職務代理者の表示

 「普通地方公共団体の長に事故があるとき、又は長が欠けたときは、副知事又は副市町村長がその職務を代理」(地方自治法第152条第1項前段)します。
 この場合において、「普通地方公共団体の長の職務を代理する副知事若しくは副市町村長又は普通地方公共団体の長の指定する職員若しくは規則で定めた上席の職員の呼称は、たとえば、県に関する場合には、「何県知事職務代理者何県副知事(何県職員)何某」とするのが適当であろう」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)と解されています。また、職務代理者を置く場合には、その呼称も含めて公示することが適当であろうと考えられます。
 ある市町村のホームページで、職務代理者を置いた場合の文書等の取扱いについて、市長名を変更することなく、「「○○市長△△△△」とあるのは、「○○市長職務代理者○○市副市長××××」と読み読み替えてください」とする記事がありました。おそらく公示した上で広報誌やホームページを使って広報しているのであろうと思われます。既存の文書の修正や電算システムの改修等、その変更には少なからずの労力と予算を必要とすることは予想できますが、こういう取扱いはどうなのでしょうか。
 様々な意見のあるところとは思いますが、代理とは、「代理者が都道府県知事又は市町村長の職務代理者であることを明示して自己の名をもって、都道府県知事又は市町村長の職務権限に属する一切の事項を処理し、その行為自体は代理者の行為であるが、その行為の効果は都道府県知事又は市町村長が行ったと同じ効果を生ずることである。したがって、その効果は直接都道府県又は市町村に帰属することになる」(前掲書)ということを考えると、消極的に解します。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 07:32 | 地方自治法 | コメント (0) | -

選挙運動用ポスターの掲示

 地方公務員法第36条第2項は、政治的行為として「職員は、特定の政党その他の政治的団体又は特定の内閣若しくは地方公共団体の執行機関を支持し、又はこれに反対する目的をもって、あるいは公の選挙又は投票において特定の人又は事件を支持し、又はこれに反対する目的をもって」、「文書又は図画を地方公共団体又は特定地方独立行政法人の庁舎(特定地方独立行政法人にあっては、事務所。以下この号において同じ。)、施設等に掲示し、又は掲示させ、その他地方公共団体又は特定地方独立行政法人の庁舎、施設、資材又は資金を利用し、又は利用させること」(同項第4号)を禁止しています。
 一方、公職選挙法第145条第1項は、ポスターの掲示箇所として「何人も、衆議院議員、参議院(比例代表選出)議員、都道府県の議会の議員又は市町村の議会の議員若しくは長の選挙(第144条の2第8項の規定によりポスターの掲示場を設けることとした選挙を除く。)については、国若しくは地方公共団体が所有し若しくは管理するもの又は不在者投票管理者の管理する投票を記載する場所には、第143条第1項第5号のポスターを掲示することができない。ただし、橋りょう、電柱、公営住宅その他総務省令で定めるもの並びに第144条の2及び第144条の4の掲示場に掲示する場合については、この限りでない」と規定しています。
 職員が公営住宅に選挙運動用のポスターを掲示することは、可能なのでしょうか?
 地方公務員法第36条第2項については、「第2項第4号の規定中「地方公共団体の庁舎、施設」の「施設」には「公営住宅」は含まれ、公職選挙法第145条第1項ただし書の規定の特別規定である」(昭和33年8月2日行政実例)と解されています。したがって、職員は、公営住宅にポスターを掲示することはできません。
 なお、地方公務員法第36条第2項第4号の規定には、同項ただし書に規定する区域の制限がありません。本市にも自治会等の役員を引き受けている職員が多数存在します。自治会等が特定の候補者を応援している場合もありますので、注意が必要です。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 20:32 | 地方公務員法 | コメント (0) | -

