新旧対照表方式(後編)

 「県民にとって分かりやすい条例等の改正方式にする、という目的で導入した新旧対照方式については、県議会で審議をする議員には、議員提案による条例改正も新旧対照方式で行われていることもあり、理解しやすくなり、一定の評価をいただいていると考えている。
 一方、その他の県民にとっては、新旧対照方式の改正内容を実際に目にするという機会は少ない。県議会事務局が、ホームページで議案を公開するようにしているので、それにアクセスされれば、議案段階で新旧対照方式での条例改正案を目にすることができるほか、議決後公布された条例を、紙ベース又はホームページに掲載された県公報で見る、ということができる程度である。したがって、県民から直接、新旧対照方式になって見やすくなった、などの声を聞くことはない」(「条例改正における新旧対照方式(鳥取県方式)の導入とその後〜分かりやすい条例へのステップとして〜」亀井一賀(「自治体法務NAVIvol.6」(第一法規))とあります。
 何か、地方自治の主役であるべき住民(県民)が欠けていませんか。「県民にとって分かりやすい」ということは、「議員にとって分かりやすい」ということですか。現実は、住民にとって、例規の一部を改正する方法など、どうでもいいことではないでしょうか。そもそも、例規集を読んでいる、又は読んだことがあるという住民がどれぐらい存在するのでしょうか。「住民のため」とか「住民にとって」という言葉を使い、居もしない住民や有りもしない意見を行政側の都合で作り出すことには、少なからずの反発を感じます。大切なことは、当該地方公共団体において、例規つまりこういうルールができましたということを、いかに分かりやすく住民に広報することではないかと思うのです。
 ただし、新旧対照表方式という新たな手法を編み出した鳥取県には、敬意を表します。安易に新旧対照表方式を採用することには賛成できませんが、新旧対照表方式は、現行の法制執務のルールを極めて簡素化できる可能性を示すことができたと考えています。例えば、例規の改正に当たっては、一部改正の方式ではなく、全部改正の方式によることとし、その都度全文を見直すこととするとか、一部改正の方式を極めて簡素化し、条項号単位ですべてを改める方式のみを採用するなど、先進的な地方公共団体の取組が期待されます。
 また、現時点においては、新旧対照表方式が溶け込み方式の究極のローカルルールである以上、あえて新旧対照表方式を採用する必要性が認められませんが、「少なくとも私自身は、新旧対照表化は十分に可能と思っている次第である。また、内閣法制局としても、その具体的な方法を検討したこともある。今後、この問題をどう取り扱うか、内閣提出法律案にかかわる政府部内のみならず、そもそも立法機関である国会も含めて、立法に携わる関係者の広い合意が必要と思われる」(「実務立法技術」山本庸幸著/商事法務)との意見もあります。この問題は、今後のお楽しみといったところでしょうか。
 なお、本市では、条例案を議会に提出する際、議案の参考資料として、条例案の新旧対照表を付託される委員会に提出することとしています。
 新旧対照表方式については、これまた愛読させていただいている「自治体法制執務雑感」でhoti-akさんが詳細な分析をされています。11月11日(火)の発表に当たっては、非常に参考にさせていただきました。お礼申し上げます。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 17:40 | 法制執務

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