指定代理人(ちょい足し)

 なぜ、行政庁によって指定代理人を指定できたり、できなかったりするのでしょうか?なぜ、行政庁によって事務委任規定があったり、なかったりするのでしょうか?
 うーん……それがなぜなのかは、正直、よく分かりません。
 反則法制的に考えてみると、@そもそも国の制度であったものを解釈や運用で地方公共団体に適用させていたが、地方分権一括法の施行に伴う機関委任事務の廃止等によって無理が生じた、A地方公共団体の場合、訴訟代理人(弁護士)を選任し、指定代理人を選任することがほとんどなかったため、あまり問題にならなかった、あたりがその理由ではないでしょうか。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 06:50 | 地方自治法 | コメント (0) | -

指定代理人

 「国を当事者又は参加人とする訴訟については、法務大臣が、国を代表する」(国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律第1条)ものとされ、その「所部の職員」又は「行政庁の職員で法務大臣の指定するものにその訴訟を行わせることができる」(同法第2条第1項及び第2項)とされています。また、「地方公共団体、独立行政法人その他政令で定める公法人は、その事務に関する訴訟について、法務大臣にその所部の職員でその指定するものに当該訴訟を行わせることを求めることができ」(同法第7条第1項)、「法務大臣は、国の利害を考慮して必要があると認めるときは、所部の職員でその指定するものにその訴訟を行わせることができる」(同条第3項)とされています。
 このように訴訟を行わせるものとして指定された職員を指定代理人といいます。
「指定代理人は、個別の事件ごとに指定される訴訟代理人です。訴訟代理人は、一般に法令による訴訟代理人と委任による訴訟代理人とに分けられますが(民訴法54条1項、55条4項参照)、指定代理人は前者に属すると考えられます。もっとも、指定代理人は、個別の事件ごとに選任され、その事件についてしか権限を与えられていませんので、法令による訴訟代理人であるとはいっても、他の法令による訴訟代理人(例えば、商法上の支配人や船長など)とはかなり性格を異にし、むしろその実質は、委任による訴訟代理人に近いといえます。
 指定代理人は、訴訟代理人としての地位にありますから、指定代理人がその権限内でした行為は、本人がしたのと同様な効果を生じ、その効力は本人に及びます。これは訴訟代理の本来的効果です。裁判の期日に指定代理人が欠席すれば本人が欠席したことになり、指定代理人の陳述したことは本人の陳述となります。
 一方、指定代理人は、訴訟の当事者ではありませんから、判決の効力を受けることはありませんし、証人や鑑定人になることもできます。」(「地方公共団体の訴訟事務の手引」行政関係訴訟事務研究会編集/ぎょうせい)
 地方公共団体の事務に関する訴訟については、当該地方公共団体又は行政庁が職員を指定代理人として選任することができます。この場合において、行政庁が長のときは地方自治法第153条第1項の規定が、教育委員会のときは地方教育行政の組織及び運営に関する法律第26条第3項の規定が、地方公営企業管理者のときは地方公営企業法第13条第2項の規定がその根拠となります。また、選挙管理委員会(地方自治法第193条)や監査委員(同法第201条)は、同法第153条第1項の規定を準用するとされています。
 一方、公平委員会、農業委員会や固定資産評価審査委員会、さらに、通常、議決機関である議会には、このような事務委任の規定がありません。つまり、これらの行政庁(議会を含む。)は、指定代理人を選任することができないということになります。 

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 20:36 | 地方自治法 | コメント (0) | -

