指名基準

 12月22日付け朝日新聞朝刊によると、S市議会は、同月21日、公の施設の指定管理者の指定に関する議案を「選考過程が不透明で、市内の企業を優先する配慮もなかった」として否決したそうです。
 指定管理者による公の施設の管理は、「公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるとき」(地方自治法第244条の2第3項)にできるものであって、「地域活性化のため、市内の企業を優先すべきだ」という反対意見には疑問を感じざるを得ません。
 「指定管理者の指定は行政処分の一種であり、契約ではない」(「地方自治第669号『地方自治法の一部を改正する法律の概要について』篠原俊博」地方自治制度研究会編/ぎょうせい)と解されていますが、「地元企業優先」という考え方は、契約事務において不文律のものとなっているように思われます。
 地方公共団体の「売買、賃借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする」(地方自治法第234条第1項)とされ、それは一般競争入札を原則とし、「指名競争入札、随意契約又はせり売りは、政令で定める場合に該当するときに限り、これによることができる」(同条第2項)とされています。しかし、現実には、入札というと圧倒的に指名競争入札が実施されています。問題は、指名競争入札に参加する者を指名する場合の基準です。本市の場合、契約規則で「市長は、指名競争入札に参加する者を指名する場合の基準を定めなければならない」と規定し、「地方支分部局工事請負業者選定事務処理要領」(昭和41年12月23日付け建設省厚第76号)を参考に内規で指名業者選定基準を定めています。それには「市内登録業者の中から○者以上を選定する」又は「市内登録業者を優先し」と規定しています。確かに、市内業者を育成することで市内経済が活性化し、更なる産業が振興され、税収の増加が期待できるという建前はあります。また、競争入札を採用することで、業者間で公正な競争が行われているという建前もあります。しかし、現実は落札額が高止まりし、このことが談合の温床になる可能性が極めて大きいと考えられます。
 行政改革の一環として契約事務の改善や経費削減が叫ばれている中、職員でさえ疑問視するようになってきている「地元業者優先」という指名基準を、なぜか市長や議員は問題とは考えていないようです。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 19:52 | 地方自治法

コメント

そうそう。市長や議員にとって、市内業者に便宜を図ってやると、1票につながるけど、市外業者にいくら便宜を図っても票にはつながらないですもんね。

投稿者 謎のチクリ魔 : 2008年1月15日 11:52

コメントしてください




保存しますか? はいいいえ


< 2008年1月 >
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
Links