附帯決議

 決議と附帯決議の違いは、「第一に、決議案は独立した議案であるのに対し、附帯決議案は文字通り案件に附帯、附随したものであることです。このため決議案は独立して議題となりますが、附帯決議は附帯の対象となった案件が可決されたあとで議題となります。
 第二に、一般に決議案は本会議に提案されるのに対し、附帯決議案は委員会に提出されることです。決議案は可決されますと議会の意思になりますが、附帯決議は可決されても委員会段階のものであるため当該議会の意思になりません。当該議会の意思にするためには議員が別個に附帯決議の内容を盛り込んだ決議案を議長に提出し可決される必要があります。このため本会議へ決議案を提出するときは標準会議規則に定める○人以上の賛成者を必要としますが、附帯決議案は委員会で提出するため一人の委員でも提出することができます。
 第三に、決議案は本会議での提案理由の説明、質問に対する答弁の準備等が必要であり、最終的には本会議で表決の対象になりますが、附帯決議案は委員会で可決された意思であり本会議へは委員長から報告されるだけで表決の対象になりません。附帯の対象となった案件について議員が表決態度を決めるときの参考になるだけです。
 第四に、決議案は当該団体に関係のある問題であるならばいかなる事項でも対象とすることができますが、附帯決議案は内容的に議案に関連する事項に限定されます。しかも当該議案が可決された後の執行上の要望等を述べますので否決の案件についての附帯決議案はあり得ません。
 第五に、決議案は可決後、長等第三者に送付されることがありますが、附帯決議案は可決されても当該議会の意思になっていませんので、長等第三者に送付されることはありません」「議員・職員のための議会運営の実際6」(地方議会研究会編著/自治日報社)とされています。
 国会先例によると、委員会における附帯決議は、委員長が議院に報告するだけであって、採決しないとされています。しかし、市町村議会のローカルルールでは、本会議に附帯決議案を提案し、採決しているところがあります。
 そもそも、議会は、議決に当たって、条件を付けることができません。そのような附帯決議は、「議会の単なる希望であると解されます」(昭和24年12月15日行政実例)。よって、「単なる機関意思の決定であり執行機関を拘束するものではなく、政治的、道義的なもの」(最新会議規則・委員会条例・傍聴規則逐条解説」中島正郎著/ぎょうせい)として取り扱われることになります。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 16:45 | 地方自治法 | コメント (0) | -

改正漏れとデジタル化

 いつも勉強させてもらっている自治体法制執務雑感でhoti-akさんが興味深い指摘をされていました。
 「最近、改正漏れがよく目に付くところですが、こうしたミスが多くなっているのは、例規の電子化が原因なのかもしれません。やや飛躍した考えかもしれませんが、そもそも改め文による改正方式は、デジタル化の時代にはあまり適さない改正方法なのかもしれません。」(「例規の過誤(その2)」)
 いわゆる条項ずれなどの改正漏れを防ぐためには、例規のデジタル化が有効であると一般的には思われているのではないでしょうか。しかし、hoti-akさんも御指摘のように、実際は、デジタル化が進んだ結果、改正漏れが増加しているのではないかと思われるのです。
 その原因というか、改め文方式とデジタル化の関係をうまく説明することはできませんが、それ以前の問題として、デジタル化によって例規を読むという最も基本的なことがおろそかになってしまい、それが法規担当者の能力の低下を招いているのではないかと感じています。
 自らの戒めとして……

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 19:26 | 法制執務 | コメント (2) | -

分限処分?