委員会における表決の拒否

 議会に付議された事件については、「会議において提出者の説明を聞き、議員の質疑があるときは質疑の後、議長が所管の常任委員会又は議会運営委員会に付託」(標準市議会会議規則第37条第1項)するものとされており、議会の付託を待って、常任委員会は、「議案、陳情等を審査」(地方自治法第109条第4項)します。
 委員会における付託案件の採決に当たり、委員は、表決を拒否して退席することができるのでしょうか?また、多数の委員が退席したために定足数を欠くこととなった場合は、どうするのでしょうか?
 委員会は、議会の内部組織として付託案件について審査する権能を有していると同時に、審査の経過と結果を議長に報告する義務があります。同様に、委員会の委員には、付託案件を表決する責務があるのであって、表決を拒否することは、委員の職責を放棄するもので許されることではありません。また、多数の委員が退席したために定足数を欠くようになった場合は、流会になってしまいます。ですから、委員長は、出席している委員の退席を制止し、退席した委員には出席を要請しなければなりません。それでも委員が退席し、出席しないのであるならば、その行為は、標準市議会委員会条例第22条等に違反するものとして、懲罰の対象となります。
 なお、国会では、「委員会において、議院の会議に付するを要しないと決定した議案は、これを会議に付さない。但し、委員会の決定の日から休会中の期間を除いて7日以内に議員20人以上の要求があるものは、これを会議に付さなければならない」(国会法第56条第3項)とされ、「前項但書の要求がないときは、その議案は廃案となる」(同条第4項)とされていますが、地方議会には、このような規定はありません。
 委員会は、必ず、付託案件を可決若しくは否決又は継続審査のいずれかに決めなければならず、審査未了、廃案とすることはできません。そもそも審査未了とは、議長が閉会の宣告をした瞬間に生じる結果のことであって、委員会の審査結果ではありません。
(参照「議員・職員のための議会運営の実際4・16・21」地方議会研究会編著/自治日報社)

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 20:12 | 地方自治法 | コメント (0) | -

「させていただく」

 秘書課のM君から質問がありました。
M君「「させていただく」てあんまり使たらあかんて聞いたことがあるんですけで、ホンマですか?」
自分「さーのう。わし、敬語はよう知らんで」
M君「ええっ?そんなこと言わんと教えてくださいよ」
自分「いや、儀礼文書とかを除いてやな、公用文ではな、丁寧語以外、敬語は使えへんねや。ウチのメ
 インは法規文書やからな。わしも「いたを削れ」(「分かりやすい公用文の書き方」(礒崎陽輔著/ぎょう
 せい)参照)程度のことしか知らんねん。儀礼文書は、秘書課の方が得意と違(ちゃ)うか」
M君「ほな、誰に聞いたらええんすか?」
自分「文書担当はウチやしのう……ちょっと待てよ。確か「敬語の指針」(平成19年2月2日文化審議会
 答申)に書いちゃあったな。おお、これや」
 と言って示したのが以下の部分です。
「【解説1】「(お・ご)…(さ)せていただく」といった敬語の形式は、基本的には、自分
   側が行うことを、ア)相手側又は第三者の許可を受けて行い、イ)そのことで恩恵を
   受けるという事実や気持ちのある場合に使われる。したがって、ア)、イ)の条件を
   どの程度満たすかによって、「発表させていただく」など、「…(さ)せていただく」を
   用いた表現には、適切な場合と、余り適切だとは言えない場合とがある。
【解説2】次の@〜Dの例では、適切だと感じられる程度(許容度)が異なる。
     @相手が所有している本をコピーするため、許可を求めるときの表現
        「コピーを取らせていただけますか。」
     A研究発表会などにおける冒頭の表現
        「それでは、発表させていただきます。」
     B店の休業を張り紙などで告知するときの表現
        「本日、休業させていただきます。」
     C結婚式における祝辞の表現
        「私は、新郎と3年間同じクラスで勉強させていただいた者です。」
     D自己紹介の表現
        「私は、○○高校を卒業させていただきました。」
   上記の例@の場合は、ア)、イ)の条件を満たしていると考えられるため、基本的
  な用法に合致していると判断できる。Aの例も同様だが、ア)の条件がない場合には、
  やや冗長な言い方になるため、「発表いたします。」の方が簡潔に感じられるようであ
  る。Bの例は、条件を満たしていると判断すれば適切だが、Aと同様に、ア)の条件
  がない場合には「休業いたします。」の方が良いと言えるだろう。Cの例は、ア)と
  イ)の両方の条件を満たしていないと感じる場合には、不適切だと判断される。Dの
  例も、同様である。ただし、Cについては、結婚式が新郎や新婦を最大限に立てるべ
  き場面であることを考え合わせれば許容されるという考え方もあり得る。Dについて
  は、「私は、卒業するのが困難だったところ、先生方の格別な御配慮によって何とか
  卒業させていただきました。ありがとうございました。」などという文脈であれば、
  必ずしも不適切だとは言えなくなる。
   なお、ア)、イ)の条件を実際には満たしていなくても、満たしているかのように
  見立てて使う用法があり、それが「…(さ)せていただく」の使用域を広げている。上
  記のA〜Dについても、このような用法の具体例としてとらえることもできる。その
  見立てをどの程度自然なものとして受け入れるかということが、その個人にとっての
  「…(さ)せていただく」に対する「許容度」を決めているのだと考えられる。」
M君「……ようわかりません」
自分「使たらアカンとは書いてないわ。個別判断せなしゃあないよって、具体に文書あんねんやったら、
 持って来いや」
M君「わかりましたあ!」

