))及びパネルディスカッション(「自治立法を極める!−誰がための政策法務−」パネリスト:松沢成文氏(前神奈川県知事)、金井利之氏(東京大学教授)、野口貴公美氏(中央大学教授)、藤島光雄氏(おおさか政策法務研究会))が一般公開(参加費無料)されます。こちらのHP(自治体法務合同研究会・厚木市)を御覧ください。
 かながわGは、いくつかの研究会の連合体だと聞いているのですが、自治体職員だけでなく、多数の研究者等をメンバーに抱え、ホンマに元気です、このグループ。うーん……、行きたかったなぁ〜
 なお、「この法律に定めるもののほか、国会議員の資産等の公開に関する規程は、両議院の議長が協議して定める」(同法第6条)ものとされ、地方公共団体においては、「規則で定める」ものとされています。そして、報告書の閲覧については、「当該報告書を作成すべき期間の末日の翌日から起算して60日を経過する日の翌日から、することができる」(国会議員の資産等の公開に関する規程第10条第1項)と規定されています。その結果、国会議員及び地方公共団体の首長等の所得等報告書等(資産等報告書を除く。)の閲覧日が同じ日になるため、その日以降の各新聞に一斉に掲載されることになります
 7月12日付け読売新聞朝刊の記事です。
「泉佐野市は11日、前市長の新田谷修司氏の昨年の所得を公開した。市長給与収入などで1192万円だった。新田谷氏は、4月1日付で退職し、統一選で府議に初当選したが、4月中に所得などを市に報告する義務がありながら、していなかった。報道機関からの指摘があり、提出した。」
 資産等報告書等の提出期限までに、辞職等によって議員(又は首長)でなくなった者についても、報告書の提出義務があるのでしょうか?
 個人的には、ないと考えています。「議員は、……提出しなければならない」と規定していることがその理由です。つまり、議員でなくなった者は、その時点においては、もはや提出義務はないと考えるものです。また、例えば、所得等報告書の提出が前年1年間を通じて議員であった者にのみ義務づけられているように、政治倫理の確立のための国会議員の資産等の公開等に関する法律は、あくまで議員という身分を取得した又は取得している者に対して資産等を公開するものとして設計されているのではないかと解されるからです。
 前泉佐野市長は、4月1日の午後2時に辞職していますので、この時をもって、提出義務がありません。また、同月2日から30日までの間に提出しなければならない関連会社等報告書については、そもそも、提出義務が発生していません。
 ただし、政治家としての倫理的・道義的責任というものを考えると、辞職したから提出義務はないと単純に言い切れないことが、この記事の背景にあるのではないでしょうか。
 「泉佐野市の新田谷修司前市長は、昨年の所得や補充資産が公開対象でありながら、市に未提出だった。
 同市によると、条例では市長に毎年4月中に所得報告などの作成を義務付けているが、新田谷氏は4月1日付で辞職。市は「新田谷氏に報告するよう要請しておらず、結果的に未提出になってしまった」としている。新田谷氏の後援会幹部は「本人は所得報告の義務があったことを知らなかった」とし、改めて市に報告書を提出するという。」(7月5日付け読売新聞朝刊)
 この記事だけではちょっと分かりにくいと思いますので、資産公開制度について、説明しておきます。
 なお、資産公開を情報公開とごっちゃにしている人がいますが、二つの制度は別物です。情報公開が「国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的」(行政機関の保有する情報の公開に関する法律第1条)とするのに対し、資産公開は「国会議員の資産の状況等を国民の不断の監視と批判の下におくため、国会議員の資産等を公開する措置を講ずること等により、政治倫理の確立を期し、もって民主政治の健全な発達に資することを目的」(政治倫理の確立のための国会議員の資産等の公開等に関する法律第1条)とするものです。
 同法によると、国会議員は、任期開始日に有する資産等を資産等報告書に記載し、同日から起算して100日を経過する日までに、議長に提出しなければなりません(同法第2条第1項)。その後、毎年新たに有することとなった資産等で12月31日において有するものについては、資産等補充報告書に記載し、翌年の4月1日から30日までの間に、議長に提出しなければならない(同条第2項)とされています。
 さらに、前年1年間を通じて国会議員であった者は、所得等報告書を作成し、毎年、4月1日から同月30日までの間に、議長に提出しなければならず(同法第3条)、また、毎年、4月1日において報酬を得て会社その他の法人の役員、顧問その他の職に就いている場合には、当該会社その他の法人の名称及び住所並びに当該職名を記載した関連会社等報告書を作成し、同月2日から30日までの間に、議長に提出しなければならない(同法第4条)とされています。
 そして、同法第7条で、都道府県及び政令指定都市の議員並びに都道府県知事及び市町村長の資産等の公開については、「平成7年12月31日までに、条例の定めるところにより、この法律の規定に基づく国会議員の資産等の公開の措置に準じて必要な措置を講ずるものとする」と規定されたことにより、全国の地方公共団体で同法をコピーした条例が時期を同じくして制定されることになります。
 議案の訂正については、会議規則の定めるところによるものとされており、標準市議会会議規則第19条第1項は、「会議の議題となった事件を撤回し、又は訂正しようとするとき及び会議の議題となった動議を撤回しようとするときは、議会の承認を要する」と規定しています。
 議案の「訂正は提出案件の内容を修正するものです。議題となったあとは、訂正表を配布し議会の承認を得なければなりません。訂正は通常、修正の内容が簡単な場合に用いられます。修正の個所が多数であったり、または、内容的に大幅な修正であったりするときは、訂正によらず撤回し、修正の上、再提出する方が議員にとって分かりやすいでしょう。案件は、提出するまでに慎重に検討されるものですから、提案後に事情変更がない限り大幅修正はあり得ません」(「議員・職員のための議会運営の実際2」地方議会研究会編著/自治日報社)と解されています。
 議題となった後、議案の訂正をするためには、「訂正表を配布し議会の承認を得」ることになっていますが、この辺は、様々なローカルルールがありそうですね。本市の場合、議案を訂正するには、議案を訂正する議案を提出し、議会の承認を得ることとしています。この議案を訂正する議案は、修正の動議(地方自治法第115条の2)における修正案と同様に溶け込み方式によっていますので、理論上は、承認されれば原案に吸収されることになります。
 ところで、本市で条例案の議案の訂正をしたのは、この6月定例会が初めてでした。これは政治的な理由から行ったことですが、政治と法の関係というのは……本当に難しいものです。
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