簡潔な改正方法

 法制執務は、決まり事の世界です。ただ、その決まり事の範囲内で、いくつかの答えがあり、その選択に立法者のセンスというか癖が反映される場合があります。例えば、一部改正の方法でいうと、次のようなケースです。
「一部改正法令の規定を立案するに際しては、元の法令の改正後の形をどうするかを考え、これと改正前の現在の形とを比較し、どの字句を削り、どこにどのような字句を加え、どの字句をどのように改めたらよいかを検討し、できるだけ簡潔な改正方式によって改正するようにすべきである。したがって、その場その場に応じて、加え方式又は削り方式と改め方式とのいずれを用いるべきかを吟味し、できるだけ簡単な方法を選ぶべきである。(ただ、問151及び前問でも触れたように、一つの言葉としてまとまっていると考えられるものについては、その一部のみを引用することは避けるべきである。)例えば、
 「第○条 A、B、C及びDについて……」
とある文言を
 「第○条 A、C、E及びDについて……」
と改めようとする場合に、
 「第○条中「、B」を削り、「C」の下に「、E」を加える。」
とするより、
 「第○条中「B、C」を「C、E」に改める。」
とする方が簡単である。
 このように加え、削り方式をとるか、改め方式をとるかをその場に応じて選択し、一部改正法の規定は、できるだけ簡潔なものにすべきである。(なお、どの方式が簡潔であるかを判断するに当たり、従前は改正文の字数を数えてその少ない方を採用すべきであるということもいわれたが、最近では、必ずしも字数の多少に厳密にこだわらないこととされている。)」(「ワークブック法制執務」法制執務研究会編/ぎょうせい)。
 自分は、相変わらず、字数の少ない方を採用しています。理由は、説明しやすいからですが、そんな質問をされた経験はありませんので、これからは、字数の多少にこだわらないようにしようかと考えています。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 08:14 | 法制執務 | コメント (0) | -

庁舎内連続盗難事件

 最近、庁舎内で事務机やロッカーの中から金品等が紛失するという事件が連続して発生しています。職員の退庁後に何者かが庁舎内に侵入して室内を物色した形跡がありますので、おそらく盗難事件でしょう。個人情報が入ったPC、USB、公文書等や、公金の被害が確認されていないことが不幸中の幸いでしょうか。
 当然、警察へ被害届を提出するとともに、警備の強化を図っていますが、防犯対策としては、根本的な解決にはならないのではないかと思われます。防犯上、具体的に書けませんが、せめて、執務時間外における入退庁者をきちんと管理する必要があるように思います。しかし、本市では、なぜかこんなことが非常に難しいのです。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 19:42 | その他 | コメント (0) | -

行政委員会の事務局(後編)

 なお、議会の事務局についても、「市町村の議会に条例の定めるところにより、事務局を置くことができる」(同法第138条第2項)と規定されています。
 ところが、競争試験等を行っていない公平委員会に事務局が置かれていたり、条例ではなく、規則その他の規程の定めるところにより、事務局が置かれているケースがあります。これは、何故でしょうか?
 公平委員会に事務局を置くことについては、次のような行政実例があります。
「公平委員会には事務職員のみを置く旨規定してあるが共同設置の場合、事務局を設置しても違法ではないが、一般的にはその必要がないものと解される。」(昭和26年8月23日行政実例)
「公平委員会に事務局を置くことは、法律の予想するところではない。」(昭和40年10月6日行政実例)
 一方、選挙管理委員会に事務局を置くことについては、次のような行政実例があります。
「選挙管理委員会等の事務部局の組織として条例をもって事務局を設置することはできないが、機関の内規で定めることはさしつかえないと解する。」(昭和25年12月19日行政実例)
「選挙管理委員会規程により、書記長その他の職員の職の名称として事務局長等を定めることはさしつかえないと解される。」(昭和43年6月18日行政実例)
 規模の小さい市町村では、教育委員会を除き、複数の委員会及び委員を総合行政委員会と称して、これらの事務組織を職員が兼務しているのが一般的です。そうすると、総合行政委員会内で委員会ごとに事務局が設置されていたり、されていなかったりということや、また、職名が異なるということは、非常に面倒かつややこしいことだったのではないでしょうか。
 そこで、昭和25年12月19日付け行政実例のとおり、すべての委員会及び委員に事務局を設置(法律上、設置を想定していない委員会については、規則その他の規程で設置)したのではないでしょうか。
 委員会及び委員の事務組織等に関する規定を見比べると、昭和25年12月19日付け行政実例には、無理を感じます。個人的には、そもそも、これらの規定に整合性がとれていないと感じています。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 21:13 | 地方自治法 | コメント (0) | -

行政委員会の事務局(前編)

