組織的共用文書

 1月26日付け毎日新聞朝刊によると、大阪市環境局が昨年5月、情報公開請求に対し「不存在」を理由に非公開決定した環境事業センターの業務日誌が存在していたことが分かりました。情報公開条例を所管する総務局は「条例対象の公文書に当たる」との見解を示しましたが、環境局は「公文書ではなくメモ」と強弁しているそうです。さらに、同紙の同日付け夕刊によると、市役所内で「公文書とは何か」との認識が共有されていない実態をもあぶりだしたとあります。この問題、よそ事とは思えません。本市においても、「公文書とは何か」との認識が共有されているかどうかは、甚だ疑問です。
 「公文書」又は「行政文書」の定義は、地方公共団体の条例ごとに微妙に異なりますが、おおむね行政機関の保有する情報の公開に関する法律に準じているものと思われます。同法第2条第2項本文によると、「「行政文書」とは、行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているものをいう」と定義されています。いわゆる組織的共用文書というヤツです。当然、担当者の個人的なメモは、組織的共用文書ではありません。しかし、実態として、職務上作成し、又は取得した文書であって、組織的に用いられているものであるならば、それは公文書です。当該文書を行政機関が保有(文書登録)していないので公文書ではないというのであるならば、それは、本来、行政機関が保有(文書登録)しなければならない公文書を保有(文書登録)していないのであって、文書管理上、違反行為をしていることになります。どの地方公共団体においても、文書管理規程等に基づき、すべての文書を登録することが要求されているはずなのですが、これがなかなか難しいのです。具体的な公文書の定義を巡っては、情報公開担当課と原課に大きな意見の相違があります。
 本市の個人情報保護審査会の答申事例として、看護師の入院患者引継用メモが公文書(組織的共用文書)として開示対象であるとされたものがあります。同様に、小中学校の教員が使用している、俗に「えんま帳」と呼ばれる「教務手帳」や「教務必携」も、個人のメモではないと考えられます。
 なお、偽造通貨行使事件の公判で、警察官が取調べの際に作成したメモが弁護側への証拠開示の対象になるかどうかが争われた特別抗告審で、最高裁は、「取り調べの経過を記録し、捜査機関に保管されている書面は警察官の個人的なメモではなく公文書」との判断を示しています。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 15:54 | 情報公開・個人情報保護

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投稿者   : 2013年8月12日 14:16

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