市町村が処理することとされた事務について規定する規則(前編)

 地方自治法第252条の17の3第1項は、「前条第1項の条例の定めるところにより、都道府県知事の権限に属する事務の一部を市町村が処理する場合においては、当該条例の定めるところにより市町村が処理することとされた事務について規定する法令、条例又は規則中都道府県に関する規定は、当該事務の範囲内において、当該市町村に関する規定として当該市町村に適用があるものとする」と規定しています。
 この「市町村が処理することとされた事務について規定する法令、条例又は規則」とは、「当該事務処理の根拠規定があるそれぞれの法令、条例又は規則という意味である。すなわち、法令に根拠規定のある事務については当該法令、条例に根拠規定がある事務については当該条例、規則に根拠規定がある事務については当該規則を指す。したがって、法令に根拠規定がある事務に関し都道府県が定めている条例や規則は、本項でいう「条例又は規則」に該当せず、法令に根拠規定のある都道府県の事務を市町村が処理することとした場合においても、当該事務に関し都道府県が定めている条例や規則は、原則として市町村に適用されない。たとえば、墓地、埋葬等に関する法律に基づく事務のうち、同法第十条第一項の規定による墓地等の経営の許可権限を、条例による事務処理の特例の制度により市町村が処理することとした場合において、当該許可基準を都道府県の施行条例において定めているときには、当該条例に基づく事務についても併せて市町村が処理することとする旨の明示の規定がない限り、当該都道府県の施行条例は市町村に適用がなく、市町村が施行条例を定めることとなる。また、都道府県の条例に根拠規定がある事務に関し都道府県が定めている規則は、本項でいう「規則」に該当せず、原則として市町村に適用されない。なお、法律に根拠規定がある事務については、当該法律の外、これに基づく政令・省令を含めた総体が「法令」として市町村に適用される。政令に根拠規定がある事務についても同様である」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)と解されています。
 このうち、「都道府県の条例に根拠規定がある事務に関し都道府県が定めている規則は、本項でいう「規則」に該当せず、原則として市町村に適用されない」というのは、どういう意味なのでしょうか。続くなお書きには、「法律に根拠規定がある事務については、当該法律の外、これに基づく政令・省令を含めた総体が「法令」として市町村に適用される。政令に根拠規定がある事務についても同様である」と記されています。ならば、条例に根拠規定がある事務についても、当該条例の外、これに基づく規則に関しては、「条例又は規則」として市町村に適用されると解されるべきではないでしょうか。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 20:26 | 地方自治法 | コメント (0) | -

教育委員会と長の職務権限

 教育委員会の職務権限又は地方公共団体の長の職務権限は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第23条又は第24条に規定されています。これらの規定は、地方自治の本旨を尊重し、かつ、教育の政治的中立性及び教育行政の安定性を確保するために、教育委員会と長の権限に調整が加えられたものであると解されています。
 最近、このことを理解していない政治家が増えてきたように思います。大阪維新の会が提案した「教育基本条例案」にしても、その始まりは、教育行政を政治的にコントロールしたいというものではなかったかと記憶しています。
 元々は、地方自治法第180条の7の規定により、教育委員会は、その権限に属する事務の一部を長と協議して、長の補助機関である職員等に委任し、又は補助執行させることができるとされていましたが、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律(平成19年法律第97号)によって、平成20年度からは、条例の定めるところにより、スポーツに関すること(学校における体育に関することを除く。)又は文化に関すること(文化財の保護に関することを除く。)については、長が管理し、及び執行することとすることができることとされました。
 協議による委任等については、「委任をした場合においては、委任をした事務の範囲、受任者の職名等を公報等により一般に公告することが適当であろう」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)と解されてはいましたが、実際には、地方公共団体ごとに取扱いが異なっており、一部の地方公共団体では、事務の委任をしているかどうかさえも容易には分からないような状態になっていました。これが、教育に関する事務の職務権限の特例に関する条例を制定することによって、明らかになるであろうと当時は考えていたのですが、それでも、同条例を制定することなく、「文化に関すること」を長が管理し、執行している場合が見受けられます。
 また、「青少年教育、女性教育及び公民館の事業その他社会教育に関すること」(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第23条第12号)の一部の事務についても、長の事務分掌規則等で規定されているところがあります。教育委員会の職務権限及び長の職務権限並びに職務権限の特例は、法定されているのですが……

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 20:22 | その他 | コメント (0) | -

外来語

 カウンターパート、コモンセンスペアレンティング、ファシリティマネジメント、パブリックインボルブメント、メディカルツーリズム、リターナブル等々……。これらの外来語は、実際に本市で使用されたことのあるものです。
 公用文では、外来語の使用を禁止しているわけではありません。ただ、どこの地方公共団体においても、住民に分かりやすい文書を作成するため、一般的になじみの薄い外来語については、日本語に言い換えるなり、注釈を付けるなりすることとされているのではないでしょうか。「分かりやすい公用文の書き方」(礒崎陽輔著/ぎょうせい)では、外来語の使用について、「@既に十分日本語化しており、理解に支障がないと考えられるもの、A他に適切な日本語の言い換えが見当たらないものに限られるべきであるということであろう」と記されています。
 ところが、外来語を使うことが「カッコえーこと」だと勘違いしている人がいませんか?誰も知らないような外来語を好んで使ったりしていませんか?
 外来語に限ったことではありませんが、相手の立場に立って、分かりにくい言葉を分かりやすく表現することは、全てのコミュニケーションにおいて必要なことではないでしょうか。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 19:29 | 文書事務 | コメント (0) | -

