均衡の原則

 職員の給与の決定は、職務給の原則「職員の給与は、その職務と責任に応ずるものでなければならない」(地方公務員法第24条第1項)、均衡の原則「職員の給与は、生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない」(同条第3項)及び条例主義「職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める」(同条第6項)によっています。
 このうち、均衡の原則は、「逐条地方公務員法」(橋本勇著/学陽書房)によると、「一般の企業における賃金の決定には、かなり明確な尺度がある。それは労働と利益の相関関係であり、賃金全体の枠については営業費用に占める賃金コストの割合が適正であるかどうかということが一つの物指となるし、個別の賃金については労働によって得られた附加価値あるいは利益が上限となることである。実際の賃金決定のメカニズムはこれほど単純ではないが、原理としては企業目的が利益という客観的な数字で表示され、賃金は長期的にはこの利益を基準として決定されることになる。これに対し、公務の場合には、このように明確な内在的尺度は存在しない。公務の目的である公共の福祉の増進は、金銭によって表示しえないものであり、利益以外の基準によって決定せざるを得ない。そこで現行公務員法の下でとられている方式が均衡の原則であり、民間企業の賃金や他の公務員との比較によって給与を定める方法である」とされており、「「国家公務員の給与に準ずる」ことによって実現されるものと解されて」いました。その理由は、「国家公務員の給与は人事院勧告によって決定されているが、人事院勧告では生計費および民間事業の賃金が考慮されているので、地方公共団体がその給与をこれに準ずることとすれば、国および他の地方公共団体とも均衡がとれるわけで、均衡の原則における」生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与が考慮されることになるからです。
 また、均衡の原則を構成する要素の一つである「その他の事情」については、「「その他の事情の内容も全く不分明であるが、「その他の」とされていることから、原則的には前記の諸点に類似する事情でなければならないであろう。これを当該地方公共団体において給与を決定するに際して当然考慮すべき事情と考えるならば、地域の経済事情、たとえば、地場産業の景況であるとか、中小企業等の状況、あるいはその地域における職員採用の難易などが考慮の対象になるといえよう」とあります。
 地方公務員の給与は、均衡の原則に基づき、国公準拠を基本として、「その他の事情」によって必要な補正を加えて決定されるということですが、5月27日の日経新聞朝刊に次のような記事がありました。
「政府は国家公務員に続いて地方公務員についても、第三者機関の勧告ではなく、労使交渉で給与を決める制度を導入する検討に入った。「協約締結権」を職員に与え、2013年度から自治体と職員の協議で給与を決められるようにする。今秋の臨時国会での関連法案提出を目指す。財政健全化を促す狙いだが、実際に給与を下げるかは各自治体が判断するため、実効性は不透明だ。」
 ここでも「財政健全化」がキーワードになっているようですが、感心しません。そもそも協議が調わなかったら、どうするのでしょうね。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 07:13 | 地方公務員法

コメント

財政健全化ならまだマシじゃないですか〜
ウチは公約のための財源として給与カットですからね〜
当然、組合交渉は決裂しましたし・・・

投稿者 謎のチクリ魔 : 2011年6月3日 12:28

さて、そろそろ6月定例会。どうなるか楽しみにしておいてください。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 2011年6月6日 17:19

布田拓也議員さんの公式HPのブログにおける、
千代の富士さんの主張について、どう思われますか?

投稿者 島倉千代子 : 2011年6月9日 08:26

 

投稿者   : 2013年11月5日 12:14

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