 「地域政党「大阪維新の会」公認で4月の吹田市長選を制した井上哲也市長は16日夕、市長ら特別職に次ぐ役職の「総括監級」を廃止し、幹部職員7人を部長級に降格させる人事異動を発表した。井上市長が公約に掲げた公務員制度改革の第一弾で、年間約680万円の給与・共済費が削減できると説明している。
 市によると、「総括監」は市長や副市長を補佐して市の重要な事業を企画・立案し、複数の部局にまたがる施策を調整するポストとして2006年4月に置かれたが、これまでも議会で「職責がわかりにくい」などの批判があったという」(5月17日付け朝日新聞朝刊)。
 地方公務員法第28条第1項の規定によると、「職制若しくは定数の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合」(同項第4号)には、「その意に反して、これを降任し、又は免職することができ」ます。この記事から判断すると、これは、正に同項の規定による分限処分ではないでしょうか?そうであるならば、手続上、不利益処分に関する説明書を交付しなければなりませんし、7人の元「総括監」は、公平委員会に不服申立てをすることができます。
 「逐条地方公務員法」(橋本勇著/学陽書房)によると、「「職制」とは、法令の根拠に基づいて設けられる地方公共団体の内部組織を意味するものであり、地方自治法第一五八条第一項の規定に基づいて条例で定められたものおよび長が設けたもののいずれも職制に該当する(法制意見昭二七・四・一九(法意一発第四四号)参照)。すなわち、規則などで設置される室、出先機関などもこれに該当し、さらに、職の設置規則等(都道府県の場合、自治法施行規程五)で明記されている職もここでいう職制に該当するものと解され」ており、事務分掌規則において「○○に関する事務のうち、極めて重要な特定の事務を担当させるため、必要があるときは、市に××総括監を置くことができる」と規定されていますので、「総括監」は、職制と解されます。
 また、前掲書には、「廃職、過員が予算の説明資料や提案説明などで具体的に明確にされている場合でなければ、それを降任または分限免職の事由とすることは実際問題として困難であろう」とあり、さらに、「法律上は、職制の改廃、定数の改廃または予算の減少のいずれか一の事由のみに基づいて降任または分限免職を行うことが可能であるが、職員にとって重大な問題であり、前述のように必ずしも明確でない場合もあるので、実際に降任または分限免職を行う場合には、職制および定数を改廃するとともに、予算上の減員措置もあわせて明確にした上で行うことが適切であるといえよう」とあります。
 そのような措置がなされたのでしょうか?なされていないのであれば、政治的パフォーマンスだけが先行しているような感じがします。
 なお、「総括監」ではなく、局制が採用されていたとしたら、新市長はどうしたのでしょうね。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 20:22 | 地方公務員法 | コメント (0) | -

監査委員職務執行者

 地方自治法第197条は、「監査委員の任期は、識見を有する者のうちから選任される者にあっては4年とし、議員のうちから選任される者にあっては議員の任期による。ただし、後任者が選任されるまでの間は、その職務を行うことを妨げない」と規定しています。
 このただし書の規定について、「逐条地方自治法」(松本英昭著/学陽書房)には、次のように記されています。
 「任期が満了しても後任者が選任されるまでの間は、その職務を行うことができるとする本条ただし書の規定が設けられている。本来この規定は、識見を有する者のうちから選出の者及び議員のうちから選出の者それぞれについていずれかの委員の四年の任期が満了した場合において、監査機能の停滞を防止するために設けられた規定であるが、これについては、以下の諸点に注意を要する。@議員選出の監査委員については、議会の構成が一新されるような場合、すなわち、議員の総辞職又は議会の解散若しくは議会の解散請求の成立等の事由により、当該議員を含めてすべての議員の任期が、その四年の期間の満了をまたずして終了した場合にはただし書の規定の適用がある。Aこれに対して、当該議員に対する解職請求の成立、除名、議員の辞職等の場合にはただし書の適用はないと解すべきである。B同様に、議員選出の監査委員及び識見を有する者たる監査委員のいずれを問わず、これらの者が辞職し、又はこれらの者について、長又は副知事若しくは副市町村長と親族関係が生じた場合(法一九八の二)、第百九十七条の二の規定により罷免された場合にはただし書は適用されないと解する。」
 「本条ただし書の規定は、元来、監査委員の職務を行う者が一人もいなくなるような事態を避けるために設けられたものであり、したがって、他に監査委員が在任する場合においては、特別の必要がない限り、適用されるべきではない(行実昭二六、七、一一)との行政実例があるが、しかしながら、後任者が選任されるまでの間監査委員職務執行者がその職務を行うべきかどうかは、客観的にその必要性の有無の判断がなされると同時に、たとえ他に監査委員が在職していても、職務を行うことを妨げるものではないと解すべきである。」
 ちょっと分かりにくい解説だと思いますが、結論は、第197条ただし書の適用については、当該地方公共団体において、「客観的にその必要性の有無を判断」せよということなのでしょう。ちなみに、昭和32年8月1日付け行政実例にも「任期満了となった議会選出の監査委員は、後任の委員が選任されるまで、職務を行うことはさしつかえない」とあります。
 しかし、自分の知る限りにおいては、後任者が選任されるまでの間、慣例として一律に、監査委員職務執行者を置いているところがあれば、まったく置いたことがないというところもあります。その実態は、「客観的にその必要性の有無を判断」しているとは思われないのです。
 ちなみに、本市は、監査委員職務執行者を置いたことがありません。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 20:18 | 地方自治法 | コメント (0) | -

