続・附属機関条例

 25日(金)に開催されたおおさか政策法務研究会第40回定例会で話題になった条例の話です。
 要綱設置の懇話会に公金を支出したことに対する損害賠償等請求事件(さいたま地裁平成14年1月30日判決)では、懇話会が条例に基づかず、市の内部規範にすぎない要綱によって設置、運営されたことは、地方自治法第138条の4第3項の規定に違反したものであるが、市に実質的な損害が生じていないとして却下しています。
 この判決では、附属機関について、「法138条の4第3項には、審査ないし諮問の目的や機関の存続期間についても何の限定もされていない以上、一定の事項についての提言をするまでの臨時的、一時的な住民参加型会議組織であるからといって、本件懇話会が附属機関に当たると解する妨げとはならないものというべきであるから、被告の主張は採用の限りではない。
 なお、このように附属機関の意義を解することについては、行政に対しては、随時、専門的、科学的あるいは民主的意見を反映させることが必要であり、そのためには、弾力的に行政を運用することができなければならないとする近時の要請に適合しないとする非難が予想される。このような社会的要請にそれなりの合理性があることは否定できないけれども(もっとも、前記の事実関係のもとにおいては、本件懇話会の設置条例を制定する時間的いとまがなかったとは想定しにくい。)、法138条の4第3項の規定の制度趣旨は前記のとおりであり、これに合理性が肯定できる以上、上記の社会的要請も、この法の趣旨に反しない程度で実現されるほかないものというべきである。例えば、その調和点として、予想される附属機関の目的や類型、存続期間等を定めておき、所定の条件を満たす附属機関については、市長等執行機関が行政執行上の必要に応じて随時設置することを認める旨のいわゆる委任条例を制定しておくことなどは、法の許容するところと解される」としています。
 ならば、次のような条例は、可能でしょうか。

   附属機関の設置に関する条例
(目的)
第1条 この条例は、法律又は他の条例に定めるもののほか、地方自治法(昭和22年法律第67号)第
 138条の4第3項に規定する附属機関の設置に関し基本となる事項を定めることにより、弾力的かつ
 適正な行政運営を図ることを目的とする。
(設置)
第2条 市長その他の執行機関は、法律又は他の条例に定めがある場合を除くほか、次の各号のいず
 れかに該当する場合に限り、調停、審査、諮問又は調査を行うため、附属機関を随時設置することが
 できる。
(1) 一時的に設置が必要な場合
 (2) 急施を要する場合
 (3) 専門的又は技術的な意見が必要な場合
 (4) 政治的中立性の確保が必要な場合
 (5) 市民の意見の反映が必要な場合
(施行の状況の報告)
第3条 市長は、毎年度、各執行機関におけるこの条例の施行の状況を取りまとめ、議会に報告するも
 のとする。
(委任)
第4条 この条例の施行に関し必要な事項は、執行機関が別に定める。
   附 則
(施行期日)
1 この条例は、平成○○年○月○日から施行する。
(経過措置)
2 この条例の施行の日の前日までに、市長その他の執行機関が規則又は告示により、調停、審査、
 諮問又は調査を行うために設置した機関は、第2条の規定により設置した附属機関とみなす。

 この条例によって「条例の定めるところにより」、「調停、審査、諮問又は調査のための機関を置」いたとことにはならないと考えています。「その設置の旨のみならず、その構成、担任事務及び運営の大綱等について、基本的な事項についても条例に規定することが「条例の定めるところにより」とした法の趣旨に適合するものと考える」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)からです。これでは、その設置の旨さえも規定されているとは言い難いのではないでしょうか。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 20:18 | 地方自治法

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