−管理人のたわごとブログ− 犯歴事務(前編)
犯歴事務というと、市町村の事務の中でも最も秘密性が高く、かつ、不可思議な事務ではないでしょうか。そもそも、市町村がこの前科を犯罪人名簿に登録する事務を行う法的根拠がないのです。
この件については、2010年2月20日付け18:00配信の47NEWS(共同通信)に次のような記事があります。
「罰金以上の有罪判決が確定した人の氏名や罪名、量刑などを記載した「犯罪人名簿」を全国の市区町村が法的根拠のないまま作成、本来の目的とされる選挙権の有無の確認だけではなく、官公庁からの犯歴照会にも常用しているのに、名簿の様式や運用が統一されておらず、国も実態を把握していないことが20日、分かった。
総務省市町村課は、市区町村による名簿作成を認めた上で「根拠法令はなく、運用の詳細は分からない」と説明。市区町村の戸籍担当者らでつくる全国連合戸籍事務協議会は「法的根拠がない犯歴事務は個人情報保護法に抵触する」などとして早急な法整備を国に求めており、個人情報の管理の在り方に疑問の声も出ている。」
では、市町村が犯歴事務を行う根拠は、どこにあるのでしょうか。
「新版前科登録と犯歴事務」(大霜憲司著/日本加除出版)(出典が古くて申し訳ないのですが(平成8年11月1日発行です。)、手元にないもので……)によると、「明治4年4月、それまでの宗門改帳等に代わり六年一校制の戸籍とする戸籍法三三則が公布され、明治5年1月から施行された。……(略)……この戸籍法三三則の施行に併せ明治5年1月13日太政官布告第4号が発せられた。
現在市区町村で備え付けられている犯罪人名簿の起源は、この太政官布告第4号であるとみられている。」その後、「司法卿達、司法省訓令の趣旨に基づき、いわば受動的に犯罪人名簿の調製整備を行ってきたのであるが、大正6年4月12日に至り「市町村長ヲシテ本籍人ノ犯罪人名簿ヲ整備シ及転籍者ニ関スル通知ヲ為サシムル件」と題する内務省訓令第1号が発せられ、有罪の確定裁判を受けた者の戸籍事務を管掌する市区町村長は、裁判所検事局、軍法会議又は他の市区町村長からの通知に基づいて犯罪人名簿を整備するものとされ、その調製整備をしなければならないことが初めて規定化されたのである。現在市区町村で調製されている犯罪人名簿の備付けの根拠は、実にこの内務省訓令にあるのである。」とあります。
なお、47NEWSにある「法的根拠がない犯歴事務は個人情報保護法に抵触する」というのは、正しくはありません。個人情報の保護に関する法律では、地方公共団体は個人情報取扱事業者から除外され、その保有する個人情報の取扱いについては、当該地方公共団体の条例の規定するところによっています。そして、大部分の個人情報保護条例では、犯歴は、社会的差別の原因となるおそれのある個人情報として、法令等の規定に基づく場合又はあらかじめ個人情報保護審査会の意見を聴いた上で事務事業の目的を達成するために必要があると実施機関が認めた場合以外は収集してはならないと規定しています。このため、犯歴等の個人情報については、個人情報保護条例が施行される際に、審査会の意見を聴取した上で収集しているはずです。個人情報に関するこうした勘違いは、しばしば見受けられます。
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