退職の日

 変な話ですが、例えば「平成23年3月31日をもって退職」する場合、一般職の職員は3月31日の24時に、市長は同日の午前0時に退職することになり、1日のズレが生じます。
 一般職の職員の場合、「退職願いは本人の同意を確かめるための手続であり、その同意を要件とする退職発令(行政行為)が行われてはじめて離職することとなるものである(高松高裁昭三五・三・三一判決 行政裁判例集一一巻三号七九六頁)。退職の効力の発生時期は、死亡による退職の場合は当然にその死亡のときであるが、それ以外は、他の辞令交付による場合と同じく、法律的には到達主義によるもの、すなわち辞令が交付されたときであり、辞令の発信の時期ではない(最高裁昭三〇・四・一二判決 刑事裁判集九巻四号八三八頁)。この辞令が交付されたときとは、現実に本人が了知したときはもちろん、本人が了知しうべき状態に置かれたときを含むものである(最高裁昭二九・八・二四判決 判例時報三四号二二頁)。なお、実際には当日またはそれ以前に辞令が交付されることが普通で、その辞令に記載された日付の午後一二時に退職するものと観念されている」(「逐条地方公務員法」橋本勇著/学陽書房)と解されています。
 一方、市長の場合は、地方自治法第145条が「退職しようとするときは、その退職しようとする日前、都道府県知事にあっては三十日、市町村長にあっては二十日までに、当該普通地方公共団体の議会の議長に申し出なければならない」と規定していることから、長からの意思表示のみで成立する法律行為であると考えられます。そうであるならば、長の意思表示に特段の定めがないことから、民法上の規定を適用し、3月31日という期限の到来(同日の午前0時)をもって、その効果が発生すると解されます。また、議長及び副議長の辞職についても、「「十月一日をもって辞職したい」旨の辞意を表明し、議会がこれを許可したときは当該辞職の効果は十月一日から発生する(行実昭二六、五、二)」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)とあります。
 しかしながら、市長の退職の日をそのように考えるのであるならば、「長の退職申出による退職指定日前に、その退職に伴なう選挙を執行した場合における後任者の任期の起算日については」、「法第二五九条ただし書を類推適用し、前任者の退職の日の翌日から起算する」(「選挙関係実例判例集」選挙制度研究会編/ぎょうせい)とする昭和42年1月14日行政実例では、1日の空白期間が生じることになります。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 20:21 | 地方自治法

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