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 19:18 | 文書事務 | コメント (0) | -

第11回関西自治体法務研究会を終えて

 第11回関西自治体法務研究会が「杉山富昭さんを追悼して」6月4日(土)、尼崎市中小企業センターで開催されました。当日は、おおさかG、びわこG等のいつものメンバーのほか、かながわGの北村喜宣先生と出石稔先生にも御参加いただきました。
 なお、「杉山さんの業績を偲んで〜交渉法務論と政策法務〜」は、第17回自治体法務合同研究会厚木大会の分科会でも予定されています。
 杉山さんについて語る上で、やはり特筆すべきは、そのおう盛な読書量と執筆量に証明される精力的な研究活動でしょう。そして、それをホームページやブログといったインターネットを活用して情報発信したことは、広く、地方公務員等に法律を身近なものとして紹介するという効果をもたらしました。市町村の職員として現場の最前線から展開される政策法務論は、多数の地方公務員に影響を与えました。ちなみに、自分がこんなたわごとをほざいているのも、杉山さんの影響が大きいです。
 御遺族の御厚意により、ホームページ「自治体政策法務研究室」とブログ「講学政策法務」は、おおさか政策法務研究会のホームページに転載させていただきました。杉山さんの業績をしのびながら、是非、御覧になってみてください。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 07:00 | 政策法務 | コメント (0) | -

均衡の原則

 職員の給与の決定は、職務給の原則「職員の給与は、その職務と責任に応ずるものでなければならない」(地方公務員法第24条第1項)、均衡の原則「職員の給与は、生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない」(同条第3項)及び条例主義「職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める」(同条第6項)によっています。
 このうち、均衡の原則は、「逐条地方公務員法」(橋本勇著/学陽書房)によると、「一般の企業における賃金の決定には、かなり明確な尺度がある。それは労働と利益の相関関係であり、賃金全体の枠については営業費用に占める賃金コストの割合が適正であるかどうかということが一つの物指となるし、個別の賃金については労働によって得られた附加価値あるいは利益が上限となることである。実際の賃金決定のメカニズムはこれほど単純ではないが、原理としては企業目的が利益という客観的な数字で表示され、賃金は長期的にはこの利益を基準として決定されることになる。これに対し、公務の場合には、このように明確な内在的尺度は存在しない。公務の目的である公共の福祉の増進は、金銭によって表示しえないものであり、利益以外の基準によって決定せざるを得ない。そこで現行公務員法の下でとられている方式が均衡の原則であり、民間企業の賃金や他の公務員との比較によって給与を定める方法である」とされており、「「国家公務員の給与に準ずる」ことによって実現されるものと解されて」いました。その理由は、「国家公務員の給与は人事院勧告によって決定されているが、人事院勧告では生計費および民間事業の賃金が考慮されているので、地方公共団体がその給与をこれに準ずることとすれば、国および他の地方公共団体とも均衡がとれるわけで、均衡の原則における」生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与が考慮されることになるからです。
 また、均衡の原則を構成する要素の一つである「その他の事情」については、「「その他の事情の内容も全く不分明であるが、「その他の」とされていることから、原則的には前記の諸点に類似する事情でなければならないであろう。これを当該地方公共団体において給与を決定するに際して当然考慮すべき事情と考えるならば、地域の経済事情、たとえば、地場産業の景況であるとか、中小企業等の状況、あるいはその地域における職員採用の難易などが考慮の対象になるといえよう」とあります。
 地方公務員の給与は、均衡の原則に基づき、国公準拠を基本として、「その他の事情」によって必要な補正を加えて決定されるということですが、5月27日の日経新聞朝刊に次のような記事がありました。
「政府は国家公務員に続いて地方公務員についても、第三者機関の勧告ではなく、労使交渉で給与を決める制度を導入する検討に入った。「協約締結権」を職員に与え、2013年度から自治体と職員の協議で給与を決められるようにする。今秋の臨時国会での関連法案提出を目指す。財政健全化を促す狙いだが、実際に給与を下げるかは各自治体が判断するため、実効性は不透明だ。」
 ここでも「財政健全化」がキーワードになっているようですが、感心しません。そもそも協議が調わなかったら、どうするのでしょうね。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 07:13 | 地方公務員法 | コメント (3) | -
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