−管理人のたわごとブログ− 2010年7月
行政機関の保有する情報の公開に関する法律第3条は、「何人も、この法律の定めるところにより、行政機関の長(前条第1項第4号及び第5号の政令で定める機関にあっては、その機関ごとに政令で定める者をいう。以下同じ。)に対し、当該行政機関の保有する行政文書の開示を請求することができる」と規定しています。また、ほとんどの地方公共団体も同様に、情報公開条例の請求権者を「何人も」としています。
「「何人も」というのは、誰でもという意味である。この用語は、憲法第三章の「国民の権利及び義務」の中で多く用いられているが、この場合、「何人も」というのは、日本国民であると否とにかかわらずということで、外国人をも含むという意味を表わすのに用いられている」(「法令用語の基礎知識」田島信威著/ぎょうせい)。
「何人も」は、法律と同様に、条例でも「何人も……してはならない」や「何人も……することができない」と禁止規定においてよく用いられています。一方、「何人も……することができる」といった権利付与の規定で用いられるのは珍しいです。一般的な事例としては、個人情報保護条例(自己情報の開示請求)、財政状況の作成及び公表条例(財政状況の閲覧請求)及び資産等公開条例(資産等報告書等の閲覧請求)ぐらいではないでしょうか。
ところで、この「何人も……することができる」という規定、抵抗はありませんか?
地方公共団体が成立するには、3つの構成要素が必要とされています。「第一は地域的・空間的構成要素(場所的構成要素)であり、一定の地域を画した区域を有することである。第二は人的構成要素であり、その一定の地域内に住所を有するすべての者をもって、その住民すなわち、団体の構成員とすることである。第三は法制度的構成要素であり、その地域の範囲内において、その住民によって構成される団体に対して国法に基づいて法人格が与えられ、事務を処理する権能(自治権)が認められることである」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)。また、「地方自治の本旨」とは、「国のもとに、地方公共団体の「団体自治」及び「人民自治」の二つの意味における地方自治を確立すること、言い換えれば、地方に関する行政は、原則として、国の官庁がこれに関与することなく、国から独立した団体である地方公共団体に移譲するとこ(団体自治)、及びこれらの行政を地方の住民自らの責任と負担において処理すべきこと(人民自治)を意味する」(「要説行政法」田中二郎著/弘文堂)とされています。
てなことを考えると、条例において「何人も……することができる」と規定することは、地方公共団体が、その構成要素を超えて法的責任を負うことになってしまい、当該地方公共団体の事務としては疑問があること。また、そのような事務は、「地方自治の本旨」に鑑みても、適当であるとは考えられないのです。よって、条例中に「何人も……することができる」と規定することに、抵抗を感じてしまうのです。
ま、今時、こんな考えは、古いのでしょうね。
なお、本市の情報公開条例は、「何人も……することができる」と規定しています。
「ワークブック法制執務」(法制執務研究会編/ぎょうせい)には、「号について「削除」の方式をとるのは、号の移動を行うと当該移動をした号を引用している他の条文又は他の法令が多数ある場合にそのすべてについて改正を行う必要が生じ、これが非常に煩わしいような場合とすべきものであるから〈問228 参照〉、そのような場合に該当する場合においては、「一 削除」とすることが許されないわけではない。しかし、実際上は、号について、このような場合に該当する例は通常考えられないし、仮にあったとしても、最初の号から「削除」とすることは、余り見栄えのよいものではないから、そのような改正が行われることはほとんどない」とあります。
逆に言うと、レアケースとして、「一 削除」が存在するということですね。検索してみると……ありました。特定非営利活動促進法第27条第1号が「一 削除」となっています。ということは、「第一条 削除」、「別表第一 削除」又は「様式第一号 削除」というのもありなのでしょう。見栄えを気にするならば、これらの規定の方がよくないように思うのですが……検索してみました。
