直接請求の代表者

 「高知県東洋町議のリコール(解職請求)をめぐり、公務員の農業委員が請求代表者として集めた署名が有効かどうかが争われた訴訟で、最高裁第1小法廷(涌井紀夫裁判長)は24日、住民側の上告を受理、裁判官15人で構成する大法廷(裁判長・竹崎博允長官)に審理を回付した。公務員は議員の解職請求の代表者になれないとする地方自治法施行令の規定が争点。規定は有効とした上で「農業委員が請求代表者に含まれている場合、署名は無効」と判断した昭和29年の最高裁判例を見直す可能性が出てきた。大法廷回付は、新たな憲法判断や判例変更をする場合などに行われる」(6月25日付け産経新聞朝刊)。
 この記事を見た本市職員のT君からの質問です。
「公務員が議員の解職請求の代表者になられへんて、自治令のどこに書いちゃあるんですか?」
 議員の解職請求については、地方自治法第80条で規定され、同法第85条第1項で「政令で特別の定をするものを除く外、公職選挙法中普通地方公共団体の選挙に関する規定」は、地方自治法第80条第3項の規定による解職の投票にこれを準用するとしています。そして、地方自治法施行令第115条で議員の解職の投票に公職選挙法を準用する場合における読替えを規定し、同令第113条で同令第109条の規定を準用するとしています。同条では、公職選挙法第89条第1項ただし書(同項第2号に関する部分を覗く。)の規定は、準用しないとしていることから、同条第1項は、本文及びただし書中第2号が準用されます。
 読替え後の同項本文は、「国若しくは地方公共団体の公務員又は特定独立行政法人(独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第2条第2項に規定する特定独立行政法人をいう。以下同じ。)若しくは特定地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成15年法律第118号)第2条第2項に規定する特定地方独立行政法人をいう。以下同じ。)の役員若しくは職員は、在職中、普通地方公共団体の議会の議員の解職請求代表者となることができない」となりますので、特別職の地方公務員である農業委員会の委員は、議員の解職請求の代表者にはなれないということになります。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 20:32 | 地方自治法 | コメント (0) | -

ストリートビュー

 「グーグルのストリートビューなどインターネット上で道路沿いの映像を見られる情報サービスについて総務省は22日、原則として個人情報保護法違反やプライバシー・肖像権の侵害にはあたらないとの見解をまとめた。政府が、こうしたネット地図情報サービスの法的位置づけを明確に示したのは初めて。
 グーグルが08年8月に全国12都市で同サービスを開始して以来、東京都町田市など約40の自治体の議会で「プライバシー・肖像権の侵害にあたるのではないか」などとして国に対して法規制を求める意見書が採択されるなど、反発が強まっていた。
 総務省のワーキンググループは今年4月から議論を開始。その結果、写り込んだ人の姿や表札は個人情報保護法で保護すべき個人データにはあたらないと判断。プライバシーや肖像権の侵害にあたるケースも極めて限定的なため、一律にサービスを停止すべき重大な問題があるとは言い難いと結論づけた。
 ただし、同省は、映像の撮影や公開に関する事前の情報提供やサービスの周知、申し出があれば、速やかに画像を削除するなどの対応を事業者に求めていく方針だ」(6月22日付け朝日新聞夕刊)。
 プライバシーや肖像権の問題もさることながら、個人的には、公共の安全と秩序維持に支障を及ぼすおそれがある情報に当たらないのかどうかも気になるところです。というのは、以前、警察から、連続窃盗事件(空き巣)の犯人を捕まえたところ、空き巣に入る家を探すのに、市役所の情報公開コーナーで住宅地図を見て目星を付けていたと供述したということで、その確認の電話があったからです。
 情報公開コーナーの利用者に犯罪者がいたことは驚きですが、世の中、便利になる一方でややこしいことになっているような気がします。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 19:33 | 情報公開・個人情報保護 | コメント (0) | -

