市町村が処理することとされた事務について規定する規則(後編)

 屋外広告物の許可等に関する事務を例に考えてみましょう。
 条例による事務処理の特例制度の対象となる事務は、具体的に都道府県知事の権限に属する事務であることが必要であるとされています。このことから、屋外広告物法では、「都道府県は条例の定めるところにより広告物等の制限等をすることができることとされている(同法三〜六)が、このように法令の規定により都道府県の条例で定めることとされている事務に関しては、法令に基づく条例を制定し都道府県知事の職務権限が規定されることにより、はじめて具体の事務が発生するものであり、具体の事務として都道府県知事の権限に属することとされたものを市町村が処理することとすることは可能であるが、当該条例の制定という機能自体を条例による事務処理の特例の制度により市町村が行うこととすることはできない。このようなことから、平成十六年に制定された景観法による屋外広告物法の改正において、都道府県は、屋外広告物法の規定に基づく条例の制定又は改廃に関する事務の全部又は一部を、条例で定めるところにより、景観行政団体である市町村が処理することとすることができると規定され」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)ています。
 都道府県屋外広告物条例の制定によって発生した屋外広告物に関する具体の事務については、同条例において市町村が処理することとされた事務には、同条例の施行に関し必要な事項を定めた都道府県屋外広告物条例施行規則で規定されている事項も含まれると解するのが適当ではないでしょうか。つまり、事務の移譲を受けた市町村において、屋外広告物条例施行規則を制定する必要はないのではないでしょうか。
 また、「地方公共団体の長が定める規則は、条例と別個の地方公共団体の自治立法の形式であって、当然には、法律と法律に基づく政令のような関係に立つものではない。法律に基づく政令と同様に、条例の委任を受け又は条例を執行するために定められるものもあるが、必要的条例事項を除けば、法令又は条例の委任等がなくても、地方公共団体の住民の権利義務に関する法規たる性質を有するものを定めることができ、また地方公共団体の内部的規律たる性質を有する規則を定めることができる」(前掲書)と解されています。
 「法律に根拠規定がある事務については、当該法律の外、これに基づく政令・省令を含めた総体が「法令」として市町村に適用される」のは、法律と法律に基づく政令又は省令の関係から導かれるものであるならば、「法律に基づく政令と同様に、条例の委任を受け又は条例を執行するために定められた」規則についても、「市町村が処理することとされた事務について規定する法令、条例又は規則」に該当するものであると解するのが適当ではないでしょうか。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 20:39 | 地方自治法

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