請願

 GW中にほとんど使うことがなくなったデータフロッピィを整理していると、地方課(現在の市町村課)出向中に書いた「自治大阪・相談室」のボツ原稿が出てきました。埋もれたままにしておくのも忍びないので、ここに掲載します。

   地方公共団体の執行機関の附属機関からの請願について
問 甲市議会において、A議員の紹介により甲市条例設置の附属機関である乙審議会から請願が行われた。
  この請願を受理することは可能か。
答 受理することはできない。
説明 請願とは、公の機関に対し、その職務に関する事項について希望を述べることをいい、憲法第16条では、国民の基本的人権の一つとして請願権を保障しています。普通地方公共団体の議会に対する請願については、地方自治法(以下「法」という。)第124条で「普通地方公共団体の議会に請願しようとする者は、議員の紹介により請願書を提出しなければならない」と規定されています。
 この「請願しようとする者」とは、国籍あるいは自然人・法人を問わず、すべての住民を指すものであるとされており(昭和23年6月16日、昭和25年3月16日行政実例)、当該普通地方公共団体の住民に限定されるものではありません。また、一般的には、町内会、PTA等の権利能力のない社団も請願をすることができるとされています(昭和29年7月26日行政実例)。しかし、普通地方公共団体の議会には法律上の権限として請願権はないものと解されており(昭和28年2月18日行政実例)、また、教育委員会等の普通地方公共団体の執行機関も、行政執行上の希望については、執行機関内において解決すれば足りることから、当該地方公共団体の議会に対し請願することはできないとされています(昭和27年12月1日、昭和33年2月26日行政実例)。
 また、附属機関とは、執行機関の要請により、その行政執行の前提として、必要な調停、審査、審議又は調査等を行うため、普通地方公共団体に法律又は条例の定めるところにより設置されるものであり、普通地方公共団体の行政組織の一部を構成するものです(法第138条の4第3項、法第202条の3第1項)。
 ところで、設問についてですが、附属機関が執行機関の行政執行の前提としての職務を行うために設置されたものである以上、自らの議会に対して請願するような事項があったとしても、それは執行機関に対する報告、意見等によって目的を果たすことができることから、甲市議会に対して請願することはできないと解されます。したがって、このような請願を受理することはできません。

 この原稿がボツになった理由は、普通地方公共団の執行機関は、そもそも請願することができるのかはっきりしなかったからです。昭和27年12月1日行政実例では、「請願しようとする者」とは自然人及び法人を指すものであり、地方議会の請願能力(昭和28年2月18日行政実例)と同様、地方公共団体の執行機関は、法律上の権限として請願権がないものと解されます。一方、昭和33年2月26日行政実例では、行政執行上の請願事項については、執行機関内において解決すれば済むことから、当該団体に対しては請願することはできないが、他の地方公共団体の議会に対しては請願することができるとされており、双方の解釈に矛盾があります。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 11:30 | 地方自治法

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