政治的行為の制限

 地方公務員は、地方公務員法第36条の規定により、政治的行為が制限されています。それは、「近代的公務員制度の理念の一つである公務員の政治的中立性を確保することを目的としている。この公務員の政治的中立は、三つの見地から要請されるものであり、その一は全体の奉仕者としての性格に基づくものであり、第二は行政の中立性と安定性を確保することであり、第三は職員を政治的影響から保護することである」(「逐条地方公務員法」橋本勇著/学陽書房)と考えられています。
 本来、このことは、懲戒処分によって担保されるはずなのですが、大阪市職員に対する橋下新市長の数々の発言及びそのやり方は、同条の規定に抵触するように思われてなりません。
 大阪市の実情は自分の知るところではありませんが、昭和49年11月6日の最高裁判決にも次のようにあります。
「もし公務員の政治的行為のすべてが自由に放任されるときは、おのずから公務員の政治的中立性が損われ、ためにその職務の遂行ひいてはその属する行政機関の公務の運営に党派的偏向を招くおそれがあり、行政の中立的運営に対する国民の信頼が損われることを免れない。また、公務員の右のような党派的偏向は、逆に政治的党派の行政への不当な介入を容易にし、行政の中立的運営が歪められる可能性が一層増大するばかりでなく、そのような傾向が拡大すれば、本来政治的中立を保ちつつ一体となって国民全体に奉仕すべき責務を負う行政組織の内部に深刻な政治的対立を醸成し、そのため行政の能率的で安定した運営は阻害され、ひいては議会制民主主義の政治過程を経て決定された国の政策の忠実な遂行にも重大な支障をきたすおそれがあり、このようなおそれは行政組織の規模の大きさに比例して拡大すべく、かくては、もはや組織の内部規律のみによってはその弊害を防止することができない事態に立ち至るのである。したがって、このような弊害の発生を防止し、行政の中立的運営とこれに対する国民の信頼を確保するため、公務員の政治的中立性を損うおそれのある政治的行為を禁止することは、まさしく憲法の要請に応え、公務員を含む国民全体の共同利益を擁護するための措置にほかならないのであって、その目的は正当なものというべきである。」

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 15:18 | 地方公務員法

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