職員と農業委員会の委員との兼職

 「地方公務員法上、職員が特別職を兼ね、その職務に従事することは、「職務に専念する義務」(第35条)と「営利企業等の従事制限」(第38条)の問題であって、その特別職が、法令等により職員の職と兼ねえないものでない限り、これらの規定に従えば許される」(昭和26年3月12日行政実例)とされています。
 よって、一般職の職員と農業委員会の委員との兼職は、農業委員会等に関する法律に禁止規定がないことから、「地方公務員法第38条の規定による任命権者の許可を受けることが必要であるが、同時に当該兼職により一般職に属する地方公務員としての勤務時間及び職務上の注意力の一部をさくことが認められるためには、同法第35条の規定により、その旨「法律又は条例に特別の定がある」ことが必要である」(昭和26年6月29日行政実例)とされています。
 ところが、「逐条地方公務員法」(橋本勇著/学陽書房)には、次のような記述があります。
「職員が他の地方公共団体の特別職(たとえば審議会の委員)を兼ねて報酬を受ける場合は本条第1項の許可を要するが、同一地方公共団体の特別職の職を兼ねる場合は、本条の適用はないというべきであろう。同一地方公共団体内の兼職である限り、一般職相互間、一般職と特別職との間のいずれの兼職であっても、また、同一の任命権者の下の職の兼職であっても、異なる任命権者の下の兼職であっても、本条の許可および職務専念義務の免除(法三五)は不要というべきである。なぜならば、職員の勤務関係はその属する地方公共団体との間に存するのであり本条の趣旨が当該地方公共団体の公務の品位と信頼を維持することにあるからである。勤務時間および職務の対価をどのように配分するかは、内部調整の問題に過ぎないのである。本条第1項が、報酬を得て「いかなる」事業もしくは事務にも従事してはならないと規定しているため、文理上の解釈として同一地方公共団体内で報酬を得ることも禁止されていると解することも理由がないわけではないが、それは本条の趣旨を正しく理解しているものとはいえないであろう。」
 どちらにせよ、最近の公務員に対する批判は、非常に厳しいものがあります。特に、服務に関しては、法律上、問題がないからOKというものではなく、道義的にも問題がないかよく考えてみる必要があるのではないでしょうか。
 なお、農業委員会は、選挙による委員と選任による委員で組織されています。農業委員会の委員の選挙には、農業委員会等に関する法律第11条の規定により、公職選挙法の規定が準用されていますが、公務員の立候補制限を定めた同法第89条の規定は、準用されていません。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 19:27 | 地方公務員法

コメント

現在、退職後、再任用で(地方公務員)勤務しておりますが、農業委員になるよう要請されております。
兼職は可能かどうか教えてください。

投稿者 真野文夫 : 2011年4月5日 10:55

自分の考えは記事に書いてあるとおりですが、これはあくまで個人の私的な意見に過ぎません。
正しくは、勤務先の人事担当課に御確認ください。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 2011年4月6日 19:44

 

投稿者   : 2013年9月25日 13:18

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