「させていただく」

 秘書課のM君から質問がありました。
M君「「させていただく」てあんまり使たらあかんて聞いたことがあるんですけで、ホンマですか?」
自分「さーのう。わし、敬語はよう知らんで」
M君「ええっ?そんなこと言わんと教えてくださいよ」
自分「いや、儀礼文書とかを除いてやな、公用文ではな、丁寧語以外、敬語は使えへんねや。ウチのメ
 インは法規文書やからな。わしも「いたを削れ」(「分かりやすい公用文の書き方」(礒崎陽輔著/ぎょう
 せい)参照)程度のことしか知らんねん。儀礼文書は、秘書課の方が得意と違(ちゃ)うか」
M君「ほな、誰に聞いたらええんすか?」
自分「文書担当はウチやしのう……ちょっと待てよ。確か「敬語の指針」(平成19年2月2日文化審議会
 答申)に書いちゃあったな。おお、これや」
 と言って示したのが以下の部分です。
「【解説1】「(お・ご)…(さ)せていただく」といった敬語の形式は、基本的には、自分
   側が行うことを、ア)相手側又は第三者の許可を受けて行い、イ)そのことで恩恵を
   受けるという事実や気持ちのある場合に使われる。したがって、ア)、イ)の条件を
   どの程度満たすかによって、「発表させていただく」など、「…(さ)せていただく」を
   用いた表現には、適切な場合と、余り適切だとは言えない場合とがある。
【解説2】次の@〜Dの例では、適切だと感じられる程度(許容度)が異なる。
     @相手が所有している本をコピーするため、許可を求めるときの表現
        「コピーを取らせていただけますか。」
     A研究発表会などにおける冒頭の表現
        「それでは、発表させていただきます。」
     B店の休業を張り紙などで告知するときの表現
        「本日、休業させていただきます。」
     C結婚式における祝辞の表現
        「私は、新郎と3年間同じクラスで勉強させていただいた者です。」
     D自己紹介の表現
        「私は、○○高校を卒業させていただきました。」
   上記の例@の場合は、ア)、イ)の条件を満たしていると考えられるため、基本的
  な用法に合致していると判断できる。Aの例も同様だが、ア)の条件がない場合には、
  やや冗長な言い方になるため、「発表いたします。」の方が簡潔に感じられるようであ
  る。Bの例は、条件を満たしていると判断すれば適切だが、Aと同様に、ア)の条件
  がない場合には「休業いたします。」の方が良いと言えるだろう。Cの例は、ア)と
  イ)の両方の条件を満たしていないと感じる場合には、不適切だと判断される。Dの
  例も、同様である。ただし、Cについては、結婚式が新郎や新婦を最大限に立てるべ
  き場面であることを考え合わせれば許容されるという考え方もあり得る。Dについて
  は、「私は、卒業するのが困難だったところ、先生方の格別な御配慮によって何とか
  卒業させていただきました。ありがとうございました。」などという文脈であれば、
  必ずしも不適切だとは言えなくなる。
   なお、ア)、イ)の条件を実際には満たしていなくても、満たしているかのように
  見立てて使う用法があり、それが「…(さ)せていただく」の使用域を広げている。上
  記のA〜Dについても、このような用法の具体例としてとらえることもできる。その
  見立てをどの程度自然なものとして受け入れるかということが、その個人にとっての
  「…(さ)せていただく」に対する「許容度」を決めているのだと考えられる。」
M君「……ようわかりません」
自分「使たらアカンとは書いてないわ。個別判断せなしゃあないよって、具体に文書あんねんやったら、
 持って来いや」
M君「わかりましたあ!」

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 19:18 | 文書事務

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