 市町村に置かれる委員会及び委員は、次のとおりです。
教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会又は公平委員会、監査委員、農業委員会、固定資産評価審査委員会(地方自治法第180条の5第1項及び第3項)
 これらの委員会及び委員の事務局その他の事務組織等に関する法律上の規定を見てみると、教育委員会(「教育委員会の権限に属する事務を処理させるため、教育委員会に事務局を置く」地法教育行政の組織及び運営に関する法律第18条第1項)と人事委員会(「人事委員会に事務局を置き、事務局に事務局長その他の事務職員を置く」地方公務員法第12条第1項)のみが事務局を置くこととされています。そして、監査委員は、「条例の定めるところにより、事務局を置くことができる」(地方自治法200条第2項)とされ、「事務職員を置く」(地法公務員法第12条第5項)とされている公平委員会のうち「競争試験等を行う公平委員会」については、「事務局を置き、事務局に事務局長その他の事務職員を置くことができる」(同条第6項)とされています。競争試験を行う公平委員会に事務局を設置する場合は、「その設置条例にその旨を規定しなければならない。そして、公平委員会に事務局を設置したときは、本条第一〇項によって人事委員会の事務局の組織について定める本条第八項が準用され、その組織は公平委員会が定めることとされるほか、長との関係についても人事委員会の事務局の場合と同じ扱いになる」(「逐条地方公務員法」橋本勇著/学陽書房)と解されています。
 また、選挙管理委員会は「都道府県及び市の選挙管理委員会に書記長、書記その他の職員を置き、町村の選挙管理委員会に書記その他の職員を置く」(地方自治法第191条第1項)と、農業委員会は「農業委員会に職員を置く」(農業委員会等に関する法律第20条)とされていますが、固定資産評価審査委員会は、何ら規定されていません。
 地方自治法第180条の5第4項は、「委員会若しくは委員の事務局又は委員会の管理に属する事務を掌る機関で法律により設けられなければならないものとされているものの組織を定めるに当たっては、当該普通地方公共団体の長が第158条第1項の規定により設けるその内部組織との間に権衡を失しないようにしなければならない」と規定しています。同項後段は、「当該普通地方公共団体の長の直近下位の内部組織の設置及びその分掌する事務については、条例で定めるものとする」と規定していますので、委員会及び委員に事務局等の内部組織を設置する場合は、条例で定めるべきであると考えられます。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 07:24 | 地方自治法 | コメント (0) | -

続・議員報酬

 「普通地方公共団体は、その議会の議員に対し、議員報酬を支給しなければならない。」(地方自治法第203条第1項)
 議員報酬は、国会議員の歳費とは根本的に異なります。歳費は年額を基準(支給は、歳費月額)とする生活給ですが、議員報酬は、そのほとんどが月額を基準とし、また、生活給ではありません。
 なお、「逐条地方自治法」(松本英昭著/学陽書房)には、「「報酬」も、月を基準として金額を定めるほか、一年を基準として金額を定め、支給は月額で支給してもよい。また、最近は議員の報酬を日当制にしている団体もある。このようなことを勘案して、地方議会には固有の名称の「議員報酬」を支給することとされたものと思われる」とあります。
 では、その議員報酬の適正な金額とは、いくらなのでしょうか?「議員・職員のための議会運営の実際1」(地方議会研究会編著/自治日報社)には、昭和37年11月21日付け自治省行政局長内簡(自治省の見解としては、都道府県議会の議員の報酬月額については、当該都道府県における部長(都にあっては、局長)に適用される等級の号給のうち、その中間程度を基準として定めることを適当と考えるというもの。特別職報酬等審議会の設置に伴い、事実上消滅したとあります。)から特別職報酬等審議会の設置に至る経緯や全国町村議長会の政策審議会が昭和53年7月25日にまとめた議員報酬のあり方についてなど、詳細に説明されています。しかし、議員報酬の基準額について、言及するには至っていません。
 市町村議会の場合、議員報酬は、10万円程度から100万円超まで、10倍近くもの差があります。これをどう説明するのでしょうか?
 最近では、議会改革の一環として、議員報酬と定数を削減しているところが多いようですが、そもそも、現行の議員報酬が適正かどうかという議論は、ほとんどされていないように思われます。都道府県議会の議員報酬の範囲内で、近隣市と比較しながら何となく決まってきたのが議員報酬の実態なのでしょうが、議員報酬が生活給ではないからこそ、説明責任が果たされるべきではないかと思うのです。
 現状の議員報酬を説明するため、次のような算式を考えてみました(シャレです。)。
 議員報酬 = 当該市町村議会議員一般選挙当選者平均得票数 × @……円 × 地域率

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 20:04 | 地方自治法 | コメント (-1) | -

一国多制度推進ネットワーク

 現在、「「地方自治法の抜本見直し」に関する意見募集」が行われています。そうした最中に、一国多制度推進ネットワークが設立されました。
 このネットワークは、「住民の意思や地域の実情に合わせて、地域独自の自治を実践する方が、地域の活性化、ひいては国全体の活力増進につながるのではないか、また、国において「この国のあり方」から発想し、一律に「地方」を議論するのではなく、それぞれの地域において、「この地域のあり方」を議論すべきではないか」という考えに基づき、「各地域の住民自らの意思決定により「この地域のかたち」である住民自治・団体自治の仕組みを構築し、地域独自の自治を実践することができる、新たな「この国のかたち」(一国多制度)を実現することを目的」(設立趣意書から抜粋)として設置されたものです。
 このネットワークは、随時参加申込みを受け付けています。興味を持たれた方は、管理人まで御連絡ください。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 19:39 | 政策法務 | コメント (0) | -

続・国勢調査

 10月28日、国勢調査の調査書類を国勢調査指導員に提出しました。
 回収率は、93.3パーセントでした。担当した調査区の全体がオートロックマンションであることを考えると、それなりに頑張った数字ではないかと思います。ただし、調査票は封入又は郵送されていますので、中身の保障はできませんが……。封入といえば、前回(平成17年)の国勢調査で指導員をした際、調査票がすべて封入で提出され、その封を開けるごとに暗澹たる気持ちになっていった記憶が思い出されます。
 今回の調査では、調査票の内容もさることながら、回収率が前回調査を下回るのは間違いないでしょう。現在の調査環境で、国勢調査という制度を維持していくのは、そろそろ限界なのかもしれません。
 国勢調査員の任命期間も10月31日をもって満了しました。とりあえず、国勢調査員としての仕事は、終了しました。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 19:49 | その他 | コメント (0) | -
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