統一地方選挙前半戦終了後のたわごと

T君「盛り上がれん選挙やったのう」
自分「投票率、最低やったやろ」
T君「前の△△選挙のときも投票率低うて、選管、△△に怒られたらしーの」
自分「わはは〜。投票率低いから通ったのが分からんのか」
T君「それより、新聞見たらよう「有権者が○○を支持」とか「××に期待」とか書いちゃあるやろ。あれ本
 気で書いてんやったら、マスコミっちゅーのも、選挙の実態、知らなさ過ぎるど」
自分「実際、何の選挙かも分からんで投票にくる人がぐっすけおるぐらいやからのう」
T君「みんなが政治に無関心になってる中で、一部の役所を食いもんにしてる奴らだけが選挙に熱心や
 からのう」
自分「相変わらず、歩くのもやっとの年寄りまで動員してるとこもあるしのう」
T君「それ以外は、単なる人気投票や。AKB48の選挙と変わらんど」
自分「AKBの選挙?何やそら。アフリカかどっかの自治政府か?」
T君「いや、アイドルでな、そういうのがあんねや」
自分「ふーん。まあ、政策っちゅーても、ロクなもんないやんけ。ポピュリズムとかいうやつか。」
T君「替え玉投票やとな、入場整理券を10,000円ほどで買うてくれるらしーけど、手当や減税で1票
 入れてくれっちゅーのも、それとそう変わらんど」
自分「そうやのう。けど、選挙で最低の候補者と最悪の候補者しか出てへんかったら、どっちに入れたら
 えーねんっちゅー気持ちになるわのう」
T君「そんなときのためにやな、「該当者なし」っちゅーのをつくったらどうやろ。公職選挙法改正すんね
 や。やっぱ選挙っちゅーのは「該当者なし」も含めて投票率80パーセント以上は欲しいど」
自分「おお、そらええ。けど、府議や市長やったらえーけど、市議はどうすんねん」
T君「おいおい、冗談や冗談。本気にすんなや」

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 08:40 | その他 | コメント (0) | -

契約の自動更新条項

 「ちょっと見てくれ」と言われてちょっと見た契約書の中に、いわゆる自動更新条項(契約期間を4月1日から翌年の3月31日までとする契約で、契約終了前の一定の期間までに当事者の一方から更新を拒否する申出がない場合は、当該契約を1年間更新したものとみなす旨の規定)が規定されていました。
 なお、この契約書には「翌年度以降において歳入歳出予算の当該金額について減額又は削除があった場合は、当該契約は解除する」旨の条件も規定されていますが、この契約に係る債務負担行為は設定されていません。
 会計年度独立の原則から、歳出予算に基づく契約については、債務負担行為等の予算措置をせずに次年度以降に経費の支出を伴うものを締結することはできません。このことから、例え「翌年度以降において歳入歳出予算の当該金額について減額又は削除があった場合は、当該契約は解除する」旨の条件を規定したとしても、自動更新条項を規定することはできません。
 このような契約書が見受けられるのは、昭和40年9月1日付けの行政実例に「当該契約条項中に、翌年度以降において歳入歳出予算の当該金額について減額又は削除があった場合は、当該契約は解除する旨の条件を附した場合は債務負担行為とする必要はない」とあることがその原因ではないかと考えられます。しかし、そもそもこの行政実例は、長期継続契約において当該解除権を留保した条件を付した場合には、債務負担行為として予算で定める必要はないと解されたものです。単年度契約に自動更新条項を規定するによって長期継続契約のような効果を発生させ、かつ、解除権留保条項を規定することによって債務負担行為をも解除しようとすることはできません。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 20:02 | 地方自治法 | コメント (0) | -

