−管理人のたわごとブログ− 2009年8月
一般的に、法規担当者は、いわゆる理念条例を制定することを歓迎しません。その理由は、条例には法的強要性が必要であると考えている方が多いからではないでしょうか。自分もまた、大層な目的規定を置いた「〜しましょう」的な規定が羅列された条例を制定することには、大きな抵抗があります。
理念条例を突き詰めると、道徳や習俗又は模範となる日常生活まで条例にするのかという疑問があります。そして、その条文は、極めて抽象的に規定されています。条例には法的強要性が必要である以上、その条文は、できるだけ具体的に規定されるべきではないかと考えています。
抽象的な理念条例を実効性のあるものにするためにはどうするべきか。夏期休暇を取った日に思い付いたのが目標規定です。
最近では、法律や条例の附則に「見直し条項」や「検討条項」といわれる規定が置かれることがあります。法律や条例の制定時に積み残した課題や将来の状況の変化に合わせて、適切な対応をとることを確保するために設けられる規定です。
理念条例を制定する際には、この見直し条項と合わせて、必ず、一定の目標値を定めた目標規定を規定することとしたらどうかと考えました。目標値の設定には、理念条例ごとに検討が必要でしょうが、目標値を検討するだけでも、理念条例が単なる理念(又は単なる理念条例のコピー)では終わらないように思うのですが、どうでしょうか。
なお、最後にお断りしておきますが、すべての理念条例を一律に否定するつもりはありません。理念条例につきましては、また機会があれば記事にしたいと思います。
衆議院議員総選挙及び最高裁判所裁判官国民審査の期日前投票が行われています。期日前投票の期間については、衆議院議員総選挙(「公示又は告示があった日の翌日から選挙の期日の前日までの間」(公職選挙法第48条の2第1項))と最高裁判所裁判官国民審査(「審査の期日前七日から審査の期日の前日までの間」(最高裁判所裁判官国民審査法第26条ただし書))とでズレがあるのですが、このことを知らない選挙人も多いようです。
いわゆる替え玉(なりすまし)投票(詐偽投票)は、期日前投票でよく行われます。仄聞するところによると、投票所入場券を5,000円から10,000円程度で買収し、その際に生年月日を聞いておくそうです。シンプルですが、よく考えたものだと思います。期日前投票所でしたら顔見知りはほとんどいませんし、本人確認も生年月日を聞く以外のことはしないのが一般的だからです(本人を確認する書類の提示を求めている市町村もあるようです。)。
なお、公職選挙法第237条第2項は、「氏名を詐称しその他詐偽の方法をもって投票し又は投票しようとした者は、2年以下の禁錮又は30万円以下の罰金に処する」と規定しています。
ところで、去る7月5日に投開票のあった兵庫県知事選挙で姫路市の漁協が期日前投票をした人に2,000円を渡していたという事件がありました。後日放送されたTBSの「総力報道!THE NEWS」を見ると、うさん臭いのは分かるのですが、投票率を上げるために漁協が報奨金を出す行為と、例えば、商店街が「投票済之証」を持参すれば商品を割引きするという投票啓発キャンペーンとの違いがよく分かりません。商店街の投票啓発キャンペーンも公職選挙法違反ということなのでしょうか。
「民主党が、平成23年施行の公文書管理法を先取りし、閣僚や副大臣らの政策判断や指示などを原則として全面文書化し、公開する方針を固めたことが1日、分かった。政策立案過程を透明化することで、年金記録紛失や薬害肝炎などで問題視された行政の責任逃れを防ぐ狙いがある。外交・安全保障上の国家機密などは対象外とする考えだが、公開・非公開の基準作りは難航しそうだ。例外を多く認めれば、「全面公開」の趣旨が形骸化し、事務作業が煩雑化する恐れもある」(8月2日付け産経新聞朝刊)。
ルールづくりは難しそうですが、良いことだと思います。
これまでも何度か記事にしていますが、「公文書」又は「行政文書」の定義は、組織的共用文書です。しかし、組織的共用文書のすべてが文書登録されているとは限りませんし、そもそも文書そのものが作成されていないことさえあります。その最たるものが、新聞記事にあるような閣僚や副大臣又は首長からの政策判断や指示などのトップダウンの決定事項です。
行政における意思決定は、りん議制度を採用しています。ところが、現実は、収受、供覧、起案、決裁などといったりん議制度に乗っかってくるのは、ルーチン業務です。重要な政策決定に関することは、市長室の中でひそかに決められ、トップダウンとして担当課に降ろされ、決定事項のみが決裁されるのが通常です。
最も重要なことが文書として作成されていないということは、大きな問題だと考えています。
民法第7条を読んでいると、「本妻死後、保険を請求する」という言葉が脳裏によみがえってきました。この語路合わせ、みなさんは御存じでしょうか。