身体障害者福祉法施行令が「第一条 削除」に、森林法施行令が「別表第一 削除」に、老齢福祉年金支給規則(省令ですが……)が「様式第一号 削除」になっています。
事例があるというだけで、あまり見習うべきものではないのでしょうね。
個人情報の保護に関する法律の施行後、個人情報に対する過剰反応が問題になっています。そんな中、6月28日付け〔朝日新聞グローブ〕第42号で特集された「覚悟の社会保障」の一節に次のような記事がありました。
「「この端末は全国の税務署にあって、誰でも使えます」。ストックホルム近郊にある国税庁の一室。職員が自分の個人番号を打ち込んだ。「2008年の私の課税所得は52万3341クローナ。払った税金は17万1051クローナと表示されています」
続く言葉に驚いた。
「すべての国民の個人番号と住所、課税所得は公開情報です。国税庁に電話すれば教えますよ。もし所得に見合わない派手な生活をしていたら国税庁に通報することもできます」
スウェーデン在住の、ある日本人は、国税庁に本名を名乗らずに電話をかけ、自分の所得を教えてもらえるか試してみた。個人番号、勤労所得、金融所得(投資信託の売買益など)を難なく入手できた。
個人所得の公開は、ノルウェーやフィンランドでも行われている。
情報公開の基盤は共通番号制だ。子どもが生まれると病院はすぐに国税庁に連絡、生年月日と性別などをもとにした「個人番号」が親元に通知される。役所への届け出だけでなく、銀行口座の開設や車の購入まで、あらゆる場面で記入が求められる。
「払うべきを払わない」ことへのペナルティーも厳しい。徴収庁という延滞債権回収の専門機関があり、税だけでなく、電話料金や公共テレビの受信料、「離婚した父親からの養育費」などの民間債権も請け負う。
「支払いが滞っている」という事実が同庁に登録されると、その記録は公開され、他人が電話で問い合わせできる。「悪質な延滞があれば、ローンを組んだり、家を借りたりするのが難しくなる」と同庁広報担当のカロリーナ・カル。」
では、いわゆる生活保護を受けている人は、どうなるのでしょうか?
そもそも、国家と個人、権利と義務、自由と責任などの考え方が根本的に違うのでしょうが、色々と考えさせられました。
反則法制とは、おおさか政策法務研究会のHPの管理人のたわごとをつづったブログです。しょぼい市のしょぼい職員がほざくたわごと(2009年4月16日付け記事参照)程度の認識で書いてきたものですので、「自治体法務の備忘録」の記事や「洋々亭フォーラム」の投稿(Gさんの回答のとおりです。okayさんほか御迷惑をおかけしますが、御寛容ください。)には、正直、恐縮してしまいました。慌てて近隣市から「自治体法務NAVI」(第一法規)最新号を取り寄せ、読ませていただきました。
こうした声を励みにして頑張らないといけませんね。
ところで、政策法務に興味がある方、おおさか政策法務研究会へ入って一緒に勉強してみませんか。おおさか政策法務研究会のHPは、こちらです。
「ある法令の文章中で最も近い前の場所に表示された条、項、号、年、月等の字句をうけて、厳密に同一の対象であることを示す場合に用いられるのが、「同」である」(「ワークブック法制執務」法制執務研究会編/ぎょうせい)。
法令検索をしていると、次のような規定を見つけました。
○悪臭防止法の一部を改正する法律(平成七年法律第七十一号)
附 則
(経過措置)
第二条 改正前の第三条の規定により指定された規制地域は、改正後の第三条の規定により指定され
たものとみなす。
2 改正前の第四条の規定により定められた規制基準は、改正後の第四条第一項の規定により定めら
れたものとみなす。
気になったのが「改正後の第三条」及び「改正後の第四条第一項」という規定です。改正されているので、同一の対象ではないということで「改正後の同条」及び「改正後の同条第一項」とはしないのかと思ったのですが、さらに検索したところ、次のような事例がありました。
○踏切道改良促進法の一部を改正する法律(平成八年法律第二十六号)
附 則
(経過措置)
2 この法律の施行前にした改正前の第三条第一項又は第二項の規定による踏切道の指定は、改正
後の同条第一項又は第二項の規定に基づいてしたものとみなす。
うーん……この違いは、何なのでしょうか?
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