職員と農業委員会の委員との兼職

 「地方公務員法上、職員が特別職を兼ね、その職務に従事することは、「職務に専念する義務」(第35条)と「営利企業等の従事制限」(第38条)の問題であって、その特別職が、法令等により職員の職と兼ねえないものでない限り、これらの規定に従えば許される」(昭和26年3月12日行政実例)とされています。
 よって、一般職の職員と農業委員会の委員との兼職は、農業委員会等に関する法律に禁止規定がないことから、「地方公務員法第38条の規定による任命権者の許可を受けることが必要であるが、同時に当該兼職により一般職に属する地方公務員としての勤務時間及び職務上の注意力の一部をさくことが認められるためには、同法第35条の規定により、その旨「法律又は条例に特別の定がある」ことが必要である」(昭和26年6月29日行政実例)とされています。
 ところが、「逐条地方公務員法」(橋本勇著/学陽書房)には、次のような記述があります。
「職員が他の地方公共団体の特別職(たとえば審議会の委員)を兼ねて報酬を受ける場合は本条第1項の許可を要するが、同一地方公共団体の特別職の職を兼ねる場合は、本条の適用はないというべきであろう。同一地方公共団体内の兼職である限り、一般職相互間、一般職と特別職との間のいずれの兼職であっても、また、同一の任命権者の下の職の兼職であっても、異なる任命権者の下の兼職であっても、本条の許可および職務専念義務の免除(法三五)は不要というべきである。なぜならば、職員の勤務関係はその属する地方公共団体との間に存するのであり本条の趣旨が当該地方公共団体の公務の品位と信頼を維持することにあるからである。勤務時間および職務の対価をどのように配分するかは、内部調整の問題に過ぎないのである。本条第1項が、報酬を得て「いかなる」事業もしくは事務にも従事してはならないと規定しているため、文理上の解釈として同一地方公共団体内で報酬を得ることも禁止されていると解することも理由がないわけではないが、それは本条の趣旨を正しく理解しているものとはいえないであろう。」
 どちらにせよ、最近の公務員に対する批判は、非常に厳しいものがあります。特に、服務に関しては、法律上、問題がないからOKというものではなく、道義的にも問題がないかよく考えてみる必要があるのではないでしょうか。
 なお、農業委員会は、選挙による委員と選任による委員で組織されています。農業委員会の委員の選挙には、農業委員会等に関する法律第11条の規定により、公職選挙法の規定が準用されていますが、公務員の立候補制限を定めた同法第89条の規定は、準用されていません。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 19:27 | 地方公務員法 | コメント (2) | -

政策法務研修

 「法律による行政の原理 行政は、法律に基づき、法律に従って行われなければならないとする原理をいう。行政権による干渉から国民の市民的自由を守るために、行政の行使を法の拘束のもとに置こうとする法治主義原理の行政領域における具体的展開であり、すべての行政を貫く基本原理である」(「新行政法辞典」園部逸夫・大森政輔編/ぎょうせい)。
 本市はというと、長年のカンと経験による行政が行使されています。長年のカンと経験といっても、蓄積されたマニュアルによるものではありませんので、その場の雰囲気で思い付きと自己都合による行政が行使されていると言った方が正確なのかもしれません。
 そんな中、5月26日(火)に庁内で初めての政策法務研修を実施しました。きっかけは、滋賀県市町村職員研修センターからの政策法務研修の講師依頼に対する「よその職員に教えに行くんやったら、ウチの職員に教えちゃってくれや」という総務部長の一言でしたが、第15回自治体法務合同研究会おおさか大会の宣伝も兼ねてやってみました。
 研修受講報告書を読ませてもらいましたが、うーん……という感じです。特に、槍魔栗三助そっくりさんのM君、「○○に関する講師の考え方がよく理解できた」て、そんなことは一言も言うとらんど。まあ、ほとんどが面白かった(何が面白かったかはともかくとして)と書いてありましたので、良しというところでしょうか。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 10:39 | 政策法務 | コメント (0) | -

○○条例がありますか?

