「何人も」

 行政機関の保有する情報の公開に関する法律第3条は、「何人も、この法律の定めるところにより、行政機関の長(前条第1項第4号及び第5号の政令で定める機関にあっては、その機関ごとに政令で定める者をいう。以下同じ。)に対し、当該行政機関の保有する行政文書の開示を請求することができる」と規定しています。また、ほとんどの地方公共団体も同様に、情報公開条例の請求権者を「何人も」としています。
 「「何人も」というのは、誰でもという意味である。この用語は、憲法第三章の「国民の権利及び義務」の中で多く用いられているが、この場合、「何人も」というのは、日本国民であると否とにかかわらずということで、外国人をも含むという意味を表わすのに用いられている」(「法令用語の基礎知識」田島信威著/ぎょうせい)。
 「何人も」は、法律と同様に、条例でも「何人も……してはならない」や「何人も……することができない」と禁止規定においてよく用いられています。一方、「何人も……することができる」といった権利付与の規定で用いられるのは珍しいです。一般的な事例としては、個人情報保護条例(自己情報の開示請求)、財政状況の作成及び公表条例(財政状況の閲覧請求)及び資産等公開条例(資産等報告書等の閲覧請求)ぐらいではないでしょうか。
 ところで、この「何人も……することができる」という規定、抵抗はありませんか?
 地方公共団体が成立するには、3つの構成要素が必要とされています。「第一は地域的・空間的構成要素(場所的構成要素)であり、一定の地域を画した区域を有することである。第二は人的構成要素であり、その一定の地域内に住所を有するすべての者をもって、その住民すなわち、団体の構成員とすることである。第三は法制度的構成要素であり、その地域の範囲内において、その住民によって構成される団体に対して国法に基づいて法人格が与えられ、事務を処理する権能(自治権)が認められることである」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)。また、「地方自治の本旨」とは、「国のもとに、地方公共団体の「団体自治」及び「人民自治」の二つの意味における地方自治を確立すること、言い換えれば、地方に関する行政は、原則として、国の官庁がこれに関与することなく、国から独立した団体である地方公共団体に移譲するとこ(団体自治)、及びこれらの行政を地方の住民自らの責任と負担において処理すべきこと(人民自治)を意味する」(「要説行政法」田中二郎著/弘文堂)とされています。
 てなことを考えると、条例において「何人も……することができる」と規定することは、地方公共団体が、その構成要素を超えて法的責任を負うことになってしまい、当該地方公共団体の事務としては疑問があること。また、そのような事務は、「地方自治の本旨」に鑑みても、適当であるとは考えられないのです。よって、条例中に「何人も……することができる」と規定することに、抵抗を感じてしまうのです。
 ま、今時、こんな考えは、古いのでしょうね。
 なお、本市の情報公開条例は、「何人も……することができる」と規定しています。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 18:42 | 情報公開・個人情報保護

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投稿者   : 2013年9月25日 13:05

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