−管理人のたわごとブログ− 2010年10月
 法令において外国の国名等を表記する場合は、「表現される対象の同一性を害しない範囲で熟した語(例えば「香港」)があれば、漢字を用いることもあるが、通常は、片仮名書きで示されることが多い」(「ワークブック法制執務」法制執務研究会編/ぎょうせい)とされています。
 市町村の例規で外国の国名等を表記する場合は、法令と比べると、そう多くはありません。そういう場合は、機械的に法令の表記に合わせればよいのですが、参考までに、「実務立法技術」(山本庸幸著/商事法務)には、次のような記述があります。
「法令中において、外来語や外国の地名・人名を書き表わす場合の基準としては、国語審議会の答申「外来語の表記」があり、その原則的事項にはおよそ次のようなことが定められている。
 「一 語形やその書き表し方については、その慣用が定まっているものはそれによる。
  二 国語化の程度の高い語は、第一表に示す仮名で書き表し、その程度がそれほど高くない語や地
   名・人名のようにある程度外国語に近く書き表わす必要のある語は、第二表に示す仮名で書き表
   わす。この場合の第一表には、ア、イ、ウ……、ガ、ギ、グ……、パ、ピ、プ……、キャ、キュ、キ
   ョ……、ン、ッ、ー、シェ、ツァ、デュ……」が示され、第二表には、「イェ、ウィ、クャ、ツィ、トゥ、グァ、
   ドゥ、ヴァ、テュ、フュ、ヴュ」などが示されている。」
 しかしながら、この方式で外国の国名や地名を表記すると、最近国内で使われている慣用的な表記とあまりにも違いがありすぎるということで、平成一五年には在外公館が置かれている国名と地名などについて、たとえば「ヴィエトナム」→「ベトナム」、「ジョルダン」→「ヨルダン」、「ブラッセル」→「ブリュッセル」にそれぞれ改めるような法律と政令の改正が行われた。」
 ちなみに、外国の国名及び地名の表記の整理のための関係政令の一部を改正する政令(平成15年政令第125号)から他の事例を拾ってみると、「アルゼンティン」→「アルゼンチン」、「サウディ・アラビア」→「サウジアラビア」、「チェッコ」→「チェコ」、「ニュー・ヨーク」→「ニューヨーク」、「ノールウェー」→「ノルウェー」などや、中には、「連合王国」→「英国」というものまでありました。
 平成15年の改正ですから、ついこの前まで、法令上は、「アルゼンティン」、「サウディ・アラビア」、「チェッコ」等々と表記されていたということになります。
 阿久根市で2人の議員を除名にする懲罰動議が可決されたそうです。事の是非はともかくとして、これまた非常に珍しい事例ではないでしょうか。
 地方自治法上の懲罰は、@公開の議場における戒告、A公開の議場における陳謝、B一定期間の出席停止、C除名の4種類です。懲罰動議を議題とするには、議員定数の8分の1以上の者の発議が必要で、さらに、除名については、議員の3分の2以上の者が出席し、4分の3以上の者の同意が必要とされています(第135条)。
 報道によると、除名された議員は、この処分を受け入れるようですが、懲罰議決に対する救済制度が、これまた非常にややこしいのです。このことについて、「逐条地方自治法」(松本英昭著/学陽書房)は、次のように記しています。
 「懲罰は、その内部規律に関する議会の自律作用であって、一般の行政庁の処分と同様に解すべきものではないから、行審法第四条第一項第一号(新行審法案では第六条第一号)の規定により同法に基づく不服申立ての対象とはならない。したがって、第二百五十五条の四の審決の申請を行うこととなる(行政不服審査法の一部が準用される。法二五八)が、基本的に議会の自律作用であることから除名処分についてだけその対象となることとされている(自治大臣審決昭三九、一〇、一九)。被処分者からの訴訟については、議員の懲罰処分について、従来、裁判所においては、かつての行政事件訴訟特例法(現行政事件訴訟法)の規定により懲罰処分無効確認、又は取消の訴訟として事件を受理し裁判している場合も多い(最高裁昭二六、四、二六、昭二七、一二、四等)。もっとも、出席停止の処分については、裁判外にあるとする判決(最高裁昭三五、一〇、一九)から考えて、訴訟も除名処分だけについて認められるということであると一般的には解される(大阪高判平一三、九、二一。なお、上告は不受理決定)。なお、すべての懲罰処分が訴訟(審決も)の対象となると解するものもある(出席停止について認め、執行停止も認めたものとして岡山地裁昭二八、三、一〇)」。
 単純に言うと、議会の議決のうち、「行政処分としては、少なくとも除名の議決がこれに該当するものと解する」(昭和31年9月27日行政実例)ということでしょうか。
 一部事務組合の「監査委員は義務設置であり、その定数、選任の方法および任期に関する事項ならびに事務局および職員の設置に関する事項は規約に規定しなければならない」(昭和41年1月13日行政実例)と解されています。
 地方自治法第292条は、「地方公共団体の組合については、法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか、都道府県の加入するものにあっては都道府県に関する規定、市及び特別区の加入するもので都道府県の加入しないものにあっては市に関する規定、その他のものにあっては町村に関する規定を準用する」と規定していますが、同法第287条第1項第6号の規定により、「一部事務組合の執行機関の組織及び選任の方法」については、規約事項とされているからです。
 よって、監査委員の組織及び選任の方法については、地方自治法第195条や第196条の規定にかかわらず、規約で任意に定めることができます。そのため、監査委員の定数が2人の場合で、2人共に識見を有する者から選任しているような事例も見受けられます。