平成11年の民法の一部を改正する法律によって、禁治産及び準禁治産の制度が後見及び保佐の制度に改められ、新たに補助の制度が創設されました。この改正前の民法第7条は、「心神喪失の常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、保佐人又は検察官の請求により、禁治産の宣告をすることができる」と規定されていましたので、頭文字の語路を合わせて、「本(本人)、妻(配偶者)、死(四親等内の親族)、後(後見人)、保(保佐人)、険(検察官)を請求する」と覚えたものです(いつの話しや)。
現在、同条は、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる」と規定されています。「本妻死後、保険を請求する」は、役に立たなくなっていますが、こんなことはいつまでも覚えているものです。
2段ロケット方式とは、「一つの条例の一部改正を2条以上に分けて行うものである。例えば、ある条例の一部を第1条で改正し、この改正について第2条における改正に先行した施行期日を定め、次に第2条で同一の条例につき第1条における改正が溶け込んだ形のものを更に改正することとし、その施行期日は第1条の施行期日より後の日とする」(「法制執務詳解」石毛正純著/ぎょうせい)改正方式で、条例番号は第1条にのみ付し、各条に見出しを付さないとされています。「実務立法技術」(山本庸幸著/商事法務)では、その施行が何段階にもわたる場合もあることから、多段階施行条方式と称しており、本市においても3段ロケット方式の例があります。
[例]
第○条第2号を削り、同条第3号中「A」を「B」に改め、同号を同条第2号とする。
(旧)第○条 …………………………………………………………………………………。
(1) …………………
(2) ………………………
(3) …………A…………
(新)第○条 …………………………………………………………………………………。
(1) …………………
(2) …………B…………
1 第○条第2号を削り、同条第3号を同条第2号とする改正規定が平成21年9月1日から施行され、第○条第3号中「A」を「B」に改める改正規定が同年12月1日から施行される場合
2 第○条第3号中「A」を「B」に改める改正規定が平成21年9月1日から施行され、第○条第2号を削り、同条第3号を同条第2号とする改正規定が同年12月1日から施行される場合
1の場合は、平成21年9月1日に第○条第2号が削られ、同条第3号が同条第2号とされていることから、同年12月1日には同条第3号が存在しませんので、第○条第3号中「A」を「B」に改めることはできません。よって、この場合には、2段ロケット方式によらなければならないことになります。
一方、2の場合は、平成21年9月1日に第○条第3号中「A」を「B」に改めた後、同年12月1日に第○条第2号を削り、同条第3号を同条第2号としても齟齬が生じませんので、この場合には、2段ロケット方式による必要はありません。
しかし、平成19年の市長の資産等の公開に関する条例の一部改正では、郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律と証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の施行に合わせて、2段ロケット方式により改正を行った市町村がありました。確か、2段ロケット方式による必要はなかったと記憶しています。ただし、分かりやすさということを考えた場合、2段ロケット方式をローカルルールとして活用してみるのも面白いのではないかと思います。
「鹿児島県阿久根市の竹原信一市長は31日、市役所各課に掲示した職員給与総額張り紙をはがした市係長の男性(45)を同日付で懲戒免職処分にすると発表した。市の賞罰委員会は「文書戒告が相当」としていたが、竹原市長は「自ら判断した。懲戒免職は重すぎるとは思わない」としている。市職労は「あまりに厳しすぎる処分。取り消しを求める」と強く反発している」(8月1日付け毎日新聞朝刊)。
一体全体、市長になって何をしたいのでしょうか。そもそも、長の補助機関である職員を目の敵にして、市民の反発をあおるような一連の行為は、市行政にとって大きなマイナスです。これらのことが、住民福祉の向上に資するとはとても思えません。
ところで、地方公務員法第27条第1項は、「すべて職員の分限及び懲戒については、公正でなければならない」と規定しています。「懲戒免職は重すぎるとは思わない」そうですが、「懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべきである」(最高裁昭和52年12月20日判決)とされています。今回のケースは、正に「社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合」ではないでしょうか。
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