措置要求すべき公平委員会(後編)

 この場合は、市町村の公平委員会であると考えられます。派遣職員等の異なる地方公共団体の職を有する職員については、措置を要求する勤務条件を管理している地方公共団体の人事委員会又は公平委員会が審査機関であると解されるからです。
 県費負担教職員の措置要求に関する行政実例を参考にして考えてみましょう。県費負担教職員の措置要求については、地方教育行政の組織及び運営に関する法律施行令第7条の規定により、地方公務員法第46条の規定中「人事委員会」が「任命権者の属する地方公共団体の人事委員会」と読み替えられています。よって、県費負担教職員は、任命権者の属する地方公共団体の人事委員会、つまり、指定都市や教職員の任命権が委任されている市町村教育委員会が属する市町村を除き、都道府県の人事委員会に対して措置要求することになっています。
 しかし、県費負担教職員の身分は市町村に属し、その職務遂行に当たっては、法令及び当該都道府県の例規のほか、当該市町村の条例及び規則並びに当該市町村教育委員会の定める教育委員会規則等に従い、かつ、市町村教育委員会その他職務上の上司の職務上の命令に従う義務を負っています。また、市町村教育委員会は、県費負担教職員の服務を監督する権限を有しています(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第43条第1項及び第2項)。
 このことから、地方公務員法第47条に規定する人事委員会又は公平委員会が必要な勧告をしなければならない「権限を有する地方公共団体の機関」とは、任命権者に限らず、教職員の勤務条件について権限を有している市町村教育委員会、市町村長等もこれに該当すると解されているところです(昭和32年2月1日付け行政実例)。しかし、このような場合には、その実効性を確保するためにも、当該勤務条件を管理する権限を有する機関が属する地方公共団体の人事委員会又は公平委員会に措置要求することができると解することが立法趣旨にもかなうものであると考えられます。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 15:10 | 地方公務員法 | コメント (0) | -

旅先で

 連休中、中予から南予方面にかけて旅行してきました。その中でも、大洲、内子そして宇和は素晴らしかったです。
 これらの町には、誰もが知っているような歴史遺産や観光名所がある訳ではありませんが、城下町の大洲、豪商の町の内子、文人の町の宇和と趣の異なる魅力的な町並みがあります。さらに、そこが生活の場所であるということが、その魅力を倍増させています。
 いわゆるシャレたまちではありませんが、そこには、ごみ一つ落ちていません。「犬の糞は飼い主が始末しましょう」や「ポイ捨て条例施行のまち」といった不粋な看板もありません。そして、会う人会う人が、小さな子供までもが気持ちよく挨拶してくれます。
 こんなまちで暮らしてみたい、そう思いました。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 19:23 | その他 | コメント (0) | -

措置要求すべき公平委員会(前編)

 勤務条件に関する措置要求について、面白い質疑応答を見つけました。
「問 学校(一部事務)組合における教職員は、その組合(地方公共団体)に公平委員会が設けられてい
  ない場合、どこへ勤務条件に関する措置要求をすればよいか。なお、この学校組合を構成する関係
  町村は、公平委員会を既に設けている。
 答 学校組合も、公平委員会を設置すべきものであり、公平委員会が設置されていない限り、当該学
  校組合の学校の教職員は、「勤務条件に関する措置の要求」をする法的手段はない。
   なお、この場合、公平委員会の設置については、単独設置によることなく、例えば当該学校組合を
  構成する地方公共団体又は当該学校所在地の属する地方公共団体と共同して設置することが適当
  であろう。
 行政実例 昭二六・一一・一二地自公発四九六」(「質疑応答地方公務員法」地方公務員問題研究会編集/ぎょうせい)
 昭和26年11月12日付けの行政実例というと、地方公務員法の一部がまだ施行されていない頃ですので、このような回答になったのではないかと考えられます。また、一部事務組合の執行機関の組織については、地方自治法第287条第1項第6号の規定により規約事項とされていますが、公平委員会に関しては、地方公務員法第7条第3項の規定により設置が義務付けられており、条例で置くこととされています。したがって、規約で自由に設置することができず、組合の条例で設置することになります。こうした法体系も公平委員会を設置し忘れた原因の一つになったのではないでしょうか。さすがに現在では、機関等の共同設置や事務委託を含めると、公平委員会の設置されていない一部事務組合はないと思うのですが……
 ところで、公平委員会が設置されている一部事務組合に派遣された職員で、その給与を派遣元の市町村が支給している場合において、当該職員が勤務条件に関する措置要求をすべき公平委員会は、一部事務組合の公平委員会でしょうか?それとも市町村の公平委員会でしょうか?

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 20:14 | 地方公務員法 | コメント (0) | -
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