窓口業務における公務災害

 「市役所窓口で市民から暴言を浴びせられ心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したと訴えていた兵庫県内の市役所職員の女性について、地方公務員災害補償基金兵庫県支部が公務上災害と認定していたことが分かった。女性を支援していた非営利組織(NPO)ひょうご労働安全衛生センター(神戸市)によると、窓口業務のトラブルが精神疾患の原因と認定されるのは異例。
 センターによると、08年8月、生活保護の相談で阪神間の市役所を訪れた男性が女性の対応に腹を立て、「インターネットに名前を載せる」「死ね」と暴言を吐くなどした。
 女性はこれらのやりとりを思い出す「フラッシュバック」に悩み、市役所に近付くと鼓動が速くなるなどの状態になり、休職。うつ病やPTSDと診断され、同年9月、民間の労災に当たる公務上災害の認定を申請した。」(5月6日付け毎日新聞夕刊)
 確かに画期的な判断だとは思いますが、市役所等では、トラブルやクレームというよりも、恫喝や暴力が日常茶飯事として起こっているところさえあります。そのような理不尽な暴力等に対抗するためにも、市として、積極的に公務執行妨害罪や暴行傷害罪等で刑事告発していくことも検討すべきではないでしょうか。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 20:05 | 地方公務員法 | コメント (0) | -

職務代理者の専決処分

 どこかの市長がメチャクチャにやってくれたおかげで、本市では、ほとんどの職員が「専決処分」という言葉を覚えてしまいました。しかし、その一方で、誤って理解をしている職員も見受けられます。その一例が、職務代理者は専決処分することができないというものです。
 「職務代理者が本条の規定によって普通地方公共団体の長の職務を代理し得る範囲は、原則として普通地方公共団体の長の職務権限等のすべてに及ぶものと解すべきである」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)とされています。一方、「普通地方公共団体の長の身分なり資格を要件として普通地方公共団体の長に附与された職務権限等については、一般的には職務代理者の代理権は及び得ないと解すべきである」(前掲書)とされており、行政実例によると、その例として、議会の解散権(昭和23年9月14日)や副市長等の選任権(昭和30年9月2日)が挙げられています
 職務代理者が長の職務を代理し得る範囲は、原則として長の職務権限等のすべてに及ぶこと、また、専決処分については、長の地位に固有の権限ではないことから、職務代理者は、専決処分をすることができると解されます。
 職務代理者は専決処分することができないという誤解は、どこかの市で、市長だけでなく、職務代理者である副市長までが違法な専決処分を行っているという報道によるものではないかと思われます。記憶がちょっと曖昧なのですが、ここで違法とされたのは、@そもそも副市長の選任が違法な専決処分によるものであること、A議会開会中に専決処分を行っていることがその理由ではなかったでしょうか。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 10:54 | 地方自治法 | コメント (0) | -
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