行進及び集団示威運動に関する条例(前編)

 本市には、行進及び集団示威運動に関する条例があります。行進及び集団示威運動に関する条例、いわゆる公安条例というと、徳島市公安条例事件最高裁判決を思い起こす方も多いのではないでしょうか。しかし、この判決を基にして、条例制定権の限界について高尚な意見を展開するつもりもそんな能力もありません。ここでは、この条例の持つ問題点についてのたわごとにお付き合いください。
 行進及び集団示威運動に関する条例の全文は、次のとおりです。
   行進及び集団示威運動に関する条例
                                                   昭和24年5月12日
                                                  ○○○市条例第22号
第1条 行進又は集団示威運動で街路を行進し又は占拠することにより街路を使用する他人の個人的
 権利を排除し、若しくは妨害するに至るべきものは公安委員会の許可を受けないで行ってはならない。
第2条 前条の許可申請は主催者たる個人又は団体の代表者から前条の行進又は集団示威運動の開
 始時刻の72時間前までに公安委員会に対し文書でしなければならない。
第3条 前条の申請書には次に掲げる事項を記載しなければならない。
 (1) 行進又は集団示威運動の日時
 (2) 主催者及び参加全団体の氏名又は名称及び住所又は事務所の所在地
 (3) 行進の経路又は集団示威運動の場所
 (4) 参加予定人員数
 (5) 行進又は集団示威運動の目的及び性質
第4条 公安委員会は、第2条の規定による申請があったときは行進又は集団示威運動が公安に差迫
 った危険を及ぼすことが明らかである場合の外は許可しなければならない。
  前項の場合において許可をしないときは公安委員会は詳細な経緯及び理由を附けてその旨を速や
 かに市議会に報告しなければならない。
  公安委員会は第1項の許可をする場合において集団的無秩序又は群衆による暴力行為に対し一般
 公衆を保護するために適当な条件を附けることができる。
第5条 第1条の規定に違反して行われた行進又は集団示威運動を計画し若しくはこれに参加した者又
 は第3条に規定する申請書に虚偽の事項を記載した者及び前条第3項の規定に基き公安委員会が附
 した条件に従わないものは1年以下の懲役又は5万円以下の罰金に処す。
  前項の刑は併科することができる。
第6条 この条例は第1条に定める行進又は集団示威運動以外の公の集会を催す権利を禁止し若しく
 は制限し又は公の集会、政治運動若しくはプラカード出版物その他の文書図画等を監督し若しくは検
 閲する権限を公安委員会警察吏員若しくはその職員又はその他の市吏員若しくはその職員に与えよ
 うとするものではない。
第7条 この条例は公務員の選挙に関する法律に矛盾し又は選挙運動中に於ける政治集会若しくは演
 説の事前届出を必要ならしめるものではない。
   付 則
 この条例は、公布の日から施行する。

 見出しのないところや項番号が付されていないところに時代を感じますが、この条例は、昭和29年に警察法が全部改正されたことによって市町村が有していた自治体警察が廃止された際に廃止されるべきものでした。
 ところが、廃止されませんでした。正確には、市警察廃止に伴う関係条例の整理についての条例により、11条例が廃止(6条例が改正)されたのですが、行進及び集団示威運動に関する条例の廃止については、大阪府が定める当該事項についての条例施行の日から施行するとされました。そして50年以上経った現在も、大阪府が定める当該事項についての条例は、施行されていません。
 また、警察法施行令第19項にも警察の事務に関する市町村条例の経過措置として、「法の施行の際自治体警察を維持していた市(指定市を除く。以下本項中同じ。)町村の条例で現に効力を有するものの規定により当該自治体警察の機関又は職員の事務として定められていた事項は、当該市町村又は当該市町村を包括する都道府県が条例で別に定をするまでの間、当該市町村を包括する都道府県の都道府県警察の機関又は職員の事務として当該都道府県警察の機関又は職員が処理するものとする」と規定されています。
 なお、行進及び集団示威運動に関する条例が存在する市町村は、全国で35市(うち大阪府では13市)あるそうです。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 20:21 | 政策法務

コメント

 エントリから外れた話題で申し訳ありませんが、以下についてご見解を伺えれば幸いです。

 自治体職員(正規の職員場合)の給与の額を規則に委任できるのでしょうか?
 給与条例主義の原則から言えば、報酬、給料、手当の額並びにその支給方法は条例で定めなければならないわけで、いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基づく条例に基づかずには職員に支給してはならないと考えられます。
 さらに、勤務時間その他勤務条件は条例で定めることとし、これに基づかずにはいかなる金銭又は有価物も職員に支給してはならないと定められていることからすれば、これを長(規則)に委任するのは、如何なんでしょうか?
 なお、下記の情報を見ても、条例に規則に委任する条項があったとしても、やはり金額そのものを条例に規定すべきと思われます。
 福島県市町村行政課​http://www.pref.fukushima.jp/shichousongyousei/​
 同 地方公務員の給与体系​http://www.pref.fukushima.jp/shichousongyousei/gyomu/02kyuyo/kyuyo....​

 ところが、下記によれば、自治体の法務担当者は、ほぼ同音に「規則に委任でき」且つ「議会にかける際にもその規則の内容を明らかにする必要がない」という見解も多いようです。
洋々亭フォーラム ​http://www.hi-ho.ne.jp/tomita/yybbs/#13314​
 なお、スレッド主の質問は「給与条例主義では、原則として具体的な給与(報酬)の決定を条例で定めることを要求しています。立法技術上の制約から一部を規則に委任することを許していますが、法の趣旨からしてその規則は条例とセットの関係であり、規則だけで存在することは許されず、従って議案の審議に当たっては当然規則の提示が必要ではないか?」というもので、これに対する回答が、約1名を除き「規則に委任は可能で、且つ、その規則もセットで提示する必要なし」としていますが、私はどうも納得がいきません。
 
 給与条例主義とは、議会で金額を(条例別表により号俸や等級・各種手当てを成文で)決めることだと思うのですが、如何でしょうか・・・。

投稿者 えんどう : 2009年3月13日 00:42

給与条例主義と規則委任。難しい問題です。
御質問の趣旨にかなうような返答ができるかどうか分かりませんが、近々エントリしてみます。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 2009年3月14日 13:30

 

投稿者   : 2013年10月11日 13:16

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