続・退職の日

 「大阪府議選泉佐野市選挙区(定数1)では1日朝、4選を狙う自民現職の山下清次氏(67)が立候補を届け出。午後には市長の新田谷修司氏(60)が市長を辞職し、維新新人として立候補を届け出ることにしており、中堅府議と直近の地元首長が議席を争う異例の構図となる。
 泉佐野市長として3期目の新田谷氏は、維新代表の橋下徹知事が掲げる府政改革に共鳴し、市長の任期を1年近く残して府議への転身を決意。すでに市議会議長に辞表を提出し、1日午後2時で辞職することが承認されている」(4月1日付け産経新聞夕刊)。
 地方自治法第145条は、市長の退職について、日を単位として規定しています。では、産経新聞の記事のように、市長が「平成23年4月1日の午後2時をもって退職」することは可能なのでしょうか?
 結論から言うと、可能と考えます。
 地方自治法第145条の規定による退職の申出が市長の一方的な意思表示によって成立すること、時間を単位とする退職の申出を無効とする理由がないことがその理由です。また、公職選挙法第90条においても「公職の候補者となったときは、当該公務員の退職に関する法令の規定にかかわらず、その届出の日に当該公務員たることを辞したものとみなす」と規定されていることから日を単位としていると解されますが、「逐条解説公職選挙法」(安田充・荒川敦編著/ぎょうせい)には、「「公職の候補者となったとき」とは、単に届出書類を選挙長に提出したときではなく、選挙長による届出書類の審査が終了し、公務員であることを除いてすべて適法であるとされ、選挙長が受理するときであると解する。この意味において「公職の候補者となったとき」は、本条の規定により、立候補制限を受ける現職の公務員たる地位を瞬間的かつ自動的に失うもの」とあります。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 19:26 | 地方自治法 | コメント (2) | -

退職の日

 変な話ですが、例えば「平成23年3月31日をもって退職」する場合、一般職の職員は3月31日の24時に、市長は同日の午前0時に退職することになり、1日のズレが生じます。
 一般職の職員の場合、「退職願いは本人の同意を確かめるための手続であり、その同意を要件とする退職発令(行政行為)が行われてはじめて離職することとなるものである(高松高裁昭三五・三・三一判決 行政裁判例集一一巻三号七九六頁)。退職の効力の発生時期は、死亡による退職の場合は当然にその死亡のときであるが、それ以外は、他の辞令交付による場合と同じく、法律的には到達主義によるもの、すなわち辞令が交付されたときであり、辞令の発信の時期ではない(最高裁昭三〇・四・一二判決 刑事裁判集九巻四号八三八頁)。この辞令が交付されたときとは、現実に本人が了知したときはもちろん、本人が了知しうべき状態に置かれたときを含むものである(最高裁昭二九・八・二四判決 判例時報三四号二二頁)。なお、実際には当日またはそれ以前に辞令が交付されることが普通で、その辞令に記載された日付の午後一二時に退職するものと観念されている」(「逐条地方公務員法」橋本勇著/学陽書房)と解されています。
 一方、市長の場合は、地方自治法第145条が「退職しようとするときは、その退職しようとする日前、都道府県知事にあっては三十日、市町村長にあっては二十日までに、当該普通地方公共団体の議会の議長に申し出なければならない」と規定していることから、長からの意思表示のみで成立する法律行為であると考えられます。そうであるならば、長の意思表示に特段の定めがないことから、民法上の規定を適用し、3月31日という期限の到来(同日の午前0時)をもって、その効果が発生すると解されます。また、議長及び副議長の辞職についても、「「十月一日をもって辞職したい」旨の辞意を表明し、議会がこれを許可したときは当該辞職の効果は十月一日から発生する(行実昭二六、五、二)」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)とあります。
 しかしながら、市長の退職の日をそのように考えるのであるならば、「長の退職申出による退職指定日前に、その退職に伴なう選挙を執行した場合における後任者の任期の起算日については」、「法第二五九条ただし書を類推適用し、前任者の退職の日の翌日から起算する」(「選挙関係実例判例集」選挙制度研究会編/ぎょうせい)とする昭和42年1月14日行政実例では、1日の空白期間が生じることになります。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 20:21 | 地方自治法 | コメント (0) | -
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