 たまに、市民等から「○○条例がありますか?」という質問をいただくことがあります。こういう場合、「○○条例という題名の条例はありませんが、どのようなことを定めた条例のことでしょうか?」と聞くようにしています。
 例えば「環境美化条例がありますか?」と聞かれても、それが「まちを美しくしましょう」というような理念のみを定めたものなのか、いわゆる「ポイ捨て禁止条例」なのかが分からないからです。また、たばこ、空き缶等のポイ捨てを禁止する規定があったとしても、違反行為に対する罰則の適用があるものとないものとでは、大きな違いがあります。
 そういう意味で、「季刊自治と分権 第30号(2008冬号)」(自治労連・地方自治問題研究機構)の特集「住民投票の制度化はどこまで進んでいるか」(上田道明・藤島光雄・稲野文雄)で示された住民投票条例の分類は、非常に面白いです。
 まず、「個別の争点に対応して設けられた住民投票条例」を「個別型」に、「実施対象を特定の個別争点に限定しない」ものを「非個別型」に分類します。そして、「非個別型」を「住民投票に関する何らかの制度を「常設」しているかどうか、ではなく、住民からの請求が成立した場合には議会の議決を要することなく投票を実施できるかどうか」という点に着目し、「住民からの請求用件が充たされた場合に議会の議決を要することなく住民投票の実施が義務付けられ」、「請求から投票結果の取り扱いまでの一連の手続きとそれに伴う資格要件が整っている」ものを「義務型」とし、これら両方又はいずれかの特徴を欠くものを「非義務型」として分類しています。さらに、「義務型」を複数の条例で住民投票制度が構成されているものと単一の条例で構成されているものとで「複合型」と「単体型」とに分類し、また、「非義務型」を請求や投開票に関する規定の有無で二つのタイプに分類し、さらに、その要件が地方自治法の直接請求制度に準拠しているものと独自に要件を設定しているものとに分類しています。
 同著では「非義務型」を誤解していた市民が住民投票を「請求すれば出来るものと思」い、署名を集めて請求した結果、議会で否決されたというくだりがありますが、考えさせられます。「非義務型」の住民投票条例を制定している市町村で、市民から「住民投票条例がありますか?」と聞かれた場合、何と答えますか?

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 20:25 | 政策法務 | コメント (0) | -

共同企業体の構成員が一社になった場合

 三社で構成する共同企業体と議会の議決を経て工事請負契約を締結後、工事完了前に共同企業体のうちの一社が倒産した場合は、改めて議会の議決を得る必要はないとされています。
 共同請負の場合は、各構成員が共同企業体協定書に従って連帯して工事を施工することになります。標準的な共同企業体協定書には、工事途中における構成員の破産又は解散に対する処置があらかじめ定められています。このように「契約の内容においてその要素の変更に関する定めをしていた場合、その定めに従って契約の内容を変更することは、契約の実現とみなされるもので、新たな契約を締結するものではない」(「地方財務実務提要」地方自治制度研究会編集/ぎょうせい)ことから、改めて議会の意思を問う必要はないと解されているからです。
 また、共同企業体は、民法上の組合と解されています。共同企業体と締結する契約書に構成員全員の名称を列記するのは、共同企業体自体に法人格がないからです。そして、共同企業体の債権債務は、全構成員に合有しており、各構成員の債権債務とは別に、共同企業体という一つの団体の債権債務として存在しているのであって、例え構成員が脱退しても、共同企業体は、同一性をもって残存構成員間に存続すると解されています。
 「なお、2者で組織された組合では、1者の脱退は、組合の解散事由になる」(「自治大阪平成4年3月号」相談室)と解されています。
 一方、「二社で構成する建設工事共同企業体の一部が脱退した場合の事務の取扱いについて」(昭和56年3月13日建設省計振発第52号)には、「2社で構成する建設工事共同企業体(甲型)の構成員のうち1社が倒産等の理由で脱退した場合であっても、残存構成員たる1社で当該工事を完成する能力も意志もあると認められるときは、当該共同企業体は継続し、かつ、従前の契約は有効として取扱うことが適当である」とあります。
 しかし、2者で組織された組合では、1者の脱退は組合の解散事由になると解されていることから、共同企業体の存続には疑問があります。共同企業体の権利義務を残存構成員に包括承継した上で共同企業体を解散し、残存構成員の単独施工に切り換えるというのが、現実的な解決策ではないでしょうか。
 なお、この場合は、改めて議会の議決を得る必要があります。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 20:03 | 地方自治法 | コメント (0) | -
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