 おそらく、一部事務組合の議会の議員は、当該一部事務組合を構成する地方公共団体の議会の議員の中から選挙されている場合がほとんどです。このような議会の構成上、識見を有する者からのみ選任するとした方が、色々と都合がいいのでしょうか?しかし、地方自治法第196条第1項の規定と比較すると、何か居心地の悪い、妙な違和感を感じてしまいます。
「(欠格条項)
 第16条 次の各号の一に該当する者は、条例で定める場合を除くほか、職員となり、又は競争試験
  若しくは選考を受けることができない。
  ⑴〜⑸ 略」
 「逐条地方公務員法」(橋本勇著/学陽書房)には、次のような記述があります。
 「本条では、職員としての採用および受験資格の二つを否定することを明示しているのであるが、後者を法文上明記している趣旨は明らかではない。というのは、欠格条項に該当して職員として採用することができない者が、採用のための競争試験または選考を受けても意味のないことは当然であり、受験の手続として措置すれば足りることであるから、本条に規定するまでもなく、解釈上の問題として処理することができるものである。また、本条では、単に競争試験または選考として規定しているが、競争試験または選考は採用のみならず、昇任の場合にも行われるものであり(法一七34)、欠格条項該当の職員は、後述のように当然失職するので昇任について規定する余地はなく、ここで採用の場合に限定せずに受験資格一般を否定する書き方をしているのは、きわめて不正確であるといわざるを得ない。」
 なるほど、「職員となることができない」と規定すれば足りるということですか。しかし、例えば、受験資格がないことを明記しておかないと、地方公務員法第16条第3号(当該地方公共団体において懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から2年を経過しない者)に該当する場合で、採用試験の日においては2年を経過しないが、採用の日においては2年を経過するようなときは、当該者の受験資格に疑義が生じませんか?同書の前段の記述には、首肯できません。
 そう考えていくと、同書の後段の記述のとおり、「競争試験若しくは選考」は、採用の場合に限定した規定にする必要があるということになりますね。
 なお、欠格条項該当の有無については、本人からの申告のみで、ほとんどの市町村がその確認をしていないのではないでしょうか。
 「々」は、何と読むのでしょうか?
 読み合わせ等の際は、便宜的に「ドウ」や「ノマ」と読んでいるところもあるようですが、 正しくは、「々」に読みはありません。理由は、「々」は、文字ではなく、ある漢字の次に同じ漢字を繰り返して書く代わりに用いられる符号だからです。「々」を「重ね字」や「踊り字」等と言っている場合もありますが、それは、読みではなく、符号の名称にすぎません。
 意外と、「々」を漢字と思っている人が多いようです。少数ながら、「「々」は文字(漢字)ではないが、漢和辞典の中には、便宜的に親字と同じ取扱いをして採録しているものもある」(「言葉に関する問答集・総集編」文化庁/国立印刷局)ことが影響しているのかもしれません。
 「国が主導した市町村合併「平成の大合併」に加わらなかった全国約50町村などによる「全国小さくても輝く自治体フォーラムの会」は26日、千葉県酒々井町で会合を開き、さらなる市町村合併の強制につながる恐れがあるとして、道州制導入に反対するアピールを採択した。
 アピールは、政府が6月に閣議決定した地域主権戦略大綱に、今後の検討項目として道州制が盛り込まれたことについて「小規模自治体の存続を危うくする改革が議論されようとしている」と指摘。道州制導入では小さな町村ならではの創意工夫や住民自治が失われ「(住民の)生活基盤が破壊される」などと批判している。
 会合には約160人が参加。併せて開いたシンポジウムでは露木順一神奈川県開成町長が「合併させて自治体を大きくさせたほうが行政効率が上がるという考えを(政府は)見直すべきだ」と述べるなど、市町村合併の効果を疑問視する声が相次いだ」(9月27日産経新聞朝刊)。
 このフォーラムには、「自治体法務の備忘録」を運営されているkei-zuさんも参加されていたようです。
 http://d.hatena.ne.jp/kei-zu/20100926
 一方、8月19日付け朝日新聞夕刊の「「窓」論説委員室から」には次のような記事があります。
 「もし、人口約140万人の滋賀県にある13市6町すべてが合併して一つの自治体になればどうなるか。県は消滅する。そして、「びわこ市」と名づける新しい自治体に県と市町を合わせた権限と財源を持たせる。
 そんな大胆な提案を、滋賀の自治体職員らの集まり「チョウチョの会」が約2年がかりで報告書にまとめた。きっかけは道州制への疑問だ。「市町村合併では周辺が廃れた。関西州だと滋賀県は周辺になる」という危機感である。
 提案によると、道州制が導入されてもびわこ市は道州に属さない。道州と同じ権限と財源を持つ基礎自治体という位置づけだ。市内には「惣」と呼ぶ「市民自治体」を置く。昔の寄り合いのような自治組織だ。子育てや介護、保育所や幼稚園、小中学校の運営、消防や防災など身近な公共サービスは惣が担う。惣ができないサービスはびわこ市が担う。
 惣の大きさや組織、運営、担うサービスなどは、住民の選択によって地域に応じた多様な姿を認める。」
 「びわこ市」構想の詳細は、次のウェブサイトを御覧ください。
 http://shigachoucho.hp.infoseek.co.jp/kenkyu.html 
 ちょこっと見聞きしただけで、こんなことを書くのは失礼かもしれませんが、方法は異なりますが、目指す方向は同じように思います。
 「小さくても輝く自治体」も「びわこ市」も共感する部分がたくさんあります。
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