「することができる」

 「「することができる」は、一定の行為をすることが可能であることを表す場合に用いる。一定の行為をするかしないかの裁量権を付与する場合と、一定の行為をする権利又は能力を付与する場合との、2通りの用い方がある」(「法制執務詳解」石毛正純著/ぎょうせい)とされています。では、後者の場合、「することができる」からといって、「しても・しなくても」どちらでもよいのでしょうか。
 「法令用語の基礎知識」(田島信威著/ぎょうせい)には、次のようにあります。
 「「することができる」というのは正に権能を与えたものであるが、本来の職務上の義務が別にあれば、してもしなくてもよいというわけにはいかなくなる。刑事訴訟法第213条には「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる」とある。権能の面でとらえるならば、現行犯人であれば、逮捕状なくして逮捕しても刑法第230条の逮捕罪は成り立たないということが定めているとみることができる。義務の面からみたらどうなるか。現行犯人をみかけた場合に、通りがかりの一般人ならば、手出しをしないで見過ごそうとも、勇を鼓して逮捕しようとどちらでもいいであろう。しかし、それが勤務中の警察官であったならば、「することができる」だからしてもしなくてもいいというわけにはいかない。黙って見過ごしたら職務上の義務を怠ったものとされるであろう。
 すなわち、「することができる」として権能を与えられている場合でも本来の職務や地位などを勘案し、あるいは法律の建前や規定の趣旨などから、単に権能があるだけではなく、義務もあると解さなければならない場合もあるということである。」
 次の場合は、どうでしょうか。
 「普通地方公共団体の議会が成立しないとき、第113条ただし書の場合においてなお会議を開くことができないとき、普通地方公共団体の長において議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき、又は議会において議決すべき事件を議決しないときは、当該普通地方公共団体の長は、その議決すべき事件を処分することができる。」(地方自治法第179条第1項)
 「普通地方公共団体の議会の権限に属する軽易な事項で、その議決により特に指定したものは、普通地方公共団体の長において、これを専決処分にすることができる。」(同法第180条第1項)
 この時期になると、どこの市町村も専決処分を視野に入れて仕事をしているかと思いますが、本市の場合、定例化した市税条例の一部改正条例などを除き、なかなか市長が専決処分してくれません。その理由は、「(政治的に)でけへん」という理解できないものです。しかし、専決処分の要件に該当し、その必要があるならば、市長には、専決処分しなければならない責任があるのではないかと思うのです。
 なお、第180条第1項の規定による専決処分についても、「できる」規定であることから、事件によっては、議決を経ている市町村があると聞いたことがあります。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 20:10 | 法制執務

コメント

なお書を補足しておきますと、
しかし、「議会の権限に属する事項を長の専決処分の対象として指定したときは、当該事項は、議会の権限を離れて普通地方公共団体の長の権限となる。したがって、適法に本条による指定が行われた後において、当該指定された事項について議会が議決しても、それは無権限な議決であり無効である」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)と解されます。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 2010年6月29日 18:14

 

投稿者   : 2013年9月21日 11:52

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